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まずは自己採点&最終確認!大問 1(小問集合)
- (1) $\text{I}_2$(ヨウ素)
- (2) 塩素
- (3) (ア)
- (4) シャルルの法則
- (5) (ア)、(イ)、(オ)
大問 2(酸化還元滴定と溶媒抽出の融合)
- (1) $+7 \rightarrow +2$
- (2) $2$(個)
- (3) $2\text{MnO}_4^- + 5(\text{COOH})_2 + 6\text{H}^+ \rightarrow 2\text{Mn}^{2+} + 10\text{CO}_2 + 8\text{H}_2\text{O}$
- (4) $0.24\text{ mol/L}$
- (5) 塩酸($\text{Cl}^-$)が過マンガン酸イオンに酸化されて塩素が発生してしまうため。
- (6) 滴下した過マンガン酸カリウム水溶液の赤紫色が消えずに残ることで確認する。
- (7) $K_{\text{A}} = 3.0$ | (8) $0.40\text{ g}$
- (9) $K_{\text{B}} = 4.0$ | (10) $79\text{ mL}$
大問 3(鉄の製錬・性質・反応と総合問題)
- (1) (ア) クロム($\text{Cr}$) / (イ) 不動態 / (ウ) 淡緑 / (エ) 黄褐 / (オ) アセチレン / (カ) $p$-ジクロロベンゼン / (キ) $4$
- (2) ③
- (3) (A) $\text{K}_3[\text{Fe(CN)}_6]$ / (B) $\text{KSCN}$(または $\text{NH}_4\text{SCN}$) / (C) $\text{Fe}_3\text{O}_4$
- (4) $6.7 \times 10^4\text{ L}$
- (5) $\text{HCOOH} \rightarrow \text{CO} + \text{H}_2\text{O}$
- (6) 血液中のヘモグロビンと強く結合し、酸素の運搬能力を奪うため。
- (7) 黄褐色から淡緑色に変化し、白色(または淡黄色)の沈殿(濁り)が生じる。
大問 4(芳香族化合物・PETの合成と構造決定)
- (1) A:テレフタル酸 / E:$o$-キシレン / H:フタル酸ジメチル(各構造式は本文参照)
- (2) B:エチレングリコール(1,2-エタンジオール) / C:$p$-キシレン / D:エチルベンゼン
- (3) トルエン(または スチレン、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール)
- (4) ナフタレン $+\ \dfrac{9}{2}\text{O}_2 \rightarrow$ 無水フタル酸 $+ 2\text{CO}_2 + 2\text{H}_2\text{O}$(構造式は本文参照)
- (5) エステル結合
- (6) $2.3 \times 10^2\text{ g}$
理論・無機・有機の基礎小問集合
大問1はウォーミングアップの小問集合だよ!ただし(1)のひっかけ(「単体」を選び「化学式」で答える)や、(5)の「塩の液性」と「塩の分類(正塩・酸性塩・塩基性塩)」の混同でポロッと落とす受験生が毎年続出するんだ。ここを3分以内にノーミスで駆け抜けるのが久留米医合格への第一歩だよ!
【設問 (1)】
次の物質のうちから、常圧で融点が最も低い単体を選び、その化学式を答えよ。塩化ナトリウム, 黒鉛, 鉄, ナフタレン, ヨウ素
STEP 1「単体」だけを選び出す(化合物を除外する)
問題文の条件は「最も低い単体を選び」です。まず1種類の元素だけでできている「単体」と、2種類以上の元素からできている「化合物」を仕分けしましょう。
- 塩化ナトリウム($\text{NaCl}$):$\text{Na}$ と $\text{Cl}$ からなるイオン結晶(化合物 $\rightarrow$ 除外!)
- 黒鉛($\text{C}$):炭素の単体(共有結合の結晶)
- 鉄($\text{Fe}$):鉄の単体(金属結晶)
- ナフタレン($\text{C}_{10}\text{H}_8$):$\text{C}$ と $\text{H}$ からなる分子結晶(化合物 $\rightarrow$ 除外!※融点は約 $80\,^\circ\text{C}$ と最も低いですが、化合物なので選んではいけません!)
- ヨウ素($\text{I}_2$):ヨウ素の単体(分子結晶)
STEP 2残った3つの単体の結晶の種類と融点を比較する
結晶の結合の強さは、一般に 共有結合の結晶 > 金属結晶 > 分子結晶(分子間力) の順になります。
・黒鉛($\text{C}$):共有結合の結晶(融点 $3500\,^\circ\text{C}$ 以上)
・鉄($\text{Fe}$):金属結晶(融点 約 $1538\,^\circ\text{C}$)
・ヨウ素($\text{I}_2$):弱い分子間力(ファンデルワールス力)で結びついた分子結晶(融点 約 $114\,^\circ\text{C}$)
したがって、単体の中で融点が最も低いのはヨウ素であり、設問は「化学式を答えよ」なので $\text{I}_2$ と答えます。
【設問 (2)】
水溶液Aに硝酸銀水溶液を加えると溶液が白く濁った。この結果から、水溶液Aには成分元素として何が含まれていることがわかるか。元素名で答えよ。STEP 1銀イオン $\text{Ag}^+$ による沈殿反応(ハロゲン化物イオンの検出)
硝酸銀($\text{AgNO}_3$)水溶液を加えると、水溶液中の銀イオン($\text{Ag}^+$)が塩化物イオン($\text{Cl}^-$)と反応して、塩化銀($\text{AgCl}$)の白色沈殿を生じます。
$$\text{Ag}^+ + \text{Cl}^- \rightarrow \text{AgCl}\downarrow \text{(白色沈殿)}$$
(※なお、$\text{Br}^-$ なら淡黄色沈殿、$\text{I}^-$ なら黄色沈殿になります。)
「元素名で答えよ」という指定があるため、化学式($\text{Cl}$)やイオン名(塩化物イオン)ではなく「塩素」と答えます。
【設問 (3)】
高分子化合物を選び記号で答えよ。(ア) アミロース (イ) ガラクトース (ウ) スクロース (エ) マルトース (オ) ラクトース
STEP 1糖類の分類(単糖類・二糖類・多糖類)を整理する
- (ア) アミロース:多数の $\alpha$-グルコースが直鎖状に縮合重合した多糖類(天然高分子化合物)。分子量は数万〜数十万。
- (イ) ガラクトース:化学式 $\text{C}_6\text{H}_{12}\text{O}_6$(分子量 $180$)の単糖類。
- (ウ) スクロース、(エ) マルトース、(オ) ラクトース:いずれも化学式 $\text{C}_{12}\text{H}_{22}\text{O}_{11}$(分子量 $342$)の二糖類。
したがって、高分子化合物(分子量およそ1万以上)は (ア) です。
【設問 (4)】
気体の状態方程式において、物質量と圧力が一定の場合の関係を説明する法則名は何か。STEP 1気体の状態方程式 $PV = nRT$ から定数をまとめる
気体の状態方程式 $PV = nRT$ において、物質量 $n$ と圧力 $P$ が一定のとき、 $$\frac{V}{T} = \frac{nR}{P} = \text{一定}$$ となります。すなわち「圧力が一定のとき、一定量の気体の体積 $V$ は絶対温度 $T$ に比例する」という関係を表しており、これをシャルルの法則といいます。(※温度が一定で $PV = \text{一定}$ ならボイルの法則です。)
【設問 (5)】
次の塩のうち、正塩をすべて選び記号で答えよ。(ア) $\text{CH}_3\text{COONa}$ (イ) $\text{CuCl}_2$ (ウ) $\text{MgCl(OH)}$ (エ) $\text{NaHCO}_3$ (オ) $\text{(NH}_4)_2\text{SO}_4$
STEP 1「正塩・酸性塩・塩基性塩」の定義を確認する(水溶液の液性とは無関係!)
塩の分類は、中和反応において酸の $\text{H}^+$ や塩基の $\text{OH}^-$ が化学式中に残っているかどうかだけで決まります(水に溶かしたとき酸性・塩基性になるかは関係ありません!)。
- (ア) $\text{CH}_3\text{COONa}$:$\text{CH}_3\text{COOH}$ と $\text{NaOH}$ が過不足なく中和した塩。電離する $\text{H}^+$ も $\text{OH}^-$ も残っていないため 正塩。(※ $\text{CH}_3\text{COO}^-$ の $\text{H}$ は電離しないので数えません)
- (イ) $\text{CuCl}_2$:$\text{HCl}$ と $\text{Cu(OH)}_2$ が完全に中和した塩。$\text{H}$ も $\text{OH}$ も残っていないため 正塩。
- (ウ) $\text{MgCl(OH)}$:塩基($\text{Mg(OH)}_2$)の $\text{OH}$ が残っているため 塩基性塩。
- (エ) $\text{NaHCO}_3$:酸($\text{H}_2\text{CO}_3$)の電離できる $\text{H}$ が残っているため 酸性塩。
- (オ) $\text{(NH}_4)_2\text{SO}_4$:$\text{H}_2\text{SO}_4$ と $\text{NH}_3$ が完全に中和した塩。$\text{H}_2\text{SO}_4$ 由来の $\text{H}^+$ は残っていないため 正塩。
過マンガン酸カリウムによる酸化還元滴定と溶媒抽出(分配平衡)
大問2は、前半(1)〜(6)が超定番の過マンガン酸カリウム滴定、後半(7)〜(10)が医学部頻出の分配係数(溶媒抽出)との融合計算だよ!
後半を攻略する最強のコツは、「1回の抽出後に水相に残る割合」を分数で公式化してしまうこと!また、実験ごとにベンゼンの体積が $100\text{ mL}$ なのか $50\text{ mL}$ なのかが変化しているから、図を描いて整理すれば絶対に間違えないよ!
過マンガン酸イオン $\text{MnO}_4^-$ は酸性水溶液中で強い酸化剤としてはたらき、マンガン(II)イオン $\text{Mn}^{2+}$ になる。一方、シュウ酸 $(\text{COOH})_2$ は酸化剤との反応により二酸化炭素 $\text{CO}_2$ へと分解される。また、過マンガン酸イオンはシュウ酸以外にも多くの化合物と反応し、それらの定量に用いることができる。過マンガン酸カリウムを用いた次の実験について、以下の問いに答えよ。ただし、次の実験で用いる化合物AとBは、$1\text{ g}$ 当たりそれぞれ $0.10\text{ mol}$ と $0.15\text{ mol}$ の過マンガン酸カリウムと反応する。また、温度は一定で、混合により有機溶媒と水の体積に変化はないものとする。数値を問う問題は有効数字2桁で答えよ。
実験1:$0.10\text{ mol/L}$ のシュウ酸ナトリウム水溶液 $15\text{ mL}$ に $3.0\text{ mol/L}$ の硫酸 $5.0\text{ mL}$ を加えた。ここに濃度未知の過マンガン酸カリウム水溶液を滴下したところ、$2.5\text{ mL}$ を加えたところで全てのシュウ酸が反応した。
実験2:水溶液にベンゼンを加えよく混ぜると、溶質は水相からベンゼン相へと移動し平衡に達する。この時、水相の溶質濃度 $c_1$ とベンゼン相の溶質濃度 $c_2$ の比は分配係数($K = c_2 / c_1$)とよばれ、化合物ごとに一定の値を示す。$1.0\text{ g}$ の化合物Aを水 $100\text{ mL}$ に溶かしたのち、ベンゼン $100\text{ mL}$ で抽出を行った。抽出後の水溶液 $100\text{ mL}$ に対して $0.50\text{ mol/L}$ の過マンガン酸カリウム水溶液で滴定を行ったところ、$50\text{ mL}$ を加えた時点で反応が完結した。
実験3:化合物Aと化合物Bを $1.0\text{ g}$ ずつ $100\text{ mL}$ の水に溶解したのち、$50\text{ mL}$ のベンゼンで抽出を行った。抽出後の水溶液に対して $0.50\text{ mol/L}$ の過マンガン酸カリウム水溶液で滴定を行ったところ、$140\text{ mL}$ を加えた時点で反応が完結した。
📊 実験2・実験3・問(10)の「溶媒抽出と滴定」の完全図解
※問(9)・問(10)の正確な数値計算は、下のステップ解説で1ステップずつ丁寧に確認しましょう!
【設問 (1)】
過マンガン酸イオン $\text{MnO}_4^-$ が $\text{Mn}^{2+}$ へと還元される際の $\text{Mn}$ の酸化数の変化を例にならって答えよ(例:$+2 \rightarrow +4$)。STEP 1反応前後の $\text{Mn}$ の酸化数を求める
・$\text{MnO}_4^-$ における $\text{Mn}$ の酸化数を $x$ とすると、化合物中の $\text{O}$ の酸化数は $-2$、イオン全体の電荷が $-1$ なので、 $$x + (-2) \times 4 = -1 \quad \Longleftrightarrow \quad x = +7$$ ・$\text{Mn}^{2+}$ は単原子イオンなので、酸化数はそのままイオンの価数に等しく $+2$ です。
【設問 (2)】
下線部について、$1$ 分子のシュウ酸が酸化される際に放出される電子数を答えよ。STEP 1シュウ酸の酸化剤との半反応式を書く
シュウ酸 $(\text{COOH})_2$(または $\text{H}_2\text{C}_2\text{O}_4$)が酸化されて $2$ 分子の $\text{CO}_2$ になるときの半反応式を作ります。
両辺の $\text{H}$ 原子の数を $\text{H}^+$ で合わせ、電荷を電子 $\text{e}^-$ で合わせると、
$$(\text{COOH})_2 \rightarrow 2\text{CO}_2 + 2\text{H}^+ + 2\text{e}^-$$
($\text{C}$ の酸化数が $+3$ から $+4$ へ $1$ 原子あたり $1$ 増加し、$1$ 分子中に $\text{C}$ が $2$ 個あるため、放出される電子は $2$ 個です。)
【設問 (3)】
硫酸酸性条件における、過マンガン酸カリウムとシュウ酸の反応について、イオンを含む化学反応式を答えよ。STEP 1酸化剤と還元剤の半反応式から電子 $\text{e}^-$ を消去する
・酸化剤($\text{MnO}_4^-$)の半反応式: $$\text{MnO}_4^- + 8\text{H}^+ + 5\text{e}^- \rightarrow \text{Mn}^{2+} + 4\text{H}_2\text{O} \quad \cdots \text{①}$$ ・還元剤(シュウ酸)の半反応式: $$(\text{COOH})_2 \rightarrow 2\text{CO}_2 + 2\text{H}^+ + 2\text{e}^- \quad \cdots \text{②}$$ 電子 $\text{e}^-$ を消去するため、$\text{①} \times 2 + \text{②} \times 5$ を計算します。 $$2\text{MnO}_4^- + 16\text{H}^+ + 5(\text{COOH})_2 \rightarrow 2\text{Mn}^{2+} + 8\text{H}_2\text{O} + 10\text{CO}_2 + 10\text{H}^+$$ 両辺の $10\text{H}^+$ を移項して整理すると、求めるイオン反応式が得られます。
(※シュウ酸を $\text{H}_2\text{C}_2\text{O}_4$ や $\text{C}_2\text{O}_4^{2-}$ と表記した $2\text{MnO}_4^- + 5\text{C}_2\text{O}_4^{2-} + 16\text{H}^+ \rightarrow 2\text{Mn}^{2+} + 10\text{CO}_2 + 8\text{H}_2\text{O}$ も正解です)
【設問 (4)】
実験1で用いた過マンガン酸カリウム水溶液のモル濃度を求めよ。STEP 1電子の物質量保存の式を立てる
求める過マンガン酸カリウム水溶液のモル濃度を $c\text{ [mol/L]}$ とします。
・還元剤(シュウ酸ナトリウム $\text{Na}_2\text{C}_2\text{O}_4$、$1$ 価ではなく電子を $2$ 個放出する $2$ 価の還元剤)が放出した電子 $\text{e}^-$ の物質量:
$$n(\text{e}^-)_{\text{放出}} = 2 \times 0.10\text{ mol/L} \times \frac{15}{1000}\text{ L} = 3.0 \times 10^{-3}\text{ mol}$$
・酸化剤($\text{KMnO}_4$、電子を $5$ 個受け取る $5$ 価の酸化剤)が受け取った電子 $\text{e}^-$ の物質量:
$$n(\text{e}^-)_{\text{受取}} = 5 \times c\text{ mol/L} \times \frac{2.5}{1000}\text{ L}$$
これらが等しいので、
$$5 \times c \times \frac{2.5}{1000} = 2 \times 0.10 \times \frac{15}{1000}$$
$$12.5 c = 3.0 \quad \Longleftrightarrow \quad c = \frac{3.0}{12.5} = \frac{6.0}{25} = 0.24\text{ mol/L}$$
【設問 (5)】
実験1において、硫酸の代わりに塩酸を使用することはできない。理由を答えよ。STEP 1塩化物イオン $\text{Cl}^-$ の還元性に注目する
塩酸($\text{HCl}$)に含まれる塩化物イオン $\text{Cl}^-$ は還元性をもつため、強力な酸化剤である過マンガン酸イオン $\text{MnO}_4^-$ によって酸化されて塩素($\text{Cl}_2$)が発生してしまい($2\text{Cl}^- \rightarrow \text{Cl}_2 + 2\text{e}^-$)、過マンガン酸カリウムが余分に消費されて正確な滴定ができなくなるためです。(※硝酸 $\text{HNO}_3$ も自身が酸化剤として働くため使えません。)
【設問 (6)】
実験1において、全てのシュウ酸が反応したことをどのように確認するか答えよ。STEP 1$\text{MnO}_4^-$(赤紫色)と $\text{Mn}^{2+}$(ほぼ無色)の色の変化
シュウ酸が残っている間は、滴下した $\text{MnO}_4^-$(赤紫色)がただちに還元されて $\text{Mn}^{2+}$(ほぼ無色)になるため溶液は無色のままです。シュウ酸がすべて反応し終わった瞬間、わずかに過剰となった $\text{MnO}_4^-$ の赤紫色(淡桃色)が消えずに溶液全体に残ることで終点を確認します。
【設問 (7)】
化合物Aの分配係数 $K_{\text{A}}$ を求めよ。STEP 1実験2の滴定結果から、抽出後に水相に残った化合物Aの質量を求める
実験2で滴下した過マンガン酸カリウム($\text{KMnO}_4$)の物質量は、 $$0.50\text{ mol/L} \times \frac{50}{1000}\text{ L} = 0.025\text{ mol}$$ リード文より「化合物Aは $1\text{ g}$ 当たり $0.10\text{ mol}$ の過マンガン酸カリウムと反応する」ので、抽出後の水相($100\text{ mL}$)に残っていた化合物Aの質量 $w_{\text{A1}}\text{ [g]}$ は、 $$w_{\text{A1}} = \frac{0.025\text{ mol}}{0.10\text{ mol/g}} = 0.25\text{ g}$$
STEP 2ベンゼン相に移動した化合物Aの質量と分配係数 $K_{\text{A}}$ を求める
最初に溶かした化合物Aは合計 $1.0\text{ g}$ なので、ベンゼン相($100\text{ mL}$)へ移動した化合物Aの質量 $w_{\text{A2}}$ は、 $$w_{\text{A2}} = 1.0\text{ g} - 0.25\text{ g} = 0.75\text{ g}$$ 実験2では水相の体積 $V_1 = 100\text{ mL}$、ベンゼン相の体積 $V_2 = 100\text{ mL}$ と体積が等しいため、水相の濃度 $c_1$ とベンゼン相の濃度 $c_2$ の比である分配係数 $K_{\text{A}}$ は、(化合物Aのモル質量を $M_{\text{A}}$ とおくと約分されて消えるので)そのまま質量の比に等しくなります。 $$K_{\text{A}} = \frac{c_2}{c_1} = \frac{\dfrac{0.75 / M_{\text{A}}}{100 / 1000}}{\dfrac{0.25 / M_{\text{A}}}{100 / 1000}} = \frac{0.75}{0.25} = 3.0$$
【設問 (8)】
実験3において、抽出後に水相に存在する化合物Aの質量を答えよ。STEP 1実験3の体積条件(水 $100\text{ mL}$、ベンゼン $50\text{ mL}$)で分配の式を立てる
実験3では、最初 $1.0\text{ g}$ の化合物Aを水 $V_1 = 100\text{ mL}$ に溶かし、ベンゼン $V_2 = 50\text{ mL}$ で抽出しています。
抽出後に水相($100\text{ mL}$)に存在する化合物Aの質量を $x\text{ [g]}$ とすると、ベンゼン相($50\text{ mL}$)に移動した化合物Aの質量は $(1.0 - x)\text{ [g]}$ です。
分配係数 $K_{\text{A}} = 3.0$ は一定なので、
$$K_{\text{A}} = \frac{c_2}{c_1} = \frac{\dfrac{1.0 - x}{50}}{\dfrac{x}{100}} = 3.0$$
分母・分子を整理すると、
$$\frac{2(1.0 - x)}{x} = 3.0 \quad \Longleftrightarrow \quad 2.0 - 2x = 3x \quad \Longleftrightarrow \quad 5x = 2.0 \quad \therefore x = 0.40\text{ g}$$
【設問 (9)】
化合物Bの分配係数 $K_{\text{B}}$ を求めよ。STEP 1実験3の滴定で消費された $\text{KMnO}_4$ の内訳(A消費分とB消費分)を求める
実験3の滴定で加えた $\text{KMnO}_4$ の全物質量は、 $$n_{\text{合計}} = 0.50\text{ mol/L} \times \frac{140}{1000}\text{ L} = 0.070\text{ mol}$$ このうち、水相に残っていた化合物A($0.40\text{ g}$)との反応に消費された $\text{KMnO}_4$ の物質量は、 $$n_{\text{A}} = 0.40\text{ g} \times 0.10\text{ mol/g} = 0.040\text{ mol}$$ したがって、水相に残っていた化合物Bとの反応に消費された $\text{KMnO}_4$ の物質量 $n_{\text{B}}$ は、 $$n_{\text{B}} = 0.070\text{ mol} - 0.040\text{ mol} = 0.030\text{ mol}$$
STEP 2水相に残った化合物Bの質量から分配係数 $K_{\text{B}}$ を計算する
リード文より「化合物Bは $1\text{ g}$ 当たり $0.15\text{ mol}$ の過マンガン酸カリウムと反応する」ので、抽出後の水相($100\text{ mL}$)に残っていた化合物Bの質量 $w_{\text{B1}}$ は、
$$w_{\text{B1}} = \frac{0.030\text{ mol}}{0.15\text{ mol/g}} = 0.20\text{ g}$$
最初に溶かした化合物Bは $1.0\text{ g}$ なので、ベンゼン相($50\text{ mL}$)に移動した化合物Bの質量 $w_{\text{B2}}$ は、
$$w_{\text{B2}} = 1.0\text{ g} - 0.20\text{ g} = 0.80\text{ g}$$
ここで体積に注意しましょう!水相は $V_1 = 100\text{ mL}$、ベンゼン相は $V_2 = 50\text{ mL}$ です!
よって、化合物Bの分配係数 $K_{\text{B}} = \dfrac{c_2}{c_1}$ は、
$$K_{\text{B}} = \frac{\text{ベンゼン相の濃度 } c_2}{\text{水相の濃度 } c_1} = \frac{\dfrac{0.80}{50}}{\dfrac{0.20}{100}} = \frac{0.80}{0.20} \times \frac{100}{50} = 4.0 \times 2 = 8.0$$
もしベンゼン相と水相の体積比($50\text{ mL}$ と $100\text{ mL}$)をうっかり忘れて質量比だけで $0.80 \div 0.20 = 4.0$ と計算してしまうミスが多発しますが、定義通り濃度比 $c_2 / c_1$ で計算すると $K_{\text{B}} = 8.0$ となります。(※念のため、もし
【設問 (10)】
実験3と同様に化合物AとBをそれぞれ $1.0\text{ g}$ ずつ溶解した $100\text{ mL}$ の水に対して、$50\text{ mL}$ のベンゼンによる抽出を2回行った。この抽出操作後の水溶液を完全に酸化するために必要となる $0.50\text{ mol/L}$ の過マンガン酸カリウム水溶液の体積を求めよ。STEP 11回の抽出(水 $100\text{ mL}$ + ベンゼン $50\text{ mL}$)で水相に残る割合を確認する
問(8)・問(9)(実験3)の結果から、水 $100\text{ mL}$ に対してベンゼン $50\text{ mL}$ で 1回抽出 を行うと、
・化合物Aは $1.0\text{ g}$ のうち $0.40\text{ g}$ が水相に残る $\rightarrow$ 1回あたり水相に残る割合は $\dfrac{0.40}{1.0} = \mathbf{0.40}\ \left(\dfrac{2}{5}\right)$
・化合物Bは $1.0\text{ g}$ のうち $0.20\text{ g}$ が水相に残る $\rightarrow$ 1回あたり水相に残る割合は $\dfrac{0.20}{1.0} = \mathbf{0.20}\ \left(\dfrac{1}{5}\right)$
となります。
STEP 22回目の抽出後に水相に残っている化合物A・Bの質量を求める
同じ条件(新しいベンゼン $50\text{ mL}$)で 2回目の抽出 を行うと、水相に残る質量はさらにそれぞれ $0.40$ 倍、$0.20$ 倍になります。
・2回抽出後に水相に残る化合物Aの質量 $w_{\text{A}}''$:
$$w_{\text{A}}'' = 1.0\text{ g} \times (0.40)^2 = 0.16\text{ g}$$
・2回抽出後に水相に残る化合物Bの質量 $w_{\text{B}}''$:
$$w_{\text{B}}'' = 1.0\text{ g} \times (0.20)^2 = 0.040\text{ g}$$
STEP 3必要な過マンガン酸カリウムの物質量と体積を求める
この水溶液中の化合物A($0.16\text{ g}$)と化合物B($0.040\text{ g}$)を完全に酸化するのに必要な $\text{KMnO}_4$ の物質量 $n\text{ [mol]}$ は、 $$n = 0.16\text{ g} \times 0.10\text{ mol/g} + 0.040\text{ g} \times 0.15\text{ mol/g} = 0.016\text{ mol} + 0.0060\text{ mol} = 0.022\text{ mol}$$ したがって、必要な $0.50\text{ mol/L}$ の過マンガン酸カリウム水溶液の体積 $V\text{ [mL]}$ は、 $$0.50\text{ mol/L} \times \frac{V}{1000}\text{ L} = 0.022\text{ mol} \quad \Longleftrightarrow \quad V = \frac{22}{0.50} = 44\text{ mL}$$
実験3の実測値($0.20\text{ g}$ 残存)から直接計算すれば確実に $44\text{ mL}$ となります。(
鉄の製錬・イオン反応・触媒としての利用と生体内の鉄
大問3は「鉄($\text{Fe}$)」をテーマに、無機化学だけでなく有機化学(アセチレンの三量化やベンゼンの塩素化)や生化学(ヘモグロビン・カタラーゼ)まで横断する医学部らしい総合問題だよ!
一番のヤマ場は(7)の「$\text{FeCl}_3$ 水溶液に硫化水素 $\text{H}_2\text{S}$ を通じたときの変化」!$\text{FeS}$ の黒色沈殿ができると勘違いしがちだけど、「酸性条件下」では酸化還元反応($\text{Fe}^{3+} \rightarrow \text{Fe}^{2+}$ と $\text{S}$ の単体析出)が起こる超重要ポイントだからしっかり押さえよう!
鉄は鉄鉱石とコークスおよび石灰石などを溶鉱炉で加熱して製錬される。$\text{Fe}_2\text{O}_3$ を主成分とする鉄鉱石は、(a)コークスの燃焼によって発生した気体Xによって還元され銑鉄となる。銑鉄を転炉に入れて酸素を吹き込み、炭素の含有量を少なくすると鋼が得られる。鉄は湿った空気中では酸化されてさびやすいが、( ア )を $12\%$ 以上含む鉄の合金であるステンレス鋼はさびにくい。また、鉄は希硫酸や塩酸とは反応するが、濃硝酸とは( イ )をつくるため反応が内部まで進行しない。
硫酸鉄(II)七水和物を水に溶かすと、鉄(II)イオンを含む( ウ )色の水溶液になる。この溶液に( A )水溶液を加えると、濃青色沈殿(ターンブル青)が生成する。また、塩化鉄(III)を水に溶かすと、(b)鉄(III)イオンを含む( エ )色の水溶液になる。この溶液に( B )水溶液を加えると血赤色の溶液となる。
鉄は様々な化学反応の触媒としても利用されている。例えば、炭化カルシウムに水を加えることによって発生する( オ )を、赤熱した鉄触媒の存在下で加熱するとベンゼンが得られる。ベンゼンに鉄粉を触媒として塩素を作用させると( カ )が得られる。( カ )は白色の昇華しやすい固体で防虫剤として用いられる。またハーバー・ボッシュ法によるアンモニアの製造では、( C )から生じた鉄を主成分とした触媒が用いられる。
鉄はヒトの必須元素でもある。血液中で酸素の運搬を担うヘモグロビンは $1$ 分子あたり( キ )個の鉄原子を含んでいる。肝臓や赤血球に多く含まれるカタラーゼは活性部位の一部として鉄を含み、生体内で( ク )反応を触媒する酵素として働いている。
【設問 (1)・(2)・(3)】
(1)( ア )〜( キ )にあてはまる適切な語句または数字を答えよ。(2)( ク )にあてはまるのは次の①〜⑤のどれか。番号で答えよ。
① 加水分解 ② 合成 ③ 酸化還元 ④ 脱離 ⑤ 転移
(3)( A )〜( C )にあてはまる適切な化学式を答えよ。
STEP 1空欄( ア )〜( キ )・( ク )の解説
- ( ア )クロム(または $\text{Cr}$):ステンレス鋼は、鉄 $\text{Fe}$ にクロム($\text{Cr}$)(およびニッケル $\text{Ni}$ など)を混ぜた合金です。
- ( イ )不動態:$\text{Fe}, \text{Al}, \text{Ni}, \text{Cr}, \text{Co}$(ゴロ:テ・ア・ニ・ク・コ)は濃硝酸に浸すと表面に緻密な酸化被膜を生じ、それ以上反応しなくなる不動態となります。
- ( ウ )淡緑:水和した鉄(II)イオン $\text{Fe}^{2+}$($[\text{Fe(H}_2\text{O)}_6]^{2+}$)は淡緑色を示します。
- ( エ )黄褐:塩化鉄(III)水溶液中の鉄(III)イオン $\text{Fe}^{3+}$ は黄褐色を示します。
- ( オ )アセチレン:炭化カルシウム(カーバイド $\text{CaC}_2$)に水を加えるとアセチレン($\text{C}_2\text{H}_2$)が発生します($\text{CaC}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{C}_2\text{H}_2 + \text{Ca(OH)}_2$)。これを赤熱した鉄管に通すと $3$ 分子が重合してベンゼン($\text{C}_6\text{H}_6$)になります。
- ( カ )$p$-ジクロロベンゼン(パラジクロロベンゼン):ベンゼンに鉄粉(または $\text{FeCl}_3$)触媒下で塩素を作用させると置換反応が起こり、クロロベンゼンを経て白色結晶・昇華性で防虫剤として使われる $p$-ジクロロベンゼン が得られます。
- ( キ )$4$:ヘモグロビンは $\alpha$ 鎖 $2$ 本と $\beta$ 鎖 $2$ 本の計 $4$ つのサブユニット(ポリペプチド鎖)からなる四量体タンパク質で、各サブユニットが $1$ 個ずつヘム鉄($\text{Fe}^{2+}$)をもつため、$1$ 分子あたり $4$ 個の鉄原子を含みます。
- ( ク )③(酸化還元):カタラーゼは過酸化水素を水と酸素に分解する反応($2\text{H}_2\text{O}_2 \rightarrow 2\text{H}_2\text{O} + \text{O}_2$、過酸化水素自身の不均化=酸化還元反応)を触媒する酵素です。
STEP 2化学式( A )〜( C )の解説
- ( A )$\text{K}_3[\text{Fe(CN)}_6]$:$\text{Fe}^{2+}$ を含む水溶液に加えて濃青色沈殿(ターンブル青)を生じる試薬は、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム $\text{K}_3[\text{Fe(CN)}_6]$ です。
- ( B )$\text{KSCN}$(または $\text{NH}_4\text{SCN}$):$\text{Fe}^{3+}$ を含む水溶液に加えて血赤色溶液($[\text{Fe(SCN)(H}_2\text{O)}_5]^{2+}$ など)を生じる試薬は、チオシアン酸カリウム $\text{KSCN}$ です。
- ( C )$\text{Fe}_3\text{O}_4$:ハーバー・ボッシュ法の鉄触媒は、四酸化三鉄 $\text{Fe}_3\text{O}_4$ を水素で還元して得られる多孔質の鉄を主成分としています。
【設問 (4)】
転炉中で銑鉄 $1.2 \times 10^3\text{ kg}$ に高温で酸素を吹き込んだところ、銑鉄に含まれる炭素の一部が二酸化炭素に変化し、銑鉄の質量が $3.0\%$ 減少した。このとき生じた二酸化炭素の体積は $0\,^\circ\text{C},\ 1.013 \times 10^5\text{ Pa}$ において何 $\text{L}$ か。有効数字2桁で答えよ。ただし、炭素のみが反応を起こしており、反応した炭素は全て二酸化炭素となったとする。STEP 1反応して失われた炭素 $\text{C}$ の質量と物質量を求める
「炭素のみが反応して気体($\text{CO}_2$)として出ていったため、銑鉄の質量が $3.0\%$ 減少した」ので、減少した質量がそのまま反応した炭素 $\text{C}$ の質量 $w(\text{C})$ です。
$1.2 \times 10^3\text{ kg} = 1.2 \times 10^6\text{ g}$ なので、
$$w(\text{C}) = 1.2 \times 10^6\text{ g} \times \frac{3.0}{100} = 3.6 \times 10^4\text{ g}$$
炭素の原子量は $\text{C} = 12$ なので、反応した炭素の物質量 $n(\text{C})$ は、
$$n(\text{C}) = \frac{3.6 \times 10^4\text{ g}}{12\text{ g/mol}} = 3.0 \times 10^3\text{ mol}$$
STEP 2発生した二酸化炭素 $\text{CO}_2$ の標準状態における体積を求める
反応式 $\text{C} + \text{O}_2 \rightarrow \text{CO}_2$ より、炭素と等モルの二酸化炭素が生じるので $n(\text{CO}_2) = 3.0 \times 10^3\text{ mol}$ です。
標準状態($0\,^\circ\text{C},\ 1.013 \times 10^5\text{ Pa}$)では気体 $1\text{ mol}$ の体積は $22.4\text{ L}$ なので、求める体積 $V$ は、
$$V = 22.4\text{ L/mol} \times 3.0 \times 10^3\text{ mol} = 6.72 \times 10^4\text{ L} \fallingdotseq 6.7 \times 10^4\text{ L}$$
【設問 (5)】
下線部(a)の気体Xは、実験室ではギ酸に濃硫酸を加えて加熱すると得られる。この実験室での反応を化学反応式で記せ。STEP 1気体X(一酸化炭素 $\text{CO}$)の実験室的製法
溶鉱炉内でコークス($\text{C}$)の燃焼・反応によって生じ、$\text{Fe}_2\text{O}_3$ を還元する気体Xは一酸化炭素($\text{CO}$)です。
実験室では、ギ酸($\text{HCOOH}$)に濃硫酸(脱水剤=触媒として働くため反応式には書きません)を加えて加熱し、脱水反応によって得ます。
【設問 (6)】
下線部(a)の気体Xは毒性が強い。その理由を説明せよ。STEP 1一酸化炭素中毒のメカニズム
一酸化炭素($\text{CO}$)は、赤血球中のヘモグロビン(の鉄原子)と酸素の約200倍以上強く結合してしまうため、ヘモグロビンが全身の組織へ酸素を運搬する働きを阻害する(酸素欠乏を引き起こす)ためです。
【設問 (7)】
下線部(b)の水溶液に酸性条件下で硫化水素を通じると、どのような変化が観察されるか説明せよ。STEP 1酸性条件下での $\text{Fe}^{3+}$ と $\text{H}_2\text{S}$ の酸化還元反応
塩化鉄(III)水溶液は $\text{Fe}^{3+}$ を含む黄褐色の水溶液です。
ここに酸性条件下で還元剤である硫化水素($\text{H}_2\text{S}$)を通じると、まず $\text{Fe}^{3+}$ が還元されて $\text{Fe}^{2+}$(淡緑色)になり、同時に $\text{H}_2\text{S}$ が酸化されて単体の硫黄($\text{S}$)が生じます。
$$2\text{Fe}^{3+}\text{(黄褐色)} + \text{H}_2\text{S} \rightarrow 2\text{Fe}^{2+}\text{(淡緑色)} + \text{S}\downarrow\text{(白色〜淡黄色沈殿)} + 2\text{H}^+$$
(※酸性条件下では硫化物イオン $\text{S}^{2-}$ の濃度が極めて小さいため、$\text{FeS}$ の黒色沈殿は生じません!)
したがって観察される変化は、「水溶液の色が黄褐色から淡緑色に変化し、硫黄の白色(または淡黄色)の沈殿(白濁)が生じる」となります。
芳香族化合物の反応系統とポリエチレンテレフタラート(PET)
いよいよ最後の大問4!合成繊維・樹脂としておなじみのPET(ポリエチレンテレフタラート)と、分子量 $106$ の芳香族炭化水素($\text{C}_8\text{H}_{10}$:キシレン3種+エチルベンゼン)の酸化反応を組み合わせた王道の有機問題だよ!
一番気をつけたいのは(6)の「PET $100\text{ g}$ の完全燃焼」!PETの繰り返し単位 $\text{C}_{10}\text{H}_8\text{O}_4$ の式量($192$)が頭に入っていれば、1分でズバッと完答できるよ!
合成高分子化合物であるポリエチレンテレフタラート(PET)は、芳香族化合物Aと化合物Bとの縮合重合によって合成される。化合物Aは、分子量 $106$ の芳香族炭化水素Cから触媒を用いた酸化で作られる。また、化合物Bは無色で粘性の高い不揮発性の液体であり、工業的には $\text{C}_2\text{H}_4$ を原料として作られる。
(a)化合物Cの構造異性体である化合物Dを、塩基性の過マンガン酸カリウム水溶液を用いて酸化すると安息香酸カリウムが得られる。また、化合物CやDの構造異性体である化合物Eを、触媒を用いて酸化すると芳香族化合物Fが生成する。化合物Fを加熱すると分子内で脱水がおこり、酸無水物Gが生成する。(b)この酸無水物Gは、酸化バナジウム(V)を触媒に用いてナフタレンを酸化しても得られる。一方、(c)化合物Fにメタノールと少量の濃硫酸を加えて加熱すると、化合物Hができる。
以下の問いに答えよ。ただし、構造式は例にならって記すこと。
🧪 大問4 芳香族化合物($\text{C}_8\text{H}_{10}$ 異性体)とPETの完全反応マップ
【設問 (1)・(2)】
(1) 化合物AとE、Hは何か。それぞれの構造式を答えよ。(2) 化合物BとC、Dは何か。それぞれの名称を答えよ。
STEP 1化合物A・B・C(PETの原料)の特定
・ポリエチレンテレフタラート(PET)は、テレフタル酸(化合物A)とエチレングリコール(化合物B:別名 1,2-エタンジオール)の縮合重合によって合成されます。
・化合物A(テレフタル酸)を与える分子量 $106$ の芳香族炭化水素($\text{C}_8\text{H}_{10}$:$12 \times 8 + 1.0 \times 10 = 106$)である化合物Cは、ベンゼン環のパラ位にメチル基が2つ結合した $p$-キシレン(パラキシレン) です。
STEP 2化合物D・E・F・G・H($\text{C}_8\text{H}_{10}$ の構造異性体)の特定
・分子式 $\text{C}_8\text{H}_{10}$ の芳香族炭化水素には、$o$-キシレン、$m$-キシレン、$p$-キシレン、およびエチルベンゼンの4種類の構造異性体があります。
・化合物Dは「過マンガン酸カリウム酸化で安息香酸カリウム(ベンゼン環に $-\text{COOK}$ が1つだけ結合)が得られる」ことから、ベンゼン環に側鎖が1つだけ結合した エチルベンゼン です。
・化合物Eは「酸化して得られる芳香族化合物Fを加熱すると分子内脱水して酸無水物Gを生じる」ことから、隣り合うオルト位にメチル基を2つもつ $o$-キシレン(オルトキシレン) であり、Fはフタル酸、Gは無水フタル酸です。
・化合物F(フタル酸)にメタノール($\text{CH}_3\text{OH}$)と濃硫酸を加えて加熱すると、2つのカルボキシ基がともにエステル化されて フタル酸ジメチル(化合物H) が生成します。
【設問 (3)】
下線部(a)について、化合物Dと同様の反応で安息香酸カリウムを与える、分子量が $110$ 以下の芳香族化合物の名称をひとつ答えよ。STEP 1過マンガン酸カリウム酸化で安息香酸(塩)を与える条件と分子量チェック
ベンゼン環に結合した炭素鎖(メチル基・ビニル基・ホルミル基・ヒドロキシメチル基など)が1つだけある芳香族化合物は、$\text{KMnO}_4$ による酸化で安息香酸カリウムを与えます。
分子量 $110$ 以下(かつ化合物D=エチルベンゼン以外)の代表的な化合物を確認すると:
- トルエン($\text{C}_6\text{H}_5\text{CH}_3$、分子式 $\text{C}_7\text{H}_8$):分子量 $= 12 \times 7 + 1.0 \times 8 = \mathbf{92}$($\le 110$ で最も定番!)
- スチレン($\text{C}_6\text{H}_5\text{CH}=\text{CH}_2$、分子式 $\text{C}_8\text{H}_8$):分子量 $= 12 \times 8 + 1.0 \times 8 = \mathbf{104}$($\le 110$)
- ベンズアルデヒド($\text{C}_6\text{H}_5\text{CHO}$、分子式 $\text{C}_7\text{H}_6\text{O}$):分子量 $= 12 \times 7 + 6.0 + 16 = \mathbf{106}$($\le 110$)
- ベンジルアルコール($\text{C}_6\text{H}_5\text{CH}_2\text{OH}$、分子式 $\text{C}_7\text{H}_8\text{O}$):分子量 $= 12 \times 7 + 8.0 + 16 = \mathbf{108}$($\le 110$)
このうちいずれか1つ(迷ったら最も基本的なトルエン)を答えれば正解です。
【設問 (4)】
下線部(b)の反応について、構造式を用いた化学反応式で表せ。STEP 1ナフタレン($\text{C}_{10}\text{H}_8$)の接触酸化による無水フタル酸($\text{C}_8\text{H}_4\text{O}_3$)の合成
ナフタレン($\text{C}_{10}\text{H}_8$)を酸化バナジウム(V)($\text{V}_2\text{O}_5$)触媒下で酸素($\text{O}_2$)により高温酸化すると、片方のベンゼン環が酸化開裂して無水フタル酸($\text{C}_8\text{H}_4\text{O}_3$)になり、残りの炭素2個と水素4個は二酸化炭素($2\text{CO}_2$)と水($2\text{H}_2\text{O}$)になります。
右辺の酸素原子 $\text{O}$ の合計は $3\text{(無水フタル酸)} + 2 \times 2\text{(}\text{CO}_2\text{)} + 2 \times 1\text{(}\text{H}_2\text{O}\text{)} = 9$ 個なので、左辺の $\text{O}_2$ の係数は $\dfrac{9}{2}$ となります(または全体を2倍して係数を整数にします)。
【設問 (5)】
下線部(c)の反応で、化合物Hに新たに生じる結合の名称を答えよ。STEP 1カルボン酸とアルコールの縮合反応(エステル化)
フタル酸(カルボン酸)とメタノール(アルコール)が濃硫酸触媒下で脱水縮合すると、新たに $-\text{COO}-$(エステル結合) が形成されます。
【設問 (6)】
$100\text{ g}$ のPETを完全に燃焼するとき、発生する二酸化炭素の質量は何 $\text{g}$ か。有効数字2桁で答えよ。STEP 1PETの繰り返し単位の化学式と式量を求める
テレフタル酸($\text{C}_8\text{H}_6\text{O}_4$)$1$ 分子とエチレングリコール($\text{C}_2\text{H}_6\text{O}_2$)$1$ 分子から水($\text{H}_2\text{O}$)$2$
分子が抜けて縮合重合するため、PETの繰り返し単位の組成式は $\text{C}_{10}\text{H}_8\text{O}_4$ となります。
繰り返し単位の式量は $12 \times 10 + 1 \times 8 + 16 \times 4 = 192$ です。
STEP 2発生する二酸化炭素の質量を計算する
$100\text{ g}$ のPETに含まれる繰り返し単位の物質量は $\dfrac{100}{192}\text{ mol}$ です。
繰り返し単位 $1\text{ mol}$ あたり炭素原子 $\text{C}$ は $10\text{ mol}$ 含まれるため、完全燃焼によって生じる $\text{CO}_2$(分子量 $44$)の質量は次のように求められます。
$$\frac{100}{192} \times 10 \times 44 = \frac{44000}{192} \fallingdotseq 229.1\text{ g}$$
有効数字2桁で表すと $2.3 \times 10^2\text{ g}$ となります。
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