⚡ 解答一覧(スピードチェック)
※化学反応式中の有機化合物は問題指定により「示性式」表記・$\mathrm{C_6H_5OH + NaOH \longrightarrow C_6H_5ONa + H_2O}$
・$\mathrm{C_6H_5COOH + NaOH \longrightarrow C_6H_5COONa + H_2O}$
・水層 C:化合物 (キ)
反応式:$\mathrm{C_6H_5COONa + HCl \longrightarrow C_6H_5COOH + NaCl}$
・水層 E:化合物 (コ)
反応式:$\mathrm{C_6H_5NH_3Cl + NaOH \longrightarrow C_6H_5NH_2 + NaCl + H_2O}$
・熱化学方程式:$\mathrm{Fe_2O_3(\text{固}) + 3CO(\text{気}) = 2Fe(\text{固}) + 3CO_2(\text{気}) + 24\,kJ}$
・(ア)の名称:銑鉄
・理由:銑鉄中に過剰に含まれる炭素(やケイ素・リンなどの不純物)を酸化して除去し、炭素含有量を調整するため。
・気体の化学式:$\mathrm{CO_2}$、$\mathrm{CO}$
・気体の名称:一酸化炭素
・化学反応式:$\mathrm{C_2H_4 + O_2 \longrightarrow 2CO + 2H_2}$
芳香族化合物の抽出・分離操作とフェノールの定量
大問1は医学部入試の大定番「芳香族化合物の分離(分液ろうとによる抽出)」だね!
合否の分かれ目は3つ!①問題文の「化学反応式中の有機化合物は示性式で示せ」という指定を絶対に守ること、②「組成式で示せ」と問われたトリブロモフェノールを $\mathrm{C_6H_3Br_3O}$ と正確に書くこと、③[5]でサリチル酸(カルボキシ基とヒドロキシ基の両方をもつ)が $\mathrm{CO_2}$ 吹き込みでどうなるかを酸の強弱から見抜くことだよ!15〜18分で完答を狙おう!
【問題 1 リード文】
アニリン、ニトロベンゼン、フェノールおよび安息香酸の4種類の溶質をジエチルエーテルに溶かした混合溶液(エーテル混合溶液)がある。この混合溶液から各溶質を分離するため、下図に示す順序で分液ろうとを用いた抽出を常温常圧で行った。ただし各溶質あるいは生成された塩は、抽出によりエーテル層または水層のどちらかに完全に分離できたものとする。また、化学反応式中の有機化合物は示性式で示せ。
- 操作①:$\mathrm{NaOH}$ 水溶液を加えて振り混ぜ、充分に静置した。2層に分かれたのち、水層を新たな分液ろうとに移した。
- 操作②:$\mathrm{CO_2}$ を充分に吹き込み、次にジエチルエーテルを加えて振り混ぜ、充分に静置した。2層に分かれたのちに、エーテル層と水層をそれぞれビーカーに移した。
- 操作③:$\mathrm{HCl}$ 水溶液を加えて振り混ぜ、充分に静置した。2層に分かれたのち、エーテル層と水層をそれぞれビーカーに移した。
📊 【完全図解】4種類の芳香族化合物の分離フローと各層の成分
〔1〕 示性式・操作①の反応と抽出の定義
2) 操作①の結果、下線で示した4種類の溶質のうち、2種類の溶質に変化が生じて塩が生成し、これらの塩はすべて水層Aに分離された。
i) 操作①で生じた二つの変化を、化学反応式でそれぞれ示せ。
ii) 「目的とする物質」と「溶解度」の語句を必ず用いて、「抽出」という操作を2行以内で説明せよ。
1) の解説 ベンゼン($\mathrm{C_6H_6}$)の水素原子1個がニトロ基($\mathrm{-NO_2}$)に置換された化合物がニトロベンゼンです。クロロベンゼン($\mathrm{C_6H_5Cl}$)にならい、フェニル基 $\mathrm{C_6H_5-}$ と官能基 $\mathrm{-NO_2}$ を合わせて表します。
2) i) の解説 操作①では強塩基である水酸化ナトリウム($\mathrm{NaOH}$)水溶液を加えています。4種類の溶質のうち、酸性を示すのはフェノール($\mathrm{C_6H_5OH}$)と安息香酸($\mathrm{C_6H_5COOH}$)の2つです。これらは $\mathrm{NaOH}$ と中和反応を起こし、イオン結晶(塩)となって水層Aへ溶け込みます。
- フェノールの中和:ナトリウムフェノキシド($\mathrm{C_6H_5ONa}$)と水が生じる。
- 安息香酸の中和:安息香酸ナトリウム($\mathrm{C_6H_5COONa}$)と水が生じる。
※注意:リード文の指示通り、有機化合物は示性式($\mathrm{C_6H_5OH}$ 等)で記述します(イオン反応式ではなく化学反応式で書きます)。
・$\mathrm{C_6H_5OH + NaOH \longrightarrow C_6H_5ONa + H_2O}$
・$\mathrm{C_6H_5COOH + NaOH \longrightarrow C_6H_5COONa + H_2O}$
2) ii) の解説 「抽出(extraction)」とは、混合物から目的とする物質を、水や有機溶媒(ジエチルエーテルなど)に対する溶解度の差を利用して、特定の溶媒中へ溶かし出して分離する操作のことです。指定語句「目的とする物質」「溶解度」を確実に入れてまとめます。
〔2〕 操作②(弱酸の遊離)とフェノールの性質・定量計算
1) 生じた変化を化学反応式で示せ。
2) ジエチルエーテルは揮発しやすい性質をもつので、エーテル層Dに含まれる溶質を再結晶により容易にとり出すことが可能である。操作②で得られたエーテル層Dをすべて移したビーカーを湯浴して、溶媒をすべて揮発させた。室温になるまで冷却したところ溶質がすべて析出し、無色の結晶 $1.13\,\mathrm{g}$ が得られた。この結晶がもつ性質を調べるため、充分量の水を加えて結晶を完全に溶解させたのち、以下の実験を行った。なお、溶質は揮発しないものとする。
i) この無色の結晶を溶解させた水溶液にある量の臭素水を加えたところ、白色沈殿 $3.31\,\mathrm{g}$ が生じた。白色沈殿の成分を組成式で示せ。また、エーテル層Dに含まれていた溶質の何$\%$が沈殿したか。有効数字2桁で記せ。なお、反応は理想的に進行したものとする。
ii) この無色の結晶を溶解させた水溶液に塩化鉄(III)水溶液を加えた。水溶液の色が変化する場合、何色に変化するか。【選択肢】から一つ選び記号で記せ。変化しないと考えられる場合は(カ)を選べ。
【選択肢】 (ア)黄 (イ)黒 (ウ)橙赤 (エ)緑 (オ)紫 (カ)変化しない
1) の解説 水層Aには、$\mathrm{C_6H_5ONa}$(フェノールの塩)と $\mathrm{C_6H_5COONa}$(安息香酸の塩)が含まれています。ここに二酸化炭素($\mathrm{CO_2}$、水に溶けて炭酸 $\mathrm{H_2CO_3}$ として働く)を吹き込みます。
酸の強さは 安息香酸 > 炭酸 > フェノール であるため、炭酸よりも弱い酸の塩である ナトリウムフェノキシド($\mathrm{C_6H_5ONa}$)のみが弱酸の遊離反応を起こし、フェノール($\mathrm{C_6H_5OH}$)が再生されてエーテル層Dに移ります。
※十分量の $\mathrm{CO_2}$ を吹き込むため、副生成物は炭酸ナトリウム($\mathrm{Na_2CO_3}$)ではなく炭酸水素ナトリウム($\mathrm{NaHCO_3}$)となります。
2) i) の解説(前半:白色沈殿の組成式)
エーテル層Dから得られた無色の結晶はフェノール($\mathrm{C_6H_5OH}$)です。フェノール水溶液に臭素水($\mathrm{Br_2}$)を加えると、オルト位(2, 6位)とパラ位(4位)の計3か所の水素原子が臭素原子に置換され、2,4,6-トリブロモフェノールの白色沈殿が生じます。
⚠️ 超注意!設問は「示性式」ではなく「組成式で示せ」です!
2,4,6-トリブロモフェノール(示性式 $\mathrm{C_6H_2Br_3OH}$)に含まれる各元素の原子数をまとめると:
- 炭素 $\mathrm{C}$:$6$ 個
- 水素 $\mathrm{H}$:$2 + 1 = 3$ 個
- 臭素 $\mathrm{Br}$:$3$ 個
- 酸素 $\mathrm{O}$:$1$ 個
最も簡単な整数比($6:3:3:1$ はこれ以上約分できないため分子式=組成式)で表すと $\mathrm{C_6H_3Br_3O}$ となります。
2) i) の解説(後半:沈殿した割合のモル計算)
Step 1:フェノール($\mathrm{C_6H_6O}$)と 2,4,6-トリブロモフェノール($\mathrm{C_6H_3Br_3O}$)の分子量を求める
与えられた原子量 $\mathrm{H}=1.00,\ \mathrm{C}=12.0,\ \mathrm{O}=16.0,\ \mathrm{Br}=80.0$ を用います。
・フェノール($\mathrm{C_6H_6O}$)の分子量: $$12.0 \times 6 + 1.00 \times 6 + 16.0 \times 1 = 72.0 + 6.00 + 16.0 = 94.0$$
・2,4,6-トリブロモフェノール($\mathrm{C_6H_3Br_3O}$)の分子量(式量): $$12.0 \times 6 + 1.00 \times 3 + 80.0 \times 3 + 16.0 \times 1 = 72.0 + 3.00 + 240.0 + 16.0 = 331.0$$
Step 2:全体のフェノールの物質量($\mathrm{mol}$)を求める
エーテル層Dから得られたフェノールの結晶は $1.13\,\mathrm{g}$ なので、その物質量 $n_{\text{全}}$ は:
$$n_{\text{全}} = \frac{1.13\,\mathrm{g}}{94.0\,\mathrm{g/mol}} \fallingdotseq 0.01202\,\mathrm{mol} \quad (\text{※ } 1.13 \div 94.0 = 0.012021\cdots)$$
Step 3:生じた白色沈殿の物質量(=反応して沈殿したフェノールの物質量)を求める
白色沈殿($\mathrm{C_6H_3Br_3O}$、式量 $331.0$)が $3.31\,\mathrm{g}$ 生じたので、その物質量 $n_{\text{沈殿}}$ は:
$$n_{\text{沈殿}} = \frac{3.31\,\mathrm{g}}{331.0\,\mathrm{g/mol}} = 0.0100\,\mathrm{mol}$$
反応式 $\mathrm{C_6H_5OH + 3Br_2 \longrightarrow C_6H_2Br_3OH + 3HBr}$ より、フェノール $1\,\mathrm{mol}$ から沈殿が $1\,\mathrm{mol}$ 生じるため、沈殿したフェノールの物質量も $0.0100\,\mathrm{mol}$ です。
Step 4:沈殿したフェノールの割合($\%$)を計算する $$\text{割合}(\%) = \frac{n_{\text{沈殿}}}{n_{\text{全}}} \times 100 = \frac{0.0100\,\mathrm{mol}}{\dfrac{1.13}{94.0}\,\mathrm{mol}} \times 100 = \frac{0.940}{1.13} \times 100 = \frac{94.0}{1.13} \fallingdotseq 83.185\%$$ 有効数字2桁に四捨五入して $83\%$ となります。
2) ii) の解説 フェノール類(ベンゼン環に $\mathrm{-OH}$ 基が直結した化合物)の水溶液に塩化鉄(III)($\mathrm{FeCl_3}$)水溶液を加えると、青紫色〜紫色の呈色反応を示します。選択肢の中では (オ)紫 が正解です。
〔3〕 操作③(塩基の抽出)
解説 エーテル層Bには、アニリン($\mathrm{C_6H_5NH_2}$、弱塩基)とニトロベンゼン($\mathrm{C_6H_5NO_2}$、中性)が残っています。操作③で塩酸($\mathrm{HCl}$ 水溶液、強酸)を加えると、塩基であるアニリンが $\mathrm{HCl}$ と中和反応を起こし、水溶性の塩であるアニリン塩酸塩($\mathrm{C_6H_5NH_3Cl}$)となって水層Eへ移動します。
〔4〕 水層C・水層Eの塩からの元の化合物の再生
【選択肢】 (キ)$\mathrm{HCl}$ (ク)$\mathrm{C_2H_5OH}$ (ケ)$\mathrm{CH_3COONa}$ (コ)$\mathrm{NaOH}$ (サ)$\mathrm{NaCl}$
水層 C の解説 水層Cには弱酸の塩である安息香酸ナトリウム($\mathrm{C_6H_5COONa}$)が含まれています。ここから元の弱酸(安息香酸 $\mathrm{C_6H_5COOH}$)を遊離(再生)させるには、安息香酸よりも強い酸(強酸)である塩酸(キ)$\mathrm{HCl}$ を加えます。
水層 E の解説 水層Eには弱塩基の塩であるアニリン塩酸塩($\mathrm{C_6H_5NH_3Cl}$)が含まれています。ここから元の弱塩基(アニリン $\mathrm{C_6H_5NH_2}$)を遊離(再生)させるには、アニリンよりも強い塩基(強塩基)である水酸化ナトリウム(コ)$\mathrm{NaOH}$ を加えます。
〔5〕 応用:$o$-クレゾール、サリチル酸、トルエンの分離先
解説 3種類の化合物の持つ官能基と酸・塩基の性質を確認しましょう。
フェノール類(炭酸より弱い極弱酸)。フェノールと全く同じ挙動をとり、操作①で水層Aへ行き、操作②の $\mathrm{CO_2}$ 吹き込みで遊離してエーテル層 D へ移る。
カルボキシ基 $\mathrm{-COOH}$ をもつ芳香族カルボン酸(炭酸より強い酸)。操作①で $\mathrm{NaOH}$ と反応して水層Aへ行くが、操作②で $\mathrm{CO_2}$ を吹き込んでも $\mathrm{-COONa}$ は遊離せず塩のまま水溶性なので水層 C に残る。
芳香族炭化水素(中性)。$\mathrm{NaOH}$ とも $\mathrm{HCl}$ とも反応しないため、ニトロベンゼンと同様に最後までエーテル層に残り、エーテル層 F に分離される。
※補足:サリチル酸は操作①で過剰の $\mathrm{NaOH}$ と反応すると二ナトリウム塩 $\mathrm{C_6H_4(ONa)COONa}$ となり、操作②で $\mathrm{CO_2}$ を通じるとフェノール性ヒドロキシ基側のみが遊離してサリチル酸一ナトリウム $\mathrm{C_6H_4(OH)COONa}$ となりますが、$\mathrm{-COONa}$ 基がイオン化しているため依然として水溶性であり、水層Cに残ります。
鉄の工業的製法(高炉・転炉)と廃プラスチック・水素還元製鉄の熱化学
大問2は無機化学の「鉄の製錬(溶鉱炉・転炉)」と理論化学の「熱化学方程式(ヘスの法則)」、さらに最新テーマの「廃プラスチック活用・水素還元製鉄(COURSE50等)」を融合させた良問だよ!
ポイントは2つ!①熱化学方程式を書くときは状態(固・液・気)と符号($=$ と $+\,\mathrm{kJ}$ / $-\,\mathrm{kJ}$)を絶対に落とさないこと、②最後の論述[3] 4)では「一酸化炭素還元は発熱反応($+24\,\mathrm{kJ}$)だが、水素還元は吸熱反応($-99\,\mathrm{kJ}$)である」という計算結果を根拠にピシッと比較説明することだよ!
【問題 2 リード文】
(a)鉄鉱石をコークス $\mathrm{C}$ と石灰石とともに高炉で反応させることで得られる硬いがもろい鉄を( ア )という。(b)( ア )を転炉に移し、再び石灰石を加えて( イ )を吹き込むと硬くて粘り強い( ウ )となる。製鉄にコークスを用いると温室効果ガスが大量に発生する。そこで、(c)コークスの代わりに廃プラスチックを利用することで温室効果ガスの発生を抑制する取り組みが試みられている。必要に応じて下記の熱化学方程式を用いよ。
🏭 【完全図解】高炉(溶鉱炉)と転炉のプロセス比較
〔1〕 高炉での一酸化炭素還元と石灰石の役割
1) コークスの燃焼で発生する気体が $\mathrm{Fe_2O_3}$ を還元することで( ア )が得られる。この変化を熱化学方程式で示し、( ア )の名称を漢字で記せ。
2) 石灰石を加えるのはなぜか。その理由を2行以内で説明せよ。
1) の解説 高炉内でコークス($\mathrm{C}$)が不完全燃焼(または $\mathrm{CO_2}$ と反応)して生じる還元性の気体は一酸化炭素 $\mathrm{CO}$ です。この $\mathrm{CO}$ が酸化鉄(III) $\mathrm{Fe_2O_3}$ を還元して鉄 $\mathrm{Fe}$ と二酸化炭素 $\mathrm{CO_2}$ になる熱化学方程式を作ります。
Step 1:目標とする熱化学方程式の形を書く $$\mathrm{Fe_2O_3(\text{固}) + 3CO(\text{気}) = 2Fe(\text{固}) + 3CO_2(\text{気})} + Q\,\mathrm{kJ}$$
Step 2:与えられた式①、②、⑤からヘスの法則で $Q$ を求める
- 式①:$\mathrm{C(\text{黒鉛}) + O_2(\text{気}) = CO_2(\text{気}) + 394\,kJ}$
- 式②:$\mathrm{C(\text{黒鉛}) + \frac{1}{2}O_2(\text{気}) = CO(\text{気}) + 111\,kJ}$
- 式⑤:$\mathrm{2Fe(\text{固}) + \frac{3}{2}O_2(\text{気}) = Fe_2O_3(\text{固}) + 825\,kJ}$
目標の式を作るには:
- 右辺に $3\mathrm{CO_2(\text{気})}$ があるので、式① $\times 3$
- 左辺に $3\mathrm{CO(\text{気})}$ があるので、式② $\times (-3)$
- 左辺に $\mathrm{Fe_2O_3(\text{固})}$、右辺に $2\mathrm{Fe(\text{固})}$ があるので、式⑤ $\times (-1)$
これらを足し合わせると、$\mathrm{C(\text{黒鉛})}$ と $\mathrm{O_2(\text{気})}$ がすべて消去されます!
反応熱 $Q$ の計算:
$$Q = 394 \times 3 - 111 \times 3 - 825 = 1182 - 333 - 825 = 849 - 825 = +24\,\mathrm{kJ}$$
また、高炉で得られる炭素を約 $4\%$ 含んだ硬いがもろい鉄(ア)を銑鉄(せんてつ)といいます。
・熱化学方程式:$\mathrm{Fe_2O_3(\text{固}) + 3CO(\text{気}) = 2Fe(\text{固}) + 3CO_2(\text{気}) + 24\,kJ}$
・(ア)の名称:銑鉄
2) の解説 鉄鉱石には酸化鉄以外にも、二酸化ケイ素($\mathrm{SiO_2}$)や酸化アルミニウム($\mathrm{Al_2O_3}$)などの岩石成分(脈石)が不純物として含まれています。石灰石($\mathrm{CaCO_3}$)は高炉内の熱で分解して生石灰($\mathrm{CaO}$、塩基性酸化物)となり、酸性の $\mathrm{SiO_2}$ などと反応して融点の低いスラグ($\mathrm{CaSiO_3}$ など)をつくります。スラグは溶けた銑鉄より密度が小さいため上に浮かび、容易に分離・除去できます。
〔2〕 転炉での精錬(銑鉄から鋼へ)
1) ( イ )と( ウ )の名称をそれぞれ漢字で記せ。
2) ( イ )を吹き込むのはなぜか。その理由を2行以内で説明し、反応により生成する気体を化学式で記せ。
1) の解説 転炉では、融解した銑鉄に酸素(イ)を吹き込んで過剰な炭素などを燃焼(酸化)させて取り除き、炭素含有量を $0.02\sim 2\%$ 程度に減らした硬くて粘り強い鋼(ウ)にします。
2) の解説 銑鉄には炭素 $\mathrm{C}$ が約 $4\%$ と多く含まれているため、硬い反面もろくて加工しにくい性質があります。そこで酸素($\mathrm{O_2}$)を吹き込み、過剰な炭素(およびリン・ケイ素などの不純物)を酸化させて除去し、炭素含有量を調整します。このとき炭素が酸化されて発生する気体は $\mathrm{CO_2}$ や $\mathrm{CO}$ です。
・理由:銑鉄中に過剰に含まれる炭素などの不純物を酸化して除去し、炭素含有量を調整するため。
・気体の化学式:$\mathrm{CO_2}$、$\mathrm{CO}$ (※どちらか一方、または両方)
〔3〕 廃プラスチック(ポリエチレン)の利用と水素還元製鉄
1) 酸素が充分に存在する環境でエチレンを燃焼させたときの変化を化学反応式で示せ。
2) 酸素分圧を下げて廃プラスチックを加熱するとエチレンが生成し、さらにエチレンから還元性を有し、かつ、製錬に利用できる2種類の気体が発生する。発生する気体のうち1種類は水素である。もう1種類の気体はなにか。その名称を漢字で記せ。また、エチレンと酸素が反応して2種類の気体が発生する変化を化学反応式で示せ。
3) 水素を利用して製錬する製鉄の方法を水素還元製鉄とよぶ。$\mathrm{Fe_2O_3}$ が水素によって還元されて $\mathrm{Fe}$ が生成する変化を熱化学方程式で示せ。
4) 以下の問いについて、〔1〕1)で解答した式と〔3〕3)で解答した式を対比して、それぞれ3行以内で説明せよ。ただし、解答欄に指定する文頭から書き始めよ。
i) 水素還元製鉄はコークスを用いた製鉄に比べて炉が冷えやすいのはなぜか。
ii) 水素還元製鉄はコークスを用いた製鉄に比べて温室効果ガスの発生を抑制できるのはなぜか。
1) の解説 エチレン($\mathrm{C_2H_4}$)を十分な酸素($\mathrm{O_2}$)中で完全燃焼させると、二酸化炭素($\mathrm{CO_2}$)と水($\mathrm{H_2O}$)が生成します。両辺の原子数を合わせます。
2) の解説 酸素分圧を下げて(不完全燃焼・部分酸化条件で)エチレン $\mathrm{C_2H_4}$ と酸素 $\mathrm{O_2}$ を反応させると、鉄鉱石の還元(製錬)に利用できる還元性気体が2種類発生します。1つは水素($\mathrm{H_2}$)、もう1つは炭素原子と酸素原子からなる還元性気体である一酸化炭素($\mathrm{CO}$)です。
反応物の $\mathrm{C_2H_4}$ と $\mathrm{O_2}$ から生成物の $\mathrm{CO}$ と $\mathrm{H_2}$ ができる反応式を立てて係数を合わせます: $$\mathrm{C_2H_4 + O_2 \longrightarrow 2CO + 2H_2}$$
・気体の名称:一酸化炭素
・化学反応式:$\mathrm{C_2H_4 + O_2 \longrightarrow 2CO + 2H_2}$
3) の解説 $\mathrm{Fe_2O_3(\text{固})}$ が水素 $\mathrm{H_2(\text{気})}$ によって還元され、$\mathrm{Fe(\text{固})}$ と $\mathrm{H_2O(\text{気})}$ が生成する熱化学方程式を作ります。
Step 1:目標とする熱化学方程式の形を書く $$\mathrm{Fe_2O_3(\text{固}) + 3H_2(\text{気}) = 2Fe(\text{固}) + 3H_2O(\text{気})} + Q'\,\mathrm{kJ}$$
Step 2:与えられた式④、⑤からヘスの法則で $Q'$ を求める
- 式④:$\mathrm{H_2(\text{気}) + \frac{1}{2}O_2(\text{気}) = H_2O(\text{気}) + 242\,kJ}$
- 式⑤:$\mathrm{2Fe(\text{固}) + \frac{3}{2}O_2(\text{気}) = Fe_2O_3(\text{固}) + 825\,kJ}$
目標の式を作るには:
- 左辺に $3\mathrm{H_2(\text{気})}$、右辺に $3\mathrm{H_2O(\text{気})}$ があるので、式④ $\times 3$
- 左辺に $\mathrm{Fe_2O_3(\text{固})}$、右辺に $2\mathrm{Fe(\text{固})}$ があるので、式⑤ $\times (-1)$
これらを足し合わせると、$\frac{3}{2}\mathrm{O_2(\text{気})}$ が消去されます。
反応熱 $Q'$ の計算:
$$Q' = 242 \times 3 - 825 = 726 - 825 = -99\,\mathrm{kJ}$$
4) i)・ii) の解説 〔1〕1) の式と〔3〕3) の式を並べて対比しましょう!
- i) 炉が冷えやすい理由: $\mathrm{CO}$ による $\mathrm{Fe_2O_3}$ の還元は発熱反応($+24\,\mathrm{kJ}$)であるのに対し、$\mathrm{H_2}$ による $\mathrm{Fe_2O_3}$ の還元は吸熱反応($-99\,\mathrm{kJ}$)であり、反応の進行に伴って周囲から熱を吸収するためです。
- ii) 温室効果ガスの発生を抑制できる理由: $\mathrm{CO}$ による還元では温室効果ガスである二酸化炭素($\mathrm{CO_2}$)が生成するのに対し、$\mathrm{H_2}$ による還元では水(水蒸気 $\mathrm{H_2O}$)が生成し、$\mathrm{CO_2}$ が発生しないためです(※水蒸気も温室効果を持ちますが、冷却により凝縮・液化して除去でき、大気中の $\mathrm{CO_2}$ 増加を抑えられます)。
※実際の解答用紙には指定の文頭(「水素還元製鉄では〜」や「コークスを用いた製鉄では〜」など)が印字されているため、その文頭に自然な日本語で続くように記述します。
コークス由来の $\mathrm{CO}$ による $\mathrm{Fe_2O_3}$ の還元は発熱反応($+24\,\mathrm{kJ}$)であるのに対し、水素による $\mathrm{Fe_2O_3}$ の還元は吸熱反応($-99\,\mathrm{kJ}$)であり、反応に伴い周囲から熱を奪うため。
コークスを用いた製鉄では還元反応によって温室効果ガスである $\mathrm{CO_2}$ が生成するが、水素還元製鉄では還元反応によって $\mathrm{H_2O}$ が生成し、$\mathrm{CO_2}$ が発生しないため。
お疲れさま!2024年度の聖マリアンナ医科大学(前期)の化学は、大問2題構成で基礎〜標準レベルの知識と丁寧な記述・計算力を問う問題だったね。
特に「示性式で示せ」「組成式で示せ」「熱化学方程式で示せ」といった解答形式の指定ミスを防ぐことが医学部合格への一番の近道だよ!もう一度スピードチェック表で自分の解答を見直してみてね。応援しているよ!
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【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(聖マリアンナ医科大学 2024年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。