平成31年度
東京女子医科大学 化 学(問題冊子全文)
I.注意事項
- 問題は I から V まである。問題 I および II の(A)はマークシート式解答用紙に、問題 II の(B)、および III〜V は記述用解答用紙に解答を書き込むこと。解答の方法は以下の説明に従うこと。
- マークシート式解答用紙
- ① 解答用紙には「生物」(だいだい色)と「化学」(ピンク色)の解答欄がある。
- ② 各問題の解答はマークシート「化学」(ピンク色)の該当するマーク欄をマークすること。
- 記述用解答用紙
解答用紙に氏名、6けたの受験番号を記入し、各問題の解答はすべて解答欄の指定の位置に記入すること。
II.解答に際しての注意事項
① 必要があれば次の原子量および数値を用いよ。
$\text{H} = 1.0 \quad \text{C} = 12 \quad \text{N} = 14 \quad \text{O} = 16 \quad \text{Na} = 23 \quad \text{Cl} = 35.5 \quad \text{K} = 39 \quad \text{Fe} = 56 \quad \text{Br} = 80$
ファラデー定数:$F = 9.65 \times 10^4\text{ C/mol}$
② 気体を扱う計算では、すべて理想気体として考えよ。
マークシート・記述 解答一覧(スピードチェック)
※ 問題II-B〜問題Vの記述解答は各セクションをご覧ください。
問題 I
問題Iはマーク式の小問12題!ここで時間を溶かすと後半の記述(電離平衡・電池・有機)が間に合わなくなります。
特に問7(酸化数の変化)や問10(気体の製法と性質)、問11(コロイド)は女子医大が大好きな頻出テーマ。「なぜ他の選択肢がダメなのか」まで一目で分かるように整理したよ!
次の各問いに答えよ。ただし、問1〜問12の答は、すべてマークシート式解答用紙 1〜12 のマーク欄にマークせよ。
問1 原子の電子配置が下記の模式図で表される元素を記号 $\text{U}\sim\text{Z}$ で表す。以下の①〜⑥で示した物質の中で、常温常圧下で安定に存在できないものをすべて選べ。解答はア〜サから選べ。
【問1 解答・解説】
解答:ア(①のみ)まず、中心の原子核の電荷(=原子番号)から元素 U〜Z を特定します。
- U ($2+$) :原子番号2 $\rightarrow$ $\text{He}$(ヘリウム:希ガス)
- V ($6+$) :原子番号6 $\rightarrow$ $\text{C}$(炭素)
- W ($7+$) :原子番号7 $\rightarrow$ $\text{N}$(窒素)
- X ($8+$) :原子番号8 $\rightarrow$ $\text{O}$(酸素)
- Y ($11+$):原子番号11 $\rightarrow$ $\text{Na}$(ナトリウム)
- Z ($17+$):原子番号17 $\rightarrow$ $\text{Cl}$(塩素)
各選択肢の物質を当てはめて確認します:
- ① $\text{U}_2 \rightarrow \text{He}_2$ :ヘリウムは希ガス(18族)であり、閉殻構造で安定なため単原子分子 $\text{He}$ として存在します。二原子分子 $\text{He}_2$ は常温常圧下で安定に存在できません。
- ② $\text{VX} \rightarrow \text{CO}$(一酸化炭素):実在する気体です。
- ③ $\text{VZ}_4 \rightarrow \text{CCl}_4$(四塩化炭素):実在する液体です。
- ④ $\text{W}_2 \rightarrow \text{N}_2$(窒素):実在する気体です。
- ⑤ $\text{X}_3 \rightarrow \text{O}_3$(オゾン):実在する気体です。
- ⑥ $\text{YZ} \rightarrow \text{NaCl}$(塩化ナトリウム):実在する固体(イオン結晶)です。
問2 右の図は水の三態の変化を示したものである。次の(あ)(い)の答えとして正しい組み合わせをア〜シから選べ。
(あ) Aの温度を何とよぶか。
① 沸点 ② 融点 ③ 昇華点 ④ 臨界点
(い) $\text{a} \rightarrow \text{b}$ の変化を何とよぶか。
i 融解 ii 沸騰 iii 凝固 iv 昇華 v 凝縮
【問2 解答・解説】
解答:キ(②とiv)状態図の3つの領域は、左(低温・高圧)から順に「固体(氷)」「液体(水)」「気体(水蒸気)」です。
- (あ) Aの温度: 圧力 $1.013 \times 10^5\text{ Pa}$(1気圧)における固体と液体の境界線(融解曲線)上の温度なので、② 融点($0^\circ\text{C}$)です。
- (い) $\text{a} \rightarrow \text{b}$ の変化: 三重点より低い圧力において、固体領域(a)から気体領域(b)へ液体を経由せずに直接変化しているため、iv 昇華です。
問3 $0.10\text{ mol/L}$ アンモニア水 $10\text{ mL}$ を、$0.10\text{ mol/L}$ 塩酸で中和していくとき得られる滴定曲線のグラフとして、最も適切なものをア〜クから選べ。
【問3 解答・解説】
解答:キ$0.10\text{ mol/L}$ アンモニア水(弱塩基)$10\text{ mL}$ に、$0.10\text{ mol/L}$ 塩酸(強酸)を滴下していく実験です。チェックすべきポイントは以下の3点です!
問4 次の記述①〜⑤の中で、正しいものをすべて選べ。解答はア〜シから選べ。
- ① 黒鉛は共有結合でできており、電気を導かない。
- ② 塩化カリウムの結晶は、電気を導く。
- ③ イオン結晶は、無極性の溶媒には溶けにくい。
- ④ 分子結晶は、共有結合の結晶に比べて融点が高いものが多い。
- ⑤ イオン結晶は、融解しても電気を導かない。
【問4 解答・解説】
解答:ウ(③のみ)- × ① 黒鉛(グラファイト)は共有結合の結晶ですが、4個の価電子のうち3個が結合に使われ、残りの1個が層間を自由に動けるため、電気をよく導きます。
- × ② 塩化カリウム($\text{KCl}$)はイオン結晶です。固体の状態ではイオンが固定されて動けないため、電気を導きません。
- ○ ③ イオン結晶は静電気的な引力(クーロン力)で結合しているため、水のような極性溶媒には水和して溶けやすいですが、無極性溶媒には溶けにくいです。(正しい)
- × ④ 分子結晶は弱い分子間力で集まっているため、強い共有結合で網目状につながる共有結合の結晶に比べて、融点が非常に低いです。
- × ⑤ イオン結晶は、水溶液にしたときや融解(液体に)したときにはイオンが自由に移動できるため、電気を導きます。
問5 下記の反応式①〜⑤の中で、実際に反応が左から右へ進むものをすべて選べ。なお、必要な場合は、適切に加熱を行うものとする。解答はア〜サから選べ。
- ① $2\text{NH}_4\text{Cl} + \text{Ca(OH)}_2 \longrightarrow \text{CaCl}_2 + 2\text{NH}_3 + 2\text{H}_2\text{O}$
- ② $2\text{KBr} + \text{I}_2 \longrightarrow 2\text{KI} + \text{Br}_2$
- ③ $\text{NaCl} + \text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow \text{NaHSO}_4 + \text{HCl}$
- ④ $3\text{S} + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow 2\text{H}_2\text{S} + \text{SO}_2$
- ⑤ $\text{CaCl}_2 + \text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{CaO} + 2\text{HCl}$
【問5 解答・解説】
解答:カ(①と③)- ○ ① $2\text{NH}_4\text{Cl} + \text{Ca(OH)}_2 \rightarrow \text{CaCl}_2 + 2\text{NH}_3 + 2\text{H}_2\text{O}$
【弱塩基の遊離】アンモニアの実験室的製法です。加熱により気体の $\text{NH}_3$ が追い出され、右へ進みます。 - × ② $2\text{KBr} + \text{I}_2 \rightarrow 2\text{KI} + \text{Br}_2$
ハロゲン単体の酸化力は $\text{F}_2 > \text{Cl}_2 > \text{Br}_2 > \text{I}_2$ です。酸化力の弱い $\text{I}_2$ が $\text{Br}^-$ から電子を奪うことはできないため、この反応は起きません(逆向きなら進みます)。 - ○ ③ $\text{NaCl} + \text{H}_2\text{SO}_4 \rightarrow \text{NaHSO}_4 + \text{HCl}$
【揮発性の酸の遊離】塩化水素の実験室的製法です。不揮発性の濃硫酸を加えて加熱すると、揮発性の $\text{HCl}$ が気体となって出ていくため右へ進みます。 - × ④ $3\text{S} + 2\text{H}_2\text{O} \rightarrow 2\text{H}_2\text{S} + \text{SO}_2$
実際は逆反応($2\text{H}_2\text{S} + \text{SO}_2 \rightarrow 3\text{S} + 2\text{H}_2\text{O}$)が極めて進みやすく、単体の硫黄が沈殿します。 - × ⑤ $\text{CaCl}_2 + \text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{CaO} + 2\text{HCl}$
塩基性酸化物の $\text{CaO}$ と強酸の $\text{HCl}$ は激しく中和反応するため、逆向き(左向き)にしか進みません。
問6 塩化鉄(III)の酸性水溶液 $10\text{ mL}$ に、十分な量のアンモニア水を加えて沈殿を得た。この沈殿をすべてろ過して取り出し、強熱したところ、酸化鉄(III)の粉末 $0.32\text{ g}$ を得た。初めの水溶液中の塩化鉄(III)のモル濃度 $[\text{mol/L}]$ を求めよ。最も適当な数値をア〜コから選べ。
【問6 解答・解説】
解答:キ(0.40)反応の流れを追うと、$\text{FeCl}_3 \xrightarrow{\text{NH}_3\text{aq}} \text{Fe(OH)}_3 \text{(赤褐色沈殿)} \xrightarrow{\text{強熱}} \text{Fe}_2\text{O}_3$ となります。
途中の反応式をすべて書かなくても、「鉄原子 $\text{Fe}$ の物質量($\text{mol}$)は保存される」ことに注目すると一瞬で解けます!
1. 酸化鉄(III) $\text{Fe}_2\text{O}_3$ の式量を求める:
$\text{Fe}_2\text{O}_3 = 56 \times 2 + 16 \times 3 = 112 + 48 = 160$
2. 得られた $\text{Fe}_2\text{O}_3$($0.32\text{ g}$)の物質量を求める:
$$n(\text{Fe}_2\text{O}_3) = \frac{0.32\text{ g}}{160\text{ g/mol}} = 2.0 \times 10^{-3}\text{ mol}$$
3. 鉄原子 $\text{Fe}$ の物質量(=初めの $\text{FeCl}_3$ の物質量)を求める:
$\text{Fe}_2\text{O}_3$ 1個につき $\text{Fe}$ は2個含まれるので、
$$n(\text{FeCl}_3) = 2 \times n(\text{Fe}_2\text{O}_3) = 2 \times 2.0 \times 10^{-3}\text{ mol} = 4.0 \times 10^{-3}\text{ mol}$$
4. 初めの水溶液($10\text{ mL} = \frac{10}{1000}\text{ L}$)のモル濃度を求める:
$$C = \frac{4.0 \times 10^{-3}\text{ mol}}{\frac{10}{1000}\text{ L}} = 0.40\text{ mol/L}$$
問7 次の①〜⑤の記述の中で、内容に誤りのあるものをすべて選べ。解答はア〜コから選べ。
- ① DNAを構成する塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種である。
- ② DNAの2本鎖では、アデニンとチミンは2本の水素結合、グアニンとシトシンは3本の水素結合で塩基対をつくっている。
- ③ 核酸は、ヌクレオチドどうしがリン酸部分の $-\text{OH}$ と糖部分の $-\text{OH}$ で縮合重合したものである。
- ④ DNAにはタンパク質の一次構造を決める情報が暗号化されている。
- ⑤ DNAの構成成分として、六炭糖の一種であるデオキシリボースが含まれている。
【問7 解答・解説】
解答:オ(⑤のみ)誤っているものを選ぶ問題です。
- ○ ① DNAの塩基は A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)の4種類です。(RNAではTの代わりにU:ウラシル)
- ○ ② 相補的塩基対において、AとTは2本、GとCは3本の水素結合で結ばれています。
- ○ ③ ヌクレオチド同士は、リン酸の $-\text{OH}$ と糖の $-\text{OH}$ の間で脱水縮合(ホスホジエステル結合)して鎖状に重合しています。
- ○ ④ DNAの塩基配列(トリプレット・コドン)は、タンパク質のアミノ酸配列(=一次構造)を指定しています。
- × ⑤ DNAに含まれるデオキシリボース($\text{C}_5\text{H}_{10}\text{O}_4$)やRNAに含まれるリボース($\text{C}_5\text{H}_{10}\text{O}_5$)は、炭素数が5個の五炭糖(ペントース)です。六炭糖ではありません。
問8 原子量が $24$ の金属 $\text{M}$ の酸化物を金属に還元したとき、質量が $40\%$ 減少した。この酸化物の組成式として最も適当なものはどれか。解答はア〜カから選べ。
【問8 解答・解説】
解答:ア($\text{MO}$)「酸化物を金属に還元したとき、質量が $40\%$ 減少した」ということは、酸化物全体の質量のうち 酸素 $\text{O}$ が $40\%$、金属 $\text{M}$ が残りの $60\%$ を占めているということです。
酸化物中の金属原子 $\text{M}$(原子量 24)と酸素原子 $\text{O}$(原子量 16)の物質量($\text{mol}$)の比を求めます:
$$\text{M} : \text{O} = \frac{60}{24} : \frac{40}{16} = 2.5 : 2.5 = 1 : 1$$よって、組成式は $\text{MO}$(ア)となります。(ちなみに原子量24の金属Mは $\text{Mg}$ です)
問9 次の記述①〜⑤の中で、正しいものをすべて選べ。解答はア〜シから選べ。
- ① フタル酸とテレフタル酸は、互いに幾何異性体の関係にある。
- ② 分子式 $\text{C}_4\text{H}_{10}\text{O}$ で表される第三級アルコールには、光学異性体が存在する。
- ③ 分子式 $\text{C}_3\text{H}_4$ で表される化合物の異性体には、三重結合をもつものが存在する。
- ④ ベンゼンの水素原子のうち4つを臭素原子で置換した化合物は、4種類存在する。
- ⑤ ジメチルエーテルとエタノールは、互いに構造異性体の関係にある。
【問9 解答・解説】
解答:サ(③と⑤)- × ① フタル酸(オルト体)とテレフタル酸(パラ体)は、ベンゼン環の置換位置が異なる構造異性体(位置異性体)です。幾何異性体(シス・トランス異性体)ではありません。
- × ② $\text{C}_4\text{H}_{10}\text{O}$ の第三級アルコールは 2-メチル-2-プロパノール $\text{(CH}_3)_3\text{C}-\text{OH}$ です。中心炭素に同じメチル基が3つ結合しているため不斉炭素原子を持たず、光学異性体は存在しません。(光学異性体を持つのは第二級アルコールの 2-ブタノールです)
- ○ ③ $\text{C}_3\text{H}_4$(不飽和度2)の異性体には、三重結合を1つもつプロピン(メチルアセチレン:$\text{CH}\equiv\text{C}-\text{CH}_3$)が存在します。(正しい)
- × ④ ベンゼン $\text{C}_6\text{H}_6$ の水素4つを臭素で置換した $\text{C}_6\text{H}_2\text{Br}_4$ の異性体の数は、残った水素2つの位置関係(オルト・メタ・パラ)と同じなので 3種類 です。
- ○ ⑤ ジメチルエーテル($\text{CH}_3\text{OCH}_3$)とエタノール($\text{C}_2\text{H}_5\text{OH}$)は、ともに分子式 $\text{C}_2\text{H}_6\text{O}$ で表される構造異性体の関係にあります。(正しい)
問10 次の①〜⑤の記述の中で内容に誤りのあるものをすべて選べ。解答はア〜サから選べ。
- ① 酵素リパーゼの基質はアルブミンである。
- ② 酵素が変性すると触媒としての機能を失う。
- ③ $\text{Pb}^{2+}$、$\text{Hg}^{2+}$、$\text{Cu}^{2+}$ などの重金属イオンには酵素作用を失活させる性質がある。
- ④ 酵素は、ある特定の物質にしか働かない。これを基質特異性という。
- ⑤ 酵素ペプシンの最適pHは、唾液に含まれる酵素アミラーゼの最適pHとほぼ同じである。
【問10 解答・解説】
解答:キ(①と⑤)内容に誤りのあるものを選ぶ問題です。
- × ① 消化酵素リパーゼの基質は脂肪(油脂)です。アルブミンはタンパク質の一種なので誤りです。
- ○ ② 酵素の主成分はタンパク質であり、熱や酸・塩基で立体構造が変化(変性)すると失活します。
- ○ ③ 重金属イオンはタンパク質と反応して変性・沈殿させるため、酵素を失活させます(阻害作用)。
- ○ ④ 酵素の活性部位の立体構造に合う特定の物質(基質)にしか作用しない性質を基質特異性といいます。
- × ⑤ 胃液に含まれるペプシンの最適pHは強酸性($\text{pH } 1.5\sim 2$ 付近)ですが、唾液に含まれるアミラーゼの最適pHは中性付近($\text{pH } 7$ 付近)であり、大きく異なります。
問11 次の記述①〜⑤の中で、誤っているものをすべて選べ。解答はア〜シから選べ。
- ① フラーレン $\text{C}_{60}$ は、球状の分子である。
- ② スズは、常温で希塩酸に溶けやすい。
- ③ 鉛は、常温で希塩酸に溶けやすい。
- ④ 硫化水素は、ヨウ素によって還元される。
- ⑤ マグネシウムは熱水と反応し、水素が発生する。
【問11 解答・解説】
解答:コ(③と④)誤っているものを選ぶ問題です。
- ○ ① フラーレン $\text{C}_{60}$ は、正五角形と正六角形からなるサッカーボール状の球状分子です。
- ○ ② スズ($\text{Sn}$)は水素よりイオン化傾向が大きいため、希塩酸に徐々に溶けて水素を発生します。
- × ③ 鉛($\text{Pb}$)もイオン化傾向は水素より大きいですが、希塩酸や希硫酸と反応すると表面に水に溶けにくい塩化鉛(II) $\text{PbCl}_2$ や硫酸鉛(II) $\text{PbSO}_4$ の緻密な膜を生じて内部を保護するため、それ以上溶けなくなります。
- × ④ 硫化水素 $\text{H}_2\text{S}$(還元剤)とヨウ素 $\text{I}_2$(酸化剤)が反応すると、$\text{H}_2\text{S} + \text{I}_2 \rightarrow \text{S} + 2\text{HI}$ となり、硫化水素($\text{S}$ の酸化数 $-2 \rightarrow 0$)はヨウ素によって酸化されます。「還元される」は誤りです。
- ○ ⑤ マグネシウム($\text{Mg}$)は常温の水とはほとんど反応しませんが、熱水とは反応して水素を発生します($\text{Mg} + 2\text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{Mg(OH)}_2 + \text{H}_2\uparrow$)。
問12 濃硫酸を $160\sim 170^\circ\text{C}$ に加熱しながらエタノールを滴下し、水上置換で捕集して得られる気体を確認するのに、適切な反応をすべて選べ。解答はア〜サから選べ。
- ① この気体の入った試験管にバーナーで焼いた銅線を入れて、上下させる。
- ② ヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を入れた試験管中にこの気体を通じ、温める。
- ③ アンモニア性硝酸銀水溶液を入れた試験管中にこの気体を通じ、温める。
- ④ 臭素の四塩化炭素溶液を入れた試験管中にこの気体を通じる。
- ⑤ 硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液を入れた試験管中にこの気体を通じる。
【問12 解答・解説】
解答:サ(④と⑤)エタノールに濃硫酸を加えて $160\sim 170^\circ\text{C}$ に加熱すると、分子内脱水が起こりエチレン($\text{CH}_2=\text{CH}_2$)が発生します。(※ $130\sim 140^\circ\text{C}$ なら分子間脱水でジエチルエーテル)
炭素間二重結合($\text{C}=\text{C}$)をもつエチレンの確認反応を選びます:
- × ① 焼いた銅線($\text{CuO}$)による酸化は、第一級・第二級アルコールの検出反応です。
- × ② ヨウ素と $\text{NaOH}$ 水溶液(ヨードホルム反応)は、エタノールやアセトアルデヒドなどの検出反応です。
- × ③ アンモニア性硝酸銀水溶液は、アルデヒド(銀鏡反応)や末端アルキン(アセチレンの銀アセチリド沈殿)の検出反応です。
- ○ ④ 臭素の四塩化炭素溶液に通じると、二重結合に臭素が付加反応して赤褐色が脱色されます。(適切)
- ○ ⑤ 硫酸酸性 $\text{KMnO}_4$ 水溶液に通じると、エチレンが酸化され、過マンガン酸イオン $\text{MnO}_4^-$ の赤紫色が脱色されます。(適切)
問題 II
II-A イオン交換樹脂(マーク式 問13〜問17)
機能性高分子の代表格「イオン交換樹脂」!問15・問16の計算($\text{H}^+$ や $\text{OH}^-$ の物質量と中和滴定)でつまずく受験生が多いけれど、心配いりません。
ポイントは「流出した $\text{H}^+$ の物質量 = 樹脂に吸着された陽イオンの価数 × 物質量」という等式を1本立てること!下のステップ解説で順番に確認しよう!
II-A イオン交換樹脂についての次の記述を読み、以下の問13〜問17に答えよ。解答はすべてマークシート式解答用紙 13〜17 のマーク欄にマークせよ。
一般に、溶液中に存在するイオンを別の種類のイオンと置き換える働きをもつ樹脂をイオン交換樹脂という。【 a 】に少量の $p$-ジビニルベンゼンを加えて【 b 】させると、【 c 】鎖が $p$-ジビニルベンゼンによって架橋された高分子化合物ができる。次に、この高分子化合物を【 d 】で処理すると、ベンゼン環の $-\text{H}$ が【 e 】で置換された【 f 】イオン交換樹脂が得られる。
問13 空欄【 a 】〜【 c 】にあてはまる最も適切な語句として、正しい組み合わせをア〜ケから選べ。
| 選択肢 | 【 a 】 | 【 b 】 | 【 c 】 |
|---|---|---|---|
| ア | エチレン | 付加重合 | ポリエチレン |
| イ | エチレン | 縮合重合 | ポリエチレン |
| ウ | エチレン | 共重合 | ポリエチレン |
| エ | スチレン | 付加重合 | ポリスチレン |
| オ | スチレン | 縮合重合 | ポリスチレン |
| カ | スチレン | 共重合 | ポリスチレン |
| キ | テレフタル酸 | 付加重合 | ポリエチレンテレフタラート |
| ク | テレフタル酸 | 縮合重合 | ポリエチレンテレフタラート |
| ケ | テレフタル酸 | 共重合 | ポリエチレンテレフタラート |
問14 空欄【 d 】〜【 f 】にあてはまる最も適切な語句として、正しい組み合わせをア〜カから選べ。
| 選択肢 | 【 d 】 | 【 e 】 | 【 f 】 |
|---|---|---|---|
| ア | 濃アンモニア水 | アミノ基 | 陰 |
| イ | 濃硝酸 | ニトロ基 | 陽 |
| ウ | 濃硫酸 | スルホ基 | 陰 |
| エ | 濃アンモニア水 | アミノ基 | 陽 |
| オ | 濃硝酸 | ニトロ基 | 陰 |
| カ | 濃硫酸 | スルホ基 | 陽 |
【問13・問14 解答・解説】
イオン交換樹脂の母体となる三次元網目状高分子の作り方に関する超定番問題です。
- 【a】スチレン に少量の $p$-ジビニルベンゼンを加えて 【b】共重合 させると、【c】ポリスチレン 鎖が架橋された立体網目状の高分子(基体)ができます。 $\rightarrow$ 問13:カ
- この高分子を 【d】濃硫酸 で処理(スルホン化)すると、ベンゼン環の $-\text{H}$ が 【e】スルホ基($-\text{SO}_3\text{H}$) で置換された強酸性 【f】陽イオン交換樹脂が得られます。 $\rightarrow$ 問14:カ
問15 【 f 】イオン交換樹脂を図1のように詰めたカラム管に $0.01\text{ mol/L}$ の塩化カルシウム水溶液 $5\text{ mL}$ を流した後、純水で十分に洗い流し、$100\text{ mL}$ の流出液を得た。流出液のpHとして最も近い値をア〜サから選べ。ただし、樹脂は十分量が詰まっているものとする。
【問15 解答・解説】
解答:イ(3)陽イオン交換樹脂($\text{R}-\text{SO}_3\text{H}$)に塩化カルシウム($\text{CaCl}_2$)水溶液を通すと、水溶液中の陽イオンである $\text{Ca}^{2+}$ が樹脂に捕捉され、代わりに電荷が等しくなる量の $\text{H}^+$ が放出されます。
1. 流した $\text{Ca}^{2+}$ の物質量を求める:
$$n(\text{Ca}^{2+}) = 0.01\text{ mol/L} \times \frac{5}{1000}\text{ L} = 5.0 \times 10^{-5}\text{ mol}$$
2. 放出される $\text{H}^+$ の物質量を求める:
$\text{Ca}^{2+}$ は 2価の陽イオン なので、1個の $\text{Ca}^{2+}$ と交換で 2個の $\text{H}^+$ が樹脂から出てきます!
$$n(\text{H}^+) = 2 \times n(\text{Ca}^{2+}) = 2 \times 5.0 \times 10^{-5}\text{ mol} = 1.0 \times 10^{-4}\text{ mol}$$
3. 流出液(全量 $100\text{ mL} = 0.10\text{ L}$)の水素イオン濃度 $[\text{H}^+]$ と $\text{pH}$ を求める:
$$[\text{H}^+] = \frac{1.0 \times 10^{-4}\text{ mol}}{0.10\text{ L}} = 1.0 \times 10^{-3}\text{ mol/L} \quad \Longrightarrow \quad \mathbf{pH = 3}$$
【 f 】イオン交換樹脂を図1のように詰めた別のカラム管に、次の a〜c の3種類のジペプチドの混合物を含む水溶液を適量流し、さらに十分量の純水を流して①流出液を得た。
a グリシンとグルタミン酸が縮合したジペプチド
b グリシンとチロシンが縮合したジペプチド
c システインとリシンが縮合したジペプチド
問16 下線部①の流出液に含まれるジペプチドをすべて選び記号で答えよ。解答はア〜キから選べ。必要ならば、一般式 $\text{R}-\text{CH(NH}_2)\text{-COOH}$ で表されるアミノ酸の側鎖($-\text{R}$)の構造(表1)を参考にせよ。ただし、これらジペプチド中のアミノ基とカルボキシ基は、水溶液中ではすべてイオン状態になっているものとする。
表 1
| アミノ酸 | 側鎖($-\text{R}$) |
|---|---|
| グリシン | $-\text{H}$ |
| リシン | $-\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{NH}_2$ |
| グルタミン酸 | $-\text{CH}_2\text{CH}_2\text{COOH}$ |
| チロシン | $-\text{CH}_2-\text{C}_6\text{H}_4-\text{OH}$($p$-位) |
| システイン | $-\text{CH}_2\text{SH}$ |
【問16 解答・解説】
解答:エ(aとb)問題文の条件「ジペプチド中のアミノ基とカルボキシ基は、水溶液中ではすべてイオン状態($-\text{NH}_3^+$、$-\text{COO}^-$)になっている」に注目して、各ジペプチド全体の電荷を調べます。
ジペプチドはペプチド結合を1つ持つため、主鎖の両端に必ず $-\text{NH}_3^+$ が1個($+1$) と $-\text{COO}^-$ が1個($-1$) あります(主鎖の電荷合計は $0$)。したがって、側鎖の電荷だけを見れば全体の電荷が分かります!
$\rightarrow$ 陽イオン交換樹脂には吸着されず、そのまま流出します。
$\rightarrow$ 純水で十分に洗い流すと、樹脂に保持されず流出液に出てきます。
$\rightarrow$ 陽イオン交換樹脂($-\text{SO}_3^-$)に強く吸着されて残り、流出しません。
問17 下線部①の流出液について次の(1)〜(3)の実験を行った。正しい結果の組み合わせはどれか。解答はア〜クから選べ。ただし、結果の組み合わせは (1), (2), (3) の順に並べてある。
- (1) 濃硝酸を加えて熱すると黄色になり、冷却後、アンモニア水を加えて塩基性にすると、橙黄色になった。
- (2) 濃い水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱した後、酢酸で中和し酢酸鉛(II)水溶液を加えると、黒色沈殿を生じた。
- (3) 水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にした後、少量の硫酸銅(II)水溶液を加えると赤紫色になった。
【問17 解答・解説】
解答:ウ(正, 誤, 正)問16より、流出液には a(Gly-Glu) と b(Gly-Tyr) が含まれ、c(Cys-Lys) は含まれていません。
- 【正】(1) キサントプロテイン反応:
ベンゼン環(芳香族アミノ酸)を検出する反応です。流出液にはチロシン(フェノール性ヒドロキシ基をもつベンゼン環)を含むジペプチド b が存在するため、陽性(黄色 $\rightarrow$ 橙黄色)となります。 - 【誤】(2) 硫黄($\text{S}$)の検出反応(硫化鉛(II) $\text{PbS}$ の黒色沈殿):
硫黄を含むシステイン($-\text{CH}_2\text{SH}$)はジペプチド c に含まれており、樹脂に吸着されて流出液には出てこないため、黒色沈殿は生じません。 - 【正】(3) 銅(II)イオンによる呈色反応(ビウレット反応):
(※注意:通常の高校化学では「ビウレット反応はトリペプチド以上(ペプチド結合2個以上)で赤紫色」と習いますが、実はアミノ酸やジペプチドでも塩基性で $\text{Cu}^{2+}$ を加えると銅(II)錯イオンを形成して青紫〜赤紫色に呈色します。また、(1)が正、(2)が誤と確定した時点で、選択肢「ウ(正, 誤, 正)」と「エ(正, 誤, 誤)」の2択になります。
問題 II-B :高吸水性高分子(記述式)
ポリアクリル酸ナトリウムがなぜ大量の水を吸えるのか?
「① $-\text{COONa}$ が電離して $-\text{COO}^-$ 同士が静電反発し網目が広がる」「② 内側のイオン濃度が高まり浸透圧が大きくなる」の2ステップは、他大学の記述でもそのまま聞かれる超重要ロジックだよ!
II-B 次の文章を読み、以下の問いに答えよ。解答は記述用解答用紙の所定の欄に書け。
高吸水性高分子化合物は、水に接触すると短時間に吸水・保水し自身の質量の百倍から千倍の質量の水を吸収・保持することができる。
この性質を利用して紙おむつや砂漠など乾燥地帯の緑化のための土壌保水剤などに利用されている。その構造は、ポリアクリル酸ナトリウムのような親水性の高分子化合物が架橋した、立体網目構造である。
①ポリアクリル酸ナトリウムを素材とした高分子の場合は、一つ一つの網目構造の中には乾燥状態では多数の【 a 】が側鎖として存在する。高分子が水に接触し吸水すると、側鎖の【 a 】は【 b 】と【 c 】に電離する。その結果、側鎖の【 c 】どうしが電気的に反発しあうので一つひとつの網目の空間が広がり、全体として隙間の多い分子構造になる。その隙間に水が浸透する。また網目の内側は、外側よりイオン濃度が高くなるため、浸透圧が【 d 】なるのでさらに水が浸透しやすくなる。このようにして吸水された水が保持される。
問1 下線部①の構造式として適切なものをア〜カから選び、記号で答えよ。
問2 空欄【 a 】〜【 d 】に最も適する語句または化学式を下の解答群から選び、記号で答えよ。ただし、同じ語句または化学式を二度使用してはいけない。
【問題 II-B 解答・解説】
【解答】
- 問1: オ
- 問2 【a】: (ウ) ($-\text{COONa}$)
- 問2 【b】: (カ) ($\text{Na}^+$)
- 問2 【c】: (イ) ($-\text{COO}^-$)
- 問2 【d】: (シ) (大きく)
■ 問1の解説:
アクリル酸($\text{CH}_2=\text{CH}-\text{COOH}$)のナトリウム塩が付加重合したものがポリアクリル酸ナトリウムなので、構造式は オ です。
(参考:ア=6,6-ナイロン、イ=ポリメタクリル酸メチル、ウ=ジアセチルセルロース、エ=ポリエチレングリコール、カ=ポリアクリロニトリル)
■ 問2の解説:
乾燥状態では側鎖に 【a】$-\text{COONa}$ (ウ) が存在します。水と接触すると、【b】$\text{Na}^+$ (カ) と 【c】$-\text{COO}^-$ (イ) に電離します。高分子鎖に固定された側鎖の 【c】$-\text{COO}^-$ 同士が負電荷の反発によって広がり、さらに網目の内側のイオン濃度が高くなるため、浸透圧が 【d】大きく (シ) なり、水をグングン吸収します。
問題 III :硫化水素の電離平衡とpH計算(記述式)
「えっ、空欄 $\text{e} \times \log_{10}\text{f}$ ってどう変形するの!?」と本番で手が止まりやすい問題です。
問題文に与えられた $\log_{10} 95 = 1.98$ をゴールから逆算して、$9.5 \times 10^{-9} = 95 \times 10^{-10}$ と指数を揃えるのが最大のコツ!赤本だと1行で飛ばされる式変形の裏側まで完全解説したよ!
問題 III 次の文章を読み、文中の a 〜 g 内に適切な式、または数値を入れよ。ただし、異なる記号には同じ解答は入らない。解答は、すべて記述用解答用紙の所定の位置に書け。
2価の酸では電離は2段階で起こる。例えば硫化水素の場合は以下のように示される。
$\text{H}_2\text{S} \rightleftarrows \text{H}^+ + \text{HS}^-\quad$(1)式
$\text{HS}^- \rightleftarrows \text{H}^+ + \text{S}^{2-}\quad$(2)式
この反応で(1)式の電離定数を $K_1$、(2)式の電離定数を $K_2$ とすると、$25^\circ\text{C}$ における $K_1$、$K_2$ はそれぞれ $K_1 = 9.5 \times 10^{-8}\text{ mol/L}$、$K_2 = 1.3 \times 10^{-14}\text{ mol/L}$ で、2段目の電離定数 $K_2$ は $K_1$ に比べると著しく小さい。したがって、硫化水素の水溶液のpHを求める時には、2段目の電離を無視して近似計算ができる。
この考え方で、$0.10\text{ mol/L}$ の硫化水素水溶液のpHを求めてみる。ただし、$\log_{10} 95 = 1.98$ として計算し、pHの値は、小数第一位までとする。
まず、1段目の電離定数 $K_1$ は次のように表せる。
$$K_1 = \frac{[\text{H}^+][\text{HS}^-]}{[\text{H}_2\text{S}]} \quad \text{(3)式}$$
また、$\text{H}_2\text{S}$ の電離度を $\alpha$ とすると、硫化水素の濃度は、$[\text{H}_2\text{S}] =$ a $\times$ b $[\text{mol/L}]$ と表すことができる。ここで、$\text{H}_2\text{S}$ は弱酸なので $1-\alpha \fallingdotseq 1$ とみなすことができ、$[\text{H}^+] = [\text{HS}^-]$ なので、これらを(3)式に代入して $\alpha$ を含まない式で表すと $K_1$ は次のように表せる。
$$K_1 = \frac{\text{【 c 】}^2}{\text{【 a 】}} \quad \text{(4)式}$$
(4)式の $K_1$ に $K_1 = 9.5 \times 10^{-8}\text{ mol/L}$ を代入すれば、$[\text{H}^+] =$ d $\text{mol/L}$ と求められ、$\text{pH} =$ e $\times \log_{10}$ f と変形できる。したがってこの溶液の $\text{pH} =$ g と求められる。
【問題 III 解答】
ステップバイステップ解説
1. 空欄 a, b, c の決定:
初濃度 $C = 0.10\text{ mol/L}$、電離度 $\alpha$ とすると、電離後の $[\text{H}_2\text{S}]$ は $C(1-\alpha) = 0.10 \times (1-\alpha)\text{ mol/L}$ となります。
直後の(4)式の分母に $\text{a}$ が単独で入っていることから、$1-\alpha \fallingdotseq 1$ と近似したあとの $[\text{H}_2\text{S}] \fallingdotseq 0.10$ が $\text{a}$ に対応します。
よって、$\text{a} = 0.10$、$\text{b} = 1-\alpha$ です。
また、$[\text{H}^+] = [\text{HS}^-]$ を(3)式 $K_1 = \dfrac{[\text{H}^+][\text{HS}^-]}{[\text{H}_2\text{S}]}$ に代入すると、分子は $[\text{H}^+]^2$ となるため、$\text{c} = [\text{H}^+]$ です。
2. 空欄 d, e, f, g の計算:
(4)式 $K_1 = \dfrac{[\text{H}^+]^2}{0.10}$ に $K_1 = 9.5 \times 10^{-8}\text{ mol/L}$ を代入して $[\text{H}^+]$ を求めます。問題文に $\log_{10} 95 = 1.98$ が与えられているので、$95$ が現れるように指数を揃えるのがコツです!
$$[\text{H}^+]^2 = 0.10 \times 9.5 \times 10^{-8} = 9.5 \times 10^{-9} = 95 \times 10^{-10}$$
$$[\text{H}^+] = \sqrt{9.5 \times 10^{-9}} = \sqrt{95 \times 10^{-10}} = \mathbf{\sqrt{95} \times 10^{-5}\text{ mol/L}} \quad \cdots \mathbf{\text{d}}$$
次に $\text{pH}$ を求めます。$\text{pH} = -\log_{10}[\text{H}^+]$ より、式変形には以下の表現が考えられます:
【根号の指数 $\frac{1}{2}$ を前に出す形】
$$\text{pH} = -\log_{10}\left(9.5 \times 10^{-9}\right)^{\frac{1}{2}} = \mathbf{-\frac{1}{2}} \times \log_{10}\left(\mathbf{9.5 \times 10^{-9}}\right)$$ 問題文の印刷が「$\text{e} \times \log_{10}\text{f}$」と掛け算記号($\times$)になっているため、$\text{e} = -\dfrac{1}{2}$(または $-0.5$)、$\text{f} = 9.5 \times 10^{-9}$(または $95 \times 10^{-10}$) と書くのが数式として厳密に一致します。(※
最後に $\text{pH}$ の数値(g)を計算します: $$\text{pH} = -\log_{10}\left(\sqrt{95} \times 10^{-5}\right) = 5 - \frac{1}{2}\log_{10} 95 = 5 - \frac{1}{2} \times 1.98 = 5 - 0.99 = 4.01$$ 小数第一位まで求めるので、$\text{g} = 4.0$ となります。
問題 IV :標準電極電位と酸化還元・電池(記述式)
標準水素電極や生体内のシトクロム(鉄イオンの価数変化)を題材にした、医学部らしい融合問題!
見慣れない用語が出ても焦らないで。大原則はたった1つ、「標準電極電位 $E^\circ$ が低い方が負極(電子 $\text{e}^-$ を出す側)、高い方が正極(電子 $\text{e}^-$ を受け取る側)」です!
問題 IV 次の文を読み、以下の問いに答えよ。解答は、記述式解答用紙の所定の位置に書け。
表 1
| 金属 | $E^\circ\text{ [V]}$ |
|---|---|
| $\text{Zn}$ | $-0.763$ |
| $\text{Fe}$ | $-0.440$ |
| $\text{Cu}$ | $+0.340$ |
問1 ① にあてはまる電子 $\text{e}^-$ を含むイオン反応式を示せ。
問2 標準電極電位は、金属のイオンになりやすさの指標となる。標準電極電位の大小とイオン化傾向の大小の関係についてどのようなことが言えるか。25字以内で書け。
問3 標準電極電位の大きさと、その金属イオンの還元されやすさには一定の関係がある。$\text{Zn}^{2+}$、$\text{Fe}^{2+}$、$\text{Cu}^{2+}$ の還元されやすさの大小は次のどれか。番号で答えよ。
問4 ダニエル電池の起電力は、理論的には、標準電極電位から求めることができる。ダニエル電池の理論上の起電力を求める計算式を表1の値を用いて書け。計算はしなくてよい。
問5 標準電極電位は、金属だけでなく、あらゆる酸化剤、還元剤について求めることができる。例えば、
$\text{Cl}_2 + 2\text{e}^- \rightleftarrows 2\text{Cl}^-\quad$(1)式
$\text{Br}_2 + 2\text{e}^- \rightleftarrows 2\text{Br}^-\quad$(2)式
(1)式で表される反応の標準電極電位は、$+1.36\text{ V}$ である。このとき(2)式で表される反応の標準電極電位は、$+1.36\text{ V}$ より( ① )といえる。すなわち、(1)(2)式において、標準電極電位の大きな電極反応のハロゲン単体ほど( ② )酸化剤であるといえる。
( ① )( ② )にあてはまる語句の組み合わせを下の a〜d から選び、記号で答えよ。
| ① | ② | |
|---|---|---|
| a | 大きい | 強い |
| b | 大きい | 弱い |
| c | 小さい | 強い |
| d | 小さい | 弱い |
問6 生体内では、細胞内のミトコンドリアでATPが合成されているが、その過程では、電子伝達系という反応系が重要な役割を担っている。この反応系の途中では、タンパク質Aやタンパク質Bに結合した鉄イオンに関して、(3)(4)式で表される酸化還元反応が起こっている。
タンパク質$\text{A}-\text{Fe}^{3+} + \text{e}^- \rightleftarrows$ タンパク質$\text{A}-\text{Fe}^{2+} \quad +0.290\text{ V}\quad$(3)式
タンパク質$\text{B}-\text{Fe}^{3+} + \text{e}^- \rightleftarrows$ タンパク質$\text{B}-\text{Fe}^{2+} \quad +0.254\text{ V}\quad$(4)式
ここに示した電位は、生体内の標準状態における標準電極電位である。(3)式と(4)式が二つの電極反応であると考えると、(3)式と(4)式で表される二つの電極をつないで電池を作った場合、生体内の標準状態において、電子はどちらからどちらに流れると考えられるか。正しい方を選び記号で答えよ。
(ア)(3)から(4) (イ)(4)から(3)
【問題 IV 解答一覧】
- 問1: $2\text{H}^+ + 2\text{e}^- \rightleftarrows \text{H}_2$
- 問2: 標準電極電位が小さいほど、イオン化傾向が大きい。(24字)
- 問3: ⑤ ($\text{Cu}^{2+} > \text{Fe}^{2+} > \text{Zn}^{2+}$)
- 問4: $0.340 - (-0.763)$ (または $0.340 + 0.763$)
- 問5: c (① 小さい、② 強い)
- 問6: (イ) ((4) から (3))
各問の詳しい解説
塩酸中の水素イオン $\text{H}^+$ と水素ガス $\text{H}_2$ の間の酸化還元平衡なので、電子 $\text{e}^-$ を用いて $2\text{H}^+ + 2\text{e}^- \rightleftarrows \text{H}_2$ と表します。
表1を見ると、イオン化傾向が $\text{Zn} > \text{Fe} > (\text{H}_2) > \text{Cu}$ であるのに対し、標準電極電位 $E^\circ$ は $\text{Zn } (-0.763\text{ V}) < \text{Fe } (-0.440\text{ V}) < \text{Cu } (+0.340\text{ V})$ となっています。
つまり、「標準電極電位が小さい(負に大きい)ほど、電子を放出して陽イオンになりやすい(=イオン化傾向が大きい)」と言えます。
逆に、標準電極電位が大きいほど、陽イオンが電子を受け取って単体に還元されやすいため、還元されやすさの順は $\text{Cu}^{2+} > \text{Fe}^{2+} > \text{Zn}^{2+}$(⑤)となります。
ダニエル電池は、正極に銅($\text{Cu}$)、負極に亜鉛($\text{Zn}$)を用いた電池です。電池の起電力は「(正極の電位)$-$(負極の電位)」で求められるため、表1の値をそのまま使って
$$0.340 - (-0.763)$$
と書けばOKです。(計算すると $1.103\text{ V}$ になります)
(1)式・(2)式は、ハロゲン単体が電子 $\text{e}^-$ を受け取って還元される反応(=相手を酸化する酸化剤としての働き)です。
臭素 $\text{Br}_2$ は塩素 $\text{Cl}_2$ よりも酸化力が弱いため、電子を受け取りにくく、標準電極電位は $+1.36\text{ V}$ より ① 小さい 値(約 $+1.07\text{ V}$)になります。つまり、標準電極電位が大きいハロゲン単体ほど電子を奪う力が強く、② 強い 酸化剤といえます。よって c が正解です。
2つの電極をつないで電池を作ったとき、電位が低い(小さい)方が負極(電子を出す側)、電位が高い(大きい)方が正極(電子を受け取る側)になります。
・(3) タンパク質A:$+0.290\text{ V}$(電位が高い $\rightarrow$ 正極:電子を受け取る)
・(4) タンパク質B:$+0.254\text{ V}$(電位が低い $\rightarrow$ 負極:電子を放出する)
したがって、電子 $\text{e}^-$ は電位の低い (4) から電位の高い (3) へ 流れます。よって (イ) が正解です。
問題 V :アセチレンを中心とした有機反応系統図(記述式)
ラストの問題Vは、絶対に満点を取りたいアセチレン誘導体の王道パズル!
ただし問2の「構造式を例にならって書け」で結合線を省略しすぎたり、問4の「すべての原子が同一平面上にある分子」でひっかからないよう注意!ベンゼンに塩素が6個付加した $\text{G}$(ヘキサクロロシクロヘキサン)は単結合の立体環になるから平面じゃないよ!
問題 V 次の文を読んで、問1〜6に答えよ。解答は記述用解答用紙の所定の位置に記入せよ。
化合物Aは、①炭化カルシウムに水を加えることにより生じる無色無臭の気体である。Aに硫酸水銀(II)を触媒として水を付加させると、不安定な化合物Bを経て、ただちにBの構造異性体の化合物Cに変化する。Cは工業的には、化合物Dを塩化パラジウム(II)と塩化銅(II)を触媒として空気酸化することにより製造されている。Cを酸化すると化合物Eを生じる。
化合物Aを赤熱した鉄と接触させると、化合物Fが生じる。Fは特有のにおいをもつ無色の液体である。Fに光(紫外線)を当てながら塩素を作用させると、化合物Gを生じる。
触媒を用いて化合物AとEを反応させると②熱可塑性樹脂の原料となる化合物Hを生じる。
問1 化合物A、D、Fの名称を示せ。
問2 化合物B、C、G、Hの構造式を例にならって書け。
問3 下線部①の反応式を示せ。
問4 化合物A、C、D、E、F、G、Hのうち、すべての原子が同一平面上にあるものをすべて選び、記号で示せ。
問5 下線部②に関して、化合物Hを原料とする熱可塑性樹脂の名称を書け。
問6 $6.5\text{ g}$ の化合物Aを十分な量の臭素の四塩化炭素溶液に通じたところ、化合物Iを生じた。Iの名称と、この時に反応した臭素 $\text{Br}_2$ の質量 $[\text{g}]$ を有効数字2桁で求めよ。
まず化合物 A〜I をすべて特定しよう!
・炭化カルシウム(カーバイド $\text{CaC}_2$)に水を加えて生じる気体 A = アセチレン($\text{CH}\equiv\text{CH}$)
・Aに水を付加させた不安定なエノール型の化合物 B = ビニルアルコール($\text{CH}_2=\text{CH}-\text{OH}$)
・Bがただちに異性化してできる化合物 C = アセトアルデヒド($\text{CH}_3\text{CHO}$)
・工業的に酸化してCを作る原料 D = エチレン($\text{CH}_2=\text{CH}_2$) ※ヘキスト・ワッカー法
・C(アセトアルデヒド)を酸化してできる E = 酢酸($\text{CH}_3\text{COOH}$)
・A(アセチレン)3分子を赤熱した鉄触媒で重合させた F = ベンゼン($\text{C}_6\text{H}_6$)
・F(ベンゼン)に紫外線を当てて塩素を付加させた G = 1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン($\text{C}_6\text{H}_6\text{Cl}_6$)
・A(アセチレン)にE(酢酸)を付加させた H = 酢酸ビニル($\text{CH}_2=\text{CH}-\text{OCOCH}_3$)
・A(アセチレン)に十分な量の臭素(2分子)が付加した I = 1,1,2,2-テトラブロモエタン($\text{CHBr}_2-\text{CHBr}_2$)
【問題 V 記述解答一覧】
A: アセチレン(または エチン) / D: エチレン(または エテン) / F: ベンゼン
$$\text{CaC}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{Ca(OH)}_2 + \text{C}_2\text{H}_2$$
(※ $\text{Ca(OH)}_2$ の代わりに $\text{CaO} + \text{H}_2\text{O}$ としないよう注意。常温の水が過剰にあるため水酸化カルシウムになります)
A、D、F
ポリ酢酸ビニル
Iの名称: 1,1,2,2-テトラブロモエタン
臭素の質量: $80\text{ g}$
問4・問6のポイント解説
分子内に $sp^3$ 混成軌道の炭素(4本の単結合をもつ $-\text{CH}_3$ やシクロヘキサン環など、正四面体構造をとる炭素)が1つでもあると、すべての原子が同一平面上に並ぶことはできません。
- A(アセチレン $\text{H}-\text{C}\equiv\text{C}-\text{H}$): 直線形の分子なので、全4原子が同一直線上(=同一平面上)にあります。
- D(エチレン $\text{CH}_2=\text{CH}_2$): 二重結合まわりの平面構造で、全6原子が同一平面上にあります。
- F(ベンゼン $\text{C}_6\text{H}_6$): 正六角形の平面構造で、全12原子が同一平面上にあります。
- C、E、H はメチル基($-\text{CH}_3$)をもつため立体となり不可。G($\text{C}_6\text{H}_6\text{Cl}_6$)も単結合のシクロヘキサン環(いす形など)になるため同一平面上にはありません。
アセチレン($\text{C}_2\text{H}_2$、分子量 $12\times 2 + 1.0\times 2 = 26$)は炭素間三重結合をもつため、十分な量の臭素($\text{Br}_2$、分子量 $80\times 2 = 160$)を通じると、アセチレン 1分子に対して臭素が 2分子 付加します。
1. アセチレン $6.5\text{ g}$ の物質量を求める:
$$n(\text{C}_2\text{H}_2) = \frac{6.5\text{ g}}{26\text{ g/mol}} = 0.25\text{ mol}$$
2. 反応した臭素 $\text{Br}_2$ の物質量と質量を求める:
$$n(\text{Br}_2) = 2 \times 0.25\text{ mol} = 0.50\text{ mol}$$
$$\text{質量} = 0.50\text{ mol} \times 160\text{ g/mol} = \mathbf{80\text{ g}}$$
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