こんにちは、TMPS医学館のSora先生です!指導統括のニックニ先生と一緒に、2025年度の藤田医科大学・生物を1ステップの省略もなく完全解剖していくよ!
今年の藤田医大の生物は、第1問「ヒトの生殖・発生と胎児循環」、第2問「染色体突然変異と白血病の融合遺伝子(フィラデルフィア染色体モデル)」、第3問「ミカエリス・メンテン式と酵素阻害・血糖調節」という、まさに『医学部らしさ100%』の超良問セットでした!
とくに第2問の転座後のRT-PCR断片長計算や、第3問の逆数プロット(ラインウィーバー・バークプロット)からの $K_{\text{m}}, V_{\text{max}}$ 算出は、やり方を知っていれば秒殺、知らないと泥沼になる合否分岐点です。中学生でもわかるようにゼロから図解するので、一緒に完全制覇しよう!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
まずは自分の答えと照らし合わせよう!第1問:ヒトの誕生・ホルモン・胎児循環
- 問1:ア ④ / イ ⑤ / ウ ③
- 問2:①, ③(完答)
- 問3:i) ⑥ / ii) ③, ⑤
- 問4:i) フィードバック(調節) / ii) ③
- 問5:i) ① / ii) ②
- 問6:③(結合組織)
- 問7:②
- 問8 i):⑦(臍静脈)
- 問8 ii):右心房の静脈血と左心房の動脈血が混ざり、全身に送られる血液の酸素濃度が低下する。
- 問9:i) ④, ⑥, ⑧, ⑨ / ii) ①(肺)
- 問10:①
第2問:染色体の構造と変異・白血病
- 問1 i):遺伝子座
- 問1 ii):逆位
- 問1 iii):アポトーシス
- 問2 i):異数体(異数性細胞)
- 問2 ii):動原体
- 問3:②, ③, ④, ⑤
- 問4:体細胞
- 問5 i):175 bp, 270 bp
- 問5 ii):核内に●と○が近接(融合)したペアが1組と、離れた●が1個、○が1個(計4ドット)
- 問5 iii):B細胞で活発に働く免疫グロブリン遺伝子のプロモーター(またはエンハンサー)によって細胞増殖に関わる遺伝子が過剰に発現し、白血球が無秩序に増殖するから。
- 問6:選択的スプライシング
第3問:酵素の反応速度論・血糖調節
- 問1:反応物質と生成物の高さを変えず、山のピーク(活性化エネルギー)だけを低くした曲線を描く。
- 問2 i):酵素の活性部位が基質で飽和し、すべての酵素が酵素-基質複合体を形成するようになるから。
- 問2 ii):ア ④ / イ ①
- 問3:①, ⑥
- 問4 i):ア ② / イ ③, ④
- 問4 ii) ア:$K_{\text{m}} = \mathbf{2.5\text{ mmol/L}}$, $V_{\text{max}} = \mathbf{5.0\text{ mmol/(L}\cdot\text{分)}}$
- 問4 ii) イ:②(非競争的阻害物質)
- 問5 i):細胞内のグルコースが速やかにグルコース6-リン酸に変えられ、細胞内のグルコース濃度が低く保たれる(細胞内外の濃度勾配が維持される)から。
- 問5 ii):ヘキソキナーゼ ② / グルコキナーゼ ③
第1問:ヒトの誕生(卵形成・ホルモン調節・胎児循環・ヘモグロビン)
第1問はヒトの受精・出産から胎児の血液循環までのストーリー問題だよ!
合否を分ける最大のポイントは2つ!1つ目は「ヒトの卵形成では、どのタイミングで減数分裂がストップしていて、いつ再開するか?」という超頻出知識。2つ目は「胎児循環で一番酸素が多い血管は『臍動脈』か『臍静脈』か?」という引っかけ問題です。ここを間違えなければ15分以内で満点が狙えるよ!
【リード文の確認(抜粋)】
卵巣の中にはたくさんの( ア )が1個ずつろ胞に包まれて存在している。思春期を迎えると、(1)脳下垂体前葉から分泌されるろ胞刺激ホルモン(FSH)のはたらきで、ろ胞を形成している細胞が増殖する。さらに、(2)ステロイドホルモンの一種であるエストロゲンが、FSHのはたらきでろ胞から分泌されるようになると、( ア )のうちの1つが減数分裂を再開して( イ )になり、排卵への準備を整える。
(3)FSHの分泌は、視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LH-RH)によって促進される。…(中略)…LH-RHの著しい増加がFSHや黄体形成ホルモン(LH)を大量に分泌させ、この刺激によって排卵が誘発される。
(4)排卵後、精子の侵入により( イ )は減数分裂を再開して受精卵と( ウ )になる。
妊娠末期に入るとプロスタグランジンが放出され、子宮頸管の(5)コラーゲンを分解する酵素を増やし、また(6)脳下垂体後葉からのオキシトシンの分泌を促す。
(7)出生前には、へその緒の動脈(臍動脈)を通って胎盤へ送られた血液は、へその緒の静脈(臍静脈)から胎児へと戻って下大静脈を通過し、右心房に入る。右心房と左心房の間には卵円孔という穴が開いており、右心房に入った血液の多くは左心房へと送られる。また、(8)胎児期に使われていたヘモグロビン(HbF)は出生後、成人型のヘモグロビン(HbA)へと徐々に置き換わっていく。
問1 ヒトの卵形成と減数分裂の停止・再開タイミング
① 卵原細胞 ② 第一極体 ③ 第二極体 ④ 一次卵母細胞 ⑤ 二次卵母細胞 ⑥ 始原生殖細胞
▼ 図解:ヒトの卵形成における減数分裂の2段階ストップ機構 ▼
Step 1( ア )の特定:女性が生まれる前(胎児期)に、卵原細胞はすでに減数分裂をスタートさせて一次卵母細胞になり、第一減数分裂の前期でピタッと分裂を止めた状態で卵巣の「ろ胞」の中に蓄えられています。よって( ア )は ④ 一次卵母細胞 です。
Step 2( イ )の特定:思春期以降、FSHやエストロゲンが働くと、一次卵母細胞が減数分裂を再開し、第一減数分裂を終えて二次卵母細胞(と第一極体)になります。そして今度は第二減数分裂の中期で再びストップして排卵を待ちます。よって( イ )は ⑤ 二次卵母細胞 です。
Step 3( ウ )の特定:排卵された二次卵母細胞に精子が侵入すると、ストップしていた第二減数分裂が最後まで進み、大きな「卵(受精卵)」と小さな「第二極体」に分かれます。よって( ウ )は ③ 第二極体 です。
問2・問3 内分泌腺とステロイドホルモンの特徴
問2 下線部(1)について、脳下垂体前葉から分泌されるものはどれか。次の①〜⑥から適当なものをすべて選び、番号で記せ。
① 成長ホルモン ② バソプレシン ③ 甲状腺刺激ホルモン ④ グルカゴン ⑤ アドレナリン ⑥ 糖質コルチコイド
問3 下線部(2)について、
i)ステロイドホルモンはどれか。問2の①〜⑥から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
ii)ステロイドホルモンの特徴はどれか。次の①〜⑤から適当なものを2つ選び、番号で記せ。
① アミノ酸により構成されている。 ② 細胞膜を透過できない。 ③ 受容体はサイトゾルや核内に存在する。 ④ 水溶性ホルモンである。 ⑤ 特定の遺伝子の発現を調節する。
問2の解説選択肢①〜⑥の「分泌される場所(内分泌腺)」と「化学的性質」を1つずつ完全に仕分けましょう!
| 番号・ホルモン名 | 分泌器官(内分泌腺) | 化学的分類(水溶性/脂溶性) |
|---|---|---|
| ① 成長ホルモン | ★脳下垂体前葉 | ペプチド(タンパク質)系【水溶性】 |
| ② バソプレシン | 脳下垂体後葉(視床下部で合成) | ペプチド系【水溶性】 |
| ③ 甲状腺刺激ホルモン | ★脳下垂体前葉 | 糖タンパク質系【水溶性】 |
| ④ グルカゴン | すい臓ランゲルハンス島A細胞 | ペプチド系【水溶性】 |
| ⑤ アドレナリン | 副腎髄質 | アミン(アミノ酸誘導体)系【水溶性】 |
| ⑥ 糖質コルチコイド | 副腎皮質 | ★ステロイドホルモン【脂溶性】 |
したがって、問2(脳下垂体前葉から分泌されるもの)は ①, ③ です。
問3 i) の解説ステロイドホルモン(コレステロールから作られる脂溶性ホルモン)は、「副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド・鉱質コルチコイド)」と「性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン・テストステロン)」の2大グループです!よって問2の選択肢の中では ⑥ 糖質コルチコイド が正解です。
問3 ii) の解説ステロイドホルモンは脂溶性(油に溶けやすい)なので、リン脂質の二重層でできた細胞膜をスッと通過できます(①・②・④は誤り)。細胞内に入ったあと、サイトゾル(細胞質基質)や核内にある受容体と結合し(③が正しい)、ホルモン-受容体複合体がDNAに結合して特定の遺伝子の転写(発現)を直接調節します(⑤が正しい)。よって正解は ③, ⑤ です。
問4・問5 フィードバック調節と脳・女性生殖器の構造解剖
問4 下線部(3)について、
i)エストロゲンがLH-RHの分泌を調節しているしくみを何とよぶか、用語で記せ。
ii)ヒトの頭部の断面を図1に表す。視床下部はどれか。図1の①〜⑦から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
問5 下線部(4)について、女性の生殖器を図2に表す。
i)卵巣はどれか。図2の①〜⑥から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
ii)通常、受精が起こるのはどこか。図2の①〜⑥から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
🧠 図1(ヒトの脳の断面)の番号対応リスト
- ① 大脳(皮質):頭蓋骨のすぐ内側を占める最大の領域
- ② 脳下垂体:視床下部のすぐ下にぶら下がる小さな袋状の器官
- ③ 視床下部(間脳):脳下垂体のすぐ根元(上側)にある自律神経・内分泌の中枢!
- ④ 間脳(視床など):大脳に包まれた中央部
- ⑤ 中脳:間脳のすぐ下、橋の上にある部分
- ⑥ 小脳:後頭部の下側にあるカリフラワー状の部位
- ⑦ 延髄(・橋):脊髄へと続く脳幹の下部
🌺 図2(女性の生殖器)の番号対応リスト
- ① 卵巣:左右に1対ある楕円形の器官(排卵が起こる場所)
- ② 輸卵管(卵管)膨大部付近:卵巣から飛び出た卵を受け止め、受精が起こる場所!
- ③ 子宮内膜:受精卵(胚盤胞)が着床する内壁
- ④ 子宮腔:子宮の内部空間
- ⑤ 子宮口(外子宮口):子宮頸管の出口
- ⑥ 腟:体外へとつながる管
問4 i)最終産物(下位のホルモンであるエストロゲン)が、上位の視床下部(LH-RH分泌)や脳下垂体前葉に逆戻りして作用し、分泌量を抑制(負)または促進(正)するしくみを フィードバック(またはフィードバック調節) とよびます(※ろ胞成熟前は「負のフィードバック」、排卵直前の高濃度時は「正のフィードバック」の両方が下線部(3)に含まれているため、「フィードバック」と答えればバッチリです!)。
問4 ii)脳下垂体(②)のすぐ根元(上)に位置する ③ が視床下部です。
問5 i)・ii)卵巣は ① です。また、排卵された二次卵母細胞が精子と出会って受精するのは子宮の中ではなく、卵巣に近い「卵管(輸卵管)膨大部」です!よって ii) は ② となります。
問6・問7 動物の組織分類と脳下垂体後葉の構造
問6 下線部(5)について、コラーゲンが最も多く含まれる組織はどれか。次の①〜④から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
① 筋組織 ② 上皮組織 ③ 結合組織 ④ 神経組織
問7 下線部(6)について、脳下垂体後葉の説明として適当なものはどれか。次の①〜⑤からすべて選び、番号で記せ。
① 前葉を経由した動脈血が流れ込む。
② 神経分泌細胞の細胞体が存在しない。
③ チロキシンの濃度低下を感知する細胞が存在する。
④ 後葉を通った血液は前葉を経由して全身へと流れていく。
⑤ 血糖値の低下を感知する細胞が存在し、インスリンの合成を促す。
問6の解説コラーゲンは細胞外マトリックスの主成分となる繊維状タンパク質で、皮膚の真皮・骨・軟骨・腱などの結合組織に最も多く含まれます。よって正解は ③ です。
問7の解説脳下垂体後葉の超重要ポイントを1つずつ吟味します!
- ①・④(誤り):視床下部から脳下垂体前葉へは「下垂体門脈」という血管がつながっていますが、後葉には下垂体門脈は通っておらず、前葉と後葉の間で血液が順番に経由するわけではありません。
- ②(正しい!):脳下垂体後葉には、視床下部にある神経分泌細胞の「軸索末端(神経終末)」が伸びてきているだけで、神経分泌細胞の「細胞体(核がある本体部分)」は視床下部の中にあります(後葉には存在しません)。これは医学部入試で大好きなお約束ひっかけポイントです!
- ③(誤り):チロキシン濃度の低下を感知するのは「視床下部」や「脳下垂体前葉」です。
- ⑤(誤り):血糖値を感知するのは視床下部やすい臓ランゲルハンス島であり、しかも血糖値低下時にはインスリンではなくグルカゴン等の分泌が促されます。
よって、問7の正解は ② のみです(「すべて選び」で1つだけが正解になるパターンに動揺しないことが大切です!)。
問8・問9・問10 胎児循環・胚葉の分化・心室中隔欠損症・胎児ヘモグロビン(HbF)
問8 下線部(7)について、
i)胎児で、酸素濃度が最も高い血液が流れるのはどこか。次の①〜⑩から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
① 右心房 ② 右心室 ③ 左心房 ④ 左心室 ⑤ 上大静脈 ⑥ 大動脈 ⑦ 臍静脈 ⑧ 臍動脈 ⑨ 肺静脈 ⑩ 肺動脈
ii)卵円孔が閉じるのは肺呼吸の開始と強く関連している。卵円孔が閉じないと、どのような不都合があるか。理由を含めて簡潔に記せ。
問9 心臓の発生について、
i)心臓と同じ胚葉に由来するものはどれか。次の①〜⑨から適当なものをすべて選び、番号で記せ。
① 脳 ② 網膜 ③ 水晶体 ④ 腎臓 ⑤ 肺の上皮 ⑥ 皮膚の真皮 ⑦ 大腸の上皮 ⑧ 骨格筋 ⑨ 小腸の平滑筋
ii)心臓の形成障害により、出生後も左心室と右心室を隔てる心室中隔に穴が開いたままになる心室中隔欠損症という疾患がある。この疾患において左心室の血圧が右心室の血圧よりも高い場合、健常者と比べて血流が増加するのはどこか。次の①〜⑤から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
① 肺 ② 脳 ③ 肝臓 ④ 腎臓 ⑤ 副腎
問10 下線部(8)について、HbAの酸素解離曲線が図3の実線のようになるとき、同じ条件下でのHbFの酸素解離曲線はどれか。図3の点線①〜⑤から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
▼ 図解:胎児循環(問8)と出生後の心室中隔欠損症(問9 ii)の血流イメージ ▼
問8 i) の解説【超重要ひっかけ注意!】血管の名前における「動脈・静脈」は、胎児の心臓から出ていく血管=動脈、胎児の心臓へ戻ってくる血管=静脈と定義されています。胎児は肺ではなく母体の胎盤で酸素を受け取るため、胎盤で酸素をたっぷり受け取って胎児の心臓へと向かう「臍静脈(さいじょうみゃく)」が、胎児の体内で最も酸素濃度が高い血管になります!(※そのあと下大静脈で下半身からの静脈血と混じるため、右心房に入る時点では少し酸素濃度が下がります)。よって正解は ⑦ 臍静脈 です。
問8 ii) の解説出生して肺呼吸が始まると、左心房には肺静脈から酸素濃度の高い動脈血が戻り、右心房には全身から酸素濃度の低い静脈血が戻ってきます。もし卵円孔が閉じないと、心房の間で血液が通り抜けてしまうため、右心房の静脈血と左心房の動脈血が混ざり合い、全身へ送り出される血液の酸素濃度が低下してしまう(十分な酸素を全身に供給できなくなる)という不都合が生じます。
問9 i) の解説心臓は中胚葉から作られます。選択肢①〜⑨の由来胚葉をすべて分類すると:
- 外胚葉由来:① 脳、② 網膜、③ 水晶体(神経系や感覚器・表皮は外胚葉!)
- 内胚葉由来:⑤ 肺の上皮、⑦ 大腸の上皮(消化管や呼吸器の「上皮」は内胚葉!)
- 中胚葉由来(心臓と同じ!):④ 腎臓(腎節由来)、⑥ 皮膚の真皮(体節由来)、⑧ 骨格筋(筋節由来)、⑨ 小腸の平滑筋(消化管の上皮は内胚葉だが、周りの筋肉=平滑筋は中胚葉!)。
よって正解は ④, ⑥, ⑧, ⑨ です。
問9 ii) の解説左心室の血圧が右心室の血圧よりも高いため、心室中隔の穴を通って「左心室 → 右心室」へと血液が流れ込みます(左右シャント)。すると、右心室内の血液量が健常者より増え、右心室から肺動脈を通って送り出される先である ① 肺 の血流が増加します(肺高血圧症などの原因になります)。
問10の解説胎児のヘモグロビン(HbF)は、胎盤を介して母体のヘモグロビン(HbA)から酸素を奪い取って受け取る必要があるため、同じ酸素濃度においてHbAよりも酸素と結合しやすい(酸素親和性が高い)という性質をもっています。したがって、グラフ(酸素解離曲線)は実線(HbA)よりも左上(低酸素濃度でも酸素ヘモグロビンの割合が高い側)にシフトし、最大値(100%)に達する曲線になります。よって正解は ① です。
第2問:染色体の構造と変異・白血病の融合遺伝子とPCR解析
第2問は、慢性骨髄性白血病などで有名な「9番染色体と22番染色体の相互転座(フィラデルフィア染色体)」をモデルにした分子生物学の応用問題だよ!
一番つまずきやすいのは問5 i) の「cDNAに対するPCRで増幅されるDNA断片の長さ」!
ここでの鉄則は2つ!① mRNAから作ったcDNAなので、イントロン(35 bpや20 bpなど)はスプライシングで完全に消えていること! ② 「1組の染色体の間で転座が起きた」ということは、もう片方の相同染色体は『正常なまま残っている』こと! この2つに気づけば、パズルのように気持ちよく解けるよ!
問1〜問4 染色体突然変異・細胞死・塩基置換の基礎知識
問1 下線部(1)「染色体の構造に変化が起こる場合」について、
i)染色体上で遺伝子が存在する位置を何とよぶか、名称を記せ。
ii)ある染色体の一部が切断され、向きが反転して再結合する変異を何とよぶか、名称を記せ。
iii)突然変異が蓄積した細胞では、細胞周期チェックポイントを通過できないなどの理由で細胞死が起こり、個体から排除される。このようなDNAの断片化を伴う細胞死を何とよぶか、名称を記せ。
問2 下線部(2)「染色体の数に変化が起こる場合」について、
i)このような変化が起こった変異細胞を特に何とよぶか、名称を記せ。
ii)i)のような変異の起こる原因の1つとして、娘細胞への染色体の分配異常がある。染色体の分配において紡錘糸が付着する染色体上の構造を何とよぶか、名称を記せ。
問3 突然変異の特徴について、適当なものはどれか。次の①〜⑤からすべて選び、番号で記せ。
① 塩基の欠失変異では常にフレームシフトが生じる。
② 放射線は塩基配列の変異だけでなく、染色体突然変異の原因にもなる。
③ 同義置換が起きても、発現するタンパク質の構造は影響を受けない。
④ 遺伝子に1塩基置換が生じると、発現するタンパク質が短くなることがある。
⑤ 突然変異によって生じる塩基配列の変化が蓄積する速さは、DNAの領域により異なる。
問4 生殖系列の細胞で生じた突然変異は次世代の個体に受け継がれることがあるが、その他の細胞で生じた突然変異は次世代に伝わらない。このような非生殖系列の細胞を総称して何とよぶか、名称を記せ。
問1
i)染色体上で遺伝子が占める位置を 遺伝子座 とよびます。
ii)染色体の構造異常4種類(欠失・重複・逆位・転座)のうち、一部が切れて180度向きが反転して再結合するものを 逆位 とよびます。
iii)プログラムされた能動的な細胞死であり、核の凝縮やDNAの断片化を伴って異常細胞を排除する現象を アポトーシス とよびます。
問2
i)染色体不分離などの分配異常によって染色体の数が1本〜数本増減した変異個体・変異細胞を 異数体(または異数性細胞/倍数体を含む広義の染色体数変異体) とよびます(問2 ii で「娘細胞への染色体の分配異常(不分離)」による数変化を特に指しているため、異数体が最も適切です)。
ii)細胞分裂時に紡錘糸(微小管)が結合する染色体くびれ部分の構造は 動原体 です。
問3選択肢①〜⑤を1つずつ判定します:
- ①(誤り):コドンは3塩基で1組なので、3の倍数の塩基が欠失した場合や、翻訳されない領域(イントロンや非翻訳領域)で欠失が起きた場合は、読み枠のズレ(フレームシフト)は生じません。「常に」が誤り!
- ②(正しい):X線や$\gamma$線などの放射線はDNA二本鎖切断を引き起こすため、塩基配列の変異だけでなく染色体の欠失・転座などの染色体突然変異の原因にもなります。
- ③(正しい):同義置換とは、コドンの塩基が変化しても縮重により「指定されるアミノ酸が変わらない置換」のことなので、合成されるタンパク質のアミノ酸配列・立体構造は影響を受けません。
- ④(正しい):1塩基置換によってアミノ酸を指定するコドンが終止コドン(UAA, UAG, UGA)に変化する「ナンセンス変異」が起きると、そこで翻訳が終了してタンパク質が短くなります。
- ⑤(正しい):生存に重要な機能をもつ遺伝子領域(エキソンなど)では自然選択により変異が排除されやすく、機能をもたない領域(イントロンや偽遺伝子など)では中立な変異が速く蓄積するため、領域によって蓄積速度は異なります。
よって問3の正解は ②, ③, ④, ⑤ です。
問4生殖細胞(および始原生殖細胞などの生殖系列)以外の、体を構成するすべての細胞を総称して 体細胞 とよびます。
問5 i) 【最重要・合否の分かれ目】転座による融合遺伝子とRT-PCR断片長計算
問5 下線部(3)について、ヒト白血病由来のある培養細胞では、1組の9番染色体と22番染色体の間で転座が起こり、9番染色体上の遺伝子Aと22番染色体上の遺伝子Bの融合遺伝子が生じていた。これらの融合遺伝子では、切断部位を境にエキソンの上流側と下流側が入れ替わっており、正常細胞と同様に遺伝子AとBのプロモーターから転写が起きていた。正常細胞における遺伝子AとBの構造の一部を図4に表す。
i)この白血病由来の培養細胞からmRNAを抽出し、二本鎖のcDNAを合成した。このcDNAに対して図4に記したプライマー(AR1, F1, BR1)すべてを同時に用いてPCRを行ったとき、どのような長さのDNA断片が増幅されるか。それらのすべてを、短いものから順に数値(bp)で記せ。
▼ 超図解:図4の読み取りと「cDNA(イントロン除去後)」でのPCR増幅領域 ▼
Step 1図4のプライマーの位置と向きを確認する:
・プライマーF1(右向き矢印 $\rightarrow$):遺伝子Bの Ex13の左端(5'端)から右向きにDNAを合成します。
・プライマーBR1(左向き矢印 $\leftarrow$):遺伝子Bの Ex14の右端(3'端)から左向きにDNAを合成します。
・プライマーAR1(左向き矢印 $\leftarrow$):遺伝子Aの Ex2の右端(3'端)から左向きにDNAを合成します。
Step 2イントロンの数値(35 bp, 20 bp, 40 bp, 80 bp)はすべてダミー(引っかけ)!
問題文に「mRNAを抽出し、二本鎖のcDNAを合成した」とあるため、転写された後にスプライシングによってイントロン部分はすべて取り除かれ、エキソン同士が直接つながっています!
Step 3この白血病細胞内に存在する4種類のmRNA(cDNA)をチェックする:
ヒトは二倍体(9番染色体が2本、22番染色体が2本)であり、そのうち「1組の9番染色体と22番染色体の間で転座が起きた」ので、もう1組の9番染色体と22番染色体は正常なまま残っています(図5の問5 ii でも使う超重要ポイントです!)。したがって、細胞内には以下の4種類のcDNAが存在します:
- 正常な遺伝子A(Ex1 - Ex2):AR1($\leftarrow$)は結合できますが、Ex1側に右向きプライマー($\rightarrow$)がないため、PCRで増幅されません。
- 正常な遺伝子B(Ex13 - Ex14 - Ex15):Ex13の左端に F1($\rightarrow$)、Ex14の右端に BR1($\leftarrow$) が結合して挟み撃ちになるため、Ex13 + Ex14 の部分がPCR増幅されます!
$$\text{増幅長①} = 100\text{ bp (Ex13)} + 75\text{ bp (Ex14)} = \mathbf{175\text{ bp}}$$ - 融合遺伝子 B→A(Ex13 - Ex2):切断部位は遺伝子BのEx13とEx14の間のイントロン、および遺伝子AのEx1とEx2の間のイントロンにあるため、スプライシング後は Ex13とEx2が連結したmRNA になります。これにはEx13の左端に F1($\rightarrow$)、Ex2の右端に AR1($\leftarrow$) が結合して挟み撃ちになるため、Ex13 + Ex2 の部分がPCR増幅されます!
$$\text{増幅長②} = 100\text{ bp (Ex13)} + 170\text{ bp (Ex2)} = \mathbf{270\text{ bp}}$$ - 融合遺伝子 A→B(Ex1 - Ex14 - Ex15):BR1($\leftarrow$)は結合できますが、Ex1側に右向きプライマー($\rightarrow$)がないため、PCRで増幅されません。
よって、増幅されるDNA断片の長さを短いものから順に並べると 175 bp, 270 bp となります!
問5 ii)・iii)・問6 蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH法)の蛍光像と選択的スプライシング
問5 ii)正常な白血球細胞に対して遺伝子Aのエキソン1を赤色蛍光色素で、遺伝子Bのエキソン15を緑色蛍光色素で標識して蛍光顕微鏡で観察したところ、$\text{G}_1$期の細胞では図5のような蛍光像が得られた。同様の実験をこの白血病由来の培養細胞に対して行った場合、$\text{G}_1$期の細胞ではどのような蛍光像が得られると予想されるか。図5にならい、解答欄の図に●と○で描け。
問5 iii)この白血病由来の培養細胞で見られた転座以外に、他の白血病の細胞では、転座により免疫グロブリン遺伝子と細胞増殖に関わる遺伝子の融合遺伝子がしばしば生じている。このような融合遺伝子が白血病を引き起こすしくみを考察し、簡潔に記せ。
問6 下線部(4)について、あるがん細胞に対してRNAシーケンシング解析を行ったところ、このがん細胞では遺伝子Cの転写産物として正常細胞とは異なるmRNAが発現していることがわかった。ところが、このがん細胞の遺伝子CのDNAの塩基配列に変異は見つからなかった。遺伝子Cのがん細胞特異的なmRNAはどのようなしくみで生じたと考えられるか、用語で記せ。
▼ 図解:問5 ii) FISH法による核内の蛍光シグナル(●=Ex1赤色、○=Ex15緑色) ▼
問5 ii) の解説遺伝子Aのエキソン1(●:赤色)と、遺伝子Bのエキソン15(○:緑色)は、転座が起きると「遺伝子A上流(Ex1)+遺伝子B下流(Ex14-Ex15)」という1本の融合染色体上でごく近くに連結します!(※なお、もう片方の「Ex13+Ex2」の融合染色体にはEx1もEx15も含まれません)。そして、転座を起こしていない正常な9番染色体(●が1個)と正常な22番染色体(○が1個)も残っているため、解答欄の5つの細胞すべての核(内側の円)の中に、互いに接するほど近接した「●と○のペア」を1組と、離れた場所にある単独の「●」1個、単独の「○」1個(合計●2個、○2個)を描けば満点です!
問5 iii) の解説白血球(特にB細胞などのリンパ球)では、抗体をつくるために免疫グロブリン遺伝子の転写(発現)が常時非常に活発に行われています。転座によって免疫グロブリン遺伝子(のプロモーターやエンハンサーなどの転写調節領域)の下流に「細胞増殖に関わる遺伝子(がん原遺伝子)」が連結されると、免疫グロブリン遺伝子の強力な転写促進作用によって細胞増殖に関わる遺伝子が過剰(恒常的)に発現し、白血球が無秩序に増殖するようになるから。
問6の解説DNAの塩基配列そのものに変異がないにもかかわらず、1つの遺伝子(mRNA前駆体)からスプライシングのされ方(どのエキソンを残してつなぎ合わせるか)が変わることで異なるmRNAが生じるしくみを 選択的スプライシング とよびます。
第3問:酵素の反応速度論(ミカエリス・メンテン式)と血糖調節酵素
最後の大問3は、医学部受験生なら絶対にマスターしておきたい「ミカエリス・メンテン式(式1)とその両辺逆数式(式2)」、そして「ヘキソキナーゼとグルコキナーゼの $K_{\text{m}}$ 値の違いによる血糖調節」だよ!
特に問2 ii) の「生成物量と反応時間のグラフ」は、図10から「基質濃度 $5\text{ mmol/L}$ で既に最大反応速度 $V_{\text{max}}$ に達している!」と読み取れるかどうかが勝負!そして問5 ii) の血糖値の単位換算($\text{mg/100mL} \rightarrow \text{mmol/L}$)まで、1ステップずつ丁寧に計算していこう!
【リード文で与えられた2つの基本式】
問1・問2 活性化エネルギーの作図と、反応時間-生成物量グラフの読み取り
問1 下線部(1)について、過酸化水素($\text{H}_2\text{O}_2$)が水と酸素に分解される反応のエネルギー変化のグラフを図8に表す。カタラーゼが存在したときの反応のエネルギー変化はどのような曲線または直線で表すことができるか、解答欄の図に描け。
問2 下線部(2)について、
i)図6のように、基質濃度が高くなるほど反応速度の上昇がゆるやかになるのはどうしてか、簡潔に記せ。
ii)適切な温度とpH条件で、ある酵素の濃度を一定にした反応液に、その酵素の基質Aを $5\text{ mmol/L}$ になるように加えて反応を行ったところ、反応時間と生成物Bの量との関係は図9の実線のようになった。また、酵素の濃度はそのままで基質の濃度をさまざまに変えて反応速度を調べたところ、図10のグラフが得られた。次のア)もしくはイ)の条件で反応を行ったとすると、反応時間と生成物Bの量の関係は、それぞれどのように変化すると予想されるか。図9の点線①〜⑤から最も適当なものを1つずつ選び、番号で記せ。
ア)基質Aの濃度はそのままで、酵素の濃度を $1/2$ にした。
イ)酵素の濃度はそのままで、基質Aの濃度を $8\text{ mmol/L}$ にした。
▼ 【問1】図8:カタラーゼ添加時のエネルギー曲線 ▼
📊 【問2 ii】図9と図10の連動チェック!
● 元の条件(図9の実線):
基質A $= 5\text{ mmol/L}$ でスタートし、約 $5.0$ 分で基質Aをすべて使い切って、最終的な生成物Bの量 $= \mathbf{1.0}$ で頭打ちになっています。
● 図10からわかる決定的事実:
基質Aの濃度が $5\text{ mmol/L}$ 以上では、反応速度 $v$ は $\mathbf{1.00}$(最大反応速度 $V_{\text{max}}$)で完全に横ばい(一定)です!
👉 だから、基質を $8\text{ mmol/L}$ に増やしても「最初の反応速度(図9の立ち上がりの傾き)」は実線とまったく同じ!
問1の解説酵素(カタラーゼ)は、化学反応の活性化エネルギー(山のピークまでの高さ)を低くするだけで、反応物質($2\text{H}_2\text{O}_2$)がもつエネルギーや生成物($2\text{H}_2\text{O}+\text{O}_2$)がもつエネルギー(反応熱)は変化させません。したがって、反応物質の平坦な線の右端から始まり、元の山よりも低いピーク(ただし反応物質よりは高い山)を通って、反応生成物の平坦な線の左端へとつながる滑らかな曲線を描きます。
問2 i) の解説酵素の量が一定であるため、基質濃度が高くなるにつれて基質と結合していない遊離の酵素が減少し、やがてすべての酵素が基質と結合して酵素-基質複合体を形成する(酵素が基質で飽和する)ようになるから。
問2 ii) アの解説「基質Aの濃度はそのまま($5\text{ mmol/L}$)で、酵素の濃度を $1/2$ にした」場合:
・初期の反応速度(グラフの立ち上がりの傾き):酵素濃度が半分になるので、反応速度も半分(ゆるやか)になります。
・最終的な生成物Bの量(プラトーの高さ):材料である基質Aの量($5\text{ mmol/L}$)は変わっていないので、時間は約2倍($10.0$ 分)かかりますが、最終的にできる生成物Bの総量は実線と同じ $1.0$ になります!
よって、傾きが半分で最終的に高さ $1.0$ に到達する ④ が正解です。
問2 ii) イの解説「酵素の濃度はそのままで、基質Aの濃度を $8\text{ mmol/L}$ にした」場合:
・初期の反応速度(グラフの立ち上がりの傾き):図10を見ると、基質濃度 $5\text{ mmol/L}$ のとき反応速度 $v = 1.00$ であり、基質濃度 $8\text{ mmol/L}$ のときも反応速度 $v = 1.00$ でまったく同じ(すでに $V_{\text{max}}$ に達している)です!したがって、反応開始からしばらくの間は実線とぴったり重なる同じ傾きで生成物Bが増えていきます。
・最終的な生成物Bの量(プラトーの高さ):基質Aの量が $5\text{ mmol/L} \rightarrow 8\text{ mmol/L}$ へと $\frac{8}{5} = \mathbf{1.6\text{ 倍}}$ に増えたので、最終的にできる生成物Bの量も $1.0 \times 1.6 = \mathbf{1.6}$ になります!
よって、最初は実線と同じ傾きで立ち上がり、最終的に高さ $1.6$ に達する ① が正解です。
問3・問4 ミカエリス定数 $K_{\text{m}}$ の意味と、表1からの $K_{\text{m}}, V_{\text{max}}$ 算出・阻害様式の判定
問3 下線部(3)について、$K_{\text{m}}$ の記述として適当なものはどれか。次の①〜⑦からすべて選び、番号で記せ。
① 値が小さいほど酵素は基質と結合しやすい。 ② 値が大きいほど酵素は基質と結合しやすい。 ③ $V_{\text{max}}$ と比例する。 ④ $V_{\text{max}}$ と反比例する。 ⑤ 反応速度が $V_{\text{max}}$ のときの基質濃度にあたる。 ⑥ 反応速度が $V_{\text{max}}$ の $1/2$ のときの基質濃度にあたる。 ⑦ 反応速度が $V_{\text{max}}$ の $1/4$ のときの基質濃度にあたる。
問4 i)図11の実線(阻害物質なし)に対し、ア)競争的阻害物質を加えたとき、イ)非競争的阻害物質を加えたときのグラフはどれか。点線①〜④からそれぞれに該当するものをすべて選び、番号で記せ。
問4 ii)表1の結果について、
ア)阻害物質を加えない場合について、この酵素の $K_{\text{m}}$ と $V_{\text{max}}$ の値をそれぞれ求めよ。数値は四捨五入して小数第1位まで記せ。
イ)使用した阻害物質はどれか。次の①〜③から最も適当なものを1つ選び、番号で記せ。
① 競争的阻害物質 ② 非競争的阻害物質 ③ どちらでもない
問3の解説ミカエリス・メンテン式 $v = \dfrac{V_{\text{max}}[\text{S}]}{K_{\text{m}} + [\text{S}]}$ において、反応速度 $v = \dfrac{1}{2}V_{\text{max}}$ を代入すると:
$$\frac{1}{2}V_{\text{max}} = \frac{V_{\text{max}}[\text{S}]}{K_{\text{m}} + [\text{S}]} \iff K_{\text{m}} + [\text{S}] = 2[\text{S}] \iff \mathbf{K_{\text{m}} = [\text{S}]}$$つまり、$K_{\text{m}}$ とは「反応速度が最大反応速度 $V_{\text{max}}$ の $1/2$ に達するときの基質濃度 $[\text{S}]$」のことです(⑥が正しい)。そして、少ない基質濃度で素早く $\frac{1}{2}V_{\text{max}}$ に達する(=$K_{\text{m}}$ の値が小さい)ほど、その酵素は基質と結合しやすい(親和性が高い)ことを意味します(①が正しい)。なお、$K_{\text{m}}$ は酵素と基質の組み合わせで決まる固有の定数であり、酵素量によって変わる $V_{\text{max}}$ とは無関係です(③・④は誤り)。よって正解は ①, ⑥ です。
問4 i) の解説
・ア)競争的阻害物質:活性部位を巡って基質と競争するため、基質濃度が低いときは反応速度が下がりますが、基質濃度を十分に高くすると阻害が打ち消されて元の最大反応速度 $V_{\text{max}}$ に追いつきます(見かけの $K_{\text{m}}$ が大きくなり、$V_{\text{max}}$ は不変)。図11で実線の下側を通って右端で実線の $V_{\text{max}}$ に合流しているのは ② です。
・イ)非競争的阻害物質:活性部位とは別の部位(アロステリック部位など)に結合して酵素の働きを止めるため、基質濃度をいくら高くしても阻害は解除されず、最大反応速度 $V_{\text{max}}$ そのものが低下します(阻害物質の添加量に応じて低下幅が変わる)。図11で $V_{\text{max}}$ が実線より低くなっている曲線は③と④の両方なので、「すべて選び」に注意して ③, ④ が正解です!
問4 ii) ア・イの完全計算ステップ表1の数値を使って、式2 $\dfrac{1}{v} = \left(\dfrac{K_{\text{m}}}{V_{\text{max}}}\right)\dfrac{1}{[\text{S}]} + \dfrac{1}{V_{\text{max}}}$ に代入して連立方程式を解きます!
🔢 【ア:阻害物質なし】の計算プロセス
表1の「阻害物質なし」から計算しやすい2行を選びます:
・1行目:$\dfrac{1}{[\text{S}]} = 0.20$ のとき、$\dfrac{1}{v} = 0.30$
・2行目:$\dfrac{1}{[\text{S}]} = 0.40$ のとき、$\dfrac{1}{v} = 0.40$
これを一次関数 $Y = aX + b$(ただし $Y = \dfrac{1}{v},\ X = \dfrac{1}{[\text{S}]},\ a = \dfrac{K_{\text{m}}}{V_{\text{max}}},\ b = \dfrac{1}{V_{\text{max}}}$)に代入すると:
$$\begin{cases} 0.30 = 0.20a + b \quad\cdots(1) \\ 0.40 = 0.40a + b \quad\cdots(2) \end{cases}$$$(2) - (1)$ より、$0.10 = 0.20a \implies \mathbf{a = \dfrac{K_{\text{m}}}{V_{\text{max}}} = 0.50}$
これを $(1)$ に代入すると、$0.30 = 0.20 \times 0.50 + b = 0.10 + b \implies \mathbf{b = \dfrac{1}{V_{\text{max}}} = 0.20}$
(念のため3行目 $\dfrac{1}{[\text{S}]} = 0.80$ でも確認すると、$\dfrac{1}{v} = 0.50 \times 0.80 + 0.20 = 0.60$ となり表1と完全一致!)
したがって:
$$V_{\text{max}} = \frac{1}{0.20} = \mathbf{5.0\text{ mmol/(L}\cdot\text{分)}}$$ $$K_{\text{m}} = a \times V_{\text{max}} = 0.50 \times 5.0 = \mathbf{2.5\text{ mmol/L}}$$💡 ニックニ先生の秒殺ワザ:実は $V_{\text{max}} = 5.0$ がわかった瞬間、表1の2行目に「$v = 2.50$(ちょうど $V_{\text{max}}$ の半分!)」があるから、そのときの基質濃度 $[\text{S}] = 2.50\text{ mmol/L}$ がそのまま $K_{\text{m}} = 2.5\text{ mmol/L}$ だと1秒でわかるよ!
🔢 【イ:阻害物質あり】の計算プロセス
表1の「阻害物質あり」の列を見ると、すべての基質濃度において $\dfrac{1}{v}$ の値が「阻害物質なし」のちょうど $1.5$ 倍($0.30 \rightarrow 0.45,\ 0.40 \rightarrow 0.60,\ 0.60 \rightarrow 0.90$)になっています!
実際に直線の式を求めると:
これより、切片 $\dfrac{1}{V'_{\text{max}}} = 0.30 \implies V'_{\text{max}} = \dfrac{1}{0.30} \fallingdotseq 3.33\text{ mmol/(L}\cdot\text{分)}$ となり、最大反応速度 $V_{\text{max}}$ が低下しています。
一方、ミカエリス定数 $K'_{\text{m}}$ は、$\dfrac{K'_{\text{m}}}{V'_{\text{max}}} = 0.75$ より:
つまり、「$K_{\text{m}}$($2.5\text{ mmol/L}$)は全く変化せず、$V_{\text{max}}$ だけが低下した」ので、この阻害物質は間違いなく ② 非競争的阻害物質 です!
問5 ヘキソキナーゼとグルコキナーゼによるグルコース取り込みと血糖調節
問5 下線部(5)について、
i)ヘキソキナーゼやグルコキナーゼがはたらくと、グルコース輸送体(GLUT)を介した受動輸送によって細胞内へのグルコースの取り込みが増大する。その理由を簡潔に記せ。
ii)グルコースを基質とした場合、ヘキソキナーゼの $K_{\text{m}}$ は $0.1\text{ mmol/L}$ 以下であり、グルコキナーゼの $K_{\text{m}}$ は $5\text{ mmol/L}$ 程度である。また、グルコキナーゼの $V_{\text{max}}$ はヘキソキナーゼの $V_{\text{max}}$ より大きい。ヘキソキナーゼとグルコキナーゼの反応速度は空腹時と比べて食後はどのように変化すると考えられるか。次の①〜③から最も適当なものをそれぞれ1つずつ選び、番号で記せ。ただし、空腹時の血糖値を $90\text{ mg/100mL}$、食後の血糖値を $140\text{ mg/100mL}$、グルコースの分子量を $180$ とする。
① 遅くなる ② ほぼ変化なし ③ 速くなる
▼ 図解:空腹時(5.0 mmol/L)→ 食後(7.8 mmol/L)での2つの酵素の働き方の違い ▼
問5 i) の解説グルコース輸送体(GLUT)による受動輸送(促進拡散)は、「細胞外のグルコース濃度 > 細胞内のグルコース濃度」という濃度勾配(濃度差)に従って高濃度側から低濃度側へとグルコースを運びます。細胞内に入ったグルコースがヘキソキナーゼやグルコキナーゼによって速やかに別の物質(グルコース6-リン酸)に変換されると、細胞内の「グルコースそのもの」の濃度が常に低く保たれる(細胞内外の濃度勾配が維持される)ため、受動輸送による取り込みが増大し続けます!
解答例:取り込まれたグルコースが速やかにグルコース6-リン酸に変換されることで細胞内のグルコース濃度が低く保たれ、細胞内外のグルコースの濃度勾配が維持されるから。
問5 ii) の解説【Step 1:血糖値($\text{mg/100mL}$)をモル濃度($\text{mmol/L}$)に単位換算する!】
$100\text{ mL} = 0.1\text{ L}$ なので、$1\text{ L}$($= 1000\text{ mL}$)あたりの質量($\text{mg/L}$)にするには $10$ 倍します。
- 空腹時の血糖値:$90\text{ mg/100mL} = 900\text{ mg/L}$。グルコースの分子量は $180$(つまり $1\text{ mmol} = 180\text{ mg}$)なので、
$$[\text{S}]_{\text{空腹時}} = \frac{900\text{ mg/L}}{180\text{ mg/mmol}} = \mathbf{5.0\text{ mmol/L}}$$ - 食後の血糖値:$140\text{ mg/100mL} = 1400\text{ mg/L}$。同様に分子量 $180$ で割ると、
$$[\text{S}]_{\text{食後}} = \frac{1400\text{ mg/L}}{180\text{ mg/mmol}} \fallingdotseq \mathbf{7.8\text{ mmol/L}}$$
【Step 2:それぞれの酵素の $K_{\text{m}}$ と比較して反応速度の変化を判定する!】
- ヘキソキナーゼ($K_{\text{m}} \leqq 0.1\text{ mmol/L}$):
空腹時の血糖値($5.0\text{ mmol/L}$)の時点で、すでに $K_{\text{m}}$($0.1\text{ mmol/L}$)の $50$ 倍以上という超高濃度にあるため、空腹時の段階でほぼ最大反応速度 $V_{\text{max}}$ に達して飽和しています(式1に代入しても $v = \frac{5.0}{0.1 + 5.0}V_{\text{max}} \fallingdotseq 0.98 V_{\text{max}}$)。したがって、食後に $7.8\text{ mmol/L}$ になっても反応速度は ② ほぼ変化なし です(全身の細胞が常に一定速度でエネルギーを得るのに適しています)。 - グルコキナーゼ($K_{\text{m}} \fallingdotseq 5\text{ mmol/L}$):
空腹時の血糖値($5.0\text{ mmol/L}$)がちょうど $K_{\text{m}}$($5\text{ mmol/L}$)と同じ値なので、空腹時の反応速度は $\frac{1}{2}V_{\text{max}}$(最大速度の半分)です。ここから食後に血糖値が $7.8\text{ mmol/L}$ に上昇すると、まだ飽和していないため基質濃度の上昇に伴って反応速度が明確に上昇します!したがって、食後は ③ 速くなる が正解です(食後に高くなった血糖を肝臓で素早く取り込んでグリコーゲンとして蓄えたり、すい臓B細胞が血糖上昇を感知してインスリンを分泌したりするセンサーとして絶妙に機能しています!)。
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【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(藤田医科大学 2025年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。