標準知識の正確性+実験データ・医療テーマの論述力が合否を決める!
2024年度の聖マリアンナ医科大学・生物は、大問1「被子植物の配偶子形成と花粉管誘引停止機構(助細胞と胚乳の融合)」、大問2「筋肉の分類・自律神経・神経筋標本の伝導速度とオシロスコープ」、大問3「腎臓の構造と糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)」の3題構成です。基礎知識の穴埋めは完答必須であり、差がつくのは大問1の実験考察論述と、大問2の伝導速度・電位波形の判断、大問3の医学関連論述です。1ステップずつ視覚的に完全攻略していきましょう!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
まずは最終結論を一覧で確認!大問 1 被子植物の配偶子形成・重複受精・残存助細胞の花粉管誘引停止機構
〔1〕空欄補充
- (ア)減数 (イ)卵細胞 (ウ)反足細胞
- (エ)四分子(花粉四分子) (オ)体細胞
- (カ)雄原細胞 (キ)重複受精
〔3〕種子の分類
- 胚乳に蓄える種子:有胚乳種子(属するもの:イネ、カキ)
- 子葉に蓄える種子:無胚乳種子(属するもの:ソラマメ)
〔2〕花粉管による受精の利点(2行以内):
精子による受精には水が必要であるが、花粉管が精細胞を胚のうへ直接運ぶことで、水がない乾燥した陸上環境でも確実に受精できる点。
〔4〕1)標識された細胞膜の蛍光分布(3行以内):
受粉後に残存助細胞と胚乳細胞が融合すると、脂質二重層の流動性により標識された脂質が拡散し、蛍光は残存助細胞だけでなく胚乳細胞の細胞膜全体へと広がって分布する。
〔4〕2)残存助細胞が誘引を停止し機能を失う仕組み(3行以内):
残存助細胞が体積の著しく大きい胚乳細胞と融合することで細胞質中の誘引物質が急速に希釈され、さらに胚乳細胞の核分裂に伴い残存助細胞の核が変性・崩壊して誘引物質の合成も停止するため。
大問 2 筋肉と自律神経・神経筋標本の伝導速度・シナプス電位
〔1〕空欄補充
(ア)平滑筋(内臓筋) (イ)横紋 (ウ)交感 (エ)副交感
〔2〕自律神経の作用
- (ウ)交感神経:心臓の拍動=促進 / 消化管の動き=抑制
- (エ)副交感神経:心臓の拍動=抑制 / 消化管の動き=促進
〔3〕神経筋標本の実験
- 1)伝導速度:$30\text{ m/秒}$
- 2)神経筋接合部の伝達時間:$4\text{ ミリ秒}$
- 3)c点刺激での収縮開始:$11\text{ ミリ秒後}$
- 4)オシロスコープ波形:⑥ 5)伝達物質:アセチルコリン
〔4〕骨格筋収縮の説明:③
〔5〕語群選択
(あ)上昇 (い)低下 (う)電位依存性 $\text{Na}^+$ チャネル (え)単収縮 (お)強縮
大問 3 腎臓の構造と尿生成・バソプレシン・SGLT2阻害薬
〔1〕空欄補充
(ア)副腎 (イ)膀胱(ぼうこう) (ウ)糸球体 (エ)ボーマンのう
〔2〕皮質と髄質の境界
1)境界線:②
〔3〕ネフロンに含まれるもの(全て):B、C、D、E、F
〔4〕ろ過されないもの(全て):②、⑤、⑥、⑦、⑧
〔6〕1)SGLT2阻害薬による血糖変化:③(下がる)
〔2〕2)境界を判別した理由(2行以内):
腎小体(糸球体とボーマンのう)は皮質に分布するため、腎小体が存在する境界線②の右側が皮質、腎小体がなく集合管や細尿管が走る左側が髄質と判別できる。
〔5〕バソプレシン受容体拮抗薬による尿量変化と理由(1行):
バソプレシンの作用が妨げられて集合管での水の再吸収が抑制されるため、尿量は増加する。
〔6〕2)血糖濃度が下がる理由(指定語句に下線、2行以内):
近位尿細管にあるSGLT2の働きが阻害されると、原尿中のグルコースの血液中への再吸収が抑制され、過剰なグルコースが尿中へ排出されるため。
大問 1:被子植物の配偶子形成と花粉管誘引停止機構
生殖と発生・実験考察
大問1の前半〔1〕〜〔3〕は、被子植物の胚のう形成・花粉形成・重複受精・有胚乳/無胚乳種子という超定番の基礎問題です。ここは1分以内にノーミスで駆け抜けましょう!
合否の分かれ目は後半〔4〕の「受精後に残存助細胞がどうやって花粉管誘引をストップさせるか(!)」です。問題文のヒント「胚乳細胞の体積は助細胞に比べて著しく大きい(=融合すると誘引物質が薄まる!)」と「実験3:残存助細胞の核が変性・崩壊する」の2点を確実に拾えば満点が狙えますよ!
【問題リード文・図1の要旨】
被子植物の配偶子形成は胚珠と葯で起こる。胚珠では、胚のう母細胞から( ア )分裂によって4個の細胞が生じる(図1)。そのうち3個は退化し、1個が胚のう細胞となる。胚のう細胞では3回の核分裂によって8個の核が生じる。そのうち6個の核の周りは仕切られて細胞化し、2個の助細胞、1個の( イ )、3個の( ウ )となる。残りの2個の核は中央細胞の中の極核となる。このようにして生じた7個の細胞と8個の核のまとまりを胚のうという。
一方、葯では花粉母細胞が( ア )分裂を行い、4個の細胞の集まり、即ち( エ )をつくる。( エ )のそれぞれは成熟する過程で( オ )分裂を行い、大型の花粉管細胞と小型の( カ )に分かれる。( カ )は花粉管細胞に取り込まれて成熟した花粉ができる。
めしべの柱頭に付着した花粉は、花粉管を胚珠へ向けて伸ばす。花粉管内では、( カ )が( オ )分裂を経て2個の精細胞になり、これらが花粉管の先端を移動する。このとき、花粉管を正確に胚珠に導くために誘引物質(ペプチド)を分泌するのが助細胞である。a 珠孔(胚珠先端にある珠皮の開口部)に達した花粉管は、片方の助細胞を破壊して胚のう内へ侵入し、2つの精細胞を胚のうへ放出する。すると、精細胞の1つは( イ )と融合して受精卵をつくり、他方は中央細胞と融合して胚乳細胞(後の胚乳)をつくる。この受精様式を( キ )という。( キ )の後、b 崩壊せずに残った方の助細胞(残存助細胞)は花粉管の誘引を停止し、余分な花粉管が胚珠に到達するのを防ぐ。
▼ 図1:被子植物の胚のう形成(7細胞8核)と花粉形成のプロセス
〔1〕空欄(ア)〜(キ)に入る適切な語
STEP 1(ア)・(エ)・(オ)・(カ):分裂の種類と花粉形成
胚のう母細胞($2n$)や花粉母細胞($2n$)から染色体数を半減させて4つの細胞($n$)をつくる分裂は減数分裂(ア)です。花粉母細胞が減数分裂してできた4個の細胞の集まりを四分子(または花粉四分子)(エ)と呼びます。
その後、すでに核相が $n$ になった花粉四分子の各細胞が分裂して「花粉管細胞($n$)」と「雄原細胞(カ)($n$)」に分かれる分裂や、雄原細胞が2個の精細胞($n$)になる分裂は、核相が変わらない体細胞分裂(オ)です。
STEP 2(イ)・(ウ)・(キ):胚のうの構造と重複受精
胚のう(7細胞8核)のうち、珠孔側には2個の助細胞と1個の卵細胞(イ)があり、反対側(合点側)には3個の反足細胞(ウ)、中央には2個の極核をもつ中央細胞があります。
2個の精細胞のうち、1個が卵細胞($n$)と受精して受精卵($2n$)となり、もう1個が中央細胞(極核2個:$n+n$)と受精して胚乳細胞($3n$)となる被子植物特有の受精様式を重複受精(キ)といいます。
〔2〕花粉管によって精細胞を胚のうへ届ける受精方法の利点(2行以内)
STEP 1コケ植物・シダ植物の「精子による受精」の弱点を考える
コケ植物やシダ植物の雄性配偶子は鞭毛をもつ「精子」であり、造精器から造卵器まで水の中を泳いで移動する必要があります。そのため、周囲に水がない乾燥した環境では受精することができません。
STEP 2種子植物の「花粉管による受精」の強みと対比させる
一方、種子植物(裸子植物・被子植物)は、花粉から伸びた花粉管が精細胞を胚のう(卵細胞)まで直接送り届けるため、外界に水が存在しない乾燥した陸上環境でも確実に受精を行うことができるという進化上の大きな利点があります。
精子による受精には水が必要であるが、花粉管が精細胞を胚のうへ直接運ぶことで、水がない乾燥した陸上環境でも確実に受精できる点。
〔3〕有胚乳種子と無胚乳種子の名称と具体例(イネ・ソラマメ・カキ)
STEP 1種子の名称と代表例の整理
・胚乳が発達し、胚乳に養分を蓄える種子を有胚乳種子といいます。代表例はイネ・コムギ・トウモロコシ・タマネギ(単子葉類)や、カキ・オシロイバナ・アサガオ・トウゴマ(真正双子葉類の一部)です。
・発生の途中で胚乳が吸収されて退化し、胚の一部である子葉が発達して養分を蓄える種子を無胚乳種子といいます。代表例はソラマメ・エンドウ・インゲンマメ・ダイズ(マメ科)、アブラナ・ナズナ(アブラナ科)、クリ・ヒマワリなどです。
・胚乳に養分を蓄える種子:有胚乳種子(属するもの:イネ、カキ)
・子葉に養分を蓄える種子:無胚乳種子(属するもの:ソラマメ)
〔4〕花粉管の誘引停止機構に関する実験考察(実験1〜3)
[実験1]シロイヌナズナを実験材料に、受粉後の胚のうの微細構造を透過型電子顕微鏡で観察した。その結果の断面図を図2に模式的に示す。胚乳細胞と残存助細胞の間では細胞壁が失われ、胚乳細胞と残存助細胞が融合して両者の細胞質が連絡していた(図2*)。また、残存助細胞の核が、胚乳細胞の方へ位置を変えている像が得られることがあった。受粉させなかった場合は、このような細胞壁の消失や細胞の融合は観察されなかった。
[実験2]花粉管誘引物質に蛍光タンパク質(GFP)を連結した人為的なタンパク質を助細胞において発現させたところ、分泌前の誘引物質-GFP融合タンパク質に由来する蛍光が助細胞の細胞質に認められた。受粉させ、図2に灰色の網がけで示した部分(残存助細胞に相当する部分)における蛍光強度を経時観察すると、図3に示すような変化が観察された。なお、縦軸の値が大きいほど灰色の網がけ部分(図2)に誘引物質-GFP融合タンパク質が多く存在することを示しており、グラフ中の矢印は胚乳細胞と残存助細胞の融合が始まった時点を示す。
[実験3]融合後の残存助細胞の核を経時観察したところ、胚乳細胞の核の分裂に伴い残存助細胞の核も分裂の準備に入ったが変性し、最終的に崩壊して失われた。残存助細胞の核の崩壊は、多くの場合、胚乳細胞が2回目の核分裂を行う時(胚乳細胞と残存助細胞の融合から約150分後)に見られた。
▼ 図2(胚乳細胞と残存助細胞の融合)および 図3(残存助細胞領域の蛍光強度変化)
STEP 1細胞融合と「流動モザイクモデル(脂質二重層の流動性)」を結びつける
受粉前、蛍光標識された脂質は助細胞の細胞膜にのみ存在(局在)しています。しかし受粉後、実験1にある通り残存助細胞と胚乳細胞が融合すると、両者の細胞膜(脂質二重層)はひと続きにつながります。
STEP 2膜内での拡散と最終的な分布を記述する
生体膜を構成する脂質二重層には流動性があり、脂質分子は膜の平面内を自由に移動(側方拡散)できます。そのため、残存助細胞に局在していた蛍光標識脂質は、融合後に胚乳細胞の細胞膜へと拡散し、融合した細胞(残存助細胞と胚乳細胞)の細胞膜全体にわたって広く分布するようになります。
受粉後に残存助細胞と胚乳細胞が融合すると、脂質二重層の流動性により標識された脂質が膜内を移動して拡散し、蛍光は残存助細胞だけでなく胚乳細胞の細胞膜全体へと広がって分布する。
STEP 1第1段階(実験1・2+問題文の注記):巨大細胞との融合による「誘引物質の急速な希釈」
図3を見ると、胚乳細胞と残存助細胞の融合が始まった時点から、残存助細胞内の誘引物質-GFPの蛍光強度が急激に低下しています。問題文に「なお、胚乳細胞の体積は助細胞に比して著しく大きい」とある通り、残存助細胞が体積の著しく大きい胚乳細胞と融合することで、残存助細胞内にあった花粉管誘引物質が胚乳細胞の広い細胞質中へ拡散して急速に希釈されるため、速やかに花粉管の誘引が停止します。
STEP 2第2段階(実験3):残存助細胞の「核の変性・崩壊」による機能喪失
さらに実験3より、融合から約150分後(胚乳細胞の2回目の核分裂時)に、胚乳細胞の核分裂に伴って残存助細胞の核が変性・崩壊して失われるため、新たな誘引物質の合成(遺伝子発現)も完全にできなくなり、助細胞としての機能を完全に失います。
残存助細胞が体積の著しく大きい胚乳細胞と融合することで細胞質中の誘引物質が急速に希釈され、さらに胚乳細胞の核分裂に伴い残存助細胞の核が変性・崩壊して誘引物質の合成も停止するため。
大問 2:筋肉と自律神経・神経筋標本の伝導速度と電位変化
動物の反応と行動・計算
大問2は動物の「筋肉・神経・シナプス」の総合問題です!特に注意したいのが〔3〕4)のオシロスコープ波形です。
刺激を与えたのは左端ではなく右端の「b点」なので、興奮は右から左へ(記録電極B → 記録電極Aの順)伝わります!しかも「Aを基準としたBの電位変化」を聞かれているので、最初にBが興奮して電位がマイナスになるとき、グラフはまず下(マイナス側)に振れます。このトラップを華麗に見破りましょう!
私たちの身体の筋肉は、意思に基づいて動かすことができる骨格筋、心臓を拍動させる心筋、消化管などの臓器の壁を構成し臓器の動きを生み出す( ア )の3種類に大別できる。骨格筋と心筋を構成する細胞(筋繊維)では筋原繊維が規則的に配置されているため、光学顕微鏡で観察すると筋原繊維に沿って( イ )が見られる。このことから、骨格筋と心筋をまとめて( イ )筋と呼ぶ。
骨格筋の収縮は運動神経により制御される。一方、心筋や( ア )の収縮の制御は主として自律神経によってなされる。自律神経は( ウ )神経と( エ )神経から構成される。( ウ )神経は脊髄から、( エ )神経は中脳、延髄、脊髄の下部(仙髄)から出て様々な器官等の標的に達する。
[実験]神経筋標本を筋収縮の記録装置(キモグラフ(カイモグラフ))に接続した(図4)。神経筋接合部から $30\text{ mm}$ および $90\text{ mm}$ の位置をそれぞれ a 点、b 点とする。それぞれに電気刺激を与えたところ、a 点を刺激した場合 $10\text{ ミリ秒後}$、b 点を刺激した場合 $12\text{ ミリ秒後}$ に筋収縮が始まった。また、神経筋接合部で筋肉そのものを直接電気刺激すると $5\text{ ミリ秒後}$ に収縮が始まった。
▼ 図4:神経筋標本における刺激位置(a・c・b点)と記録電極(A・B)の位置関係
〔1〕筋肉と自律神経の分類・〔2〕自律神経の作用
STEP 1〔1〕筋肉の3分類と自律神経の起始部
・消化管や血管などの内臓壁をつくる筋肉は平滑筋(または内臓筋)(ア)であり、横紋構造をもたない不随意筋です。
・骨格筋と心筋には規則的な縞模様である横紋(イ)が見られるため、横紋筋と呼ばれます。
・自律神経のうち、すべて脊髄(胸髄・腰髄)から出るのが交感(ウ)神経であり、中脳・延髄・脊髄下部(仙髄)から出るのが副交感(エ)神経です。
STEP 2〔2〕交感神経(ウ)と副交感神経(エ)の拮抗作用
・(ウ)交感神経(闘争・逃走モード):心臓の拍動を促進し、消化管の動き(ぜん動)を抑制します。
・(エ)副交感神経(休息・消化モード):心臓の拍動を抑制し、消化管の動き(ぜん動)を促進します。
【〔1〕解答】(ア)平滑筋(内臓筋) (イ)横紋 (ウ)交感 (エ)副交感
【〔2〕解答】
・(ウ)神経:心臓の拍動=促進、消化管の動き(ぜん動)=抑制
・(エ)神経:心臓の拍動=抑制、消化管の動き(ぜん動)=促進
〔3〕運動神経の伝導速度・シナプス伝達時間・オシロスコープ波形
1)この運動神経の伝導速度を $\text{m/秒}$ の単位で求めなさい。
2)神経筋接合部での伝達に要する時間は何ミリ秒か答えなさい。
3)神経筋接合部から $60\text{ mm}$ の位置を c 点とする(図4)。c 点に刺激を与えると筋収縮は何ミリ秒後に始まるか。
4)記録電極A、Bを図4に示した位置関係で細胞膜の外側に接して配置し、b 点を刺激した。Aを基準としたBの電位変化として適切なオシロスコープ画面の表示はどれか、下の①〜⑥から選びなさい。
5)神経筋接合部で運動神経の軸索終末から放出される神経伝達物質の名称を答えなさい。
1)伝導速度a点($30\text{ mm}$)とb点($90\text{ mm}$)の差から計算する
a点($30\text{ mm}$)刺激では $10\text{ ミリ秒}$、b点($90\text{ mm}$)刺激では $12\text{ ミリ秒}$ かかっています。この時間の差 $12 - 10 = 2\text{ ミリ秒}$ は、純粋に運動神経の b点〜a点間の距離 $90 - 30 = 60\text{ mm}$ を興奮が伝導するのに要した時間です。
単位を $\text{m/秒}$ に揃えて計算すると($1\text{ mm} = 10^{-3}\text{ m}$、$1\text{ ミリ秒} = 10^{-3}\text{ 秒}$ なので、$\text{mm/ミリ秒} = \text{m/秒}$ となります):
$$\text{伝導速度 } v = \frac{90 - 30\text{ [mm]}}{12 - 10\text{ [ミリ秒]}} = \frac{60\text{ [mm]}}{2\text{ [ミリ秒]}} = 30\text{ [mm/ミリ秒]} = 30\text{ [m/秒]}$$
2)伝達時間全所要時間から「神経伝導時間」と「筋収縮時間」を引く
a点(神経筋接合部から $30\text{ mm}$)を刺激してから筋収縮が始まるまでの合計時間 $10\text{ ミリ秒}$ は、以下の3つの時間の合計です:
- ① a点から神経筋接合部($30\text{ mm}$)までの神経伝導時間:$\dfrac{30\text{ mm}}{30\text{ mm/ミリ秒}} = 1\text{ ミリ秒}$
- ② 神経筋接合部でのシナプス伝達時間:$t\text{ ミリ秒}$(求めたい時間)
- ③ 筋肉が刺激を受けてから実際に収縮が始まるまでの筋収縮の潜時:問題文より直接刺激で $5\text{ ミリ秒}$
したがって、 $$1 + t + 5 = 10 \implies t = 10 - 6 = 4\text{ ミリ秒}$$
3)c点刺激神経筋接合部から $60\text{ mm}$ の位置を刺激したとき
c点($60\text{ mm}$)から神経筋接合部までの神経伝導時間は $\dfrac{60\text{ mm}}{30\text{ mm/ミリ秒}} = 2\text{ ミリ秒}$ です。
これに神経筋接合部の伝達時間($4\text{ ミリ秒}$)と筋肉が収縮を始めるまでの時間($5\text{ ミリ秒}$)を足すと(あるいは a点とb点のちょうど中点なので $\dfrac{10+12}{2}$ としても一瞬で求まります!):
$$2 + 4 + 5 = 11\text{ ミリ秒後}$$
4)オシロスコープ波形興奮の進行方向(b → B → A)と基準電極に注意!
細胞膜の外側に電極A・Bを置いた場合、興奮が到達した部分の膜外電位は、静止している部分に対して負($-$)になります。
今回の実験では右側の b点 を刺激しているため、活動電位(膜外が $-$ の領域)は右から左へ、つまり 記録電極B → 記録電極A の順に通過します。
また、設問は「Aを基準としたBの電位変化($V_{\text{B}} - V_{\text{A}}$)」を尋ねています:
- 刺激がBに到達する前:AもBも静止状態なので電位差は $0$(水平な直線)。
- まず興奮が電極Bを通過するとき:Bの膜外が負($-$)、Aは静止($+$)なので、Aを基準としたBの電位はマイナス($-$:下向き)に振れます。
- 次に興奮が電極Aを通過するとき:Bは静止($+$)に戻り、Aの膜外が負($-$)になるので、Aを基準としたBの電位はプラス($+$:上向き)に振れます。
よって、最初は $0$ のベースラインがあり、先にマイナス(下)へ振れてからプラス(上)へ振れる二相性活動電位のグラフ ⑥ が正解です!(※②や⑤と迷わないよう、刺激から電極Bに届くまでの最初の水平区間 $0$ がある ⑥ を選びます)。
5)神経伝達物質運動神経の終末から骨格筋へ放出される物質
脊椎動物の運動神経の軸索終末(神経筋接合部)から放出される神経伝達物質はアセチルコリンです。
1)$30\text{ m/秒}$ 2)$4\text{ ミリ秒}$ 3)$11\text{ ミリ秒後}$ 4)⑥ 5)アセチルコリン
〔4〕骨格筋の収縮機構として最も適切なもの
① 神経伝達物質の作用により、筋繊維内のATPやクレアチンリン酸の合成が促され、エネルギーの供与開始により筋収縮が起こる。
② 神経伝達物質が筋原繊維のミオシン頭部に直接作用することにより筋収縮が起こる。
③ 神経の興奮が筋繊維に伝えられ、$\text{Ca}^{2+}$ が筋小胞体から放出されると、アクチンフィラメントとミオシン頭部が相互作用できるようになり、筋繊維が収縮する。
④ アクチンとミオシンが相互作用できるようになると、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの長さが短くなって全体として筋繊維が収縮する。
・① 誤り:神経伝達物質(アセチルコリン)は筋細胞膜の受容体型陽イオンチャネルを開いて活動電位を発生させる働きをし、ATPやクレアチンリン酸の合成開始によって収縮が始まるわけではありません。
・② 誤り:神経伝達物質は細胞膜表面の受容体に結合するのであり、細胞内のミオシン頭部に直接作用するわけではありません。
・③ 正しい:筋細胞膜の興奮がT管(横行小管)を経て筋小胞体に伝わると、筋小胞体から$\text{Ca}^{2+}$が放出されます。$\text{Ca}^{2+}$ がトロポニンに結合するとトロポミオシンの立体配置が変化し、アクチンフィラメントとミオシン頭部が相互作用(結合)できるようになって滑り込みが起こり、筋繊維が収縮します。
・④ 誤り:滑り説の通り、アクチンフィラメントやミオシンフィラメント自体の長さは変化せず、両者が重なり合う(滑り込む)ことでサルコメア全体が短くなります。
〔5〕シナプス後電位の空間的・時間的加重と単収縮・強縮
【語群】上昇 / 低下 / 強縮 / 単収縮 / 電位依存性 $\text{Ca}^{2+}$ チャネル / 電位依存性 $\text{K}^+$ チャネル / 電位依存性 $\text{Na}^+$ チャネル
STEP 1(あ)・(い)・(う):EPSP・IPSPと活動電位の発生
・興奮性シナプスでは $\text{Na}^+$ などが流入して脱分極が起こり、膜電位が上昇(あ)する興奮性シナプス後電位(EPSP)が生じます。
・抑制性シナプスでは $\text{Cl}^-$ の流入などによって過分極が起こり、膜電位が低下(い)する抑制性シナプス後電位(IPSP)が生じます。
・空間的・時間的加重(加算)の結果、膜電位が閾値(いき値)を超えると、電位依存性 $\text{Na}^+$ チャネル(う)が開口して $\text{Na}^+$ が一気に流入し、活動電位が発生します。
STEP 2(え)・(お):単収縮と強縮
・1回の刺激(活動電位)によって生じる1回の短い収縮を単収縮(え)といいます。
・単収縮が弛緩しきる前に次の活動電位が連続して到来し、収縮が重なり合って持続的で強い収縮となる現象を強縮(お)といいます。
(あ)上昇 (い)低下 (う)電位依存性 $\text{Na}^+$ チャネル (え)単収縮 (お)強縮
大問 3:腎臓の構造・ホルモン調節・糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)
生物の体内環境の維持・医療応用
最後の大問3は、医学部入試で超頻出の「腎臓と尿生成」+臨床医学で実際に大活躍している糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」の融合問題です!
一番引っかかりやすいのが〔3〕「ネフロン(腎単位)に含まれるものを図6のA〜Hから全て選べ」です。ネフロンとは「腎小体(糸球体B+ボーマンのうC)+尿細管(近位D・中間E・遠位F)」のセットのこと!集合管(G)や腎動脈(A)・腎静脈(H)はネフロンに含まれないので絶対に除外してくださいね!
泌尿器系は、尿を生成する腎臓と尿を体外へ送る尿路から成り、体液中の不要な代謝産物を除去し、水や電解質を取捨選択して体液の量や組成を一定に保つ。腎臓は左右1対のソラマメのような形をした器官であり、その上には( ア )がある(図5A)。腎臓で生成された尿は輸尿管から( イ )に送られ、そこで一時的に蓄えられた後、尿道から体外へ排出される。
腎臓をさらに細かくみるとa 皮質と髄質に分けられ、内部には構造上の単位であるb ネフロン(腎単位)がヒトの場合1つの腎臓当たり約100万個存在している。下の図6は、図5Bに示された構造をそれらの関係が分かるようにさらに模式的に示したものである。腎小体は、図6のBが示す( ウ )とCが示す( エ )から成り、c 腎動脈(図6A)から来た血液をBからCへろ過することで原尿を作る。原尿からは、尿細管(細尿管、腎細管)(図6D〜F)と集合管(図6G)を通る間に水や無機塩類の大部分と全てのグルコースが血液中に再吸収される。尿細管は、腎小体から近い順に近位尿細管(図6D)、中間尿細管(図6E)、遠位尿細管(図6F)と呼ばれる。
d 再吸収には、ホルモンにより調整されるものがある。例えば、( ア )皮質から分泌される鉱質コルチコイドは遠位尿細管や集合管でナトリウムイオンと水の再吸収を促進する。
グルコースの再吸収は近位尿細管で行われる。ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)は、ナトリウムイオンの濃度勾配を利用してグルコースを輸送する輸送体で、SGLT1が近位尿細管や腸管に、e SGLT2が近位尿細管に存在している。ろ過されたグルコースの約90%はSGLT2により再吸収される。
▼ 図5B(皮質と髄質の境界)および 図6(ネフロンと集合管の模式図)
〔1〕空欄補充・〔2〕皮質と髄質の境界と判別理由
〔1〕空欄補充
・腎臓の上に位置し、皮質から鉱質コルチコイドなどを分泌する内分泌器官は副腎(ア)です。
・腎臓でつくられた尿が輸尿管を通って送られ、一時的に蓄えられる袋状の器官は膀胱(ぼうこう)(イ)です。
・腎小体を構成する毛細血管の塊(B)が糸球体(ウ)、それを包む袋状の構造(C)がボーマンのう(エ)です。
〔2〕皮質と髄質の境界
1)図5Bを見ると、③・④・⑤はネフロンや集合管の走行と垂直(横方向)に引かれた線であり、腎臓の外側(皮質)と内側(髄質)を分ける境界線は縦方向の ① または ② です。腎臓において腎小体(糸球体+ボーマンのう)は皮質にのみ存在します。図5Bでは丸い腎小体が線②のすぐ右側に位置し、線②より左側には腎小体がなく集合管や尿細管の直部(ヘンレのループ)が走っているため、皮質と髄質の境界は ② です。
2)「皮質および髄質が境界線のどちら側かが分かるように」という条件を守り、腎小体が分布している境界線②の右側が皮質、腎小体がなく集合管などが走る左側が髄質であることを明記します。
【〔1〕解答】(ア)副腎 (イ)膀胱(ぼうこう) (ウ)糸球体 (エ)ボーマンのう
【〔2〕解答】
1)②
2)腎小体(糸球体とボーマンのう)は皮質に分布するため、腎小体が存在する境界線②の右側が皮質、腎小体がなく集合管や細尿管が走る左側が髄質と判別できる。
〔3〕ネフロンに含まれるもの・〔4〕糸球体からボーマンのうへろ過されないもの
〔3〕下線部bについて、ネフロンに含まれるものを図6の A 〜 H から全て選びなさい。
〔4〕下線部cについて、図6の B から C へろ過されないのはどれか、下の①〜⑧から全て選びなさい。
① アミノ酸 ② グロブリン ③ 尿素 ④ 尿酸 ⑤ 赤血球 ⑥ 好中球 ⑦ 単球 ⑧ リンパ球
〔3〕ネフロンの構成要素
ネフロン(腎単位)= 1個の腎小体(糸球体B + ボーマンのうC)+ 1本の尿細管(近位尿細管D + 中間尿細管E + 遠位尿細管F) です。
※複数のネフロンが合流する集合管(G)や、血管である腎動脈(A)・腎静脈(H)はネフロンには含まれません。よって B、C、D、E、F です。
〔4〕ろ過されないもの
糸球体(B)からボーマンのう(C)へのろ過では、水や低分子物質(グルコース、①アミノ酸、③尿素、④尿酸、無機塩類など)は通過して原尿になりますが、分子量の大きいタンパク質(②グロブリン、アルブミンなど)や血球成分(⑤赤血球、および白血球である⑥好中球・⑦単球・⑧リンパ球、血小板)はろ過されません。よって ②、⑤、⑥、⑦、⑧ を全て選びます。
【〔3〕解答】 B、C、D、E、F
【〔4〕解答】 ②、⑤、⑥、⑦、⑧
〔5〕バソプレシン受容体拮抗薬の作用・〔6〕SGLT2阻害薬による糖尿病治療の仕組み
〔5〕下線部dについて、鉱質コルチコイドの他に脳下垂体後葉から分泌されるバソプレシンも再吸収に関与する。集合管に存在するバソプレシンの受容体に対する拮抗薬(受容体の働きを妨げる薬剤)を投与したとき、尿量に変化が起きる。その変化はどのような変化か、変化が起きる理由と共に1行で説明しなさい。
〔6〕下線部eについて、近年糖尿病治療薬の開発が進み、インスリンの他に SGLT2 の働きを阻害する薬(SGLT2阻害薬)が糖尿病の治療に用いられることがある。
1)糖尿病患者に SGLT2 阻害薬を投与したとき、血液中のグルコース濃度はどのように変化するか、下の①〜③から選びなさい。
① 上がる ② 変わらない ③ 下がる
2)1)で答えた変化が起きる理由について2行以内で説明しなさい。説明に際しては以下の語を必ず用い、用いた語に下線を付すこと。
【語群】 SGLT2 再吸収 尿中
〔5〕バソプレシン受容体拮抗薬
脳下垂体後葉から分泌されるバソプレシンは、集合管の受容体に結合すると水チャネル(アクアポリン)を細胞膜へ移動させ、集合管での水の再吸収を促進して尿量を減少させるホルモンです。
したがって、その受容体の働きを妨げる拮抗薬を投与すると、バソプレシンが作用できなくなり、集合管での水の再吸収が抑制されるため、尿量は増加します(実際に医療現場でも利尿薬「トルバプタン」として使われています)。
〔6〕SGLT2阻害薬の作用機序
1)糖尿病患者は血液中のグルコース濃度(血糖値)が異常に高い状態にあります。治療薬である SGLT2 阻害薬を投与すると、血液中のグルコース濃度は③ 下がるように変化します。
2)リード文にある通り、糸球体で原尿中にろ過されたグルコースの約90%は、近位尿細管に存在するSGLT2によって血液中へ再吸収されます。SGLT2阻害薬を投与してSGLT2の働きを阻害すると、原尿中のグルコースの血液中への再吸収が抑制され、余分なグルコースがそのまま尿中へ排出されるため、血液中のグルコース濃度が下がります(※本番の解答用紙でも指定語句3つに必ず下線を引きましょう!)。
【〔5〕解答例】
バソプレシンの作用が妨げられて集合管での水の再吸収が抑制されるため、尿量は増加する。
【〔6〕解答】
1)③
2)近位尿細管にあるSGLT2の働きが阻害されると、原尿中のグルコースの血液中への再吸収が抑制され、過剰なグルコースが尿中へ排出されるため。
聖マリアンナ医科大学の生物は、教科書レベルの標準知識(〔1〕の空欄補充など)を確実に得点した上で、「実験結果のグラフや模式図から何が言えるか(大問1の残存助細胞融合)」「物理的な距離と時間の差からどう立式するか(大問2の神経筋標本)」「その薬がどの輸送体・受容体を止めると体液や尿がどう変わるか(大問3のバソプレシン拮抗薬・SGLT2阻害薬)」という医学的・論理的な因果関係を短い行数でまとめる力が問われます。今回の3題は他大学の医学部入試でも繰り返し出題される最重要テーマばかりですので、図解とセットで完璧に自分のものにしておきましょう!
過去問演習で時間を溶かしていませんか?
合格の鍵は「全科目の時間配分(バランス調整)」にあります。
私立医学部の入試は、1科目だけできても受かりません。「計算に時間をかけすぎて他科目が崩れる」「推薦対策と一般入試の両立で手が止まっている」——そんな悩みを、TMPS医学館のニックニ先生と一緒に50分で整理しませんか?
【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(聖マリアンナ医科大学 2024年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。