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慶應義塾大学 医学部 生物(2025年度)全問題・超図解解説

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理系担当 Sora先生
赤本キラー!途中式・図解100%網羅 Sora先生 ✕ ニックニ先生 徹底解説

「これより〜となる」の省略はゼロ!慶應義塾大学(2025年度)生物をSora先生が完全解剖

こんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生です。市販の過去問集(赤本など)で途中の式変形や思考プロセスが1行で飛ばされて悩んでいませんか?
このページでは、慶應義塾大学(2025年度)の生物について、中学生でも追える1ステップずつの途中式と解法プロセスをすべて公開しています!

Sora先生
💡 Sora先生 & ニックニ先生の全体総括

こんにちは、TMPS医学館のSora先生です!指導統括のニックニ先生と一緒に、2025年度の慶應義塾大学・医学部の生物を完全解剖していくよ!
今年の慶應医の生物は大問3題構成。大問Iは「細胞結合・シアノバクテリアの窒素固定と細胞間物質輸送(FRAP法)」、大問IIは「免疫・ABO式血液型の糖転移酵素の遺伝子変異と酵素反応速度論($K_{\text{m}}$ と $k_{\text{cat}}$)」、大問IIIは「細胞骨格・植物の原形質流動と高速/低速キメラミオシンの実験考察」というラインナップでした。
慶應医らしい「初見の実験データ(グラフや表)をその場で正確に読み解き、論理的に言語化する力」が試されていますが、基礎知識で確実に取れる問題もたくさんあります。どのステップも省略せず、中学生でも100%わかるレベルで解説するので、一緒に完全マスターしよう!

⚡ SPEED CHECK

全大問・最終解答一覧(スピードチェック)

大問 I :細胞接着・シアノバクテリアの窒素固定と多細胞化

問1 ア:カドヘリン / イ:デスモソーム(接着斑) / ウ:インテグリン
問2 (問2-1):ネンジュモは核膜をもたない原核生物(細菌ドメイン・シアノバクテリア)であるのに対し、キクラゲは核膜をもつ真核生物(真核生物ドメイン・菌界)である点。
(問2-2):(a) ⑤(大腸菌) / (b) ①(酵母) / (c) ③(ヒドラ)
問3 光化学系IIでは水の分解により酸素が発生するが、光化学系IIを欠くことで酸素の発生を防ぎ、酸素によって失活しやすいニトロゲナーゼの活性を維持したまま、光化学系I(循環的電子伝達)で窒素固定に必要なATPを合成できるという利点。
問4 エ:アンモニア(またはアンモニウムイオン)
問5 隣接する細胞どうしは隔壁にある微細管を通して蛍光分子Xのような低分子物質を交換している。栄養細胞どうしの物質交換速度に比べ、異型細胞と栄養細胞の間の交換速度は遅い。また、微細管構成タンパク質を欠損させると微細管数が激減し、細胞間の物質移動(蛍光回復)がほぼ起こらなくなることから、物質交換は主にこの微細管を介して行われている。
問6 時刻0秒で蛍光強度1からスタートし、図3の曲線cと上下対称(時定数が同じ)な緩やかな曲線を描いて減少し、50秒付近で0(または0よりわずかに大きい値)に漸近する実線。(※詳細は本文のSVGグラフ参照)
問7 ギャップ結合
問8 概日リズム(サーカディアンリズム)
問9 ユレモでは同一細胞内で時間をずらして光合成と窒素固定の両方を行うため、細胞間で糖や窒素化合物をやり取りする必要がなく、細胞どうしをつなぐ微細管(物質輸送経路)が存在しない(または閉鎖されている)から。
問10 (1):(d)(カイメン) / (2):(f)(エリベンモウチュウ)

大問 II :獲得免疫・ABO式血液型の遺伝子配列と酵素反応速度論

問1 ア:樹状細胞 / イ:リンパ節(脾臓などの二次リンパ器官) / ウ:MHC(主要組織適合遺伝子複合体/MHCクラスII/HLA) / エ:ヘルパーT細胞 / オ:形質細胞
問2 利根川進(利根川 進)
問3 B型やO型の血清中に含まれる抗A抗体(5量体のIgM抗体)が、複数のA型赤血球表面のA型糖鎖(抗原)と同時に結合して赤血球どうしを架橋するため。(※重鎖・軽鎖を区別した5量体IgMと類円形赤血球の結合図を)
問4 A型遺伝子とB型遺伝子では4か所のコドンの塩基配列が異なり、それに伴い翻訳される4か所のアミノ酸が置換される(176番目:Arg→Gly、235番目:Gly→Ser、266番目:Leu→Met、268番目:Gly→Ala)。このアミノ酸配列の違いによってタンパク質の立体構造(基質結合部位の構造)が変化し、GalNAcとGalを見分ける基質特異性の違いが生じている。
問5 O型遺伝子では261番目のG(グアニン)が一塩基欠失しているため、それ以降のコドンの読み枠が1塩基分ずれるフレームシフトが生じる。その結果、352〜354番目の塩基が終止コドン(TGA→mRNAではUGA)となり、翻訳が途中で終了して正常より短い不完全なタンパク質しか合成されないため、糖転移酵素活性を持たない。
問6 カ:高い
問7-1 A型タンパク質はGalNAcとGalの双方に対して高い親和性(小さい $K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$)を示すが、酵素1分子当たりの反応回転数 $k_{\text{cat}}$ がGalNAc($4.9\text{ s}^{-1}$)ではGal($0.020\text{ s}^{-1}$)の約245倍と圧倒的に高いため、GalNAcを選択的に転移して特異的にA型糖鎖を生成する。
問7-2 B型タンパク質はGalNAcに比べてGalに対する親和性が高く($K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$ が約5〜8分の1と小さい)、さらに $k_{\text{cat}}$ もGal($6.5\text{ s}^{-1}$)の方がGalNAc($0.3\text{ s}^{-1}$)の約22倍と高いため、親和性と反応速度の両面でGalとの反応が優位となり、特異的にB型糖鎖を生成する。

大問 III :細胞骨格・原形質流動とキメラミオシンの機能解析

問1 ア:細胞壁 / イ:アクチン / ウ:ATP(アデノシン三リン酸) / エ:小胞体
問2 ③(ボルボックス:多細胞の細胞群体)
問3 ②(白血球)、⑤(がん細胞)
問4 モータータンパク質
問5 どうなるか:原形質流動は停止する(低下する)。
理由:サイトカラシンによりアクチンの重合が阻害されてアクチンフィラメントが脱重合(消失)し、ミオシンが運動するためのレール(足場)が失われるため。
問6 細胞内に本来の(内在性の)野生型ミオシンが存在するとその働きが混ざってしまうため、内在性ミオシンの影響を排除し、導入した速度改変型ミオシン単独による純粋な影響(効果)を正確に評価するため。
問7 葉の総数や1葉あたりの細胞数は変化しないが、ミオシンの運動速度(原形質流動の速度)の変化に伴って個々の細胞の長さ(および面積)が変化し、それによって葉の面積や草丈などの植物体全体の大きさが変化することに由来する。
問8 大きくする方法:高速型ミオシンで個々の細胞を肥大させるのではなく、ミオシンの速度を抑えて個々の細胞を小さく保ったまま、細胞分裂によって細胞数を増やすことで植物体を大きくする方法。
利点:浮力のない陸上では重力や風雨に対して自身の体を支える必要があるが、細胞を小さく数多くして細胞壁の密度を高めることで、植物体の機械的強度(支持力)を高めつつ、ATPの過剰な消費も抑えられるという利点がある。

大問 I :細胞接着・シアノバクテリアの窒素固定と多細胞化

配点目安:約35点
Sora先生
💡 Sora先生の1秒核心スキャン

大問Iは、動物細胞の接着装置の基本からスタートし、シアノバクテリアであるネンジュモ(イシクラゲ)とユレモを比較しながら、「光合成(酸素発生)と窒素固定(酸素に弱い!)をどうやって両立させるか?」「細胞どうしでどうやって栄養をやり取りしているか?」を掘り下げる良問だよ!
合否の分かれ目は問5と問6! 蛍光退色後回復法(FRAP法)の実験グラフ(図3〜図5)から、栄養細胞と異型細胞の間の物質移動を読み取り、問6で「異型細胞以外のすべてをレーザー退色させたときの異型細胞の蛍光変化」を正しくグラフに描けるかどうかが勝負どころです。1ステップずつ図解で見ていこう!

【問題文 I (A) および 問1〜問3】

(A) 多細胞生物のからだでは,細胞どうしが結合したり,細胞が分泌した細胞外基質を利用して結合したりしている。動物の細胞では,そのような結合のために,さまざまな接着タンパク質や細胞骨格の分子が働いている。$\text{Ca}^{2+}$ を必要とする細胞間接着タンパク質として [ ア ] が組織特異的に存在し,同じ種類の [ ア ] を持つ細胞どうしが結合する。[ ア ] が細胞膜内側の円盤状の構造と結合し,さらに細胞内の中間径フィラメントと結びついて,細胞どうしをつなぐ構造は [ イ ] とよばれる。細胞と細胞外基質の間では,[ ウ ] とよばれる接着タンパク質が重要な働きをしている。
微生物は単細胞生物という一般的イメージがあるが,実際には他の生物と密接に関係を持つものや,同種の細胞どうしが結合して生活するものも多い。光合成を行うシアノバクテリアの仲間にも,細胞どうしが結合するものが知られている。
地面などで見られる (1) イシクラゲとよばれる生物は,見かけはキクラゲに似ており食用にされることもあるが,キクラゲとは全く異なる生物で,シアノバクテリア類のネンジュモ(図1)の集合体である。この生物は,光合成を行う細胞(栄養細胞)が多数結合して繊維状の構造となる。ネンジュモの仲間(以下,ネンジュモと総称する)では,環境中の窒素栄養が不足すると,繊維内の所々にやや大型の異型細胞が生じ,そこで窒素固定が行われる。窒素固定を行う酵素であるニトロゲナーゼの活性は酸素により失われるため,(2) 異型細胞は栄養細胞とは大きく異なった性質を持つように分化している。

問1 文中の [ ア ] 〜 [ ウ ] に適切な語を入れよ。

問2 下線部(1)に関連し,ネンジュモとキクラゲの根本的な違いを説明し(問2-1),また,(a) ネンジュモ,(b) キクラゲ,(c) ミズクラゲともっとも系統的に近いものを,それぞれ1つずつ下の選択肢から選んで数字で答えよ(問2-2)。
①酵母 ②ショウジョウバエ ③ヒドラ ④マウス ⑤大腸菌 ⑥オオカナダモ ⑦ミドリムシ

問3 下線部(2)に関連し,異型細胞では光化学系IIを欠くことが知られている。その状態にどんな利点があるかを考え,説明せよ。

問1動物細胞の細胞間結合・細胞−基質間結合

動物細胞の結合様式と関与するタンパク質・細胞骨格の対応を整理しましょう。

結合の種類 膜貫通接着タンパク質 結合する細胞骨格 特徴
接着結合 / デスモソーム(イ) カドヘリン(ア) アクチンフィラメント(接着結合)
中間径フィラメント(デスモソーム)
$\text{Ca}^{2+}$ 依存的に同種どうしが結合。デスモソームは円盤状の付着斑をもつ。
細胞−基質間接着(ヘミデスモソーム等) インテグリン(ウ) アクチンフィラメント / 中間径フィラメント 細胞と細胞外基質(コラーゲン・フィブロネクチン等)を結合。

【問1 最終解答】

ア:カドヘリン / イ:デスモソーム(接着斑) / ウ:インテグリン

問2ネンジュモ・キクラゲ・ミズクラゲの分類と系統

【ステップ1:問2-1(ネンジュモとキクラゲの根本的な違い)】
名前にどちらも「クラゲ」とつきますが、生物のドメイン(および界)レベルで根本的に異なります。
・ネンジュモ(イシクラゲ):シアノバクテリア(ラン藻)の仲間であり、核膜や膜系細胞小器官をもたない原核生物(細菌ドメイン)で、光合成を行う独立栄養生物です。
・キクラゲ:キノコ(担子菌類)の仲間であり、明確な核膜やミトコンドリアなどの細胞小器官をもつ真核生物(真核生物ドメイン・菌界)で、有機物を吸収する従属栄養生物です。
この「原核生物か真核生物か(核膜の有無)」を軸に答えるのが最も本質的です。

【ステップ2:問2-2(系統的に最も近い生物の選択)】
選択肢①〜⑦の分類を確認しましょう:
・① 酵母:菌界(子のう菌類)
・② ショウジョウバエ:動物界・節足動物門(旧口動物)
・③ ヒドラ:動物界・刺胞動物門
・④ マウス:動物界・脊索動物門(新口動物)
・⑤ 大腸菌:真正細菌(原核生物)
・⑥ オオカナダモ:植物界(被子植物)
・⑦ ミドリムシ:原生生物(エクスカバータ)

したがって、
・(a) ネンジュモ(原核生物・真正細菌)に最も近いもの = ⑤ 大腸菌
・(b) キクラゲ(菌界)に最も近いもの = ① 酵母
・(c) ミズクラゲ(動物界・刺胞動物門)に最も近いもの = 同じ刺胞動物門である ③ ヒドラ

【問2 最終解答】

問2-1:ネンジュモは核膜をもたない原核生物(シアノバクテリア)であるのに対し、キクラゲは核膜をもつ真核生物(菌類)である点。(※加えて、前者は光合成を行う独立栄養生物、後者は従属栄養生物である点に触れてもよい)
問2-2:(a) ⑤ / (b) ① / (c) ③

問3異型細胞が光化学系IIを欠く利点

【思考プロセス】
1. リード文より、異型細胞で行われる窒素固定の酵素ニトロゲナーゼは酸素($\text{O}_2$)によって活性が失われる(失活する)という弱点があります。
2. 通常の光合成(栄養細胞)では、チラコイド膜の光化学系IIにおいて水の分解($2\text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{O}_2 + 4\text{H}^+ + 4\text{e}^-$)が起こり、酸素($\text{O}_2$)が発生します。
3. したがって、異型細胞が光化学系IIを欠くことで、細胞内での酸素の発生を防ぎ、ニトロゲナーゼの失活を防ぐことができます。
4. さらに一歩深く考えると、「光化学系Iは残っている」ので、光化学系Iによる循環的電子伝達(循環的光リン酸化)によって、酸素を発生させずに窒素固定に大量に必要となるATPを合成できるという大きな利点もあります!

【問3 最終解答】

光化学系IIでは水の分解に伴って酸素が発生するため、光化学系IIを欠くことで細胞内での酸素の発生を防ぎ、酸素に弱いニトロゲナーゼが失活するのを防ぐことができる(さらに光化学系Iの循環的電子伝達により窒素固定に必要なATPを供給できる)という利点。

【問題文 I (B) および 問4〜問7】

(B) ネンジュモでは,窒素栄養の無い環境において,異型細胞が空気中の窒素を体内に取り入れ,これを還元して [ エ ] に変え,それが窒素同化のために使われる。窒素と同時に流入するはずの酸素は,おそらく窒素固定の際に生じる水素の酸化や,呼吸基質の酸化によって消費され,ニトロゲナーゼを阻害しない程度に制御されていると考えられる。ところで,異型細胞の細胞壁の外側には厚い被膜があり,空気が容易に侵入できないようになっている。それでは,異型細胞はどのようにして窒素や糖を得ているのだろうか。また栄養細胞はどのようにして窒素栄養を得るのだろうか。
ネンジュモの細胞中に実験的に小さな蛍光分子Xを取り込ませて,繊維全体を蛍光標識することができる。蛍光標識したネンジュモ繊維の中の1つの細胞に,強いレーザー光線を1〜2秒間照射すると,その細胞内のXは蛍光が失われ褪色する(図2:a 単細胞のネンジュモに照射;b 1つの栄養細胞に照射;c 異型細胞に照射;d 異型細胞以外のすべての細胞に照射)。レーザー照射後の各細胞の蛍光強度を測定した結果が図3である。ネンジュモ細胞間の隔壁には,(3) 細胞どうしをつなぐ微細管状構造があり,それを構成するタンパク質をノックアウトした変異体の微細構造の観察や,変異体への図2bと同様のレーザー照射実験の結果を,それぞれ図4(栄養細胞間の微細管数:野生型 約78個/隔壁、変異体 約10個/隔壁)と図5(照射細胞の蛍光回復速度:野生型 1、変異体 約0.05)に示す。

問4 空欄 [ エ ] にふさわしい分子名を入れよ。

問5 ネンジュモの栄養細胞どうし,あるいは異型細胞と栄養細胞の間での物質交換について,図3〜図5から読み取れることを説明せよ。

問6 末端に異型細胞がある短いネンジュモ繊維(図2d)で,異型細胞以外のすべての栄養細胞をレーザー照射した場合,異型細胞の蛍光強度はどのようになるか予想して,解答欄の図3と同様なグラフ中に実線で描け。

問7 下線部(3)と似た構造が動物の細胞間でも知られている。その名称を答えよ。

問4窒素固定で生成される分子

窒素固定の反応式は $\text{N}_2 + 8\text{H}^+ + 8\text{e}^- + 16\text{ATP} \rightarrow 2\text{NH}_3 + \text{H}_2 + 16\text{ADP} + 16\text{P}_{\text{i}}$ です。空気中の窒素($\text{N}_2$)は還元されてアンモニア($\text{NH}_3$)(生体内ではアンモニウムイオン $\text{NH}_4^+$)に変えられ、グルタミン酸からグルタミンを合成する反応(GS-GOGAT系)などによって窒素同化に使われます。「分子名」を問われているため「アンモニア」が最適です。

【問4 最終解答】

エ:アンモニア

問5図3〜図5(FRAP実験とノックアウト実験)の読み取り

図3・図4・図5それぞれの実験データが何を意味しているかを1つずつ分解して言語化しましょう!

  • 図3の「a(単細胞)」と「b(栄養細胞)」「c(異型細胞)」の比較:
    単細胞(a)ではレーザー照射で褪色した後、蛍光強度は0のまま回復しない(一度消えた蛍光分子X自体は自己回復しない)。一方、多細胞繊維の中の栄養細胞(b)や異型細胞(c)では、レーザー照射後に蛍光強度が1近くまで回復している。これは、隣接する未照射の細胞から蛍光分子X(低分子物質)が流入し、褪色した分子と交換(拡散移動)していることを示す。
  • 図3の「b(1つの栄養細胞に照射)」と「c(異型細胞に照射)」の比較:
    栄養細胞(b)では約20〜30秒で速やかに蛍光強度が1に回復するのに対し、異型細胞(c)では1に回復するまでに約50秒以上かかっている。つまり、栄養細胞どうしの物質交換速度に比べて、異型細胞と栄養細胞の間の物質交換速度は遅い(異型細胞は厚い被膜をもち隔壁部もくびれているため)。
  • 図4と図5(微細管構成タンパク質ノックアウト変異体)の比較:
    変異体では隔壁あたりの微細管数が約80個から約10個へと激減し(図4)、それに伴って栄養細胞の蛍光回復速度も野生型の約20分の1(ほぼ0)に激減している(図5)。このことから、細胞間の物質交換は隔壁に存在する微細管を通して行われていることがわかる。

【問5 最終解答】

隣接する細胞間では蛍光分子Xのような低分子物質の交換が行われており、栄養細胞どうしでは速やかに物質交換されるが、異型細胞と栄養細胞の間の物質交換速度はそれより遅い。また、微細管構成タンパク質を欠損させると隔壁の微細管数が激減し、蛍光回復速度もほぼ0に低下することから、この細胞間の物質交換は隔壁にある微細管を介して行われていることがわかる。

問6異型細胞以外のすべての栄養細胞をレーザー褪色させたときの異型細胞の蛍光強度グラフ

【1ステップずつ完全思考!】
1. スタート地点(時間 $t=0$ 秒): 図2dでは「異型細胞以外のすべての栄養細胞」にレーザーを照射しています。つまり、測定対象である異型細胞自身にはレーザーを照射していません! したがって、照射直後($0$ 秒)における異型細胞の蛍光強度は $1$ からスタートします。
2. その後の変化($t > 0$ 秒): 異型細胞(蛍光強度1)と、隣接する栄養細胞群(すべて褪色して蛍光強度0)の間で物質交換(拡散)が起こります。異型細胞の中にある光る蛍光分子Xが栄養細胞側へと流出し、代わりに栄養細胞から褪色した分子Xが流入するため、異型細胞の蛍光強度は時間とともに減少していきます。
3. 減少の速さ(傾き): 異型細胞と栄養細胞の間の物質移動の速さは、図3の曲線 c(異型細胞に照射したときの回復曲線)と同じ交換速度(時定数)になります。したがって、曲線cを上下反転させたような緩やかな減少曲線(上に凸ではなく下に凸の指数関数的減衰:$I(t) \fallingdotseq 1 - I_{\text{c}}(t)$)を描き、50秒付近で0(短い繊維全体の細胞数を $N$ 個とすれば最終平衡値は $1/N \fallingdotseq 0.1\text{〜}0$ 付近)に近づきます。

1 0.5 0 異型細胞の蛍光強度(相対値) 0 10 20 30 40 50 レーザー照射後の時間 (秒) b c a 問6の解答曲線(実線)

【問6 最終解答(描画のポイント)】

・$(0\text{ 秒}, 1)$ を始点とする実線を描く。
・時間経過とともに曲線cと上下対称(0.5の高さを軸に折り返した形)の緩やかな傾きで減少し、50秒で $0\text{〜}0.1$ 付近に漸近する曲線を描く。(※異型細胞は片側の栄養細胞としか接していないため、両側から流入する栄養細胞bよりもさらに緩やかになる点に注意!)

問7動物細胞間で低分子物質を通す管状構造

動物細胞の結合のうち、隣接する細胞膜を貫く管状のタンパク質(コネキソン)どうしがつながり、イオンや低分子物質(水溶性分子)を直接やり取りできる構造はギャップ結合です。(※植物細胞の場合は「原形質連絡」ですが、設問は「動物の細胞間」と指定されています!)

【問7 最終解答】

ギャップ結合

【問題文 I (C) および 問8〜問10】

(C) ユレモも繊維状のシアノバクテリアであるが,窒素栄養欠乏下においても,ネンジュモのような異型細胞を形成しない。ユレモでは,(4) 生物時計によって,1日周期の明暗サイクルで反応系が制御され,同一細胞内で,光合成と窒素固定が時間をずらして行われている。このようなユレモの1種で,図2bと同様な1つの栄養細胞へのレーザー照射実験を行ったところ,(5) 照射細胞の蛍光回復はみられなかった。
ユレモとネンジュモは繊維状シアノバクテリアであるが,多細胞のあり方は異なっている。光合成と窒素固定を両立させ,繊維状にならず単細胞として生きるシアノバクテリアも多く,多細胞となる方が生存に有利となる条件も多様であるらしい。なぜユレモは多細胞になっているのだろう。(6) 単細胞から多細胞への進化について考えることは,多細胞である私たちのからだの構造を理解するためにも興味深い。

問8 下線部(4)のような1日周期の現象を一般に何とよぶか。

問9 下線部(5)の理由を説明せよ。

問10 下線部(6)を調べるための対象として,シアノバクテリアや細胞性粘菌など,いくつかの生物が研究されている。動物が多細胞となった起源を調べるうえで興味が持たれる生物として,(1) もっとも原始的と考えられる多細胞の動物と,(2) それに関連の深い単細胞生物を,下の選択肢からそれぞれ1つ選んで記号で答えよ。
(a) プラナリア (b) ユウレイボヤ (c) ヤコウチュウ (d) カイメン (e) アメーバ (f) エリベンモウチュウ (g) イソギンチャク (h) ゾウリムシ (i) クラミドモナス

問8・問9・問10概日リズム・ユレモの細胞間連絡・動物の多細胞化の起源

【問8】 生物時計によって制御される約24時間(1日)周期の生理現象を概日リズム(サーカディアンリズム)と呼びます。(ちなみにシアノバクテリアはKaiA, KaiB, KaiCタンパク質による概日時計をもつ最も単純な概日時計として有名です!)

【問9】 なぜユレモではレーザー照射した細胞の蛍光回復がみられなかったのでしょうか?
・ネンジュモでは「光合成を行う栄養細胞」と「窒素固定を行う異型細胞」に分業(役割分担)しているため、隔壁の微細管を通じて糖や窒素化合物を交換する必要がありました。
・一方、ユレモでは異型細胞を作らず、すべての細胞が同一細胞内で昼に光合成、夜に窒素固定を行って自給自足しているため、隣接する細胞と物質をやり取りする必要がなく、細胞間をつなぐ微細管(物質輸送経路)が存在しない(または連通していない)ため、隣の細胞から蛍光分子Xが移動してこなかったのです。

【問10】 動物の多細胞化の進化に関する定番知識です。
・(1) もっとも原始的な多細胞動物: 真正後生動物(刺胞動物など)よりも前に分岐した、明確な組織や器官をもたない多細胞動物である (d) カイメン(海綿動物) です。
・(2) それに関連の深い単細胞生物: カイメンの内部にある「襟(えり)細胞」とそっくりな形態をもち、分子系統解析でも動物界に最も近縁な単細胞(または群体)真核生物(オピストコンタ)であることがわかっている (f) エリベンモウチュウ(襟鞭毛虫) です。

【問8・問9・問10 最終解答】

問8:概日リズム(サーカディアンリズム)
問9:ユレモでは同一細胞内で時間をずらして光合成と窒素固定の両方を行うため、隣接する細胞間で糖や窒素化合物を交換する必要がなく、細胞どうしをつなぐ微細管(物質交換の構造)を持たないから。
問10:(1) (d) / (2) (f)

大問 II :獲得免疫・ABO式血液型の遺伝子配列と酵素反応速度論

配点目安:約35点
Sora先生
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大問IIは、多くの受験生が「血液型ってただの遺伝の計算問題じゃないの!?」と驚いたはず!実はABO式血液型の正体は、赤血球表面の「H型糖鎖」に「GalNAc(A型)」または「Gal(B型)」をくっつける糖転移酵素の遺伝子なんです。
見どころは3つ!① 問3の「5量体IgM抗体による赤血球凝集の図解」、② 問4・問5の「塩基配列データ(図2・図3)からのコドン翻訳とフレームシフトの読み取り」、そして③ 問7の「ミカエリス定数($K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$)と分子活性($k_{\text{cat}}$)の数値比較(表2)」です。塩基番号を1文字ずつ丁寧に数えて、確実に満点を狙おう!

【問題文 II (A) および 問1〜問5】

(A) 病原体や異物が体内に侵入すると,マクロファージや [ ア ] が病原体や異物を取り込んで [ イ ] に移動し,取り込んだ分子を小分子に断片化して [ ウ ] 分子上にのせて,[ エ ] に抗原提示する。活性化した [ エ ] はB細胞を活性化し,B細胞は [ オ ] に分化して抗体を産生する。一方で,抗原提示を経ないで生成される免疫グロブリンM(IgM)抗体が血清中に多数存在していることが知られており,それらは自然抗体と呼ばれる。
1900年にランドシュタイナーは,あるヒトの血清に他のヒトの赤血球を混合すると (1) 赤血球が凝集する場合と凝集しない場合があることから,ABO式血液型を発見した。その後の研究により,この凝集反応における凝集原(抗原)は赤血球上に発現する糖鎖であり,ABO式血液型を規定するABO遺伝子は糖鎖に糖を付加する機能を持つタンパク質(糖転移酵素)をコードしていることが明らかにされた。また,血清中に含まれる凝集素(抗体)はこれらの糖鎖抗原を認識するIgM抗体であり,自然抗体の一種である。
ここで,血液型がA型,B型,O型のヒトが持つ対立遺伝子を順にA型,B型,O型遺伝子とし,それぞれの遺伝子がコードしているタンパク質を順にA型,B型,O型タンパク質とする。図1の通り,(2) A型タンパク質は,基本形であるH型糖鎖にGalNAc(N-アセチルガラクトサミン)を付加してA型糖鎖を生成する糖転移酵素活性を持ち,B型タンパク質は,H型糖鎖にGal(ガラクトース)を付加してB型糖鎖を生成する糖転移酵素活性を持つ。一方で,(3) O型タンパク質は糖転移酵素としての活性を持たないため,O型のヒトは基本形のH型糖鎖を発現している。異なる血液型を生じる機序を明らかにするためヒトABO遺伝子の遺伝子配列を決定したところ,A型,B型,O型遺伝子では,図2および図3に示すエクソン領域のみに塩基配列の違いが見られた。

問1 [ ア ],[ エ ],[ オ ] に入る適切な細胞名および,[ イ ],[ ウ ] に入る適切な語句を答えよ。細胞名は,マクロファージ,B細胞,抗体産生細胞以外で答えよ。

問2 多種多様な抗体が抗体遺伝子の組み換えによって生じることを証明した業績により,1987年のノーベル生理学・医学賞を受賞した科学者の名前を答えよ。

問3 下線部(1)に関して,B型あるいはO型のヒトの血清によりA型のヒトの赤血球が凝集する理由を簡潔に図解せよ。必要に応じて説明を加えても良い。ただし,次の点に注意すること。
・IgM抗体は血清中において,定常部の末端を向かい合わせにして5量体を形成している。
・赤血球は類円形で示し,抗体は軽鎖と重鎖を区別して描くこと。赤血球と抗体の大きさの違いは考慮しなくて良い。

問4 下線部(2)に関して,A型タンパク質とB型タンパク質の基質特異性の違いがどのように生じているのか図2からわかることを考察せよ。解答には次の語句を含めること。必要に応じて表1の遺伝暗号表(コドン表)を用いること。(語句:塩基,アミノ酸,構造)

問5 下線部(3)に関して,O型タンパク質が糖転移酵素活性を持たない理由を図3の結果をもとにして述べよ。必要に応じて表1の遺伝暗号表(コドン表)を用いること。

問1・問2体液性免疫の基本プロセスと利根川進博士

【問1】 獲得免疫(体液性免疫)の流れを確認しましょう。
・食作用をもち抗原提示を行う細胞(抗原提示細胞)は、マクロファージ、B細胞、そして最も強力な抗原提示能をもつ [ ア:樹状細胞 ] です。
・異物を取り込んだ樹状細胞はリンパ管を通って [ イ:リンパ節(または脾臓などの二次リンパ器官) ] に移動します。
・断片化した抗原ペプチドを細胞表面の [ ウ:MHC(主要組織適合遺伝子複合体/MHCクラスII/HLA) ] 分子上に載せて、[ エ:ヘルパーT細胞 ] に提示します。
・活性化したヘルパーT細胞が放出するインターロイキンによって活性化されたB細胞は増殖し、抗体を盛んに産生する細胞に分化します。設問で「抗体産生細胞以外で答えよ」と指定されているため、別名である [ オ:形質細胞 ] と答えます!(ここ、見落とし注意!)

【問2】 抗体遺伝子(免疫グロブリン遺伝子)のV領域・D領域・J領域がB細胞の分化過程でランダムに再編成(遺伝子再構成・V(D)J組換え)されることで多様な抗体が生じることを証明し、1987年にノーベル生理学・医学賞を単独受賞したのは利根川進博士です。

【問1・問2 最終解答】

問1:ア:樹状細胞 / イ:リンパ節 / ウ:MHC(またはMHCクラスII、HLA) / エ:ヘルパーT細胞 / オ:形質細胞
問2:利根川進

問35量体IgM抗体によるA型赤血球の凝集図解

【絶対に守るべき描画条件チェック!】
1. B型・O型の血清中にある凝集素: A型糖鎖(抗原)に特異的に結合する抗A抗体(IgM抗体)が存在します。
2. IgM抗体の構造: Y字型の基本単位(長い重鎖2本+短い軽鎖2本)が、定常部(Y字の足の部分)の末端を中心に向けて向かい合わせになり、星型(車輪型)の5量体を形成しています(抗原結合部位が外側に合計10か所あります)。
3. 凝集のしくみ: 類円形で描いた複数のA型赤血球の表面にあるA型糖鎖(抗原)に対し、5量体IgM抗体の外側にある複数の可変部(抗原結合部位)が同時に結合して赤血球どうしを橋渡し(架橋)することで、多数の赤血球が塊になって凝集します。

【問3 解答図解例】5量体IgM(抗A抗体)によるA型赤血球の架橋・凝集 A型赤血球 (類円形) A型糖鎖(抗原) A型赤血球 (類円形) A型糖鎖(抗原) A型赤血球 重鎖(長い鎖) 軽鎖(外側の短い鎖) 抗A抗体(5量体IgM)

【問3 最終解答(図解と説明文)】

図:上図のように、2本の重鎖(内側の長い鎖)と2本の軽鎖(外側の短い鎖)からなるY字型抗体の定常部末端を中央に向けて5つ結合させた「5量体IgM(抗A抗体)」を描き、その可変部が複数の類円形の「A型赤血球」表面の「A型糖鎖(抗原)」と同時に結合して架橋している様子を描く。
説明:B型やO型の血清中には抗A抗体(5量体IgM抗体)が含まれており、1つの5量体抗体が複数の抗原結合部位で別々のA型赤血球表面のA型糖鎖と同時に結合して赤血球どうしを架橋するため、赤血球が凝集する。

問4図2の塩基配列比較によるA型・B型タンパク質の基質特異性の違い

【ステップ1:図2の太字下線コドン4か所を完全に特定・翻訳する】
図2の注釈より「コドンの読み枠は各行の先頭から始まる」「ここに記す塩基配列は全てエクソン領域に含まれている」とあります。DNAの非鋳型鎖(センス鎖)の配列で「T」を「U」に置き換えればmRNAのコドンになります。4か所の太字下線コドンを比較しましょう!

箇所(塩基番号 / アミノ酸番号) A型遺伝子のコドン → アミノ酸 B型遺伝子のコドン → アミノ酸
① 1行目(526〜528番目 / 176番目) CGC(mRNA:CGC)→ アルギニン(Arg) GGC(mRNA:GGC)→ グリシン(Gly)
② 4行目(703〜705番目 / 235番目) GGC(mRNA:GGC)→ グリシン(Gly) AGC(mRNA:AGC)→ セリン(Ser)
③ 6行目(796〜798番目 / 266番目) CTG(mRNA:CUG)→ ロイシン(Leu) ATG(mRNA:AUG)→ メチオニン(Met)
④ 6行目(802〜804番目 / 268番目) GGG(mRNA:GGG)→ グリシン(Gly) GCG(mRNA:GCG)→ アラニン(Ala)

【ステップ2:指定語句(塩基、アミノ酸、構造)を使って論理的にまとめる】
4か所のコドンの第1文字または第2文字の塩基が置換されているため、いずれも同義置換にはならず、4か所すべてのアミノ酸が異なるものに変化しています(ミスセンス変異)。この4つのアミノ酸の違いによって糖転移酵素の立体構造(特に活性中心・基質結合部位の構造)が変化し、付加する糖としてGalNAcを認識するかGalを認識するかという基質特異性の違いが生じています。

【問4 最終解答】

A型遺伝子とB型遺伝子では4か所のコドンで1文字ずつ塩基が置換されており、その結果、翻訳されるタンパク質において4か所のアミノ酸がすべて別のアミノ酸に変化する(アルギニン→グリシン、グリシン→セリン、ロイシン→メチオニン、グリシン→アラニン)。このアミノ酸配列の違いによって酵素の立体構造(基質結合部位の構造)が変化するため、GalNAcとGalに対する基質特異性の違いが生じている。

問5図3から読み解くO型タンパク質が活性を持たない理由(フレームシフトと終止コドン)

【1文字ずつ塩基を数えてコドンを追跡しよう!】
1. 一塩基欠失の位置: 図3の1行目(241番目から始まる行)を見ると、先頭から7番目のコドン(259〜261番目:87番目のコドン)が、A型・B型遺伝子では GTG(バリン)であるのに対し、O型遺伝子では261番目の G が一塩基欠失しています。
2. フレームシフトの発生: この1塩基の欠失により、それ以降のコドンの読み枠(リーディングフレーム)がすべて1塩基ずつ後ろ(3'側)へずれます(フレームシフト変異)。
3. 終止コドンの出現位置を特定!: ずれた読み枠で図3の配列を3文字ずつ区切って読んでいくと、2行目(A型・B型での塩基番号301〜360番目)はどうなるでしょうか?
・A型・B型の2行目は301番目から AAC ATC GAC ATC CTC AAC GAG CAG TTC AGG CTC CAG AAC ACC ACC ATT GGG TTA ACT GTG です。
・O型では1行目で1文字欠失しているため、2行目の先頭(元の301番目のA)は前の行の最後の2文字(TT)と組んで TTA になります。つまり、2行目は元の塩基番号で「302番目」から3文字ずつ区切られることになります!
実際に区切ってみましょう:
ACA(302-304) - TCG(305-307) - ACA(308-310) - TCC(311-313) - TCA(314-316) - ACG(317-319) - AGC(320-322) - AGT(323-325) - TCA(326-328) - GGC(329-331) - TCC(332-334) - AGA(335-337) - ACA(338-340) - CCA(341-343) - CCA(344-346) - TTG(347-349) - GGT(350-352) - TAA(353-355:終止コドン UAA!) - CTG(356-358) - TG...
見事に元の塩基番号353〜355番目(O型の塩基番号では352〜354番目、118番目のコドン)に終止コドン TAA(mRNAでは UAA)が出現します!
4. 結論: 本来なら図2にある481〜840番目付近の触媒領域まで翻訳されるはずが、352〜354番目という早い段階で終止コドンが生じて翻訳が途中で終了してしまうため、触媒領域を欠いた短い不完全なタンパク質しか作られず、糖転移酵素活性を持たなくなります。

【問5 最終解答】

O型遺伝子では261番目のG(グアニン)が一塩基欠失しているため、それ以降のコドンの読み枠が1塩基分ずれるフレームシフトが生じる。その結果、以後のアミノ酸配列が変化するとともに、352〜354番目の塩基(元の353〜355番目)に終止コドン(TAA、mRNAではUAA)が出現して翻訳が途中で終了し、図2の領域を含む後半部分を欠いた短い不完全なタンパク質しか合成されないため、糖転移酵素活性を持たない。

【問題文 II (B) および 問6・問7-1・問7-2】

(B) A型タンパク質とB型タンパク質が異なる糖転移反応をどのように触媒しているのか検討するために,それぞれのタンパク質を用いて酵素反応速度を測定した。A型タンパク質とB型タンパク質が触媒する反応には,転移される糖と,転移を受けるH型糖鎖の2つの基質が存在する。ここで,適切な量のH型糖鎖の存在下において,最大反応速度($V_{\max}$)の $1/2$ を与えるGalNAcあるいはGalの濃度を $K_{\text{A}}$ とし,適切な量のGalNAcあるいはGalの存在下において,最大反応速度($V_{\max}$)の $1/2$ を与えるH型糖鎖の濃度を $K_{\text{B}}$ とする。すなわち,$K_{\text{A}}$ や $K_{\text{B}}$ の値が小さいことは,酵素に対する基質の親和性が [ カ ] ことを意味する。$V_{\max}$ は酵素濃度により変化するため,$V_{\max}$ を酵素濃度で補正した値を $k_{\text{cat}}$(酵素1分子当たりの反応回転数を示し,値が高いほど酵素1分子当たりの反応速度が速い)とすると,それぞれの値は表2の通りであった。

表2 GalNAc あるいは Gal を基質として用いた際の,A型タンパク質,B型タンパク質の $K_{\text{A}}, K_{\text{B}}, k_{\text{cat}}$ の値
GalNAc(A型糖鎖の材料) Gal(B型糖鎖の材料)
$K_{\text{A}}$ ($\mu\text{mol/L}$) $K_{\text{B}}$ ($\mu\text{mol/L}$) $k_{\text{cat}}$ ($\text{s}^{-1}$) $K_{\text{A}}$ ($\mu\text{mol/L}$) $K_{\text{B}}$ ($\mu\text{mol/L}$) $k_{\text{cat}}$ ($\text{s}^{-1}$)
A型タンパク質 13 15 4.9 6.3 23 0.020
B型タンパク質 285 281 0.3 34 54 6.5

問6 [ カ ] に入る適切な語句を答えよ。

問7-1 表2の結果から,A型タンパク質が特異的にA型糖鎖を生成する機序について考察せよ。

問7-2 表2の結果から,B型タンパク質が特異的にB型糖鎖を生成する機序について考察せよ。

問6・問7ミカエリス定数(親和性)と $k_{\text{cat}}$(反応回転数)からの精緻な考察

【問6】 最大反応速度 $V_{\max}$ の $1/2$ を与える基質濃度(ミカエリス定数 $K_{\text{m}}$ に相当する $K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$)が小さいということは、「ごくわずかな基質濃度でも酵素の半分が基質と結合して働くことができる」ということです。すなわち、酵素に対する基質の親和性が高いことを意味します。

【問7-1:A型タンパク質(1行目のデータ)の分析】
表2の「A型タンパク質」の行を横に見比べてみましょう。
・親和性($K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$): GalNAcを用いたときは $K_{\text{A}}=13, K_{\text{B}}=15$、Galを用いたときは $K_{\text{A}}=6.3, K_{\text{B}}=23$ です。実は、親和性(結合のしやすさ)に関してはGalNAcに対してもGalに対しても同程度に高い(むしろ $K_{\text{A}}$ はGalの方が少し小さいくらい)という意外な事実がわかります!
・反応回転数($k_{\text{cat}}$): ところが $k_{\text{cat}}$ を見ると、GalNAcでは $4.9\text{ s}^{-1}$ であるのに対し、Galでは $0.020\text{ s}^{-1}$ と約245分の1(極めて低い値)になっています。
・結論: A型タンパク質は、Galとも結合自体はするものの、結合した後に糖を転移する触媒反応速度($k_{\text{cat}}$)がGalでは極めて遅く、GalNAcに対して圧倒的に速いために、特異的にA型糖鎖を生成しているのです!

【問7-2:B型タンパク質(2行目のデータ)の分析】
次に表2の「B型タンパク質」の行を横に見比べてみましょう。
・親和性($K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$): Galを用いたときは $K_{\text{A}}=34, K_{\text{B}}=54$ と小さいのに対し、GalNAcを用いたときは $K_{\text{A}}=285, K_{\text{B}}=281$ と約5〜8倍も大きくなっています。つまり、Galに対する親和性が高く、GalNAcおよびその際のH型糖鎖に対する親和性が著しく低いことがわかります。
・反応回転数($k_{\text{cat}}$): さらに $k_{\text{cat}}$ を見ても、Galでは $6.5\text{ s}^{-1}$ と速いのに対し、GalNAcでは $0.3\text{ s}^{-1}$ と約22分の1に低下しています。
・結論: B型タンパク質は、基質(GalとH型糖鎖)に対する親和性がGal存在下で高く、かつ酵素1分子当たりの反応速度($k_{\text{cat}}$)もGalの方が圧倒的に速いという「親和性と反応速度の両方の要因」によって、特異的にB型糖鎖を生成しています。

【問6・問7-1・問7-2 最終解答】

問6:カ:高い
問7-1:A型タンパク質は、GalNAcを用いた場合もGalを用いた場合も $K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$ の値は小さく両基質に対して同等に高い親和性を持つが、酵素1分子当たりの反応速度を示す $k_{\text{cat}}$ がGal($0.020\text{ s}^{-1}$)に比べてGalNAc($4.9\text{ s}^{-1}$)では約245倍と著しく高いため、GalNAcの転移反応のみが速やかに進行して特異的にA型糖鎖を生成する。
問7-2:B型タンパク質は、GalNAcを用いた場合に比べてGalを用いた場合の方が $K_{\text{A}}, K_{\text{B}}$ の値が大幅に小さく(約5〜8分の1)基質に対する親和性が高いうえ、$k_{\text{cat}}$ もGal($6.5\text{ s}^{-1}$)の方がGalNAc($0.3\text{ s}^{-1}$)より約22倍高いため、基質との親和性と触媒反応速度の両面でGalの転移反応が優位となり、特異的にB型糖鎖を生成する。

大問 III :細胞骨格・原形質流動とキメラミオシンの機能解析

配点目安:約30点
Sora先生
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いよいよ最後の大問IIIです!テーマは植物の「原形質流動(アクチンフィラメント上を動くミオシン)」。
後半の実験(B)は、日本の研究グループ()による世界的に有名な研究「シロイヌナズナのミオシンをシャジクモ由来の高速型やヒト由来の低速型に置き換えると、植物の大きさが変わる!」という題材です。
最大の山場は最後の問8! 「高速型ミオシンを持てば細胞が大きくなって植物体も大きくなるのに、なぜ陸上植物のシロイヌナズナはあえて高速型ミオシンを持たずに進化したのか?水中と陸上の環境差から考えよ」という進化・生態学的な思考問題です。ニックニ先生直伝の「水中=浮力がある/陸上=重力や風に耐える支持力が必要!」という視点でバッチリ解き明かそう!

【問題文 III (A) および 問1〜問5】

(A) (1) 単細胞生物であるアメーバは,形の変化や細胞小器官の移動など活発な運動が見られ,細胞を変形させて仮足をのばして移動する (2) アメーバ運動をしている。一方,植物細胞は,[ ア ] に囲まれているため細胞が大きく変形したり,移動することはできないが,植物の細胞内では小粒が一定方向に移動している。このような現象は原形質流動とよばれる。原形質流動は藻類から高等植物にまでみられる活発な細胞内物質輸送であり,細胞小器官に結合したミオシンが細胞骨格である [ イ ] フィラメントの上を運動することにより発生する。原形質流動は植物で普遍的に発生している現象であり,その速度は $1\,\mu\text{m}/\text{秒}$ から $70\,\mu\text{m}/\text{秒}$ と種や細胞によりさまざまである。流動の原動力となるミオシンは,(3) エネルギーを使って運動する分子で,その頭部は「生体のエネルギーの通貨」と呼ばれる [ ウ ] を加水分解する酵素としての機能を持つ。[ ウ ] の加水分解で得られたエネルギーにより,ミオシンは [ イ ] フィラメント上をあたかも人が歩くように運動する。その [ イ ] フィラメントは,核膜と連結し細胞内で大きな膜表面積を持つ [ エ ] と共にネットワーク状に張り巡らされている。

問1 [ ア ] 〜 [ エ ] に当てはまる語句を答えよ。

問2 下線部(1)に該当しない生物をつぎの①〜⑤のうちから1つ選び数字で答えよ。
①クロレラ ②ミドリムシ ③ボルボックス ④大腸菌 ⑤ゾウリムシ

問3 下線部(2)のアメーバ運動をするヒトの細胞で,適切なものをつぎの①〜⑤のうちから2つ選び数字で答えよ。
①赤血球 ②白血球 ③筋細胞 ④精子 ⑤がん細胞

問4 下線部(3)の,エネルギーを使って細胞骨格上を運動する分子を総称してなんというか。

問5 [ イ ] の重合阻害剤であるサイトカラシンを入れると原形質流動はどうなると考えられるか,理由とともに答えよ。

問1〜問5原形質流動・単細胞生物・アメーバ運動・モータータンパク質

  • 【問1】
    • ・植物細胞の外側を取り囲む丈夫な構造は [ ア:細胞壁 ]。
    • ・ミオシンと相互作用して原形質流動や筋収縮を引き起こす細胞骨格は [ イ:アクチン ] フィラメント。
    • ・「生体のエネルギーの通貨」は [ ウ:ATP(アデノシン三リン酸) ]。
    • ・外核膜と連続しており、細胞内で網目(ネットワーク)状に張り巡らされて大きな膜表面積をもつ細胞小器官は [ エ:小胞体 ] です(実際に植物の原形質流動では、ミオシンXIが小胞体膜に結合してアクチン繊維上を牽引することで細胞質全体の流動を引き起こしています)。
  • 【問2】 単細胞生物に該当しないものを選びます。①クロレラ(単細胞緑藻)、②ミドリムシ(単細胞原生生物)、④大腸菌(単細胞原核生物)、⑤ゾウリムシ(単細胞原生生物)はいずれも単細胞生物ですが、③ ボルボックス(オオヒゲマワリ)は多数の細胞が集まり、体細胞と生殖細胞の分化もみられる多細胞生物(細胞群体)です。
  • 【問3】 ヒトの細胞で仮足を伸ばしてアメーバ運動(遊走)を行うのは、血管壁を通り抜けて感染部位へ遊走する② 白血球(好中球やマクロファージなど)と、浸潤・転移する際に盛んに仮足を伸ばして移動する⑤ がん細胞の2つです。(※④精子は微小管からなる鞭毛運動、③筋細胞は収縮運動、①赤血球は血流に乗って受動的に流れるだけです)。
  • 【問4】 ATPの加水分解エネルギーを利用して細胞骨格(アクチンフィラメントや微小管)の上を移動するタンパク質(ミオシン、キネシン、ダイニン)を総称してモータータンパク質と呼びます。
  • 【問5】 サイトカラシンはアクチンの重合阻害剤です。細胞内のアクチンフィラメントは常に重合と脱重合を繰り返しているため、重合を阻害するとアクチンフィラメントが崩壊(脱重合)して失われます。するとミオシンが移動するためのレール(足場)となるアクチンフィラメントがなくなるため、原形質流動は停止(または著しく低下)します。

【問1〜問5 最終解答】

問1:ア:細胞壁 / イ:アクチン / ウ:ATP(アデノシン三リン酸) / エ:小胞体
問2:③ / 問3:②,⑤ / 問4:モータータンパク質
問5:サイトカラシンによりアクチンの重合が阻害されてアクチンフィラメントが消失し、ミオシンが運動するための足場(レール)が失われるため、原形質流動は停止する(低下する)。

【問題文 III (B) および 問6〜問8】

(B) 植物は,水中に生息するシャジクモ藻類との共通祖先から進化してきたと考えられており,シャジクモの原形質流動速度は植物と比べて速いことが知られている。植物における原形質流動の速度の意義を明らかにするため次の実験を行った。
<実験1> ミオシンはモーター領域,ネック領域,テイル領域から構成されているが(図1a),運動速度を決定するのはおもにモーター領域である。そこで,原形質流動の主たる駆動力として機能するシロイヌナズナのミオシンのモーター領域を,高速型であるシャジクモのミオシン,あるいは低速型であるヒトのミオシンのモーター領域と分子生物学的な手法により置換し,高速型ミオシン,あるいは低速型ミオシンを作製した(図1b, c, d)。
<結果1> 試験管内においてこれら速度改変型ミオシンの運動速度を測定したところ,図2のようになった(野生型:約 $7\,\mu\text{m}/\text{秒}$、高速型:約 $16\,\mu\text{m}/\text{秒}$、低速型:約 $1.5\,\mu\text{m}/\text{秒}$)。
<実験2> 速度改変型ミオシンの植物への影響をみるため,野生型ミオシン,高速型ミオシン,低速型ミオシン遺伝子を,それぞれ (4) ミオシンの遺伝子が存在しないミオシンノックアウト細胞に遺伝子を導入して形質転換した。この細胞を用いて,速度改変型ミオシンの植物成長への影響を観察したところ,<結果2>(図3a〜3d)を得た。さらに,植物の大きさの違いが何に起因するかを明らかにするため,第1本葉の葉肉細胞および葉柄表皮細胞を測定したところ,<結果3>(図4a〜4c)を得た。
・図3(結果2): (a) 植物の高さ:高速型 > 野生型 > 低速型(有意差あり) / (b) 植物の乾燥重量:高速型 > 野生型 > 低速型(有意差あり) / (c) 葉の総数:いずれも約11枚で差なし / (d) 葉の面積:高速型 > 野生型 > 低速型(有意差あり)
・図4(結果3): (a) 葉の細胞の面積:高速型 > 野生型 > 低速型(有意差あり) / (b) 葉の細胞の長さ:高速型 > 野生型 > 低速型(有意差あり) / (c) 1葉あたりの細胞数:いずれも約15000個で差なし

問6 下線部(4)の「ミオシンの遺伝子が存在しないミオシンノックアウト細胞」を用いる理由を答えよ。

問7 図3,図4から,速度改変型ミオシンを導入した植物にみられる植物体の大きさの変化が,形質転換によって起こるどのような結果に由来するか読み取り,簡潔に答えなさい。

問8 陸上植物であるシロイヌナズナは,高速型のミオシンを持たずに進化したと考えられる。実験1,2の結果より,シロイヌナズナが陸上で植物体を大きくする方法はどのようなものが考えられるか。水中と陸上の環境の差を考慮して,類推できることをその利点とともに簡潔に述べなさい。

問6・問7ノックアウト細胞を用いる理由と図3・図4のデータ統合

【問6:なぜミオシンノックアウト細胞に導入するのか?】
もし通常の野生型細胞(もともと本来のミオシン遺伝子を持っている細胞)に高速型や低速型のミオシン遺伝子を導入してしまうと、細胞内で「元からある野生型ミオシン」と「導入した改変型ミオシン」の両方が作られて混在してしまいます。すると、特に低速型ミオシンを導入した場合などに、元からある野生型ミオシンが働いてしまって改変型ミオシンの純粋な効果がわからなくなります。
したがって、内在する野生型ミオシンの働き(影響)を排除し、導入した速度改変型ミオシンのみによる影響を正確に調べるためにノックアウト細胞を用います。

【問7:図3と図4のグラフを正確に比較しよう!】
グラフの「$*$(統計的に有意な差がある)」がついている項目と、ついていない項目を整理すると一目瞭然です!
・変化していないもの($*$ なし): 図3(c)「葉の総数」と、図4(c)「1葉あたりの細胞数」は、野生型・高速型・低速型の間でまったく変化していません(つまり細胞分裂の回数や器官形成の数は変わっていない)。
・変化しているもの($*$ あり): ミオシンの運動速度(原形質流動の速度)を速くすると(高速型)、図4(a)(b)のように個々の細胞の長さ(伸長)および細胞の面積が増大(肥大)し、逆に遅くすると(低速型)個々の細胞の長さ・面積が小さくなっています。その結果として、図3(d)の葉の面積や図3(a)(b)の植物の高さ・乾燥重量(植物体の大きさ)が変化しています。

【問6・問7 最終解答】

問6:細胞内に元から存在する野生型ミオシンの働きによる影響を排除し、導入した速度改変型ミオシン単独による植物成長への影響を正確に評価するため。
問7:葉の総数や1葉あたりの細胞数は変化しないが、導入したミオシンの運動速度(原形質流動の速度)の変化に応じて個々の細胞の長さ(伸長量)および面積が変化し、それに伴って葉の面積や草丈などの植物体全体の大きさが変化することに由来する。

問8なぜ陸上植物は高速型ミオシンを持たずに進化したのか?(水中と陸上の環境差)

【ニックニ先生 & Sora先生の思考ステップ完全ガイド!】
この問8は、2つの問いかけに答える必要があります:
① 「シロイヌナズナが陸上で植物体を大きくする方法はどのようなものが考えられるか」
② 「水中と陸上の環境の差を考慮して、類推できるその利点」

順番に論理を組み立てましょう!
ステップ1(植物体を大きくする2つの方法の対比):
植物体を大きくするには、「A:1つ1つの細胞を大きく(長く)する」か、「B:細胞の数を増やす(細胞分裂する)」かの2通りしかありません。
水中に生息するシャジクモは、高速型ミオシンによって活発な原形質流動を行い、「A:個々の細胞を巨大化(伸長)させる」という方法で体を大きくしています(実際、シャジクモの節間細胞は1つの細胞で長さが数cm〜10cm以上にもなる巨大単細胞です!)。
一方、陸上植物であるシロイヌナズナは高速型ミオシンを持たないため、1つ1つの細胞を巨大化させるのではなく、「B:ミオシンの速度を抑えて個々の細胞を小さく保ったまま、細胞分裂によって細胞数を増やす(さらに葉などの器官の数も増やす)ことで植物体を大きくする方法」をとっています。

ステップ2(水中と陸上の環境差から考える「利点」):
では、なぜ陸上では「巨大な少数の細胞」ではなく「小さな多数の細胞」で体を大きくする方が有利なのでしょうか?水中と陸上の決定的な違いは「浮力の有無(重力の影響)」と「風雨・乾燥などの物理的ストレス」です!
・水中: 浮力が働くため、巨大な細胞(薄い細胞壁と大きな液胞)でも自重で潰れることなく体を維持できます。また、巨大細胞内の隅々まで物質を運ぶために高速の原形質流動が不可欠です。
・陸上: 浮力が働かないため、重力に逆らって自身の体を支え、風や雨などの物理的な力に耐える機械的強度(支持力)が必要です。もし1つ1つの細胞を巨大化させてしまうと、体積に対する細胞壁の割合が減って構造的に脆くなり、重力や風で折れたり潰れたりしてしまいます。
逆に、個々の細胞を小さくして細胞数を増やせば、植物体内部に細胞壁が密に張り巡らされる(単位体積あたりの細胞壁の密度が高まる)ため、丈夫で折れにくい強固な植物体を作ることができるという大きな利点があります!(さらに、細胞が小さければ低速のミオシンでも十分に細胞内物質輸送が間に合うため、ATPの消費エネルギーを節約できるという利点もあります)。

【問8 最終解答】

大きくする方法:高速型ミオシンによって個々の細胞を肥大・伸長させるのではなく、ミオシンの速度を抑えて個々の細胞を小さく保ったまま、細胞分裂によって細胞数を増やすことで植物体を大きくする方法。
利点:浮力が働く水中とは異なり、陸上では重力に抗して自重を支え風雨などの物理的ストレスに耐える必要があるが、小さな細胞を多数積み重ねることで単位体積あたりの細胞壁の密度が高まり、植物体の機械的強度(支持力)を高められる(また、細胞が小さいため低速の原形質流動でも物質輸送が十分に間に合い、ATPの消費を抑えられる)という利点がある。

Sora先生
Sora先生 ✕ ニックニ先生からのメッセージ

過去問演習で時間を溶かしていませんか?
合格の鍵は「全科目の時間配分(バランス調整)」にあります。

私立医学部の入試は、1科目だけできても受かりません。「計算に時間をかけすぎて他科目が崩れる」「推薦対策と一般入試の両立で手が止まっている」——そんな悩みを、TMPS医学館のニックニ先生と一緒に50分で整理しませんか?

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