📌 試験冒頭で与えられた共通条件・原子量・定数
$\text{H} = 1.0$, $\text{C} = 12$, $\text{N} = 14$, $\text{O} = 16$, $\text{S} = 32$, $\text{Ca} = 40$
気体 $1\,\text{mol}$ の体積 $= 22.4\,\text{L}$
$R = 8.3 \times 10^3\,\text{Pa}\cdot\text{L}/(\text{mol}\cdot\text{K})$
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
すべてマークシート形式(全30マーク)大問 1(小問集合:解答番号 1〜10)
大問 2(浸透圧と高分子の分子量:解答番号 1〜8)
大問 3(硫黄とその化合物・接触法:解答番号 1〜5)
大問 4(ジエステルの構造決定と異性体:解答番号 1〜7)
小問集合(理論・無機・有機の基礎〜標準10題)
獨協医大の大問1は、全分野からまんべんなく10問出題されるスピード勝負のセクションだよ!
目標時間は10問で12〜15分。ひっかけポイントとして、問3の「すす(無定形炭素)」、問5の中和滴定の「ホールピペットの共洗い・硫酸の価数」、問9の「芳香族二置換体の数え上げ」、問10の「セッケンに塩酸を加えたときに生じるのは塩(えん)ではなく弱酸(高級脂肪酸)の遊離!」あたりが合否を分ける超頻出トラップだから、1つずつ確実に潰していこう!
問1 混合物の分離操作 解答番号 [ 1 ]
【問題】混合物から目的の物質を取り出す操作に関する記述と、その操作法の組合せとして最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
| 番号 | 操作 | 操作法 |
|---|---|---|
| ① | 茶葉からカフェインを取り出す。 | 再結晶 |
| ② | 少量の塩化ナトリウムを含む硝酸カリウムから硝酸カリウムを取り出す。 | 昇華法 |
| ③ | ヨウ素とヨウ化カリウムの混合物からヨウ素を取り出す。 | クロマトグラフィー |
| ④ | 砂の混じった海水から砂を取り除く。 | 抽出 |
| ⑤ | 水と塩化ナトリウムの混合物から水を取り出す。 | 蒸留 |
| ⑥ | 黒のサインペンの色素を分離する。 | ろ過 |
【1ステップ完全解説】すべての選択肢の正しい操作法を確認しよう!
- ① 誤り:茶葉からお湯や有機溶媒に溶けやすいカフェインやカテキンを溶かし出す操作は「抽出」です(なお、固体の茶葉を直接加熱して気化させる実験では「昇華法」も使われますが、再結晶ではありません)。
- ② 誤り:温度による溶解度の差を利用して、不純物(少量の $\text{NaCl}$)を含む硝酸カリウム($\text{KNO}_3$)から純粋な $\text{KNO}_3$ の結晶を取り出す操作は「再結晶」です。
- ③ 誤り:ヨウ素($\text{I}_2$)は昇華性(固体 $\leftrightarrow$ 気体)をもつ分子結晶なので、加熱して気化させたのち冷却してヨウ素の結晶を取り出す操作は「昇華法」です。
- ④ 誤り:液体(海水)とそれに溶けない固体(砂)をろ紙などで分離する操作は「ろ過」です。
- ⑤ 正しい:不揮発性の溶質(塩化ナトリウム)が溶けた水溶液を加熱して沸騰させ、発生した水蒸気を冷却して純粋な液体(水)を取り出す操作は「蒸留」です。
- ⑥ 誤り:ろ紙やシリカゲルなどの吸着剤に対する吸着力の違いを利用して色素などを分離する操作は「クロマトグラフィー(ペーパークロマトグラフィー)」です。
問2 同位体の存在率と原子量の文字式計算 解答番号 [ 2 ]
【問題】原子 $\text{A}$ の原子量は $M$ である。$\text{A}$ には、$\text{A}_1$ と $\text{A}_2$ の同位体のみが存在し、$\text{A}_1$ の相対質量を $a$ とする。$\text{A}_2$ の相対質量が $\text{A}_1$ の相対質量より $2$ だけ大きいとき、$\text{A}_1$ の存在率 $x\,\text{[\%]}$ を $M$ および $a$ を用いて表した式として最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
Step 1:各同位体の相対質量と存在率を整理する
- 同位体 $\text{A}_1$:相対質量 $= a$、存在率 $= x\,\text{[\%]}$
- 同位体 $\text{A}_2$:相対質量は $\text{A}_1$ より $2$ 大きいので $a + 2$。同位体は $\text{A}_1$ と $\text{A}_2$ のみなので、存在率の合計は $100\,\text{\%}$ です。よって $\text{A}_2$ の存在率は $(100 - x)\,\text{[\%]}$ となります。
Step 2:原子量 $M$(平均の相対質量)の定義式を立てて $x$ について解く
原子量 $M$ は、それぞれの相対質量に存在率(割合 $\dfrac{x}{100}$)を掛けて足し合わせた期待値(加重平均)です。
$$M = a \times \frac{x}{100} + (a + 2) \times \frac{100 - x}{100}$$両辺に $100$ を掛けて分母を払います。
$$100M = ax + (a + 2)(100 - x)$$右辺を展開して整理しましょう。
$$100M = ax + 100a - ax + 200 - 2x$$$ax$ と $-ax$ がきれいに消えます!
$$100M = 100a + 200 - 2x$$$-2x$ を左辺に、$100M$ を右辺に移項します。
$$2x = 100a - 100M + 200$$両辺を $2$ で割ると、求める $x$ の式が得られます。
$$x = 50a - 50M + 100$$問3 結晶の分類(分子結晶の選択) 解答番号 [ 3 ]
【問題】次の(a)〜(e)のうち、結晶構造をもち、それが分子結晶に分類されるものの組合せとして最も適切なものを、下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
(a) 塩化アンモニウム (b) 氷 (c) すす (d) ドライアイス (e) 二酸化ケイ素
【1ステップ完全解説】(a)〜(e)の結合と結晶の種類を分類しよう!
- (a) 塩化アンモニウム($\text{NH}_4\text{Cl}$):アンモニウムイオン $\text{NH}_4^+$(陽イオン)と塩化物イオン $\text{Cl}^-$(陰イオン)がイオン結合で規則正しく並んだ「イオン結晶」です(※昇華性をもつ例外的なイオン結晶なので、分子結晶と勘違いしないように注意!)。
- (b) 氷($\text{H}_2\text{O}$):水分子 $\text{H}_2\text{O}$ が分子間力(主に水素結合)によって規則正しく並んだ「分子結晶」です。
- (c) すす(無定形炭素 $\text{C}$):炭素の同素体(ダイヤモンド、黒鉛、フラーレン、無定形炭素)のうち、すすや木炭などの無定形炭素は規則正しい配列をもたない「非晶質(アモルファス)」であり、そもそも結晶構造をもちません(なお、フラーレン $\text{C}_{60}$ なら分子結晶です)。
- (d) ドライアイス($\text{CO}_2$):二酸化炭素分子 $\text{CO}_2$ が分子間力(ファンデルワールス力)によって規則正しく並んだ「分子結晶」です。
- (e) 二酸化ケイ素($\text{SiO}_2$):$\text{Si}$ 原子と $\text{O}$ 原子が共有結合で三次元の網目状に無限につながった「共有結合の結晶」です。
したがって、分子結晶に分類されるのは (b) と (d) の組合せです。
問4 実在気体の圧縮率因子 $Z$ と分子量の大小 解答番号 [ 4 ]
【問題】実在気体が理想気体からどれだけずれているかを示す値として、圧縮率因子 $Z = \dfrac{PV}{nRT}$ がある。次の図の各曲線は、ある温度における気体 $\text{A}\sim\text{C}$ の $Z$ と $P\,\text{[Pa]}$ の関係を示している。なお、$\text{A}\sim\text{C}$ はいずれも無極性分子である。$\text{A}\sim\text{C}$ の分子量の大小関係として最も適切なものを、下の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
Step 1:グラフの下へのへこみ($Z < 1$)の原因を理解する
中程度の圧力領域で $Z = \dfrac{PV}{nRT}$ が理想気体の値である $1$ より小さくなる(グラフが下に沈む)のは、「分子間力(引力)」が働くことで気体分子同士が引き合い、体積 $V$(または壁を押す圧力 $P$)が理想気体より小さくなるためです。
Step 2:無極性分子における分子間力と分子量の関係
$\text{A}\sim\text{C}$ はすべて無極性分子なので、働く分子間力はファンデルワールス力のみです。ファンデルワールス力は「分子量が大きいほど強くなる」という鉄則があります。
- 分子量が大きいほど $\rightarrow$ 分子間力(引力)が強い $\rightarrow$ 理想気体からのずれ($Z < 1$ へのへこみ)が大きくなる!
グラフを見ると、下に大きくへこんでいる順(分子間力が強い順)は $\text{C} > \text{B} > \text{A}$ です(例えば $\text{A}=\text{H}_2$(分子量2)、$\text{B}=\text{N}_2$(分子量28)、$\text{C}=\text{CO}_2$(分子量44)や $\text{CH}_4$ などが典型例です)。したがって、分子量の大小関係も $\text{C} > \text{B} > \text{A}$ となります。
問5 中和滴定の実験操作・指示薬・濃度計算の正誤 解答番号 [ 5 ]
【問題】次の中和滴定に関する文中の下線部(a)〜(c)のうち、誤りを含むものをすべて選んだものとして最も適切なものを、下の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。
(a) 純水で洗って、内部に少量の水滴がついた状態のホールピペットを用いて濃度未知の硫酸を $10.0\,\text{mL}$ はかり取り、コニカルビーカーに入れ、これに(b) 指示薬としてメチルオレンジを数滴加えた。この水溶液を $0.10\,\text{mol/L}$ の水酸化ナトリウム水溶液を用いて滴定したところ、$10.0\,\text{mL}$ を滴下したところで水溶液の色が変化したので滴定の終点とした。この結果から(c) 硫酸の濃度は $0.10\,\text{mol/L}$ であると結論づけた。
【1ステップ完全解説】下線部(a)・(b)・(c)を1つずつ厳密にチェック!
-
(a) 誤り(共洗いが必要):
ホールピペットやビュレットは、純水で洗ったまま水滴がついていると、はかり取る溶液(ここでは硫酸)が薄まってしまいます。そのため、使用する溶液で内部を数回すすぐ「共洗い(ともあらい)」をするか、完全に乾燥させてから用いなければなりません(※逆に、コニカルビーカーは中に入る溶質の物質量が変わらないため、純水で洗って水滴がついたままでOKです)。 -
(b) 誤り(指示薬の選択ミス):
硫酸($\text{H}_2\text{SO}_4$、強酸)を水酸化ナトリウム($\text{NaOH}$、強塩基)で滴定する強酸と強塩基の中和ですが、滴下する側が強塩基($\text{NaOH}$)であり、また硫酸の第2段階の電離($\text{HSO}_4^- \rightleftarrows \text{H}^+ + \text{SO}_4^{2-}$)は完全ではないため、中和点付近のpHジャンプを正確にとらえて強塩基による滴定の終点を鋭敏に判定するには、塩基性側(変色域 $\text{pH } 8.0\sim 9.8$、無色 $\rightarrow$ 赤色)で変色するフェノールフタレインを用いるのが適切です(メチルオレンジは変色域が $\text{pH } 3.1\sim 4.4$ と酸性側に偏りすぎており、第2中和点の手前で変色が始まりやすく、また赤 $\rightarrow$ 黄の変色も終点が見分けにくいため不適切とされます)。 -
(c) 誤り(硫酸は2価の酸!):
硫酸($\text{H}_2\text{SO}_4$)は2価の酸、水酸化ナトリウム($\text{NaOH}$)は1価の塩基です。硫酸の濃度を $c\,\text{[mol/L]}$ とすると、中和の量的関係式より、 $$2 \times c\,\text{[mol/L]} \times \frac{10.0}{1000}\,\text{[L]} = 1 \times 0.10\,\text{[mol/L]} \times \frac{10.0}{1000}\,\text{[L]}$$ $$2c = 0.10 \quad \Longleftrightarrow \quad c = 0.050\,\text{mol/L}$$ となります。したがって「$0.10\,\text{mol/L}$」という結論は誤りです。
以上より、(a)・(b)・(c)のすべてが誤りを含みます(※仮に(b)で迷ったとしても、選択肢に「(a)と(c)」のほかに「(a)と(b)と(c)」があり、高校化学の実験操作では強酸を強塩基で滴定する際はフェノールフタレインを用いるのが原則です)。
問6 電気分解で発生する気体の合計物質量の比較 解答番号 [ 6 ]
【問題】次の水溶液と電極を用いた電気分解装置に一定量の電流を一定時間流して、電気分解によって発生した気体をすべて捕集した。このとき、捕集された気体の物質量が最も多い水溶液と各電極の物質の組合せとして最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。ただし、発生した気体は水溶液に溶けないものとする。
| 番号 | 水溶液 | 陽極 | 陰極 |
|---|---|---|---|
| ① | 水酸化ナトリウム水溶液 | 炭素 | 鉄 |
| ② | 塩化ナトリウム水溶液 | 白金 | 白金 |
| ③ | 硫酸カリウム水溶液 | 炭素 | 炭素 |
| ④ | 塩化銅(II)水溶液 | 白金 | 銅 |
| ⑤ | 硫酸銅(II)水溶液 | 銅 | 銅 |
| ⑥ | 硝酸銀水溶液 | 炭素 | 炭素 |
Step 1:流れた電子 $\text{e}^-$ を $1\,\text{mol}$ とおいて、各極で発生する気体の物質量を計算する!
一定量の電流を一定時間流したので、流れた電子 $\text{e}^-$ の物質量はすべて同じです。計算しやすいように、流れた電子 $\text{e}^- = 1\,\text{mol}$ としましょう。
| 選択肢 | 陽極の反応と気体($\text{e}^-=1\,\text{mol}$ あたり) | 陰極の反応と気体($\text{e}^-=1\,\text{mol}$ あたり) | 気体合計 |
|---|---|---|---|
| ① | $4\text{OH}^- \rightarrow \text{O}_2\uparrow + 2\text{H}_2\text{O} + 4\text{e}^-$ $\text{O}_2$ が $\dfrac{1}{4} = 0.25\,\text{mol}$ |
$2\text{H}_2\text{O} + 2\text{e}^- \rightarrow \text{H}_2\uparrow + 2\text{OH}^-$ $\text{H}_2$ が $\dfrac{1}{2} = 0.50\,\text{mol}$ |
$0.75\,\text{mol}$ |
| ② | $2\text{Cl}^- \rightarrow \text{Cl}_2\uparrow + 2\text{e}^-$ $\text{Cl}_2$ が $\dfrac{1}{2} = 0.50\,\text{mol}$ |
$2\text{H}_2\text{O} + 2\text{e}^- \rightarrow \text{H}_2\uparrow + 2\text{OH}^-$ $\text{H}_2$ が $\dfrac{1}{2} = 0.50\,\text{mol}$ |
$1.00\,\text{mol}$(最大!) |
| ③ | $2\text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{O}_2\uparrow + 4\text{H}^+ + 4\text{e}^-$ $\text{O}_2$ が $0.25\,\text{mol}$ |
$2\text{H}_2\text{O} + 2\text{e}^- \rightarrow \text{H}_2\uparrow + 2\text{OH}^-$ $\text{H}_2$ が $0.50\,\text{mol}$ |
$0.75\,\text{mol}$ |
| ④ | $2\text{Cl}^- \rightarrow \text{Cl}_2\uparrow + 2\text{e}^-$ $\text{Cl}_2$ が $0.50\,\text{mol}$ |
$\text{Cu}^{2+} + 2\text{e}^- \rightarrow \text{Cu}$(銅が析出) 気体 $0\,\text{mol}$ |
$0.50\,\text{mol}$ |
| ⑤ | $\text{Cu} \rightarrow \text{Cu}^{2+} + 2\text{e}^-$(銅極が溶解) 気体 $0\,\text{mol}$ |
$\text{Cu}^{2+} + 2\text{e}^- \rightarrow \text{Cu}$(銅が析出) 気体 $0\,\text{mol}$ |
$0\,\text{mol}$ |
| ⑥ | $2\text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{O}_2\uparrow + 4\text{H}^+ + 4\text{e}^-$ $\text{O}_2$ が $0.25\,\text{mol}$ |
$\text{Ag}^+ + \text{e}^- \rightarrow \text{Ag}$(銀が析出) 気体 $0\,\text{mol}$ |
$0.25\,\text{mol}$ |
酸素 $\text{O}_2$ は $1\,\text{mol}$ 発生するのに電子が $4\,\text{mol}$ 必要ですが、塩素 $\text{Cl}_2$ と水素 $\text{H}_2$ はどちらも電子 $2\,\text{mol}$ で気体 $1\,\text{mol}$ が発生します。したがって、陽極で $\text{Cl}_2$、陰極で $\text{H}_2$ が発生する ② が最も多くなります。
問7 17族元素(ハロゲン)の性質 解答番号 [ 7 ]
【問題】周期表の第2周期から第5周期の17族元素に関する記述として誤りを含むものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
- ① 単体はいずれも二原子分子として存在する。
- ② 単体の酸化力は原子番号が小さいものほど強い。
- ③ 水素化物の沸点は分子量が大きいものほど高い。
- ④ 水素化物はいずれも水によく溶ける。
- ⑤ 銀イオンとの塩は水に溶けるものがある。
- ⑥ カルシウムイオンとの塩は吸湿性をもつものがある。
【1ステップ完全解説】第2〜第5周期の17族元素は $\text{F}, \text{Cl}, \text{Br}, \text{I}$ の4つ!
- ① 正しい:単体は $\text{F}_2, \text{Cl}_2, \text{Br}_2, \text{I}_2$ であり、いずれも二原子分子です。
- ② 正しい:ハロゲン単体の酸化力は、電気陰性度が大きく陰イオンになりやすい順、すなわち原子番号が小さい順に $\text{F}_2 > \text{Cl}_2 > \text{Br}_2 > \text{I}_2$ となります。
- ③ 誤り:ハロゲンの水素化物($\text{HF}, \text{HCl}, \text{HBr}, \text{HI}$)のうち、分子量が最も小さい フッ化水素 $\text{HF}$ は分子間に強い「水素結合」を形成するため、沸点が異常に高く(約 $19.5\,^\circ\text{C}$)、沸点の順は $\text{HF} > \text{HI} > \text{HBr} > \text{HCl}$ となります。「分子量が大きいものほど高い」は誤りです。
- ④ 正しい:$\text{HF}, \text{HCl}, \text{HBr}, \text{HI}$ はいずれも極性分子であり、水によく溶けて酸性を示します($\text{HF}$ のみ弱酸、他3つは強酸)。
- ⑤ 正しい:ハロゲン化銀のうち、$\text{AgCl}$(白)、$\text{AgBr}$(淡黄)、$\text{AgI}$(黄)は水に難溶ですが、フッ化銀(I) $\text{AgF}$ は水によく溶けます。
- ⑥ 正しい:塩化カルシウム $\text{CaCl}_2$ は強い吸湿性(潮解性)をもち、乾燥剤(中性乾燥剤)として広く用いられます。
問8 鉄(III)イオン $\text{Fe}^{3+}$ の沈殿・呈色反応 解答番号 [ 8 ]
【問題】次の文中の空欄 [ ア ],[ イ ] に入る語句の組合せとして最も適切なものを、下の①〜⑨のうちから一つ選びなさい。
塩化鉄(III)の水溶液を2本の試験管に取り、片方の試験管に [ ア ] の水溶液を加えると濃青色の沈殿が生じた。また、もう片方の水溶液にアンモニア水を加えると [ イ ] 色の沈殿が生じた。
Step 1:塩化鉄(III) $\text{FeCl}_3$ 水溶液に含まれるのは $\text{Fe}^{3+}$(3価の鉄イオン)!
-
空欄 [ ア ]:$\text{Fe}^{3+}$ を含む水溶液に加えて「濃青色の沈殿(プルシアンブルー / ベルリン青)」を生じる試薬は、鉄の価数が異なる ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム $\text{K}_4[\text{Fe(CN)}_6]$ です。
(※チオシアン酸カリウム $\text{KSCN}$ を加えると沈殿ではなく「血赤色の溶液」になり、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム $\text{K}_3[\text{Fe(CN)}_6]$ を加えると「褐色溶液」になります。) - 空欄 [ イ ]:$\text{Fe}^{3+}$ にアンモニア水(塩基)を加えると、水酸化鉄(III) $\text{Fe(OH)}_3$ の「赤褐色沈殿」が生じます(緑白色沈殿は2価の $\text{Fe(OH)}_2$ です)。 $$\text{Fe}^{3+} + 3\text{OH}^- \longrightarrow \text{Fe(OH)}_3\downarrow\text{(赤褐色)}$$
問9 芳香族化合物 $\text{C}_8\text{H}_9\text{Cl}$ の二置換ベンゼン異性体数 解答番号 [ 9 ]
【問題】分子式が $\text{C}_8\text{H}_9\text{Cl}$ で表される芳香族化合物のうち、ベンゼン環の水素原子が2つ置換された化合物は何種類あるか。その数として最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
Step 1:ベンゼン環の2つの置換基の組合せを特定する
ベンゼン環の水素原子が2つ置換された構造(二置換ベンゼン)は $\text{C}_6\text{H}_4(\text{X})(\text{Y})$ と表せます。分子式 $\text{C}_8\text{H}_9\text{Cl}$ からベンゼン環部分 $\text{C}_6\text{H}_4$ を引き算すると、残りの原子は、
$$\text{C}_8\text{H}_9\text{Cl} - \text{C}_6\text{H}_4 = \text{C}_2\text{H}_5\text{Cl}$$この $\text{C}_2\text{H}_5\text{Cl}$ を2つの置換基 $\text{X}$ と $\text{Y}$ に分ける方法は、炭素数 $(2, 0)$ に分けるか、炭素数 $(1, 1)$ に分けるかの 2パターン があります!
パターンA:炭素数 $(2, 0)$ に分ける
置換基が エチル基($-\text{CH}_2\text{CH}_3$) と クロロ基($-\text{Cl}$) の組合せ。
ベンゼン環上の配置は、
- o-(オルト位)
- m-(メタ位)
- p-(パラ位)
$\longrightarrow$ 3種類
パターンB:炭素数 $(1, 1)$ に分ける
置換基が メチル基($-\text{CH}_3$) と クロロメチル基($-\text{CH}_2\text{Cl}$) の組合せ。
ベンゼン環上の配置は、
- o-(オルト位)
- m-(メタ位)
- p-(パラ位)
$\longrightarrow$ 3種類
(なお、いずれの構造にも不斉炭素原子は存在しません。)
したがって、合計 $3 + 3 = \mathbf{6}$ 種類 となります。
問10 セッケンと合成洗剤の性質 解答番号 [ 10 ]
【問題】セッケンと合成洗剤に関する記述として、誤りを含むものを次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
- ① セッケンは油脂を水酸化ナトリウムで加水分解すると得られる。
- ② セッケン水にフェノールフタレインを加えると水溶液は赤色に呈色する。
- ③ セッケン水に塩酸を加えると白色の塩が生じる。
- ④ セッケン水中のセッケンは炭化水素基を内側に向けて会合している。
- ⑤ 1-ドデカノールの硫酸エステルである硫酸水素ドデシルのナトリウム塩は合成洗剤として利用されている。
- ⑥ 合成洗剤は硬水中でも使用することができる。
【1ステップ完全解説】③の「白色の塩が生じる」という巧妙なひっかけに注意!
- ① 正しい:油脂(高級脂肪酸のグリセリンエステル)を水酸化ナトリウムでけん化(塩基による加水分解)すると、高級脂肪酸ナトリウム(セッケン)とグリセリンが得られます。
- ② 正しい:セッケン($\text{R-COONa}$)は弱酸(高級脂肪酸)と強塩基($\text{NaOH}$)の塩なので、水に溶けると加水分解($\text{R-COO}^- + \text{H}_2\text{O} \rightleftarrows \text{R-COOH} + \text{OH}^-$)を起こして塩基性を示し、フェノールフタレインで赤色に呈色します。
- ③ 誤り:セッケン水($\text{R-COONa}$)に強酸である塩酸($\text{HCl}$)を加えると、弱酸の遊離反応が起こり、水に溶けにくい「高級脂肪酸($\text{R-COOH}$、弱酸)」の白色沈殿が生じます。 $$\text{R-COONa} + \text{HCl} \longrightarrow \text{R-COOH}\downarrow\text{(高級脂肪酸=酸であり、塩ではない!)} + \text{NaCl}$$ ここで生じる塩($\text{NaCl}$)は水に溶けており、白色沈殿は「塩」ではなく「遊離した高級脂肪酸(酸)」です!(※硬水中の $\text{Ca}^{2+}$ や $\text{Mg}^{2+}$ と反応したときは不溶性の塩 $(\text{R-COO})_2\text{Ca}$ が沈殿しますが、塩酸を加えたときは酸が遊離します。)
- ④ 正しい:セッケン分子は疎水基(炭化水素基)を内側に、親水基($-\text{COO}^-$)を外側(水側)に向けて数十〜数百個が会合し、ミセル(親水コロイド)を形成します。
- ⑤・⑥ 正しい:硫酸ドデシルナトリウム($\text{CH}_3(\text{CH}_2)_{11}\text{OSO}_3\text{Na}$)は強酸(硫酸エステル)と強塩基の塩であり、水溶液は中性で、$\text{Ca}^{2+}$ や $\text{Mg}^{2+}$ を含む硬水中でも沈殿を生じないため合成洗剤として利用できます。
溶液の浸透圧(U字管の液面差・高分子化合物の分子量測定)
大問2は、医学部入試で超頻出の「U字管の浸透圧(液面差 $h$ を伴う希釈の計算)」と、応用力を見る「高分子溶液の浸透圧の濃度外挿法($\Pi/W$ を $W \to 0$ に外挿する計算)」の2本立て!
特に問2(1)では「液面差が $h\,\text{cm}$ になったとき、B側からA側へ移動した水の体積は $S \times \dfrac{h}{2}\,\text{cm}^3$ である($Sh$ ではない!)」という鉄則と、問3(2)の「表の $\Pi/W$ が濃度の1次関数になっていることに気づいて $W = 0$ の切片を求める」ステップが最大の山場だよ。図解と一緒に完璧にマスターしよう!
問1 浸透圧の法則名 解答番号 [ 1 ]
【問題文】低分子化合物の(a) 希薄溶液の浸透圧は、溶液のモル濃度と絶対温度に比例する。これを [ ア ] の法則という。一方で、高分子化合物の場合、溶液の濃度が大きくなるにつれて [ ア ] の法則からのずれが大きくなる。しかしながら、(b) 溶液を希釈し、濃度が限りなくゼロに近づくと [ ア ] の法則が成立するとみなせることが知られている。
問1 文中の空欄 [ ア ] に入る語句として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。
希薄溶液の浸透圧 $\Pi$ がモル濃度 $C$ と絶対温度 $T$ に比例する($\Pi = CRT$)という法則を「ファントホッフの法則」といいます。
問2 (1)・(2) U字管の液面差 $h$ と平衡時のモル濃度 $C$・分子量 $M$ 解答番号 [ 2 ]・[ 3 ]
【問題】下線部(a)について、次の図のように、断面積 $S\,\text{[cm}^2\text{]}$ のU字管の中央部を半透膜で仕切り、A側には分子量 $M$ の非電解質 $w\,\text{[g]}$ を水に溶かし、$1\,\text{L}$ とした水溶液 $\text{X}$ を $V\,\text{[mL]}$ 入れ、B側には同じ高さまで純水を入れた。温度 $T\,\text{[K]}$ のもとで放置すると、一方の液面が上昇し、やがて両液面の差が $h\,\text{[cm]}$ になって停止した。
(1) 液面差が $h\,\text{[cm]}$ となったときのA側の水溶液のモル濃度 $C\,\text{[mol/L]}$ を表す式として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。
(2) 非電解質の分子量 $M$ を表す式として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。ただし、気体定数を $R\,\text{[Pa}\cdot\text{L/(mol}\cdot\text{K)]}$ とし、両液面の差が $1\,\text{cm}$ のときの浸透圧が $98\,\text{Pa}$ に相当するものとする。
💡 なぜA側の体積増加量は $S \times \dfrac{h}{2}$ なの?
最初、A側とB側の液面は同じ高さにありました。B側(純水)からA側(水溶液)へ水が移動して、B側の液面が $\dfrac{h}{2}\,\text{cm}$ 下がり、A側の液面が $\dfrac{h}{2}\,\text{cm}$ 上がると、両液面の高低差がちょうど $\dfrac{h}{2} - \left(-\dfrac{h}{2}\right) = h\,\text{[cm]}$ になります!
したがって、A側に流入した水の体積 $\Delta V$ は($1\,\text{cm}^3 = 1\,\text{mL}$ より)、
$$\Delta V = S\,\text{[cm}^2\text{]} \times \frac{h}{2}\,\text{[cm]} = \frac{Sh}{2}\,\text{[cm}^3\text{]} = \frac{Sh}{2}\,\text{[mL]}$$【(1)の解説】A側の溶質の物質量 $n$ と、停止時のA側の体積 $V_{\text{A}}$ を求める
まず、水溶液 $\text{X}$ は「分子量 $M$ の非電解質 $w\,\text{[g]}$(すなわち $\dfrac{w}{M}\,\text{[mol]}$)を水に溶かして $1\,\text{L}$($=1000\,\text{mL}$)とした水溶液」なので、水溶液 $\text{X}$ の元のモル濃度 $C_0$ は、
$$C_0 = \frac{w}{M}\,\text{[mol/L]}$$この水溶液 $\text{X}$ をA側に $V\,\text{[mL]} = \dfrac{V}{1000}\,\text{[L]}$ 入れたので、A側に入っている非電解質(溶質)の物質量 $n\,\text{[mol]}$ は、
$$n = C_0 \times \frac{V}{1000} = \frac{wV}{1000M}\,\text{[mol]}$$次に、液面差が $h\,\text{[cm]}$ になったときのA側の水溶液の体積 $V_{\text{A}}$ は、元の $V\,\text{[mL]}$ にB側から移動してきた水 $\dfrac{Sh}{2}\,\text{[mL]}$ を足して、
$$V_{\text{A}} = \left(V + \frac{Sh}{2}\right)\,\text{[mL]} = \frac{2V + Sh}{2}\,\text{[mL]} = \frac{2V + Sh}{2000}\,\text{[L]}$$よって、このときのA側の水溶液のモル濃度 $C\,\text{[mol/L]}$ は、
$$C = \frac{n}{V_{\text{A}}} = \frac{\dfrac{wV}{1000M}}{\dfrac{2V + Sh}{2000}} = \frac{wV}{1000M} \times \frac{2000}{2V + Sh} = \mathbf{\frac{2wV}{(2V + Sh)M}\,\text{[mol/L]}}$$したがって、(1)の答えは ① です。
【(2)の解説】ファントホッフの法則 $\Pi = CRT$ に代入して $M$ について解く
問題文より「両液面の差が $1\,\text{cm}$ のときの浸透圧が $98\,\text{Pa}$ に相当する」ので、液面差が $h\,\text{[cm]}$ のときの浸透圧 $\Pi\,\text{[Pa]}$ は、
$$\Pi = 98h\,\text{[Pa]}$$これをファントホッフの法則 $\Pi = CRT$ に、(1)で求めた $C = \dfrac{2wV}{(2V+Sh)M}$ とともに代入します。
$$98h = \frac{2wV}{(2V + Sh)M} RT$$両辺に $M$ を掛け、$98h$ で割って $M$ について解きます。
$$M = \frac{2wV}{98h(2V + Sh)} RT$$分母と分子を $2$ で約分($98 \div 2 = 49$)すると、
$$M = \mathbf{\frac{wV}{49h(2V + Sh)} RT}$$したがって、(2)の答えは ② です。
問2 (3) 純水の追加・抜き取りによる液面差 $h, h_1, h_2$ の比較 解答番号 [ 4 ]
【問題】液面差が $h\,\text{[cm]}$ で停止した状態の装置に対し、A,Bの両側にそれぞれ $\dfrac{V}{2}\,\text{[mL]}$ の純水を加えて $T\,\text{[K]}$ で、液面の高さの差が一定になるまで放置した。このときに生じる液面差を $h_1$ とする。こののち、B側から $V\,\text{[mL]}$ の水を取り除いて $T\,\text{[K]}$ で液面の高さの差が一定になるまで放置した。このときに生じる液面差を $h_2$ とする。$h_1, h_2$ と $h$ の関係として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。
Step 1:$h$ と $h_1$ の大小関係を調べる(両側に純水 $\dfrac{V}{2}\,\text{mL}$ を追加)
液面差が $h\,\text{[cm]}$ でつり合っている状態から、A側とB側の両方に同じ体積 $\dfrac{V}{2}\,\text{[mL]}$ の純水を加えます。
- 純水を加えた直後、A側とB側の液面はどちらも同じだけ上昇するため、液面差(水柱の圧力差)は $h\,\text{[cm]}$ のままです。
- しかし、A側の水溶液には純水 $\dfrac{V}{2}\,\text{[mL]}$ が加わったため、A側の水溶液は薄まり(モル濃度が低下し)、浸透圧 $\Pi$ が小さくなります!
- その結果、今まで支えられていた液面差 $h\,\text{[cm]}$ を支えきれなくなり、A側からB側へ水が押し戻されて液面差が縮まります。したがって、新しい平衡状態の液面差 $h_1$ は元の $h$ より小さくなります。 $$\mathbf{h > h_1}$$
Step 2:$h_1$ と $h_2$ の大小関係を調べる(B側から純水 $V\,\text{mL}$ を取り除く)
次に、液面差が $h_1\,\text{[cm]}$ でつり合っている状態から、B側(純水側)からだけ水 $V\,\text{[mL]}$ を取り除きます。
- B側から水を取り除いた直後、B側の液面だけがガクッと下がるため、A側とB側の液面差が $h_1$ よりも大きく広がります。
- すると、A側にかかる水柱の重さ(静水圧)が浸透圧を上回るため、A側からB側へ純水(溶媒)が半透膜を通って押し出されます!
- A側からB側へ純水が移動すると、A側の水溶液の体積が減少し、A側の水溶液のモル濃度が高くなります(濃縮されます)。
- しかし、A側からB側へ純水が移動して濃縮されたということは、新しい平衡状態のA側の濃度 $C_2$ は、水を取り除く前の平衡状態の濃度 $C_1$ よりも大きくなります($C_2 > C_1$)……ここを超正確に計算・検証しましょう!
⚠️ B側から水 $V\,\text{mL}$ を抜いたとき、A側の濃度は濃くなる?薄くなる?
実は、「B側の液面が下がるからA側からB側へ水が戻る」のか、「それとも最初からやり直したと考えたときにA側の体積はどうなるか」を式で正確に確認すると一発で分かります!
U字管全体に入っている液体の総体積と、A側・B側の初期体積で比べてみましょう:
- 最初の操作(液面差 $h$):
A側の初期体積 $= V$、B側の初期体積 $= V$(合計 $2V$)。液面差 $h$ のとき、A側の体積は $V + \dfrac{Sh}{2}$。 - 1回目の操作(液面差 $h_1$):
A側とB側に $\dfrac{V}{2}$ ずつ水を加えたので、液面が同じ高さのときの基準体積は、A側 $= \dfrac{3}{2}V$、B側 $= \dfrac{3}{2}V$(合計 $3V$)。
液面差が $h_1$ のとき、A側の体積は $\dfrac{3}{2}V + \dfrac{Sh_1}{2}$。 - 2回目の操作(液面差 $h_2$):
B側から水 $V\,\text{[mL]}$ を取り除いたので、U字管全体の液体総体積は $3V - V = 2V$ です。
もし両側の液面が同じ高さになったとすると、A側とB側の基準体積は $\dfrac{2V}{2} = V$ ずつ(つまり最初と同じ合計体積!)になります。
そして液面差が $h_2$ になったとき、A側の体積 $V_{\text{A}2}$ は基準体積 $V$ より $\dfrac{Sh_2}{2}$ だけ大きいので、 $$V_{\text{A}2} = V + \frac{Sh_2}{2}$$ なんと、B側から $V\,\text{mL}$ 取り除いた直後は、B側の液面がA側よりはるかに低くなるため、A側からB側へ水が移動し、平衡に達したときのA側の体積 $V + \dfrac{Sh_2}{2}$ は、最初の状態 $V + \dfrac{Sh}{2}$ とまったく同じ方程式を満たします!
もう一度、A側にある「水と溶質」に注目してください!
半透膜は「純水(水分子)しか通さず、溶質は一切通さない」膜です!
- A側に入っている溶質の物質量 $n$ は、最初から最後までずっと $n = \dfrac{wV}{1000M}\,\text{[mol]}$ で不変です。
- 2回目の操作後のU字管には、「溶質 $n\,\text{[mol]}$(A側)」と「合計 $2V\,\text{[mL]}$ の水溶液+純水」が入っています。
- しかし!1回目の操作でA側に $\dfrac{V}{2}\,\text{mL}$、B側に $\dfrac{V}{2}\,\text{mL}$ の水を加え、2回目の操作でB側から $V\,\text{mL}$ の水を抜いたので、U字管全体の水の量は元の $2V\,\text{mL}$ に戻っています!
- 水分子は半透膜を自由に行き来できるため、「A側に $\dfrac{V}{2}$、B側に $\dfrac{V}{2}$ 入れてからB側から $V$ 抜いた」としても、平衡状態(液面差が一定になった状態)は「U字管全体の総液量 $2V$ と、A側の溶質量 $n$」だけで一意に決まります!
ということは、$h_2$ と $h$ の関係をもう一度チェックしよう!
よく見てください!選択肢には ⑤「$h_2$ は $h$ と同じである」 と ②「$h_1$ は $h_2$ より大きい」 の両方があります。なぜどちらか一方だけが正解なのでしょうか?
もう一度、1回目の操作($h_1$)のときの「A側とB側の液面の高さ」を厳密に追跡します!
【厳密な体積と高さの追跡】
U字管の断面積は $S\,\text{[cm}^2\text{]}$ です。半透膜の位置(U字管の中央最下部)は固定されています!ここが最大のポイントです!
半透膜を通って移動できるのは水ですが、「A側とB側の両方に $\dfrac{V}{2}\,\text{mL}$ を加え、その後B側から $V\,\text{mL}$ を取り除いた」とき:
- 最初の状態(液面差 $h$):
最初にA側に $V\,\text{[mL]}$、B側に同じ高さ(つまり $V\,\text{[mL]}$)を入れました。
そこからB側からA側へ $\dfrac{Sh}{2}\,\text{[mL]}$ の水が移動して停止したので、停止時の体積は、
A側の体積 $= V + \dfrac{Sh}{2}$、 B側の体積 $= V - \dfrac{Sh}{2}$ です。 - 1回目の操作(A側とB側にそれぞれ $\dfrac{V}{2}\,\text{[mL]}$ の純水を加える $\rightarrow$ 液面差 $h_1$):
加えた直後の体積は、A側 $= \dfrac{3}{2}V + \dfrac{Sh}{2}$、B側 $= \dfrac{3}{2}V - \dfrac{Sh}{2}$ で、液面差は $h$ のままです。
やがて液面差が $h_1$ になるとき、A側の体積とB側の体積の合計は $3V$ であり、A側の方がB側より $Sh_1\,\text{[mL]}$ だけ体積が多いので、
A側の体積 $V_{\text{A}1} = \dfrac{3}{2}V + \dfrac{Sh_1}{2}$、 B側の体積 $V_{\text{B}1} = \dfrac{3}{2}V - \dfrac{Sh_1}{2}$ となります。
(A側の体積が $V + \dfrac{Sh}{2}$ から $\dfrac{3}{2}V + \dfrac{Sh_1}{2}$ に増えたため、濃度が薄まり、$h_1 < h$ です。よって①・③は誤り。) - 2回目の操作(B側から $V\,\text{[mL]}$ の水を取り除く $\rightarrow$ 液面差 $h_2$):
B側から $V\,\text{[mL]}$ を取り除くと、U字管全体の液体の合計体積は $3V - V = 2V\,\text{[mL]}$ に戻ります!
問題文の但し書きに「ただし、B側から $V\,\text{[mL]}$ の水を取り除いたときも、B側の液面はU字管の鉛直部分にあるものとする」とあります。
U字管の中央の半透膜で左右対称に仕切られており、鉛直部分の断面積がともに $S$ なので、A側の体積 $V_{\text{A}}$ とB側の体積 $V_{\text{B}}$ の差 $V_{\text{A}} - V_{\text{B}}$ は、つねに $S \times (\text{液面差})$ に等しくなります!
したがって、液面差が $h_2$ になったとき、 $$\begin{cases} V_{\text{A}2} + V_{\text{B}2} = 2V \\ V_{\text{A}2} - V_{\text{B}2} = Sh_2 \end{cases} \quad \Longleftrightarrow \quad V_{\text{A}2} = V + \frac{Sh_2}{2}$$ となります!
すると、$h_2$ が満たす浸透圧のつり合いの式は、 $$98h_2 = \frac{n}{V_{\text{A}2}/1000} RT = \frac{2wV}{(2V + Sh_2)M} RT$$ となり、最初の $h$ が満たす式 $98h = \dfrac{2wV}{(2V + Sh)M} RT$ と完全に同一の方程式になります!
よって、正の解として $h_2 = h$($h_2$ は $h$ と同じである) が成り立ちます!
以上より、$h_1 < h = h_2$ となるため、①〜④はすべて誤りで、⑤「$h_2$ は $h$ と同じである」 が正しい記述となります!
問3 (1)・(2) 高分子化合物の浸透圧と平均分子量 $M$ の算出 解答番号 [ 5 ]〜[ 8 ]
【問題】下線部(b)について、次の表は $300\,\text{K}$ において濃度 $W\,\text{[g/L]}$ ごとの高分子化合物水溶液の浸透圧 $\Pi\,\text{[Pa]}$ の値を測定し、$\dfrac{\Pi}{W}$ を求めたものである。下の(1),(2)に答えなさい。
| $W\,\text{[g/L]}$ | $\Pi\,\text{[Pa]}$ | $\dfrac{\Pi}{W}\,\text{[Pa}\cdot\text{L/g]}$ |
|---|---|---|
| $0.500$ | $0.950 \times 10^2$ | $1.90 \times 10^2$ |
| $1.00$ | $2.20 \times 10^2$ | $2.20 \times 10^2$ |
| $1.50$ | $3.75 \times 10^2$ | $2.50 \times 10^2$ |
(1) 溶質の分子量を $M$、気体定数を $R\,\text{[Pa}\cdot\text{L/(mol}\cdot\text{K)]}$、絶対温度を $T\,\text{[K]}$ とする。[ ア ] の法則が成立するとき、$\dfrac{\Pi}{W}$ を表す式として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。 [ 5 ]
(2) この高分子化合物の平均分子量を $\fbox{ 6 }\,.\,\fbox{ 7 } \times 10^{\fbox{ 8 }}$ のように有効数字2桁の数値で表すとき、空欄 [ 6 ]〜[ 8 ] に入る数として最も適切なものを、次の①〜⓪のうちから一つずつ選びなさい。
【(1)の解説】質量濃度 $W\,\text{[g/L]}$ をモル濃度 $C\,\text{[mol/L]}$ に変換する
水溶液 $1\,\text{L}$ 中に分子量 $M$ の溶質が $W\,\text{[g]}$ 溶けているので、その物質量は $\dfrac{W}{M}\,\text{[mol]}$ です。よってモル濃度 $C\,\text{[mol/L]}$ は、
$$C = \frac{W}{M}\,\text{[mol/L]}$$ファントホッフの法則 $\Pi = CRT$ が成立するとき、
$$\Pi = \frac{W}{M} RT \quad \Longleftrightarrow \quad \mathbf{\frac{\Pi}{W} = \frac{RT}{M}}$$したがって、(1)の答えは ② です。
【(2)の解説】濃度 $W \to 0$ に外挿して、ファントホッフの法則が成立する極限値 $\left(\dfrac{\Pi}{W}\right)_0$ を求める!
リード文の下線部(b)に「溶液を希釈し、濃度が限りなくゼロに近づくとファントホッフの法則が成立するとみなせる」と書かれています。表の $W$ と $\dfrac{\Pi}{W}$ の変化を見てみましょう!
📈 表の規則性(1次関数)を発見しよう!
- $W = 1.50 \to 1.00$($-0.50$)のとき、$\dfrac{\Pi}{W}$ は $2.50\times 10^2 \to 2.20\times 10^2$($-0.30\times 10^2$)
- $W = 1.00 \to 0.500$($-0.50$)のとき、$\dfrac{\Pi}{W}$ は $2.20\times 10^2 \to 1.90\times 10^2$($-0.30\times 10^2$)
つまり、$W$ が $0.50$ 減るごとに $\dfrac{\Pi}{W}$ は一定の割合で $0.30 \times 10^2$ ずつ減っています!
よって、$W = 0.500 \to 0$(さらに $-0.50$)のとき、$\dfrac{\Pi}{W}$ の極限値(切片)は、
$$\lim_{W \to 0}\frac{\Pi}{W} = (1.90 - 0.30) \times 10^2 = \mathbf{1.60 \times 10^2\,\text{[Pa}\cdot\text{L/g]}}$$Step 2:(1)の式 $\dfrac{\Pi}{W} = \dfrac{RT}{M}$ に代入して平均分子量 $M$ を計算する
$W \to 0$ のとき $\dfrac{\Pi}{W} = 1.60 \times 10^2$、気体定数 $R = 8.3 \times 10^3\,\text{Pa}\cdot\text{L/(mol}\cdot\text{K)}$、絶対温度 $T = 300\,\text{K}$ を代入します。
$$1.60 \times 10^2 = \frac{8.3 \times 10^3 \times 300}{M}$$$M$ について解きます。
$$M = \frac{8.3 \times 10^3 \times 3.00 \times 10^2}{1.60 \times 10^2} = \frac{8.3 \times 3.00}{1.60} \times 10^3 = \frac{24.9}{1.6} \times 10^3$$$24.9 \div 1.6$ を筆算すると、
$$\frac{24.9}{1.6} = \frac{249}{16} = 15.5625$$したがって、
$$M = 15.5625 \times 10^3 = 1.55625 \times 10^4$$有効数字2桁に四捨五入すると、
$$M \fallingdotseq \mathbf{1.6 \times 10^4}$$よって、[ 6 ] = $1$(①)、[ 7 ] = $6$(⑥)、[ 8 ] = $4$(④)となります。
硫黄とその化合物(同素体・排煙脱硫・接触法による硫酸製造)
大問3は無機化学の王道「16族・硫黄($\text{S}$)と接触法」!ここは満点を狙える得点源セクションだよ!
計算問題である問3(2)の排煙脱硫($\text{SO}_2 \to \text{CaSO}_4\cdot 2\text{H}_2\text{O}$)と、問4の接触法による硫酸製造は、途中の反応式を1つずつ追いかけるよりも「硫黄原子 $\text{S}$ の物質量保存($1\,\text{mol}$ の $\text{S}$ から $1\,\text{mol}$ のセッコウ、または $1\,\text{mol}$ の $\text{H}_2\text{SO}_4$ ができる!)」を使えば、たった数行の計算でミスなく瞬殺できるよ!
問1・問2 接触法の基礎知識と硫黄の同素体 解答番号 [ 1 ]・[ 2 ]
【問題文】硫黄は、周期表の [ ア ] 族に属する元素であり、単体は常温常圧のもとで固体として存在し、斜方硫黄や単斜硫黄、ゴム状硫黄などの(a) 同素体をもつ。また、硫黄の単体を燃焼させると、(b) 二酸化硫黄が生じる。二酸化硫黄に触媒として [ イ ] を用いて酸素で酸化すると三酸化硫黄となる。得られた三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させて発煙硫酸とし、これを希硫酸に加えて(c) 濃硫酸とする。この方法を [ ウ ] 法という。
問1 文中の空欄 [ ア ]〜[ ウ ] に入る数値および化学式と語句の組合せとして最も適切なものを、次の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。 [ 1 ]
(※選択肢:①〜④はア=15、⑤ 16 / Pt / オストワルト、⑥ 16 / Pt / 接触、⑦ 16 / $\text{V}_2\text{O}_5$ / オストワルト、⑧ 16 / $\text{V}_2\text{O}_5$ / 接触)
問2 下線部(a)について、硫黄の同素体に関する記述として誤りを含むものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。 [ 2 ]
- ① 斜方硫黄および単斜硫黄はいずれも8原子分子である。
- ② 斜方硫黄を融解させた融解液を水中に注ぎ、急冷するとゴム状硫黄が得られる。
- ③ 斜方硫黄および単斜硫黄は黄色の固体であり、ゴム状硫黄は白色の固体である。
- ④ ゴム状硫黄は無定形固体の一種で、定まった融点をもたない。
- ⑤ ゴム状硫黄を常温のもとで放置すると、次第に安定な斜方硫黄に変化する。
【問1の解説】
- [ ア ]:硫黄(原子番号16、$\text{O}$ の下)は周期表の 16族 に属します。
- [ イ ]:二酸化硫黄 $\text{SO}_2$ を酸素で酸化して三酸化硫黄 $\text{SO}_3$ にする反応の触媒は 酸化バナジウム(V) $\text{V}_2\text{O}_5$ です($\text{Pt}$ はオストワルト法による硝酸製造の触媒)。
- [ ウ ]:硫酸の工業的製法は 接触法 です。よって組合せは ⑧ です。
【問2の解説】
- ①・②・④・⑤はすべて正しい記述です(斜方硫黄と単斜硫黄は王冠型の環状 $\text{S}_8$ 分子からなり、二硫化炭素 $\text{CS}_2$ によく溶けます。ゴム状硫黄は長いらせん状の鎖状高分子 $\text{S}_x$ で無定形固体であり、$\text{CS}_2$ に溶けず、常温で放置すると最も安定な斜方硫黄に変化します)。
- ③ 誤り:ゴム状硫黄は白色ではなく、褐色〜黒褐色(または黄色〜褐色)の弾性のある固体です(白色の同素体といえばリンの「黄リン(淡黄色・ろう状)」などとの混同を狙った選択肢です)。
問3 (1)・(2) 排ガス中の $\text{SO}_2$ の除去(セッコウの生成と反応率) 解答番号 [ 3 ]・[ 4 ]
【問題】排ガス中の二酸化硫黄の除去法として、水と消石灰を混ぜ合わせた懸濁液に二酸化硫黄を含む排ガスを吹き込み、亜硫酸カルシウムとし、さらに空気中で酸化させてセッコウとする方法がある。この反応は次の2つの反応で表される。
$$\text{SO}_2 + \text{Ca(OH)}_2 \longrightarrow \text{CaSO}_3 + \text{H}_2\text{O}$$ $$\text{CaSO}_3 + \frac{1}{2}\text{O}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{CaSO}_4\cdot 2\text{H}_2\text{O}$$(1) この一連の反応による硫黄原子の酸化数の変化として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。 [ 3 ]
(2) 標準状態($0\,^\circ\text{C}, 1.013\times 10^5\,\text{Pa}$)のもとで $1.12 \times 10^5\,\text{L}$ の排ガス中に、二酸化硫黄がモル分率で $1.0 \times 10^{-3}$ だけ含まれている。この排ガスに上記の処理を施したところ、$7.74 \times 10^2\,\text{g}$ のセッコウが得られた。この処理により、排ガス中に存在していた二酸化硫黄のうちセッコウに変化したもののモル分率(割合)として最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。 [ 4 ]
【(1)の解説】
反応前の $\text{SO}_2$ 中の $\text{S}$ の酸化数は $\mathbf{+4}$ です(第1段階の $\text{CaSO}_3$ でも $+4$ のまま)。
第2段階の酸化により生じたセッコウ $\text{CaSO}_4\cdot 2\text{H}_2\text{O}$($\text{SO}_4^{2-}$)中の $\text{S}$ の酸化数は $\mathbf{+6}$ です。
したがって、酸化数は $+4 \to +6$ へと 2だけ増加した(②) ことになります。
【(2)の解説】
-
排ガス中の $\text{SO}_2$ の物質量 $n(\text{SO}_2)$:
標準状態で $1.12 \times 10^5\,\text{L}$ の排ガス全体の物質量は $\dfrac{1.12 \times 10^5\,\text{L}}{22.4\,\text{L/mol}} = 5.0 \times 10^3\,\text{mol}$ です。
このうちモル分率 $1.0 \times 10^{-3}$ が $\text{SO}_2$ なので、 $$n(\text{SO}_2) = 5.0 \times 10^3 \times 1.0 \times 10^{-3} = \mathbf{5.0\,\text{mol}}$$ -
得られたセッコウ $\text{CaSO}_4\cdot 2\text{H}_2\text{O}$ の物質量:
セッコウの式量は $\text{CaSO}_4(40 + 32 + 64 = 136) + 2\text{H}_2\text{O}(36) = \mathbf{172}$ です。
したがって、得られたセッコウ $7.74 \times 10^2\,\text{g} = 774\,\text{g}$ の物質量は、 $$n(\text{CaSO}_4\cdot 2\text{H}_2\text{O}) = \frac{774\,\text{g}}{172\,\text{g/mol}} = \mathbf{4.5\,\text{mol}}$$ -
変化した割合:
硫黄原子 $\text{S}$ の保存より、$1\,\text{mol}$ の $\text{SO}_2$ から $1\,\text{mol}$ のセッコウが生じるので、反応した $\text{SO}_2$ は $4.5\,\text{mol}$ です。
よって、求める割合は $\dfrac{4.5\,\text{mol}}{5.0\,\text{mol}} = \mathbf{0.90}$(⑤)となります。
問4 接触法による濃硫酸の製造量計算 解答番号 [ 5 ]
【問題】下線部(c)について、質量 $80.0\,\text{kg}$ の硫黄をすべて用いて質量パーセント濃度 $98.0\%$ の濃硫酸をつくると、この濃硫酸は何 $\text{kg}$ 得られるか。最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。 [ 5 ]
硫黄原子 $\text{S}$ の物質量保存より、硫黄 $\text{S}$(原子量 $32.0$)$1\,\text{mol}$ から硫酸 $\text{H}_2\text{SO}_4$(分子量 $98.0$)が $1\,\text{mol}$ 生成します。
原料の硫黄 $80.0\,\text{kg}$ の物質量は $\dfrac{80.0\,\text{kg}}{32.0\,\text{g/mol}} = 2.50\,\text{kmol}$ なので、生成する純粋な $\text{H}_2\text{SO}_4$ の質量は、 $$2.50\,\text{kmol} \times 98.0\,\text{g/mol} = 245\,\text{kg}$$ となります(ここで早とちりして④を選ばないように注意!求めるのは「濃度 $98.0\%$ の濃硫酸水溶液の質量」です)。
得られる $98.0\%$ 濃硫酸の質量を $W\,[\text{kg}]$ とすると、そのうちの $98.0\%$ が純粋な $\text{H}_2\text{SO}_4$($245\,\text{kg}$)なので、 $$W \times \frac{98.0}{100} = 245\,\text{kg} \quad \Longleftrightarrow \quad W = \frac{80.0}{32.0} \times \cancel{98.0} \times \frac{100}{\cancel{98.0}} = 2.50 \times 100 = \mathbf{250\,\text{kg}}$$ (分子量の $98.0$ と濃度の $98.0\%$ がきれいに約分できるのは、硫酸の計算問題における定番の美しい仕掛けです!)
問5 濃硫酸の性質(不揮発性・脱水作用・吸湿性・酸化作用・希釈法) 解答番号 [ 6 ]
【問題】下線部(c)について、濃硫酸の性質に関する記述として誤りを含むものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。 [ 6 ]
- ① 濃硫酸に塩化ナトリウムを加えて加熱すると、塩化水素が発生する。
- ② スクロースに濃硫酸を加えると、スクロースが黒色の炭素に変化する。
- ③ 濃硫酸は吸湿性があるので、アンモニアの乾燥剤として用いられる。
- ④ 熱濃硫酸に銅を加えると、二酸化硫黄が発生する。
- ⑤ 濃硫酸を希釈するときは、水に濃硫酸を少しずつかき混ぜながら加える。
- ① 正しい(不揮発性の酸):$\text{NaCl} + \text{H}_2\text{SO}_4 \xrightarrow{\text{加熱}} \text{NaHSO}_4 + \text{HCl}\uparrow$(揮発性の塩化水素が追い出されます)。
- ② 正しい(脱水作用):有機化合物から水素と酸素を $\text{H}_2\text{O}$($2:1$)の割合で引き抜き、炭化させます($\text{C}_{12}\text{H}_{22}\text{O}_{11} \longrightarrow 12\text{C} + 11\text{H}_2\text{O}$)。
- ③ 誤り(酸性の乾燥剤):濃硫酸は強い吸湿性をもつため乾燥剤(デシケーターや洗気びん)として広く使われますが、それ自身が強い酸であるため、塩基性気体であるアンモニア $\text{NH}_3$ とは中和反応($2\text{NH}_3 + \text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow (\text{NH}_4)_2\text{SO}_4$)を起こして吸収してしまい、乾燥剤としては使えません(また、還元性気体である硫化水素 $\text{H}_2\text{S}$ とも酸化還元反応を起こすため不適です。アンモニアの乾燥には塩基性乾燥剤であるソーダ石灰や酸化カルシウム $\text{CaO}$ を用います)。
- ④ 正しい(熱濃硫酸の酸化作用):$\text{Cu} + 2\text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow \text{CuSO}_4 + 2\text{H}_2\text{O} + \text{SO}_2\uparrow$。
- ⑤ 正しい(希釈の操作):濃硫酸の溶解熱は極めて大きいため、濃硫酸に水を入れると水が急激に沸騰して飛び散り危険です。必ず「多量の水に濃硫酸を少しずつかき混ぜながら加える」のが鉄則です。
芳香族化合物の反応系統と異性体の構造決定
いよいよ最後の大問4!ベンゼンから出発する超定番の芳香族チャート(フェノール・サリチル酸・アニリン)と、後半の「$\text{C}_9\text{H}_{12}$ の異性体パズル」だよ!
一番のヤマ場は最後の問6($\text{C}_9\text{H}_{12}$ の構造異性体の数え上げと $\text{KMnO}_4$ 酸化)!ベンゼン環($\text{C}_6$)を除いた残り3個の炭素を「1本鎖(プロピル・イソプロピル:2種)」「2本鎖(エチル+メチル:o, m, p の3種)」「3本鎖(メチル×3:1,2,3- / 1,2,4- / 1,3,5- の3種)」に分類すれば、合計 $2+3+3=8$ 種類が1秒の漏れもなくスッキリ整理できるよ!
問1〜問5 芳香族化合物の合成経路(クメン法・コルベ-シュミット反応・ジアゾ化) 解答番号 [ 1 ]〜[ 6 ]
【問題文の要約】
・ベンゼンにプロペンを反応させて [ ア ](クメン) とし、酸化してクメンヒドロペルオキシドとしたのち希硫酸で分解すると、化合物 A(フェノール) とアセトンが得られる(クメン法)。
・化合物 A に水酸化ナトリウム水溶液を反応させてナトリウムフェノキシドとし、高温・高圧下で 化合物 B($\text{CO}_2$) を反応させるとサリチル酸ナトリウムが得られ、希塩酸を作用させると(a) サリチル酸が得られる。
・ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸の混合物を反応させると [ イ ](ニトロベンゼン) が生成し、スズと塩酸で還元したのち強塩基を作用させると 化合物 C(アニリン) が得られる。
・化合物 C に無水酢酸を反応させると(b) アセトアニリドと酢酸が得られる。また、化合物 C を塩酸に溶かし、氷冷下で 化合物 D($\text{NaNO}_2$) の水溶液を加えると [ ウ ](塩化ベンゼンジアゾニウム) が生成し、これにナトリウムフェノキシド水溶液を反応させると、赤橙色の [ エ ](p-ヒドロキシアゾベンゼン) が得られる。
- 問1 [ 1 ]:空欄 [ ア ]〜[ エ ] の組合せ(⑤ クメン / ニトロベンゼン / 塩化ベンゼンジアゾニウム / p-ヒドロキシアゾベンゼン)
- 問2 [ 2 ]・[ 3 ]:化合物 B([ 2 ])と化合物 D([ 3 ])の化学式([ 2 ] = ④ $\text{CO}_2$ / [ 3 ] = ⑦ $\text{NaNO}_2$)
- 問3 [ 4 ]:化合物 A(フェノール)と化合物 C(アニリン)に共通してあてはまる性質を①〜⑤から選択(① 炭酸水素ナトリウム水溶液と反応して気体発生、② 塩化鉄(III)水溶液で呈色、③ さらし粉水溶液で呈色、④ 室温で無色の液体、⑤ 空気中に放置すると酸化されて着色する)
- 問4 [ 5 ]:下線部(a) サリチル酸にメタノールと濃硫酸を加えて加熱したときに得られる化合物(サリチル酸メチル)の構造式(⑤ ベンゼン環のオルト位に $-\text{OH}$ と $-\text{COOCH}_3$ をもつ構造)
- 問5 [ 6 ]:下線部(b) アセトアニリドがもつ官能基の名称(⑥ アミド基($-\text{NHCO}-$))
【問1〜問5のポイント解説】
- 問1・問2:芳香族の最も基本的な反応系統図です。ナトリウムフェノキシドに高温・高圧下で反応させる B は二酸化炭素 $\text{CO}_2$(④)、アニリンのジアゾ化に用いる D は亜硝酸ナトリウム $\text{NaNO}_2$(⑦、選択肢⑥の硝酸ナトリウム $\text{NaNO}_3$ と見間違えないよう注意!)です。
- 問3(フェノール A とアニリン C の共通点):
- ① $\text{NaHCO}_3$ と反応するのはカルボン酸やスルホン酸のみ(A・C ともに反応しない)。
- ② $\text{FeCl}_3$ 水溶液で紫〜青紫色に呈色するのは A(フェノール類)のみ。
- ③ さらし粉水溶液で赤紫色に呈色するのは C(アニリン)のみ。
- ④ 室温で A(フェノール、融点 $41\,^\circ\text{C}$)は無色の結晶(固体)、C(アニリン)は無色の液体。
- ⑤ 正しい:フェノールもアニリンも酸化されやすく、空気中に放置すると酸化されて赤褐色〜褐色に着色します。
- 問4:サリチル酸のカルボキシ基($-\text{COOH}$)とメタノール($\text{CH}_3\text{OH}$)がエステル化してサリチル酸メチル(消炎鎮痛剤)となります(フェノール性ヒドロキシ基 $-\text{OH}$ はそのまま残るので ⑤)。
- 問5:アニリン($-\text{NH}_2$)のアセチル化により生じるアセトアニリド($\text{C}_6\text{H}_5\text{NHCOCH}_3$)はアミド結合(アミド基、⑥)をもちます。
問6 (1)〜(3) $\text{C}_9\text{H}_{12}$ の芳香族構造異性体と過マンガン酸カリウム酸化 解答番号 [ 7 ]〜[ 9 ]
【問題】化合物 E、F、G は、いずれも分子式 $\text{C}_9\text{H}_{12}$ で表されるベンゼン環を1つもつ芳香族炭化水素であり、互いに構造異性体の関係にある。
・化合物 E、F、G をそれぞれ過マンガン酸カリウムのアルカリ性水溶液と加熱したのち、溶液を酸性にすると、化合物 E からはベンゼン環にカルボキシ基が2つ結合した化合物 H が得られ、化合物 F および G からはベンゼン環にカルボキシ基が3つ結合した化合物 I および J がそれぞれ得られた。
・化合物 H($\text{C}_6\text{H}_4(\text{COOH})_2$)および化合物 I($\text{C}_6\text{H}_3(\text{COOH})_3$)は、それぞれ加熱すると分子内で脱水反応が起こり、1分子中に酸無水物の構造を1つもつ化合物が得られたが、化合物 J は加熱しても分子内で脱水反応は起こらなかった。
・また、化合物 F のベンゼン環の水素原子1つを塩素原子で置換した化合物には、3種類の構造異性体が存在した。
(1) 分子式 $\text{C}_9\text{H}_{12}$ で表されるベンゼン環を1つもつ芳香族炭化水素には、化合物 E、F、G を含めて何種類の構造異性体が存在するか。 [ 7 ]
(2) 化合物 E を過マンガン酸カリウムで酸化して化合物 H を得るとき、同時に生じる気体は何か。化学式で選びなさい。 [ 8 ]
(3) 化合物 E、F、G の構造式の組合せとして最も適切なものを、①〜⑨のうちから一つ選びなさい。 [ 9 ]
(※選択肢は E=o-エチルトルエン、F=1,2,4-トリメチルベンゼン、G=1,3,5-トリメチルベンゼン などの組合せ。正解は ②)
【(1) $\text{C}_9\text{H}_{12}$ の芳香族炭化水素の異性体数】
ベンゼン環を除いた3個の炭素(側鎖)のつき方で分類します。
- 1置換体($\text{C}_3\text{H}_7$ 基が1つ):プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン(クメン)の 2種類。
- 2置換体($-\text{C}_2\text{H}_5$ 基と $-\text{CH}_3$ 基):エチルトルエンの o-、m-、p-体の 3種類。
- 3置換体($-\text{CH}_3$ 基が3つ):トリメチルベンゼンの 1,2,3-体(隣接)、1,2,4-体(非対称)、1,3,5-体(対称・メシチレン)の 3種類。
よって合計 $2 + 3 + 3 = \mathbf{8\text{種類}}$(④)です。
【(2)・(3) 化合物 E・F・G の構造決定】
-
化合物 E の決定:
酸化するとカルボキシ基を2つもつ H($\text{C}_6\text{H}_4(\text{COOH})_2$)になることから、E は2置換体(エチルトルエン)です。さらに H が加熱により分子内脱水して酸無水物(無水フタル酸)をつくることから、2つのカルボキシ基は隣り合うオルト位にあります。
よって H はフタル酸であり、E は o-エチルトルエン(1-エチル-2-メチルベンゼン)と確定します。
また、エチル基($-\text{CH}_2\text{CH}_3$)が酸化されてカルボキシ基($-\text{COOH}$)になるとき、先端の炭素1個が切り離されて酸化されるため、酸性にしたときに二酸化炭素 $\text{CO}_2$(④)の気体が発生します。 -
化合物 F・G の決定:
酸化するとカルボキシ基を3つもつ I・J になることから、F と G は3置換体(トリメチルベンゼン)です。
・G について:酸化生成物 J が加熱しても分子内脱水しないということは、3つのカルボキシ基のどれもが互いに隣り合っていない(オルト位の関係が1つもない)ということです。よって G は 1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)と確定します。
・F について:酸化生成物 I が分子内脱水して酸無水物をつくるので、隣り合うメチル基をもつ 1,2,3-トリメチルベンゼン または 1,2,4-トリメチルベンゼン のどちらかです。
ここで「F のベンゼン環の $\text{H}$ 原子(残り3個)のうち1つを $\text{Cl}$ で置換した異性体の数」を調べます。
・1,2,3-体の場合:対称面があるため、残りの4, 5, 6位の $\text{H}$ のうち4位と6位は等価であり、1塩素置換体は2種類しかありません。
・1,2,4-体の場合:対称性がないため、残りの3, 5, 6位の $\text{H}$ はすべて非等価であり、1塩素置換体は3種類存在します。
問題文の条件「3種類の構造異性体が存在した」と一致するため、F は 1,2,4-トリメチルベンゼンと確定します。
以上より、E(o-エチルトルエン)・F(1,2,4-トリメチルベンゼン)・G(1,3,5-トリメチルベンゼン)の正しい組合せは ② です。
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