TMPS医学館 2023 完全ステップ解説シリーズ

産業医科大学 医学部 生物(2023年度)全問題・超図解解説

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理系担当 Sora先生
赤本キラー!途中式・図解100%網羅 Sora先生 ✕ ニックニ先生 徹底解説

「これより〜となる」の省略はゼロ!産業医科大学(2023年度)生物をSora先生が完全解剖

こんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生です。市販の過去問集(赤本など)で途中の式変形や思考プロセスが1行で飛ばされて悩んでいませんか?
このページでは、産業医科大学(2023年度)の生物について、中学生でも追える1ステップずつの途中式と解法プロセスをすべて公開しています!

Sora先生
🌟 Sora先生&ニックニ先生の受験生応援ガイド

こんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生です!指導統括のニックニ先生と一緒に、2023年度の産業医科大学・生物を1ステップも省略せずに徹底解説していくよ!
産業医大の生物は、基礎〜標準的な知識の正確さに加えて、「コロナのmRNAワクチン」「青白選択の対照実験」「有機溶媒による胆管がん誘発(産業医学的テーマ!)」など、医学・医療に直結する思考力・論述問題がバランスよく出題されるのが特徴なんだ。生物が苦手な人でも「なぜそうなるのか?」が100%スッキリわかるように図解付きで解説するから、最後まで一緒についてきてね!

⚡ 解答一覧(スピードチェック)

採点・復習用

大問〔1〕 細胞老化・テロメア・免疫とワクチン

問1: 〔ア〕テロメア / 〔イ〕テロメラーゼ(または頂端分裂組織・形成層などの分裂組織) / 〔ウ〕がん化(悪性形質転換・形質転換) / 〔エ〕ワクチン
問2: 細胞分裂のたびにテロメアが短くなり、一定の長さ以下になると細胞分裂を停止する関係。
問3: 例:生殖細胞(始原生殖細胞・精原細胞など)や幹細胞
理由:テロメラーゼの活性が高く、細胞分裂に伴って短縮したテロメアDNAが伸長(修復)されるため。
問4: 染色体の両末端部分(計4か所、または縦裂前の棒状なら両端2か所)をすべて黒く塗りつぶす。(※詳細は解説の図を参照)
問5: (1) 再感染直後から短期間で急激に立ち上がり、初回感染時よりはるかに高いピークに達し長期間持続する曲線を描く。
(2) ウイルスBの感染後、ウイルスAの初回感染時と同様の潜伏期間を経て、同程度の低い山型の曲線を描く。
問6: 均質なヒト細胞を無制限かつ大量に培養できるため、実験動物を使わずにウイルスを効率よく大量に増殖させ、安価かつ安定的にワクチンを製造できる点。
問7: ウイルスのスパイクタンパク質の設計図となるmRNA(またはウイルスベクターDNA)を体内に投与し、ヒトの細胞内でスパイクタンパク質を合成させることで免疫応答(抗体産生や細胞性免疫)を誘導する手法。

大問〔2〕 遺伝子の本体・メンデル遺伝・遺伝子組換え実験(青白選択)

問1: 〔ア〕メンデル / 〔イ〕エイブリー(アベリー) / 〔ウ〕T2ファージ(バクテリオファージ)
問2: (a), (d)
問3: 形質転換
問4: 加熱殺菌した病原性(S型)肺炎双球菌の抽出物に、タンパク質分解酵素やDNA分解酵素などをそれぞれ作用させてから非病原性(R型)菌に加え、DNA分解酵素で処理した場合のみR型菌からS型菌への形質転換が起きなくなることを示した実験。
問5: DNA:放射性同位体のリン($^{32}\text{P}$)
タンパク質:放射性同位体の硫黄($^{35}\text{S}$)
問6: (1) (う) / (2) (か) / (3) (う) / (4) (か) / (5) (い)
問7: 図2の寒天培地上の白いコロニーから大腸菌を採取し、アンピシリンを含む新たな培養液(または培地)に移して培養する。

大問〔3〕 肝臓の構造と機能・尿素回路・胆管がんとホルモン

問1: 〔ア〕肝小葉 / 〔イ〕肝門脈(門脈) / 〔ウ〕胃・小腸・大腸などの消化管 / 〔エ〕尿素 / 〔オ〕ヘム(またはヘモグロビン)
問2: アルブミン、フィブリノゲン(またはプロトロンビン、グロブリンなど)
問3: B(弁をもち中膜が薄い静脈の構造)
問4: (1) グリコーゲンに合成されて肝臓に蓄えられる。
(2) グルカゴン、アドレナリン、糖質コルチコイド(いずれか)
問5: (1) 尿酸
(2) 陸上生活では水分の摂取が限られ乾燥しやすいため、水に難溶で結晶として少量の水で排出でき、また殻に包まれた卵内で胚が発生する際にも浸透圧を上げずに蓄積できる尿酸を用いている。
問6: (1) 野生型では代謝産物a・bともに輸送体によって速やかに胆汁中へ排出されるが、欠失型では胆汁中へ排出されず肝組織(肝細胞)内に蓄積する。
(2) 正常な肝細胞では発がん性をもつ代謝産物aが生成されても輸送体によって速やかに胆汁中へ排出されるため肝臓には残らないが、排出された先の胆管内にとどまり胆管の上皮細胞が高濃度の代謝産物aにさらされるため。
問7: 甲状腺から分泌されるチロキシンや副腎髄質から分泌されるアドレナリンが肝臓に作用すると、肝臓でのグリコーゲン分解や物質の代謝(化学反応)が促進され、熱産生量が増加することで体温が維持される。

大問〔1〕 細胞老化(テロメア)・不死化細胞(HeLa細胞)・免疫とワクチン

配点目安:約33%
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大問〔1〕は、染色体の末端構造「テロメア」と細胞分裂の寿命(ヘイフリック限界)からスタートして、1951年にジョージ・ゲイが樹立した世界初のヒト不死化細胞株「HeLa(ヒーラ)細胞」、そして免疫応答(一次応答・二次応答)と新型コロナウイルスのmRNAワクチンへと展開する、医学部らしさ満点の融合問題だよ!
合否の分かれ目は、問5のグラフ作図での「抗原特異性」の描き分けと、問7の「スパイクタンパク質」「設計図」を使ったmRNAワクチンの説明!ここを落とさず12分〜15分で完答するのが目標だよ!

【問題文】〔1〕次の文章を読み、設問に答えなさい。

正常な動物の細胞は、〔 ア 〕の長さと①細胞分裂回数に関係があることが知られており、②通常限られた回数しか分裂せず、その後増殖能を失う。これは遺伝的に決定されている細胞老化という現象である。一方、植物では〔 イ 〕による老化を抑制する仕組みが存在する。一部の動物細胞は〔 ウ 〕と呼ばれるプロセスを経て不死になる場合がある。このプロセスは、化学的、あるいはウイルスを使用して人工的に誘導することができる。このように無制限に分裂する能力を獲得すると、その細胞は不死化細胞となる。

1951年、ジョージ・ゲイは世界初のヒト細胞の不死化に成功した。その3年後、ジョナス・ソークはこの樹立された不死化細胞を用い、ポリオウイルスに対する〔 エ 〕の開発に成功した。現在では種々の不死化細胞が樹立され、様々な研究・創薬において有用なツールとなっている。

問1 〔 ア 〕〜〔 エ 〕に当てはまる適当な語句を答えなさい。

STEP 1〔 ア 〕染色体の末端にあり、細胞分裂回数(分裂寿命)と関係する構造
真核生物の線状染色体の両末端には、特徴的な繰り返し塩基配列(ヒトでは $5'\text{-TTAGGG-}3'$ の繰り返し)とタンパク質からなる「テロメア」という構造があります。DNA複製の際、ラギング鎖の末端ではRNAプライマーが除去された部分をDNAに置き換えることができないため(末端複製問題)、1回の細胞分裂ごとにテロメアは少しずつ短くなっていきます。よって〔 ア 〕はテロメアです。

STEP 2〔 イ 〕植物において細胞老化を抑制する仕組み
植物では、茎頂や根端などの分裂組織(頂端分裂組織や形成層)において、テロメアを伸長させる酵素である「テロメラーゼ」が働いている(または分裂組織の幹細胞が維持される)ため、動物のような分裂限界による個体全体の老化が抑制され、何百年・何千年と成長し続ける樹種も存在します。文脈上、〔 ア 〕のテロメア短縮を防ぐ酵素としてテロメラーゼ(または植物特有の組織として分裂組織(頂端分裂組織))が当てはまります。

STEP 3〔 ウ 〕化学物質やウイルスによって誘導され、動物細胞が不死になるプロセス
正常な体細胞が、発がん物質(化学的要因)や腫瘍ウイルス(パピローマウイルスなど)によって遺伝子変異を起こし、細胞周期のブレーキ(p53やRbなどのがん抑制遺伝子)が壊れて無制限に増殖するようになるプロセスを「がん化」(または「悪性形質転換」「形質転換」)と呼びます。なお、1951年にジョージ・ゲイが樹立した世界初のヒト不死化細胞株は、子宮頸がん患者(ヘンリエッタ・ラックスさん)から採取されたHeLa細胞です。

STEP 4〔 エ 〕ポリオウイルスに対してジョナス・ソークが開発したもの
ウイルス感染症の予防のために、無毒化(不活化)または弱毒化した抗原を投与する医薬品は「ワクチン」です(ソークが開発したのは不活化ポリオワクチンです)。

【最終解答】
〔 ア 〕テロメア / 〔 イ 〕テロメラーゼ(別解:分裂組織) / 〔 ウ 〕がん化(悪性形質転換) / 〔 エ 〕ワクチン

問2・問3・問4 テロメアと細胞分裂回数・テロメラーゼ・染色体上の位置

2. 下線部①(〔ア〕の長さと細胞分裂回数に関係)はどのような関係か、簡潔に答えなさい。

3. 下線部②(通常限られた回数しか分裂せず、その後増殖能を失う)の仕組みに従わない正常な細胞の例を答えなさい。またその細胞の分裂が有限でない理由を、具体的な酵素名を用い、説明しなさい。

4. 解答紙に染色体の模式図が描いてある。〔 ア 〕が存在する部分を全て黒く塗りつぶして示しなさい。

📊 【超図解】染色体のテロメアの位置(問4)と分裂に伴う短縮(問2・問3)

問4:染色体の模式図とテロメア(黒塗り) 複製後(4か所の末端) 棒状(両端2か所) 問2・3:テロメアの長さと細胞分裂の関係 ① 正常な体細胞(テロメラーゼ活性なし) → 分裂ごと → ※テロメアが短くなり限界に達すると分裂停止(細胞老化) ② 生殖細胞・幹細胞(テロメラーゼ活性あり) +テロメラーゼ→ ※酵素「テロメラーゼ」がテロメアDNAを伸長・修復!

STEP 1問2の解説:テロメアの長さと細胞分裂回数の関係
正常な体細胞では、DNA複製のたびに末端のテロメアが少しずつ(ヒトでは1回の分裂につき約50〜200塩基対ずつ)短くなっていきます。そのため、「細胞分裂を繰り返すほどテロメアが短くなり、一定の長さ以下になると細胞分裂を停止する(または、テロメアが長い細胞ほど多くの回数分裂できる)」という関係があります。

STEP 2問3の解説:分裂回数が有限でない「正常な細胞」と酵素名
注意したいのは問題文の「正常な細胞の例」という指定です!がん細胞もテロメラーゼが働いて無限に分裂しますが、がん細胞は「異常な細胞」なのでここでの例としては不適切です。
体内で正常に存在し、世代を超えて受け継がれたり、一生を通じて新しい細胞を供給し続けたりする細胞は、「生殖細胞(精原細胞などの生殖系列の細胞)」や「幹細胞(造血幹細胞・胚性幹細胞など)」です。
これらの細胞では、RNAを鋳型にしてテロメアDNAの繰り返し配列を合成・付加する酵素である「テロメラーゼ」が強く働いているため、細胞分裂によってテロメアが短くなっても再び伸長(修復)され、有限の分裂回数に制限されずに分裂を続けることができます。

STEP 3問4の解説:染色体上のテロメアの位置
テロメアは線状染色体の「両末端」に存在します。解答用紙の染色体模式図において、染色体の端(末端部分すべて)を黒く塗りつぶします(くびれている中央部の「動原体(セントロメア)」を塗らないように注意しましょう!)。

【問2 最終解答】
細胞分裂のたびにテロメアが短くなり、一定の長さ以下になると細胞分裂を停止する関係。(または:テロメアの長さが長いほど細胞分裂できる回数が多く、分裂するごとにテロメアが短くなる関係。)
【問3 最終解答】
細胞の例:生殖細胞(または幹細胞)
理由:テロメラーゼの活性が高く、細胞分裂に伴って短くなったテロメアDNAを伸長(修復)することができるため。
【問4 最終解答】
染色体模式図のすべての末端部分(両端)を黒く塗りつぶす。(上図参照)

問5 一次免疫応答と二次免疫応答のグラフ作図

5. ウイルスが感染すると体内では免疫応答が起きる。図はウイルスA初回感染後の、ウイルスAに特異的な抗体産生量の変化を表したものである。

(1) ウイルスAに対する二次免疫応答が起きた際の特異的な抗体産生量の変化を、解答紙の図に描き加えなさい。

(2) ウイルスAに対する二次免疫応答が起きた際、同時に別のウイルスBの感染が起きた。ウイルスBに特異的な抗体産生量の変化を、解答紙の図に描き加えなさい。

📈 【超図解】問5 (1)・(2) 抗体産生量の変化グラフ(作図解答)

ウイルスA初回(一次応答) (1) ウイルスAへの二次免疫応答 (速やかに急上昇・高いピーク・長期持続) (2) ウイルスBへの応答 (初回感染と同じラグ・同じ高さ) 抗体産生量 時間 ⟶ ウイルスAの感染 ウイルスAの再感染 またはウイルスBの感染

STEP 1(1) ウイルスAに対する二次免疫応答のポイント(3つの特徴!)
初回感染時に作られた「ウイルスAに対する記憶細胞(記憶B細胞・記憶T細胞)」が体内に残っているため、ウイルスAが再感染すると以下の3つの特徴をもつ二次免疫応答が起こります。作図ではこの3点が採点基準になります!
① 立ち上がりが早い:再感染の矢印(破線)の直後から、ほとんど潜伏期間(ラグ)をおかずに急激に上昇し始める。
② ピークが高い:初回感染時の山の高さ(下の目盛り付近)よりもはるかに高い位置(上の目盛り以上)にピークが達する。
③ 長期間持続する:ピークを過ぎた後もすぐにはゼロに戻らず、高い抗体産生量が維持されるように描く。

STEP 2(2) 同時に初感染した「別のウイルスB」に対する免疫応答のポイント
獲得免疫(適応免疫)と免疫記憶には「抗原特異性」があります。つまり、ウイルスAに対する記憶細胞は、まったく別の抗原であるウイルスBには反応しません!
したがって、ウイルスBに対しては「一次免疫応答(初回感染と同じ反応)」がゼロからスタートします。作図するときは、左側の「ウイルスA初回感染時の山」をそのまま右へ平行移動させた形(再感染の破線から少し時間が経ってから立ち上がり、1つ目の山と同じ高さ・同じ幅で元に戻る曲線)を描きます。

問6・問7 不死化細胞によるワクチン開発の利点と、新型コロナワクチンの手法

6. 不死化細胞を用いることは、〔 エ 〕の開発にどのような利点があったのか、説明しなさい。

7. ポリオウイルスに対する〔 エ 〕の開発とは違った手法によって、新型コロナウイルスに対する〔 エ 〕が開発された。どのような手法か、「スパイクタンパク質」、「設計図」という語句を用いて説明しなさい。

STEP 1問6の解説:なぜHeLa細胞(不死化細胞)がポリオワクチン開発に革命を起こしたのか?
ウイルスは自分自身では分裂・増殖できず、生きた宿主細胞の中に感染して初めて増殖できるという性質(偏性細胞内寄生性)をもっています。
ポリオワクチンを作るには大量のポリオウイルスを増殖させる必要がありますが、HeLa細胞が樹立される前は、生きたサルなどの実験動物や限られた回数しか分裂しない正常組織を使わなければならず、コストも時間もかかり均質な実験が困難でした。
しかし、不死化細胞(HeLa細胞)は無制限に分裂・増殖するため、生体外(培養器内)で均質なヒト細胞を安価・容易かつ大量に培養でき、そこにウイルスを感染させることでワクチン製造や効果試験に必要なウイルスを安定的かつ大量に得られるようになったという大きな利点がありました。

STEP 2問7の解説:従来型ワクチンと新型コロナワクチンの違い
・従来のポリオワクチン:培養細胞で増やしたウイルスそのものを不活化(または弱毒化)して体内に投与する手法。
・新型コロナワクチン(mRNAワクチンやウイルスベクターワクチン):ウイルスそのものを投与するのではなく、新型コロナウイルス表面にある感染に必要な突起である「スパイクタンパク質」の「設計図」となる遺伝情報(mRNAやDNA)を体内に投与します。すると、投与された設計図をもとにヒト自身の細胞内でスパイクタンパク質が合成され、それに対する免疫応答(抗体産生や細胞性免疫)が誘導されるという画期的な手法です。

【問6 最終解答】
均質なヒト細胞を生体外で無制限かつ大量に培養できるため、実験動物を用いずにウイルスを効率よく大量に増殖させたり感染実験を行ったりすることができ、ワクチンを安価かつ安定的に開発・量産できるという利点。
【問7 最終解答】
ウイルス自体を投与するのではなく、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質の設計図となるmRNA(またはDNA)を体内に投与し、ヒトの細胞内でスパイクタンパク質を合成させることで特異的な免疫応答を誘導する手法。

大問〔2〕 遺伝子の本体・メンデルの法則・遺伝子組換え実験(青白選択)

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大問〔2〕の前半は、グリフィス・エイブリー・ハーシーとチェイスの歴史的実験と、問2の「メンデルの法則で説明できるもの選び」!問2はひっかけ選択肢(細胞質遺伝や単為結実など)が混ざっているから、1つずつ丁寧に仕分けようね。
そして後半(問6・問7)は、医学部入試の超頻出テーマ「プラスミドへの遺伝子組換えとブルー・ホワイトセレクション(青白選択)」だよ!「リガーゼを入れ忘れたら?」「制限酵素を入れ忘れたら?」「ラクトースをグルコースに変えたら?」という5パターンの思考実験は、原理がわかればパズルみたいに楽しく全問正解できるよ!

【問題文(前半)】〔2〕次の文章を読み、設問に答えなさい。

〔 ア 〕は遺伝現象に関する法則を示したが、遺伝子の物質的な実体については長い間不明であった。これに対して大きな手がかりを提供したのは①グリフィスが発見した現象であり、この現象を引き起こす物質が遺伝子の本体であると考えられた。その後この物質の精製が進められ、②〔 イ 〕が精製物に対して行った実験により、遺伝子の本体はDNAである可能性が高まった。その後、主な候補であったDNAとタンパク質のどちらが遺伝子の本体であるかについては、③ハーシーとチェイスが大腸菌と〔 ウ 〕を材料として行った実験結果から結論づけられた。

問1・問3・問4・問5 遺伝子の本体を証明した3大実験

1. 〔 ア 〕〜〔 ウ 〕に当てはまる語句・人名を答えなさい。

3. 下線部①はどのような現象か、答えなさい。

4. 下線部②はどのような実験を行ったのか、説明しなさい。

5. 下線部③の実験はDNAとタンパク質の特徴を利用し、それぞれに異なる目印をつけることで行われた。それぞれの分子につけた目印を答えなさい。

STEP 1問1・問3:メンデルとグリフィスの実験(1928年)
・エンドウの交配実験から優性の法則(顕性の法則)・分離の法則・独立の法則を提唱した〔 ア 〕はメンデルです。
・グリフィスは肺炎双球菌のR型菌(非病原性・無莢膜)と加熱殺菌したS型菌(病原性・有莢膜)を混ぜてマウスに注射すると、生きたR型菌が死んだS型菌の物質を取り込んでS型菌に変化する現象を発見しました。この現象(下線部①)を「形質転換」といいます。

STEP 2問1・問4:エイブリー(アベリー)らの実験(1944年)
・S型菌の抽出物(精製物)を用いて形質転換を引き起こす物質の正体を探った〔 イ 〕はエイブリー(アベリー)です。
・下線部②の実験内容:加熱殺菌したS型菌の抽出物(または精製した物質)に対し、タンパク質分解酵素・RNA分解酵素・DNA分解酵素・多糖類分解酵素などをそれぞれ別々に作用させてから生きたR型菌と混合して培養したところ、DNA分解酵素で処理した場合にのみ形質転換が起こらなくなった(S型菌が現れなかった)という実験です。

STEP 3問1・問5:ハーシーとチェイスの実験(1952年)
・ハーシーとチェイスが大腸菌に感染させる材料として用いたウイルス〔 ウ 〕はT2ファージ(またはバクテリオファージ)です。
・下線部③でつけた目印(問5):
DNAはリン酸を含むためリン($\text{P}$)を多く含みますが、硫黄($\text{S}$)を含みません。一方、タンパク質はシステインやメチオニンなどのアミノ酸に硫黄($\text{S}$)を含みますが、リン($\text{P}$)はほとんど含みません。そこで、DNAには放射性同位体のリン($^{32}\text{P}$)、タンパク質には放射性同位体の硫黄($^{35}\text{S}$)を目印(標識)として用いました。

【問1 最終解答】 〔 ア 〕メンデル / 〔 イ 〕エイブリー(アベリー) / 〔 ウ 〕T2ファージ(バクテリオファージ)
【問3 最終解答】 形質転換
【問4 最終解答】 S型菌の抽出物(精製物)にタンパク質分解酵素やDNA分解酵素などをそれぞれ作用させてからR型菌に加え、DNA分解酵素を作用させた場合のみ形質転換が起こらなくなることを示した実験。
【問5 最終解答】 DNA:放射性同位体のリン($^{32}\text{P}$) / タンパク質:放射性同位体の硫黄($^{35}\text{S}$)

問2 メンデルが提唱した法則で説明できるものの選択

2. 〔 ア 〕が提唱した法則で説明できるものをすべて選び、記号で答えなさい。

(a) 純系の黒色のモルモットと茶色のモルモットから6匹の子供が生まれたが、すべて黒色の個体であった。

(b) オシロイバナを自家受粉させた種子をまいたところ、「緑色」、「白色」、「緑と白色の斑」の3種類の葉がついた植物が生えてきた。

(c) 白いイチゴが実る品種を挿し木で殖やし、赤いイチゴが実る品種の花粉で受粉させたところ、実ったイチゴはすべて白色であった。

(d) 6人の兄弟姉妹のうち5人が直毛であったが、1人は縮毛であった。

(e) ある両親から生まれた兄弟姉妹のミトコンドリアDNAを分析したところ、すべて母親のDNAの塩基配列と一致し、父親の配列とは一致しなかった。

STEP 1選択肢 (a) の判定:⭕ 説明できる!
黒色純系($BB$)と茶色純系($bb$)の交配で、雑種第一代($\text{F}_1$:$Bb$)がすべて黒色になる現象は、メンデルの「優性の法則(顕性の法則)」そのものです。

STEP 2選択肢 (b) の判定:❌ 説明できない(細胞質遺伝・葉緑体DNA)
オシロイバナの「花の色(赤・白・桃)」なら不完全優性(中間雑種)ですが、ここは「葉の色(緑・白・斑入り)」です!オシロイバナの斑入り葉の遺伝は、卵細胞の細胞質に含まれる葉緑体(色素体)DNAによる細胞質遺伝(母性遺伝)の代表例であり、核内遺伝子のメンデルの法則では説明できません。

STEP 3選択肢 (c) の判定:❌ 説明できない(偽果・母親の体組織)
イチゴの私たちが食べている赤い(または白い)実の部分は、受精によってできた種子(胚)ではなく、めしべの土台である「花床(かしょう)」が肥大した偽果(ぎか)です。花床は母親個体自身の体細胞(栄養器官)なので、どんな花粉を受粉させても、その年に実るイチゴの果肉の色は母親(白いイチゴ品種)の遺伝子型だけで決まります。受精による次世代($\text{F}_1$)の表現型を見ているわけではないため、優性の法則の例ではありません。

STEP 4選択肢 (d) の判定:⭕ 説明できる!
両親から生まれた兄弟姉妹の中に直毛と縮毛の両方が現れるのは、ヘテロ接合体の親から対立遺伝子が分離して配偶子に入り、受精によって潜性(劣性)ホモ接合体などが現れるというメンデルの「分離の法則」で説明できます。

STEP 5選択肢 (e) の判定:❌ 説明できない(ミトコンドリアの母性遺伝)
ミトコンドリアDNAがすべて母親由来になるのは細胞質遺伝(母性遺伝)であり、メンデルの法則には従いません。

【問2 最終解答】 (a), (d)

問6・問7 プラスミドへの遺伝子組換えと青白選択(ブルー・ホワイトセレクション)

遺伝子Aを環状のプラスミドBに組み込む実験を行った。まず遺伝子Aを含むDNA断片とプラスミドBを同じ制限酵素で切断した。切断の効率は100%で、切れ残ったプラスミドや遺伝子断片はなかった(図1)。プラスミドBを切断する制限酵素の切断部位は、遺伝子Zにコードされたタンパク質の翻訳領域上にある。制限酵素で切断された遺伝子AとプラスミドBを混合した後、DNAリガーゼを作用させた。作用後の混合液を大腸菌と混ぜて取り込ませる操作を行った。この大腸菌にラクトースと色素を結合させた基質(分解されると大腸菌のコロニーは青色になり、分解されないと白色になる)を混合し、ラクトースと抗生物質であるアンピシリンを含む寒天培地にまくと、翌日の培地には図2に示すような青色と白色のコロニーが生えてきた。

6. この実験で途中の操作を(1)〜(5)のように変えると、翌日の寒天培地はどのようになるか、最も適切なものを図3の(あ)〜(か)から選び記号で答えなさい。

  • (1) 遺伝子Aの断片を加えない。
  • (2) DNAリガーゼを加えない。
  • (3) 制限酵素を作用させない。
  • (4) 抗生物質としてアンピシリンの代わりにカナマイシンを加える。
  • (5) 炭素源としてラクトースの代わりにグルコースを加える。

7. 図2の寒天培地から目的とする遺伝子Aを含むプラスミドを持つ大腸菌を増やすにはどのような操作をすれば良いか説明しなさい。

🧬 【超図解】3種類の大腸菌の運命とコロニーの色の決まり方

① プラスミドなしの大腸菌 (または直鎖状のままのDNA) アンピシリン耐性(Y)なし アンピシリンで死滅 👉 何も生えない (か) ② プラスミドBのみ再環状化 (遺伝子Aが入っていない) Y(耐性) Z(正常) 遺伝子Zが働き色素基質を分解 👉 青いコロニー ③ 遺伝子A組換え成功(目的!) (Zの中に遺伝子Aが挿入) Y(耐性) Z分断(A挿入) 遺伝子Zが壊れ色素基質を非分解 👉 白いコロニー

基本原理まず青白選択(ブルー・ホワイトセレクション)のルールを整理しよう!
・プラスミドBにはアンピシリン耐性遺伝子Yと、ラクトース分解酵素($\beta$-ガラクトシダーゼ、lacZ遺伝子)をコードする遺伝子Zがあります。
・制限酵素で切れ目を入れた直鎖状のDNAのままでは大腸菌内で複製されず、分解されてしまいます。DNAリガーゼによって「環状」につながったプラスミドを取り込んだ大腸菌だけが、アンピシリン入り培地で生き残ってコロニーを作ります。
・そのうち、遺伝子Zの中に遺伝子Aが組み込まれずにそのまま再環状化したプラスミドをもつ大腸菌は、遺伝子Zが正常なので色素結合基質を分解して「青いコロニー」になり、遺伝子Zの中に遺伝子Aが挿入されて遺伝子Zが破壊されたプラスミド(目的の組換えプラスミド!)をもつ大腸菌は、基質を分解できないため「白いコロニー」になります。

STEP 1問6 (1) 遺伝子Aの断片を加えない場合
切断されたプラスミドBだけが存在し、DNAリガーゼによって再環状化(セルフライゲーション)します。遺伝子Aが入らないため、遺伝子Zはすべて正常に機能します。したがって、生き残るコロニーはすべて青色となり、(う)「青コロニーのみ生える」になります。

STEP 2問6 (2) DNAリガーゼを加えない場合
リード文に「制限酵素の切断効率は100%で、切れ残ったプラスミドはなかった」とあります。DNAリガーゼを加えないと、すべてのプラスミドBは切断された直鎖状のままであり、環状のプラスミドに戻るものが1つもありません。そのため、アンピシリン耐性をもつ大腸菌が得られず、すべての大腸菌がアンピシリンで死滅するため、(か)「何も生えない」になります。

STEP 3問6 (3) 制限酵素を作用させない場合
プラスミドBは最初から切れ目のない「元の環状プラスミドB(YもZも正常)」のまま大腸菌に取り込まれます(遺伝子Aは組み込まれません)。したがって、プラスミドBを取り込んだ大腸菌はアンピシリン耐性を持ち、かつ遺伝子Zが正常に働くため、(う)「青コロニーのみ生える」になります。

STEP 4問6 (4) アンピシリンの代わりにカナマイシンを加える場合
プラスミドBがもっている遺伝子Yは「アンピシリン耐性遺伝子」であり、別の抗生物質である「カナマイシン」に対する耐性遺伝子はもっていません。したがって、プラスミドを取り込んだかどうかにかかわらず、すべての大腸菌がカナマイシンによって死滅するため、(か)「何も生えない」になります。

STEP 5問6 (5) 炭素源としてラクトースの代わりにグルコースを加える場合(超良問!)
大腸菌の「ラクトースオペロン」の発現調節を思い出しましょう!遺伝子Z(lacZ)が転写・翻訳されるためには、誘導物質であるラクトース(アロラクトース)が存在し、かつグルコースが存在しないことが必要です(グルコースがあるとcAMP濃度が下がり、CAPが結合できず、またラクトースがないとリプレッサーがオペレーターに結合したままになるため、遺伝子Zは発現しません)。
したがって、ラクトースの代わりにグルコースを加えると、遺伝子Zが正常なプラスミドをもつ大腸菌であっても遺伝子Zの転写・翻訳が抑制(オフに)されるため、色素結合基質が分解されず、生えてくるコロニーはすべて白色になります!よって、(い)「白コロニーのみ生える」が正解です。

STEP 6問7:目的の遺伝子Aを含むプラスミドを持つ大腸菌を増やす操作
上の図解の通り、遺伝子Zの翻訳領域に遺伝子Aが組み込まれたプラスミドをもつ大腸菌は、遺伝子Zが破壊されて色素を作れないため「白いコロニー」を形成しています。したがって、図2の白いコロニーから菌を採取(ピックアップ)し、アンピシリンを含む新しい培養液(または寒天培地)で培養して増殖させる操作を行います。

【問6 最終解答】
(1) (う) / (2) (か) / (3) (う) / (4) (か) / (5) (い)
【問7 最終解答】
図2の寒天培地上の白いコロニーから大腸菌を採取し、アンピシリンを含む新たな培養液(または培地)に移して培養する。

大問〔3〕 肝臓の構造と機能・窒素排出物・有機溶媒と胆管がん

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最後の大問〔3〕は、恒常性の要である「肝臓」の大特集!そして問6は、印刷工場などで実際に問題となった「有機溶媒(ジクロロプロパン等)の吸入による職業性胆管がん」を題材にした、まさに産業医科大学ならではの超重要考察問題だよ!
「なぜ解毒を行う肝臓ではなく、その下流の胆管ががんになるのか?」という問いは、図2・図3のグラフ(野生型と輸送体欠失型の比較)を落ち着いて読み取れば100%論理的に書けるよ!最後まで駆け抜けよう!

【問題文】〔3〕次の文章を読み、設問に答えなさい。

ヒトの肝臓は消化管に付属する最大の臓器で、約50万個の機能単位、〔 ア 〕から成る。肝臓には肝動脈の他に〔 イ 〕からも血液が流入しており、〔 イ 〕は〔 ウ 〕、脾臓と連絡している。

肝臓は様々な化学反応を行い血液中の物質の濃度を調節している。血しょう中のタンパク質はそのほとんどが肝臓で合成される。また、①体内に取り込まれたグルコースは肝臓で吸収、放出されることで血液中の濃度が一定に保たれる。

体内に取り込まれ、あるいは体内で生じた有害物質は、肝臓で毒性の低い物質に分解され、解毒される。②組織で不要になったタンパク質は分解、代謝されるが、その際に生じる有害なアンモニアは肝臓で無害な〔 エ 〕に変換される。〔 エ 〕は水溶性で腎臓から尿として排泄される。

古くなった赤血球は脾臓や肝臓で破壊されるが、赤血球のタンパク質に組み込まれた〔 オ 〕は放置すると活性酸素を生じ細胞傷害を引き起こすため速やかに分解される。〔 オ 〕の分解物はさらに肝臓でビリルビンに変換される。水に溶けにくいビリルビンはコレステロールの代謝物である胆汁酸と共に胆汁として排泄される。胆汁は〔 ア 〕の胆小管から胆管に集められ胆嚢に貯蔵、濃縮され十二指腸に分泌される。

問1・問2・問3・問4 肝臓の基本構造・血管・血しょうタンパク質・血糖調節

1. 〔 ア 〕〜〔 オ 〕に当てはまる語句を答えなさい。

2. 肝臓で作られる血しょうのタンパク質の名称を答えなさい。

3. 図1にヒトの血管の構造を示す。〔 イ 〕の構造はどれか、A〜Cより選び記号で答えなさい。

4. 下線部①について (1) 吸収されたグルコースはどうなるか、答えなさい。 (2) 肝臓にグルコースの放出を指令する物質の名称を答えなさい。

STEP 1問1:空欄〔 ア 〕〜〔 オ 〕の決定
・〔 ア 〕肝臓を構成する約50万個の六角柱状の機能単位は「肝小葉」です。
・〔 イ 〕・〔 ウ 〕肝臓に流入する血管には、大動脈から分岐した「肝動脈」のほかに、「胃や小腸(腸)などの消化管」〔 ウ 〕および脾臓から集まった血液を運ぶ「肝門脈(門脈)」〔 イ 〕があります。
・〔 エ 〕有害なアンモニアが肝臓のオルニチン回路(尿素回路)によって変換される無害な水溶性物質は「尿素」です。
・〔 オ 〕赤血球のヘモグロビン(グロビンというタンパク質+鉄を含む色素構造)のうち、タンパク質に組み込まれていて分解後にビリルビン(胆汁色素)に変換されるのは「ヘム」(または赤血球のタンパク質そのものとして「ヘモグロビン」)です。

STEP 2問2:肝臓で合成される血しょうタンパク質
血しょう中に含まれる主なタンパク質のうち、免疫グロブリン(抗体:形質細胞が産生)を除き、浸透圧維持や物質運搬を担う「アルブミン」や、血液凝固に関わる「フィブリノゲン(やプロトロンビン)」は肝臓で合成されます。

STEP 3問3:図1の血管A〜Cの判別と〔 イ 〕(肝門脈)の構造
図1の血管の模式図を見ると:
・A:平滑筋や弾性繊維からなる中膜が極めて厚い → 動脈
・B:中膜がAより薄く、内腔に逆流防止のための「弁(静脈弁)」がある → 静脈
・C:1層の内皮細胞のみからなる細い管 → 毛細血管
消化管の毛細血管から集まって肝臓へ流入する肝門脈〔 イ 〕は「静脈」の一種ですので、構造はBとなります。

STEP 4問4:肝臓でのグルコースの吸収と放出
・(1) 食後などに門脈血中のグルコース濃度が高くなると、インスリンの働きなどによって肝臓に吸収されたグルコースは、多糖類である「グリコーゲン」に合成されて肝細胞内に蓄えられます。
・(2) 空腹時(低血糖時)などに、肝臓のグリコーゲンを分解(または糖新生を促進)させて血液中へのグルコース放出を指令する血糖上昇ホルモンは、すい臓ランゲルハンス島A($\alpha$)細胞の「グルカゴン」、副腎髄質の「アドレナリン」、副腎皮質の「糖質コルチコイド」です。

【問1 最終解答】 〔 ア 〕肝小葉 / 〔 イ 〕肝門脈(門脈) / 〔 ウ 〕小腸(胃・腸などの消化管) / 〔 エ 〕尿素 / 〔 オ 〕ヘム(またはヘモグロビン)
【問2 最終解答】 アルブミン、フィブリノゲン(いずれかでも可)
【問3 最終解答】 B
【問4 最終解答】 (1) グリコーゲンに合成されて貯蔵される。 / (2) グルカゴン(またはアドレナリン、糖質コルチコイド)

問5 爬虫類と鳥類における窒素排出物と陸上生活への適応

5. 下線部②について、乾燥に強い殻を持った卵を産む爬虫類と鳥類では有害なアンモニアを無害化して排出するための化合物として、〔 エ 〕以外の化合物を用いている。

(1) この化合物の名称を答えなさい。

(2) 爬虫類と鳥類ではなぜこの化合物を用いているのか、「陸上生活」の語句を用いて理由を説明しなさい。

STEP 1(1) 動物の進化と3つの窒素排出物(アンモニア・尿素・尿酸)
・水生動物(硬骨魚類や両生類の幼生):水中に直接捨てられるためアンモニアのまま排出。
・両生類の成体・哺乳類:肝臓で水溶性の尿素〔 エ 〕に変えて尿として排出。
・爬虫類・鳥類(および昆虫類):水に溶けにくい「尿酸」に変えて結晶(固形・ペースト状)として排出。

STEP 2(2) なぜ「陸上生活」と「殻のある卵」に尿酸が有利なのか?
理由は大きく2つの視点(成体の水分保持+卵内の胚発生)があります!
① 成体の水分節約:陸上生活では常に乾燥の危険があり水分の摂取が限られるため、水に溶けにくい(難溶性の)尿酸にすることで、排出に伴う水分の損失を最小限に抑えることができる。
② 閉鎖された殻の中の卵での発生:陸上生活に適応した「乾燥に強い殻を持った卵」の内部では、発生中の胚が老廃物を卵の外へ捨てることができません。もし水溶性の尿素をため込むと卵内の浸透圧が上昇して胚が死んでしまいますが、水に不溶の尿酸であれば結晶として析出するため、卵内の浸透圧を上げずに無害な状態で孵化まで蓄積しておくことができるのです。

【問5 (1) 最終解答】 尿酸
【問5 (2) 最終解答】 陸上生活では水分の確保が限られ乾燥しやすいため、水に難溶の尿酸として結晶の形で排出することで排出に伴う水分の損失を抑えられ、また殻に包まれた卵内で発生する胚も卵内の浸透圧を上昇させずに老廃物を蓄積できるため。

問6・問7 有機溶媒Xの代謝・輸送体と胆管がんの誘発・体温維持における肝臓の役割

6. 有機溶媒Xは吸入すると肝臓で代謝、解毒されるが胆管がんを誘発することが報告されている。Xをラットに与え、肝臓におけるXの代謝産物の分布を調べた。図2に肝臓組織に含まれるXの代謝産物の量を、図3に胆汁へ移行したXの代謝産物の量を、それぞれ測定した結果を示す。欠失型は肝細胞の輸送体の1つを失ったものである。a, bはそれぞれ異なる構造を持つXの代謝産物でaはその構造からまだ発がん性を残していると予想される。

(1) 野生型と欠失型でXが肝臓で代謝された後、それぞれどうなるか、答えなさい。

(2) なぜ解毒を行う肝臓ではなく胆管にがんが誘発されるのか、その理由を説明しなさい。

7. 肝臓は内分泌系による体温維持にも重要な役割を果たしている。肝臓の果たす役割について「甲状腺」「副腎」の語句を用いて説明しなさい。

🔬 【超図解】図2・図3のグラフ比較と「肝細胞→胆管」への輸送メカニズム

図2(肝組織中)と図3(胆汁中)の読み取り ラット 図2:肝組織中(a,b) 図3:胆汁中(a,b) 野生型 極めて少ない (a極少・b検出せず) 多量に存在! 欠失型 (輸送体なし) 多量に蓄積! 0(検出せず) なぜ肝臓ではなく「胆管」ががんになるのか? 肝細胞(野生型) 有機溶媒Xを代謝 → 代謝産物a(発がん性) ※すぐ排出されるため安全 輸送体 胆汁・胆管内 高濃度の代謝産物a が胆汁へ濃縮移行! 👉 胆管にがんを誘発! 結論:肝細胞は輸送体でaをすぐ胆汁へ出すため、排出先の胆管が被曝する!

STEP 1問6 (1) 図2・図3から読み取る「野生型」と「欠失型」の違い
図2(肝組織中の量)と図3(胆汁中の量)を見比べると一目瞭然です!
・野生型(正常な輸送体をもつラット):有機溶媒Xが肝臓で代謝されて生じた代謝産物aおよびbは、肝細胞の輸送体によって速やかに胆汁中へと排出(移行)されるため、肝組織内にはほとんど残らない(代謝産物aがごくわずかに検出されるのみ)。
・欠失型(輸送体を失ったラット):有機溶媒Xが肝臓で代謝されて生じた代謝産物aおよびbを胆汁中へ排出することができず、胆汁中にはまったく移行しないため、肝組織(肝細胞)内に多量に蓄積する。

STEP 2問6 (2) なぜ解毒を行う肝臓ではなく「胆管」にがんが誘発されるのか?
問題文に「aはその構造からまだ発がん性を残していると予想される」という重要なヒントがあります。
通常の個体(野生型)では、有機溶媒Xが肝細胞内で代謝されて発がん性をもつ代謝産物aが生じても、肝細胞の輸送体によって速やかに胆汁中へとくみ出されるため、肝細胞内にはほとんど蓄積せず肝臓はがん化しにくいのです。
ところが、胆汁中へ排出された発がん性の代謝産物aは、胆汁の通り道である「胆管」へと高濃度で集まり、胆管の上皮細胞が発がん性をもつ代謝産物aに長時間さらされることになるため、胆管にがんが誘発されるというわけです!

STEP 3問7 体温維持における肝臓の役割(「甲状腺」「副腎」を用いて説明)
寒冷刺激を受けたときなどの内分泌系による体温上昇メカニズムを思い出しましょう。
間脳の視床下部が寒冷を感知すると:
① 脳下垂体前葉から甲状腺刺激ホルモンが分泌され、「甲状腺」からチロキシン(甲状腺ホルモン)が分泌されます。
② 交感神経を通じて「副腎」髄質からアドレナリンが分泌されます(また、脳下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモンにより「副腎」皮質から糖質コルチコイドも分泌されます)。
これらのホルモンが体内最大の化学工場である肝臓に作用すると、肝臓でのグリコーゲン分解や物質の代謝(呼吸などの発熱を伴う化学反応)が促進され、熱産生量が増加することで体温が維持されるという重要な役割を果たしています。

【問6 (1) 最終解答】
野生型ではXの代謝産物a・bは輸送体によって速やかに胆汁中へ排出され肝組織内にはほとんど残らないが、欠失型では胆汁中へ排出されず肝組織(肝細胞)内に多量に蓄積する。
【問6 (2) 最終解答】
正常な肝細胞では、発がん性をもつ代謝産物aが生成されても輸送体によって速やかに胆汁中へ排出されるため肝臓内にはほとんど残らないが、胆汁と共に排出された先の胆管内を通過・滞留する際に胆管の上皮細胞が高濃度の代謝産物aにさらされるため。
【問7 最終解答】
甲状腺から分泌されるチロキシンや副腎髄質から分泌されるアドレナリンが肝臓に作用すると、肝臓でのグリコーゲンの分解や物質の代謝(化学反応)が促進され、熱産生量が増加することで体温の上昇・維持に寄与する役割。
Sora先生
🎉 全問完走おつかれさま!

産業医科大学(2023年度)の生物、全3大問の完全ステップ解説を最後までやり切ったね!素晴らしい集中力だよ!

特に大問〔1〕の免疫応答の作図とmRNAワクチン、大問〔2〕の青白選択の5条件変化(特にグルコースによるラクトースオペロン抑制!)、そして大問〔3〕の輸送体による胆管がん誘発メカニズムは、他の医学部の入試でもそのまま応用できる超重要テーマばかりです。間違えた問題や記述が曖昧だった問題は、もう一度STEP解説を読み返して自分の言葉で再現できるようにしておこうね!TMPS医学館のSora先生とニックニ先生は、君の医学部合格を心から応援しています!

Sora先生
Sora先生 ✕ ニックニ先生からのメッセージ

過去問演習で時間を溶かしていませんか?
合格の鍵は「全科目の時間配分(バランス調整)」にあります。

私立医学部の入試は、1科目だけできても受かりません。「計算に時間をかけすぎて他科目が崩れる」「推薦対策と一般入試の両立で手が止まっている」——そんな悩みを、TMPS医学館のニックニ先生と一緒に50分で整理しませんか?

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