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最初に最終解答をサッと確認!〔問1〕小問集合(熱化学・合成高分子・気体反応の量的関係)
〔問2〕反応速度と化学平衡・ナフタレンのスルホン化
〔問3〕芳香族化合物の合成と環状エステルの構造決定
- a:フタル酸(オルト位に $-\text{C(=O)-OH}$ を2個もつベンゼン環)
- b:無水フタル酸
- B:サリチル酸(オルト位に $-\text{OH}$ と $-\text{C(=O)-OH}$ をもつベンゼン環)
- C:2-(ヒドロキシメチル)安息香酸(オルト位に $-\text{CH}_2\text{-OH}$ と $-\text{C(=O)-OH}$ をもつベンゼン環)
- D:乳酸 $\text{CH}_3\text{-CH(OH)-C(=O)-OH}$
- E(フェノール性 $-\text{OH}$ あり・不斉炭素あり):$\text{HO-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-O-CH(CH}_3\text{)-C(=O)-OH}$(Bの $-\text{COOH}$ と Dの $-\text{OH}$ がエステル結合)
- F(フェノール性 $-\text{OH}$ なし・不斉炭素あり):$\text{HO-CH}_2\text{-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-O-CH(CH}_3\text{)-C(=O)-OH}$(Dの $-\text{COOH}$ と Bのフェノール性 $-\text{OH}$ がエステル結合した $\text{CH}_3\text{-CH(OH)-C(=O)-O-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-OH}$ ※CとBの組み合わせと連動して一意に決まります。詳細は下の構造図を参照!)
- G(不斉炭素なし):B と C がエステル結合した2量体($\text{HO-CH}_2\text{-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-O-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-OH}$ または $\text{HO-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-O-CH}_2\text{-(C}_6\text{H}_4\text{)-C(=O)-OH}$)
- A:B, C, D が1分子ずつ脱水縮合した3量体環状エステル(ラクトン)
〔問1〕小問集合(中和熱・共重合体SBR・水性ガス反応の量的関係)
問1は絶対に落とせない得点源の小問3題だよ!
(1)の中和熱では「混ぜた後の水溶液の合計質量が $100 + 100 = 200\text{ g}$ になること」と「最後の足し算の有効数字(小数点以下の桁数)」に要注意!
(2)のスチレン–ブタジエンゴム(SBR)は、重合した後にブタジエン単位1個あたりに二重結合が1個残ることが分かっていれば一瞬で解けるよ。(3)の2段階反応も、文字を2つ置いてモル計算すれば迷わず満点が取れるから、ここは10分以内で完答を目指そう!
設問 (1) 中和反応による発熱量と温度上昇
STEP 1反応した $\text{HCl}$ と $\text{NaOH}$ の物質量($\text{mol}$)を求める
$100\text{ mL} = \dfrac{100}{1000}\text{ L} = 0.100\text{ L}$ です。
塩酸($\text{HCl}$)と水酸化ナトリウム($\text{NaOH}$)はどちらも $1$ 価の酸・塩基であり、それぞれの物質量は、
$$n = 0.60\text{ mol/L} \times \frac{100}{1000}\text{ L} = 0.060\text{ mol}$$
したがって、ちょうど過不足なく中和反応($\text{H}^+ + \text{OH}^- \rightarrow \text{H}_2\text{O}$)が起こり、$0.060\text{ mol}$ の水($\text{H}_2\text{O}$)が生成します。
STEP 2放出された熱量 $Q\text{ [J]}$ を計算する
中和熱は水 $1\text{ mol}$ 生成あたり $56\text{ kJ} = 56 \times 10^3\text{ J}$ なので、$0.060\text{ mol}$ の中和で発生する熱量 $Q$ は、 $$Q = 56 \times 10^3\text{ J/mol} \times 0.060\text{ mol} = 3.36 \times 10^3\text{ J} = 3360\text{ J}$$
STEP 3混合後の水溶液の質量と温度上昇 $\Delta T$ を求める
混合後の水溶液の体積は $100\text{ mL} + 100\text{ mL} = 200\text{ mL} = 200\text{ cm}^3$ です。
密度が $1.0\text{ g/cm}^3$ なので、混合後の水溶液全体の質量 $m$ は、
$$m = 200\text{ cm}^3 \times 1.0\text{ g/cm}^3 = 200\text{ g}$$
水溶液の温度が $\Delta T\text{ [}^\circ\text{C]}$ 上昇したとすると、熱量の関係式 $Q = m c \Delta T$ より、
$$3360\text{ J} = 200\text{ g} \times 4.2\text{ J/(g}\cdot{}^\circ\text{C)} \times \Delta T$$
$$3360 = 840 \times \Delta T \quad \Longleftrightarrow \quad \Delta T = \frac{3360}{840} = 4.0\text{ }^\circ\text{C}$$
STEP 4混合後の温度を求める
もとの温度が $27\text{ }^\circ\text{C}$ なので、温度上昇後の温度 $T$ は、 $$T = 27\text{ }^\circ\text{C} + 4.0\text{ }^\circ\text{C} = 31.0\text{ }^\circ\text{C}$$ 有効数字2桁で答えるため、$31\text{ }^\circ\text{C}$ となります。
設問 (2) スチレン–ブタジエンゴム(SBR)の臭素付加と共重合比
【図解】スチレン–ブタジエンゴム(SBR)の繰り返し単位と炭素間二重結合の数
STEP 1各モノマー単位の式量(分子量)を計算する
付加重合では原子の増減がないため、ポリマー中の各部分の式量はモノマーの分子量と一致します。
- スチレン($\text{C}_8\text{H}_8$)の分子量:$12 \times 8 + 1.0 \times 8 = 96 + 8.0 = 104$
- $1,3$-ブタジエン($\text{C}_4\text{H}_6$)の分子量:$12 \times 4 + 1.0 \times 6 = 48 + 6.0 = 54$
- 臭素($\text{Br}_2$)の分子量:$80 \times 2 = 160$
STEP 2SBR中のスチレン部分とブタジエン部分の物質量比を $1 : x$ とおく
SBR中の「スチレン部分の物質量」に対する「$1,3$-ブタジエン部分の物質量」の倍率を $x$ とおきます。
すなわち、
$$(\text{スチレン部分の物質量}) : (\text{1,3-ブタジエン部分の物質量}) = 1 : x$$
とします。
いま、SBR中にスチレン部分が $n\text{ [mol]}$、$1,3$-ブタジエン部分が $nx\text{ [mol]}$ 含まれているとすると、SBR全体の質量が $1\text{ g}$ であることから、
$$104n + 54nx = 1 \quad \Longleftrightarrow \quad n(104 + 54x) = 1\text{ [g]} \quad \cdots \text{①}$$
STEP 3付加した臭素($\text{Br}_2$)の質量から式を立てて $x$ を求める
$1,3$-ブタジエン部分 $1\text{ mol}$ につき炭素間二重結合($\text{C=C}$)が $1\text{ mol}$ 存在するため、付加する臭素 $\text{Br}_2$ の物質量は $1,3$-ブタジエン部分の物質量と等しく $nx\text{ [mol]}$ です。
付加した臭素 $\text{Br}_2$(分子量 $160$)の質量が $2\text{ g}$ なので、
$$160 \times nx = 2\text{ [g]} \quad \cdots \text{②}$$
②式を①式で辺々割ると($n$ が消去できます)、
$$\frac{160nx}{n(104 + 54x)} = \frac{2}{1}$$
$$\frac{160x}{104 + 54x} = 2$$
両辺に $(104 + 54x)$ を掛けて整理します。
$$160x = 2(104 + 54x)$$
$$160x = 208 + 108x$$
$$52x = 208 \quad \Longleftrightarrow \quad x = \frac{208}{52} = 4$$
よって、$1,3$-ブタジエン部分の物質量はスチレン部分の物質量の $4\text{ 倍}$ です。
設問 (3) 黒鉛と水蒸気の2段階反応(水性ガス反応)の量的関係
$\text{C} + \text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{CO} + \text{H}_2$
$\text{CO} + \text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{CO}_2 + \text{H}_2$
反応後の容器内には、未反応の黒鉛と水蒸気、上記の反応によって生成した生成物以外の物質は存在しなかった。容器内に残っている一酸化炭素と二酸化炭素の物質量比が $2 : 1$ であるとき、反応によって消費された黒鉛の質量 $\text{[g]}$ を求めよ。
STEP 12つの反応で反応した物質量を $x\text{ [mol]}$, $y\text{ [mol]}$ とおく
第1段階の反応で消費された黒鉛 $\text{C}$ の物質量を $x\text{ [mol]}$、第2段階の反応で消費された一酸化炭素 $\text{CO}$ の物質量を $y\text{ [mol]}$ とおきます。
【反応式(A)】 $\text{C} + \text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{CO} + \text{H}_2$
・消費された $\text{C}$:$x\text{ mol}$
・消費された $\text{H}_2\text{O}$:$x\text{ mol}$
・生成した $\text{CO}$:$x\text{ mol}$
【反応式(B)】 $\text{CO} + \text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{CO}_2 + \text{H}_2$
・消費された $\text{CO}$:$y\text{ mol}$
・消費された $\text{H}_2\text{O}$:$y\text{ mol}$
・生成した $\text{CO}_2$:$y\text{ mol}$
STEP 2水蒸気 $\text{H}_2\text{O}$ の消費量と $\text{CO} : \text{CO}_2$ の物質量比から連立方程式を立てる
① 消費された水蒸気 $\text{H}_2\text{O}$ の合計物質量:
最初に入れた水蒸気 $1.0\text{ mol}$ の $80\%$ が消費されたので、反応(A)と反応(B)で消費された $\text{H}_2\text{O}$ の合計は、
$$x + y = 1.0\text{ mol} \times \frac{80}{100} = 0.80\text{ mol} \quad \cdots \text{①}$$
② 反応後に残っている $\text{CO}$ と $\text{CO}_2$ の物質量比:
反応(A)で $\text{CO}$ が $x\text{ mol}$ 生成し、そのうち反応(B)で $y\text{ mol}$ が消費されたので、残っている $\text{CO}$ は $(x - y)\text{ mol}$ です。
一方、生成した $\text{CO}_2$ は $y\text{ mol}$ です。これらの物質量比が $2 : 1$ なので、
$$(x - y) : y = 2 : 1 \quad \Longleftrightarrow \quad x - y = 2y \quad \Longleftrightarrow \quad x = 3y \quad \cdots \text{②}$$
STEP 3連立方程式を解いて黒鉛 $\text{C}$ の質量を求める
②式($y = \dfrac{1}{3}x$)を①式に代入すると、
$$x + \frac{1}{3}x = 0.80 \quad \Longleftrightarrow \quad \frac{4}{3}x = 0.80 \quad \Longleftrightarrow \quad x = 0.80 \times \frac{3}{4} = 0.60\text{ mol}$$
(※ $y = 0.20\text{ mol}$ となり、実際に残った $\text{CO}$ は $0.60 - 0.20 = 0.40\text{ mol}$、$\text{CO}_2$ は $0.20\text{ mol}$ で $2:1$、消費された $\text{H}_2\text{O}$ は $0.60 + 0.20 = 0.80\text{ mol}$ で検算もバッチリです!)
黒鉛($\text{C}$、原子量 $12$)の消費された物質量は $x = 0.60\text{ mol}$ なので、その質量は、
$$12\text{ g/mol} \times 0.60\text{ mol} = 7.2\text{ g}$$
消費された水蒸気 $\text{H}_2\text{O}$($0.80\text{ mol}$)に含まれる酸素原子 $\text{O}$ はすべて $\text{CO}$ と $\text{CO}_2$ に移動します。
残った $\text{CO}$ を $2k\text{ [mol]}$、$\text{CO}_2$ を $k\text{ [mol]}$ とおくと、$\text{O}$ 原子の物質量保存より $2k \times 1 + k \times 2 = 0.80 \implies 4k = 0.80 \implies k = 0.20\text{ mol}$。
$\text{C}$ 原子の物質量保存より、消費された黒鉛 $\text{C}$ は $(2k + k) = 3k = 0.60\text{ mol} \implies 12 \times 0.60 = 7.2\text{ g}$ と30秒で求まります!
〔問2〕競争反応における反応速度と化学平衡・ナフタレンのスルホン化
問2は医学部入試で超頻出のテーマ「速度論的支配(低温・短時間)」と「熱力学的支配(高温・長時間)」だ!
最初は「活性化エネルギーの山が低い方(反応速度定数 $k$ が大きい $\text{Y}$)」が素早くたくさんできるけれど、長時間・高温で逆反応も起きるようになると「エネルギーがいちばん低くて安定な方(平衡定数 $K$ が大きい $\text{Z}$)」にどんどん集まっていくんだね。
問題文の誘導式①〜③に素直に数値を代入すれば計算はとってもシンプルだよ!
〔問2〕次の文章を読み、設問 (1), (2) に答えよ。
物質 $\text{X}$ を加熱すると2種類の異なる化学反応が起こり、$\text{Y}$ と $\text{Z}$ が生成する。反応を長時間継続して行うと、$\text{Y}$ から $\text{X}$、$\text{Z}$ から $\text{X}$ への反応も起こり、$\text{X}, \text{Y}, \text{Z}$ は平衡状態になる。ただし、このとき $\text{X} \rightleftarrows \text{Y}$, $\text{X} \rightleftarrows \text{Z}$ の平衡はどの過程も単純な1段階の反応からなり、$\text{Y}$ から $\text{Z}$、あるいは $\text{Z}$ から $\text{Y}$ への変換は $\text{X}$ を経由して起こるものとする。図1はこれらの反応の関係とその反応速度定数を表している。
図1. X, Y, Z の平衡
反応の初期に $\text{X}$ から $\text{Y}$ が生成するとき、$\text{Y}$ の濃度 $[\text{Y}]$ が増加する速度は、$\text{X}$ の濃度 $[\text{X}]$、反応時間 $\Delta t$、反応速度定数 $k_1$ を用いて式①で表される。 $$\frac{\Delta [\text{Y}]}{\Delta t} = k_1 [\text{X}] \quad \cdots \text{①}$$ 反応時間が長くなると、$\text{Y}$ から $\text{X}$ への反応も起こるが、このとき $\text{Y}$ が減少する速度は $[\text{Y}]$ に比例し、反応速度定数 $k_{-1}$ を用いて式②で表される。 $$-\frac{\Delta [\text{Y}]}{\Delta t} = k_{-1} [\text{Y}] \quad \cdots \text{②}$$ 式①, ②を用いると、反応中の $\text{Y}$ の濃度の時間変化は式③で表される。 $$\frac{\Delta [\text{Y}]}{\Delta t} = k_1 [\text{X}] - k_{-1} [\text{Y}] \quad \cdots \text{③}$$
設問 (1) 反応速度定数と平衡定数・エネルギー図の選択
STEP 1式①を用いて、反応初期($\Delta t = 1\text{ min}$)の生成濃度を表す
$\text{Y}, \text{Z}$ から $\text{X}$ への逆反応が無視できるとき、$\text{Y}$ および $\text{Z}$ の生成速度はどちらも式①と同じ形で表されます。 $$\frac{\Delta [\text{Y}]}{\Delta t} = k_1 [\text{X}], \qquad \frac{\Delta [\text{Z}]}{\Delta t} = k_2 [\text{X}]$$ 初期の $\text{X}$ の濃度 $[\text{X}]$ と反応時間 $\Delta t$($= 1\text{ min}$)は $\text{Y}$ と $\text{Z}$ の両方の反応で共通なので、反応開始1分後における濃度 $[\text{Y}] = \Delta [\text{Y}]$ と $[\text{Z}] = \Delta [\text{Z}]$ の比は、正反応の速度定数の比 $k_1 : k_2$ に一致します。
STEP 2数値を代入して簡単な整数比にする
$$[\text{Y}] : [\text{Z}] = k_1 [\text{X}] \Delta t : k_2 [\text{X}] \Delta t = k_1 : k_2 = (1.0 \times 10^{-3}) : (5.0 \times 10^{-5})$$ 両辺を $5.0 \times 10^{-5}$ で割ると、 $$[\text{Y}] : [\text{Z}] = \frac{100 \times 10^{-5}}{5.0 \times 10^{-5}} : 1 = 20 : 1$$
STEP 1平衡状態では見かけの濃度変化速度 $\dfrac{\Delta [\text{Y}]}{\Delta t} = 0$ となる
平衡状態では、正反応の速度と逆反応の速度が等しくなり、$\text{Y}$ の濃度の時間変化が $0$ になります。
式③において $\dfrac{\Delta [\text{Y}]}{\Delta t} = 0$ とおくと、
$$k_1 [\text{X}] - k_{-1} [\text{Y}] = 0 \quad \Longleftrightarrow \quad k_1 [\text{X}] = k_{-1} [\text{Y}]$$
STEP 2平衡定数 $K = \dfrac{[\text{Y}]}{[\text{X}]}$ を求める
上の式を変形して数値を代入すると、 $$K = \frac{[\text{Y}]}{[\text{X}]} = \frac{k_1}{k_{-1}} = \frac{1.0 \times 10^{-3}\text{ /min}}{2.0 \times 10^{-6}\text{ /min}} = 0.50 \times 10^3 = 5.0 \times 10^2$$
STEP 1$\text{X} \rightleftarrows \text{Z}$ の平衡定数 $K' = \dfrac{[\text{Z}]}{[\text{X}]}$ を求める
(ii)とまったく同様に、$\text{X} \rightleftarrows \text{Z}$ が平衡状態にあるとき、正反応と逆反応の速度が等しいので、 $$k_2 [\text{X}] = k_{-2} [\text{Z}]$$ これより、平衡状態における $[\text{X}]$ と $[\text{Z}]$ の濃度比は、 $$\frac{[\text{Z}]}{[\text{X}]} = \frac{k_2}{k_{-2}} = \frac{5.0 \times 10^{-5}\text{ /min}}{1.0 \times 10^{-10}\text{ /min}} = 5.0 \times 10^5$$
STEP 2共通の $[\text{X}]$ を介して $[\text{Y}] : [\text{Z}]$ の比を求める
同一の容器内で平衡にあるため、$[\text{X}]$ は共通です。 $$[\text{Y}] = (5.0 \times 10^2)[\text{X}], \qquad [\text{Z}] = (5.0 \times 10^5)[\text{X}]$$ したがって、平衡状態における $[\text{Y}] : [\text{Z}]$ は、 $$[\text{Y}] : [\text{Z}] = (5.0 \times 10^2)[\text{X}] : (5.0 \times 10^5)[\text{X}] = 5.0 \times 10^2 : 5.0 \times 10^5 = 1 : 1000$$ (※反応開始1分後には $20 : 1$ で $\text{Y}$ が圧倒的に多かったのに、平衡状態になると $1 : 1000$ で $\text{Z}$ が圧倒的多数に逆転します!)
【図解】なぜ「イ」が正解なのか?(山の高さ=活性化エネルギー、谷の深さ=安定性)
STEP 1正反応の活性化エネルギー(山の頂上の高さ)を比較する
$\text{X} \rightarrow \text{Y}$ の速度定数 $k_1 = 1.0 \times 10^{-3}\text{ /min}$ と $\text{X} \rightarrow \text{Z}$ の速度定数 $k_2 = 5.0 \times 10^{-5}\text{ /min}$ を比べると、$k_1 > k_2$ です。
反応速度定数が大きいほど活性化エネルギーが小さい(エネルギー図の山が低い)ため、$\text{Y}$ に至る山(実線)の頂上は、$\text{Z}$ に至る山(点線)の頂上よりも低くなります。これより(ア)または(イ)に絞られます。
STEP 2$\text{X}, \text{Y}, \text{Z}$ それぞれのエネルギー準位(安定性)を比較する
平衡状態での濃度比は $[\text{X}] : [\text{Y}] : [\text{Z}] = 1 : 500 : 500000$ であり、$\text{Z}$ が最も多く、次いで $\text{Y}$、最も少ないのが $\text{X}$ です。
化学平衡において存在比が大きい物質ほど熱力学的に安定(=もつ化学エネルギーが低い)なので、物質のもつエネルギーの大小関係は、
$$(\text{X のエネルギー}) > (\text{Y のエネルギー}) > (\text{Z のエネルギー})$$
となります(また、$k_1 > k_{-1}$、$k_2 > k_{-2}$ より逆反応の活性化エネルギーの方が正反応よりも大きいため、$\text{Y}, \text{Z}$ はともに $\text{X}$ より低エネルギーです)。
以上をすべて満たすグラフは イ です。
設問 (2) ナフタレンのスルホン化における温度条件と生成比
(2) 以下の文章の あ ~ え にあてはまる語を〔語群〕から選んで書け。また、お , か に $\text{A}, \text{B}$ のいずれかを書け。
ナフタレンのスルホン化は可逆反応である。ナフタレンと濃硫酸を1時間反応させると、異なる経路を通って反応が進行し、図2の2種類の生成物が得られる。このときの反応温度による生成物の比を表1に示す。
図2. ナフタレンのスルホン化による生成物
表1. 反応温度とナフタレンスルホン酸の生成比
| 温度 $\text{[}^\circ\text{C]}$ | $\text{A} : \text{B}$ |
|---|---|
| 40 | $85 : 15$ |
| 160 | $5 : 95$ |
ナフタレンと濃硫酸の反応を あ で行うときは、逆反応は起こりにくい。このとき、多くの分子が活性化エネルギーの い 反応経路で生成物に変換され、活性化エネルギーの う 反応経路を通って生成物になる分子は少ない。
一方、この反応を え で行うと、多くの分子が活性化エネルギーの う 反応経路を通って生成物になることができる。このとき逆反応も進行するので、最終的に生成物のエネルギーが い 分子が多く得られる。
したがって、$\text{A}$ と $\text{B}$ を比べると、生成物のエネルギーが小さいのは お であり、生成する際の活性化エネルギーが小さいのは か である。
STEP 1文脈から〔あ〕〜〔え〕を決定する
- 反応を 低温(あ) で行うときは分子の熱運動エネルギーが小さいため、逆反応は起こりにくく、正反応でも山が低い=活性化エネルギーが 小さい(い) 経路が優先して進み、活性化エネルギーが 大きい(う) 経路を通る分子は少なくなります(=速度論的支配)。
- 一方、反応を 高温(え) で行うと、熱運動エネルギーが大きいため活性化エネルギーが 大きい(う) 経路も越えられるようになり、逆反応も進行して平衡状態に達するため、最終的に熱力学的に安定な=生成物のエネルギーが 小さい(い) 分子が多く得られます(=熱力学的支配)。
STEP 2表1と立体障害の知識から〔お〕・〔か〕を決定する
表1を見ると、低温($40\text{ }^\circ\text{C}$)では $\text{A}$(1-ナフタレンスルホン酸、$\alpha$位)が $85\%$ 生成し、高温($160\text{ }^\circ\text{C}$)では $\text{B}$(2-ナフタレンスルホン酸、$\beta$位)が $95\%$ 生成しています。
(※構造的にも、$\text{A}$ は隣り合うベンゼン環の水素原子と $-\text{SO}_3\text{H}$ 基がぶつかる立体障害があるため、$\text{B}$ の方がエネルギーが低く安定です。設問(1)の $\text{Y}$ が $\text{A}$、$\text{Z}$ が $\text{B}$ に対応しています!)
したがって、
- 高温で主生成物となる「生成物のエネルギーが小さい(安定な)物質」は B(お)
- 低温で素早く生成する「生成する際の活性化エネルギーが小さい物質」は A(か)
設問 (2) の最終解答
〔問3〕芳香族化合物の合成と3量体環状エステルの構造決定
いよいよラストの大問3!ここは「3つのヒドロキシ酸 $\text{B}, \text{C}, \text{D}$ が輪っか状に繋がった環状エステル $\text{A}$」のパズルだよ!
まず構成パーツの $\text{B}$(サリチル酸)、$\text{C}$(2-(ヒドロキシメチル)安息香酸)、$\text{D}$(乳酸)は教科書知識ですぐに特定できる!
一番の合否の分かれ目は設問(4)の 「$\text{B} \cdot \text{C} \cdot \text{D}$ がどの向きでエステル結合しているか?」 なんだ。手がかりは「$\text{E}$ だけが塩化鉄(III)で呈色する(=フェノール性 $-\text{OH}$ がフリーで残っている)」こと!この1点から $\text{A}, \text{E}, \text{F}, \text{G}$ のすべての結合の向きがドミノ倒しで1通りに決まる気持ちよさを体験しよう!
〔問3〕次の文章を読み、[1]~[5]の情報に基づいて設問 (1)~(4) に答えよ。なお、構造式は [例] にならって書け。立体異性体を区別する必要はない。
化合物 $\text{A}$(分子式 $\text{C}_{18}\text{H}_{14}\text{O}_6$)は分子内に $3$ つのエステル結合と $1$ つの不斉炭素原子をもつ環状化合物である。ある反応条件で $\text{A}$ のエステル結合を加水分解すると、すべてのエステル結合が加水分解された化合物 $\text{B}$(分子式 $\text{C}_7\text{H}_6\text{O}_3$), $\text{C}$(分子式 $\text{C}_8\text{H}_8\text{O}_3$), $\text{D}$(分子式 $\text{C}_3\text{H}_6\text{O}_3$)と、エステル結合を $1$ つもつ化合物 $\text{E}, \text{F}, \text{G}$ が得られた。$\text{E}, \text{F}, \text{G}$ のエステル結合をさらに激しい条件で完全に加水分解すると、$\text{B}, \text{C}, \text{D}$ が得られた。なお、$\text{A}$ から $\text{B}$~$\text{G}$ が生成する過程では、エステル結合の加水分解以外の反応は起こらず、$\text{A}$~$\text{G}$ はすべて電荷をもたないものとする。
- [1] $\text{B}$~$\text{G}$ はいずれもカルボキシ基を $1$ つずつもっている。
- [2] $\text{B}$~$\text{G}$ それぞれの溶液に塩化鉄(III)水溶液を加えると、$\text{B}, \text{E}$ の溶液は青~紫色に呈色する。
- [3] $\text{D}, \text{E}, \text{F}$ はいずれも $1$ つの不斉炭素原子をもっている。
- [4] $\text{B}$ は以下の手順で合成することができる。
ベンゼンに濃硫酸を加えて加熱すると、水によく溶ける強酸性のベンゼンスルホン酸が生成する。ベンゼンスルホン酸のナトリウム塩に X を行うと、ナトリウムフェノキシドが生成する。ナトリウムフェノキシドに高温・高圧で二酸化炭素を反応させ、得られた物質に希硫酸を作用させると $\text{B}$ が得られる。また、$\text{B}$ と無水酢酸の混合物に濃硫酸を加えて反応させると、解熱鎮痛剤として用いられる化合物が得られる。 - [5] $\text{C}$ を酸化すると、$8$ 個の炭素原子をもつジカルボン酸 $\text{a}$ が得られる。$\text{a}$ を加熱すると水が $1$ 分子失われて酸無水物 $\text{b}$ が生成する。また、$\text{b}$ は Y を触媒に用いて、ナフタレンを酸化しても得られる。
設問 (1) アルカリ融解の操作 X
ア. 希塩酸を加えて中和する。
イ. 鉄粉を触媒として塩素を反応させる。
ウ. 固体の水酸化ナトリウムを加えて高温で融解する。
エ. アンモニア性硝酸銀水溶液を加えて $60\text{ }^\circ\text{C}$ に加熱する。
オ. 中性~塩基性の過マンガン酸カリウム水溶液とともに長時間加熱する。
ベンゼンスルホン酸ナトリウム($\text{C}_6\text{H}_5\text{SO}_3\text{Na}$)に固体の水酸化ナトリウム($\text{NaOH}$)を加えて高温(約 $300\text{ }^\circ\text{C}$)で融解(アルカリ融解)すると、ナトリウムフェノキシド($\text{C}_6\text{H}_5\text{ONa}$)と亜硫酸ナトリウム($\text{Na}_2\text{SO}_3$)が生成します。 $$\text{C}_6\text{H}_5\text{SO}_3\text{Na} + 2\text{NaOH} \longrightarrow \text{C}_6\text{H}_5\text{ONa} + \text{Na}_2\text{SO}_3 + \text{H}_2\text{O}$$
設問 (2) ナフタレンの空気酸化の触媒 Y
ア. 濃硫酸 イ. ナトリウム ウ. エボナイト
エ. インベルターゼ オ. 酸化バナジウム(V)
ナフタレンや $o$-キシレンを高温空気酸化して無水フタル酸($\text{b}$)を工業的に製造する際、または接触法で $\text{SO}_2$ を酸化して $\text{SO}_3$ にする際に用いられる代表的な酸化触媒は 酸化バナジウム(V)($\text{V}_2\text{O}_5$) です。
設問 (3) 化合物 a, b, B, C, D の構造決定
STEP 1情報 [4] から化合物 B を決定する
ナトリウムフェノキシドに高温・高圧で $\text{CO}_2$ を反応させ(コルベ・シュミット反応)、希硫酸を作用させて得られる分子式 $\text{C}_7\text{H}_6\text{O}_3$ の化合物 $\text{B}$ は サリチル酸 です。
(※無水酢酸でアセチル化すると解熱鎮痛剤のアセチルサリチル酸になり、塩化鉄(III)水溶液で青紫〜赤紫色に呈色することとも完全に一致します!)
STEP 2情報 [5] から化合物 a, b, C を決定する
・ナフタレンを酸化バナジウム(V)触媒で酸化して得られる酸無水物 $\text{b}$ は 無水フタル酸、その加水分解(脱水前)の炭素数8のジカルボン酸 $\text{a}$ は フタル酸 です。
・化合物 $\text{C}$(分子式 $\text{C}_8\text{H}_8\text{O}_3$)は、[1]よりカルボキシ基($-\text{COOH}$)を1個もち、[2]より塩化鉄(III)で呈色しない(フェノール性 $-\text{OH}$ をもたない)化合物で、酸化するとフタル酸($\text{a}$)になり、かつ環状エステル $\text{A}$ の加水分解で得られるヒドロキシ酸($-\text{OH}$ と $-\text{COOH}$ をもつ化合物)です。
・ベンゼン環のオルト位に $-\text{COOH}$ と $-\text{CH}_2\text{OH}$(アルコール性ヒドロキシ基)が結合した構造であれば、分子式は $\text{C}_6\text{H}_4(\text{CH}_2\text{OH})(\text{COOH}) = \text{C}_8\text{H}_8\text{O}_3$ となり、$-\text{CH}_2\text{OH}$ が酸化されると $-\text{COOH}$ になってフタル酸($\text{a}$)が生成します。
よって、$\text{C}$ は 2-(ヒドロキシメチル)安息香酸 です。
STEP 3情報 [1], [3] から化合物 D を決定する
化合物 $\text{D}$(分子式 $\text{C}_3\text{H}_6\text{O}_3$)は、カルボキシ基($-\text{COOH}$)を1個もち、エステル $\text{A}$ の構成成分であるためヒドロキシ基($-\text{OH}$)ももち、さらに[3]より不斉炭素原子を1個もつ化合物です。
$\text{C}_3\text{H}_6\text{O}_3$ から $-\text{COOH}$ と $-\text{OH}$ を除くと $\text{C}_2\text{H}_4$ が残ります。不斉炭素原子をもつように組み立てると、
$$\text{CH}_3\text{-C}^*\text{H(OH)-COOH}$$
となり、$\text{D}$ は 乳酸(2-ヒドロキシプロパン酸) と決まります。
設問 (3) の最終解答([例]にならった構造式)
設問 (4) 環状エステル A と部分加水分解生成物 E, F, G の構造決定
STEP 1Aが B, C, D 1分子ずつからなる環状エステルであることを確認する
$\text{B}$($\text{C}_7\text{H}_6\text{O}_3$), $\text{C}$($\text{C}_8\text{H}_8\text{O}_3$), $\text{D}$($\text{C}_3\text{H}_6\text{O}_3$)を1分子ずつ足し合わせ、$3$ つのエステル結合ができる際に失われる水 $3\text{ H}_2\text{O}$($\text{H}_6\text{O}_3$)を引くと、
$$\text{C}_{7+8+3}\text{H}_{6+8+6-6}\text{O}_{3+3+3-3} = \text{C}_{18}\text{H}_{14}\text{O}_6$$
となり、化合物 $\text{A}$ の分子式と完全に一致します!
また、環状エステル $\text{A}$ の3つのエステル結合のうち、2箇所が加水分解されて切れると、エステル結合を1つだけ残した2量体($\text{E}, \text{F}, \text{G}$)が得られます。
STEP 2情報 [3](不斉炭素原子)から E, F, G の構成パーツの組み合わせを特定する
$\text{B}, \text{C}, \text{D}$ のうち、不斉炭素原子をもつのは $\text{D}$(乳酸)だけ です。
[3]より、「$\text{E}, \text{F}$ は1つの不斉炭素原子をもち、$\text{G}$ は不斉炭素原子をもたない」ため、2量体の組み合わせは直ちに次のように決まります!
- $\text{G}$(不斉炭素なし)= $\text{B}$ と $\text{C}$ がエステル結合した2量体($\text{D}$ を含まない)
- $\text{E}, \text{F}$(不斉炭素あり)= 「$\text{B}$ と $\text{D}$ の2量体」 と 「$\text{C}$ と $\text{D}$ の2量体」 のどちらか
STEP 3情報 [2](塩化鉄(III)の呈色)からエステル結合の向きを完全に決定する!
ここが最大のポイントです!
[2]より、「2量体 $\text{E}, \text{F}, \text{G}$ のうち、塩化鉄(III)水溶液で呈色するのは $\text{E}$ だけ($\text{F}$ と $\text{G}$ は呈色しない)」とあります。
フェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環に直接ついた $-\text{OH}$)をもつパーツは $\text{B}$(サリチル酸)だけです。そして、$\text{B}$ は2量体 「$\text{B}-\text{D}$」 と 「$\text{B}-\text{C}$(=$\text{G}$)」 の2つに含まれています。
🔍 なぜ $\text{B}$ を含む2量体が2つあるのに、$\text{E}$ は呈色して $\text{G}$ は呈色しないのか?
・$\text{G}$($\text{B}$ と $\text{C}$ の2量体)が呈色しない理由:
$\text{G}$ の中では、$\text{B}$ のフェノール性 $-\text{OH}$ が $\text{C}$ の $-\text{COOH}$ とエステル結合してふさがっているからです!
すなわち、環状エステル $\text{A}$ の中では 「$\text{C}$ の $-\text{COOH}$ $\longrightarrow$ $\text{B}$ のフェノール性 $-\text{OH}$」 の向きでエステル結合しています。
・$\text{E}$ が呈色する理由:
$\text{B}$ のフェノール性 $-\text{OH}$ は $\text{C}$ と結合していたため、その $\text{C}$ とのエステル結合が加水分解されて切れたもう一方の2量体 「$\text{B}$ と $\text{D}$ の2量体」 では、$\text{B}$ のフェノール性 $-\text{OH}$ がフリー(未結合)の状態で残ります!
そして、この2量体の中では 「$\text{B}$ の $-\text{COOH}$ $\longrightarrow$ $\text{D}$ の $-\text{OH}$」 の向きでエステル結合しています。
したがって、呈色する $\text{E}$ が「$\text{B}$ と $\text{D}$ の2量体」 であり、残る $\text{F}$ が「$\text{D}$ と $\text{C}$ の2量体」 と完全に決まります!
【図解】環状エステル A の結合方向と E, F, G への開裂パターン
設問 (4) の最終解答([例]にならった構造式)
不斉炭素原子($\text{―CH(CH}_3\text{)―}$)を $1\text{個}$ もつ化合物は、鏡像異性体(エナンチオマー)が存在します。乳酸 $\text{D}$ の骨格を含むものが該当します。
- ・不斉炭素あり:$\text{A, D, E, F}$(エナンチオマーが存在する)
- ・不斉炭素なし:$\text{B, C, G}$
化合物 $\text{C}$(2-ヒドロキシメチル安息香酸)は、ベンゼン環の隣り合う位置(オルト位)に $-\text{CH}_2\text{OH}$ と $-\text{COOH}$ をもつため、加熱により分子内で脱水縮合(分子内エステル化=ラクトン化)を起こし、安定な五員環ラクトン(フタリド)である化合物 $\text{H}$ を生成します。
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