🎯 2022年度 昭和大学医学部(I期)物理 全体概観
2022年度の昭和大医学部(I期)の物理は大問4題構成で、大問1:万有引力と人工衛星の軌道(力学)、大問2:球形容器内の気体分子運動論(熱力学)、大問3:くさび形空気層による光の干渉(波動)、大問4:結晶格子による電子線のブラッグ反射と物質波(原子)という出題でした(電磁気からの出題がない珍しいセットです)。
いずれも教科書〜標準レベルの典型題材ですが、大問1(4)の楕円の半短軸、大問2の球形容器での分子運動論、大問3(8)のガラス板を平行移動させたときの明線の移動量、大問4(4)の角度を50°から増加させたときの最初の反射角など、丸暗記では解けない「その場で図を描いて幾何学的に考える力」が試されています。1ステップも省略せずに完全解説します!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
まずは最終結果を確認!大問 1:人工衛星の円軌道と楕円軌道(力学) 解説へ ↓
- (1) 速さ $V_0$ $\displaystyle \sqrt{\frac{GM}{r}}$
- (2) 周期 $T_1$ $\displaystyle 2\pi r \sqrt{\frac{r}{GM}}$
- (3) 速さ $V_{\mathrm{A}}, V_{\mathrm{B}}$ $\displaystyle V_{\mathrm{A}} = \sqrt{\frac{2GMR}{r(R+r)}}, \quad V_{\mathrm{B}} = \sqrt{\frac{2GMr}{R(R+r)}}$
- (4) 楕円 $\mathrm{K}_2$ の半短軸 $\displaystyle \sqrt{Rr}$
- (5) 周期 $T_2$ $\displaystyle \pi (R+r)\sqrt{\frac{R+r}{2GM}}$
- (6) 速さ $V_{\mathrm{C}}$ と必要なエネルギー $\Delta E$ $\displaystyle V_{\mathrm{C}} = \sqrt{\frac{GM}{R}}, \quad \Delta E = \frac{GMm(R-r)}{2R(R+r)}$
大問 2:球形容器内の気体分子運動論(熱力学) 解説へ ↓
- (1) 1回の衝突で壁に与える力積 $2mv\cos\theta$
- (2) 次に衝突するまでに進む距離 $2r\cos\theta$
- (3) 時間 $t$ に全分子が与える力積 $\displaystyle \frac{n N_{\mathrm{A}} m \overline{v^2} t}{r}$
- (4) 気体の圧力 $P$ $\displaystyle \frac{n N_{\mathrm{A}} m \overline{v^2}}{4\pi r^3}$
- (5) 分子1個の運動エネルギー平均値 $\displaystyle \frac{3RT}{2N_{\mathrm{A}}}$
大問 3:くさび形空気層による光の干渉(波動) 解説へ ↓
- (1) 光の経路の差 $\displaystyle \frac{2Dx}{L}$
- (2) 明線の条件式 $\displaystyle \frac{2Dx}{L} = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m=0, 1, 2, \cdots)$
- (3) 隣り合う明線の間隔 $\Delta x$ $\displaystyle \frac{L\lambda}{2D}$
- (4) 青色光に比べて赤色光の明線間隔 赤色光は青色光よりも波長 $\lambda$ が長いため、明線の間隔 $\Delta x = \dfrac{L\lambda}{2D}$ は大きく(広く)なる。
- (5) アルミ箔の厚さ $D$ $3.3 \times 10^{-5}\text{ m} \quad (3.3 \times 10^{-2}\text{ mm})$
- (6) 液体の屈折率 $n$ $1.5$
- (7) ガラスB下降時の干渉縞の間隔 変化しない
- (8) 鉛直移動距離 $\Delta y$ $\displaystyle \Delta y = \frac{D\Delta x}{L}$
大問 4:電子線の結晶回折・物質波(原子) 解説へ ↓
- (1) 隣り合う格子面での経路差 $2d\sin\theta$
- (2) 強め合う条件(ブラッグの条件) $2d\sin\theta = n\lambda \quad (n=1, 2, 3, \cdots)$
- (3) 電子の速さ $v$ と波長 $\lambda$ 速さ:$2.00 \times 10^7\text{ m/s}$、波長:$3.64 \times 10^{-11}\text{ m}$
- (4) 最初に強い反射が起こる $\sin\theta_1$ $0.809$ (または $0.81$)
人工衛星の円軌道と楕円軌道(ホーマン遷移軌道)
大問1は宇宙物理の超王道「円軌道 $\mathrm{K}_1 \rightarrow$ 楕円軌道 $\mathrm{K}_2 \rightarrow$ 円軌道 $\mathrm{K}_3$」へ乗り換えるホーマン遷移軌道の問題です!
合否の分かれ目は(3)と(4)! 円軌道では「運動方程式」、楕円軌道では「面積速度一定の法則」と「力学的エネルギー保存則」の連立が鉄則です。さらに(4)の「半短軸」は、楕円の幾何学的性質(2焦点からの距離の和=長軸 $2a$)を知っていれば10秒で解けますし、面積速度と周期の関係から導くこともできます。両方のアプローチをマスターしましょう!(目標解答時間:18分)
【問題 1】
下図のように地球を中心とする半径 $r$ の円軌道 $\mathrm{K}_1$ を周遊する人工衛星があった。人工衛星は大気の抵抗を受けないものとし、地球の質量を $M$、人工衛星の質量を $m$、万有引力定数を $G$ とする。以下の問いに答えなさい。なお、物理量が問われたときは、$G, M, m, R, r$ の中から必要なものを用いて表しなさい。
【図解】円軌道 $\mathrm{K}_1$、楕円軌道 $\mathrm{K}_2$、円軌道 $\mathrm{K}_3$ と楕円の半長軸 $a$・半短軸 $b$
設問 (1):円軌道 $\mathrm{K}_1$ を周遊する時の人工衛星の速さ $V_0$
半径 $r$ の円軌道 $\mathrm{K}_1$ 上を速さ $V_0$ で等速円運動している人工衛星(質量 $m$)には、地球(質量 $M$)の中心に向かって大きさ $\displaystyle F = G\frac{Mm}{r^2}$ の万有引力が働いています。
これが向心力となるので、中心方向の円運動の運動方程式 $\displaystyle m\frac{V_0^2}{r} = F$ を立てます。
両辺を $m$ で割り、両辺に $r$ を掛けます。
$V_0 > 0$ より、平方根をとって答えが得られます。
設問 (2):人工衛星の円軌道 $\mathrm{K}_1$ の周期 $T_1$
半径 $r$ の円軌道の1周の長さ(円周)は $2\pi r$ です。ここを一定の速さ $V_0$ で1周するのにかかる時間が周期 $T_1$ ですから、
(1)で求めた $\displaystyle V_0 = \sqrt{\frac{GM}{r}}$ を代入します。
設問 (3):楕円軌道 $\mathrm{K}_2$ 上の点Aでの速さ $V_{\mathrm{A}}$ と点Bでの速さ $V_{\mathrm{B}}$
点Aにおける人工衛星の速さ $V_{\mathrm{A}}$ ならびに点Bにおける人工衛星の速さ $V_{\mathrm{B}}$ を求めなさい。
楕円軌道では、近地点Aと遠地点B以外では万有引力と速度ベクトルが直交しないため、円運動の運動方程式は使えません。
そこで、① 面積速度一定の法則 と ② 力学的エネルギー保存則 の2式を連立します。
近地点A(地球中心からの距離 $r$)と遠地点B(地球中心からの距離 $R$)では、速度ベクトルと動径(地球中心と人工衛星を結ぶ線分)が直交($90^\circ$)しています。よって、単位時間あたりに動径が描く面積(面積速度)が等しいことより、
無限遠を基準とした万有引力による位置エネルギーは $\displaystyle U = -G\frac{Mm}{x}$ ($x$ は地球中心からの距離)です。
点Aと点Bにおける力学的エネルギー保存則を立てると、
②の両辺を $m$ で割り、2倍して整理します。
ここに①の $\displaystyle V_{\mathrm{B}} = \frac{r}{R}V_{\mathrm{A}}$ を代入します。
$R \neq r$ より両辺を $(R - r)$ で割り、$R^2$ を掛けて $(R + r)$ で割ると、
これを①式 $\displaystyle V_{\mathrm{B}} = \frac{r}{R}V_{\mathrm{A}}$ に代入して $V_{\mathrm{B}}$ を求めます。
設問 (4):楕円 $\mathrm{K}_2$ の半短軸
点Aから地球の中心(焦点)までの距離が $r$、地球の中心から点Bまでの距離が $R$ ですから、楕円の長軸 AB の長さ $2a$ は、
上の図解のピンク色の直角三角形に注目してください。
楕円の中心から点Aまでの距離は半長軸 $a = \dfrac{R + r}{2}$ です。一方、焦点(地球の中心)から点Aまでの距離は $r$ なので、楕円の中心から焦点(地球の中心)までの距離 $c$ は、
楕円上の短軸の端点と2つの焦点を結ぶと、2つの焦点からの距離の和が $2a$ であることから、焦点から短軸の端点までの距離(斜辺)はちょうど半長軸 $a$ に等しくなります。
したがって、三平方の定理 $b^2 + c^2 = a^2$ より、半短軸 $b$ は次のように簡単に求まります。
設問 (5):人工衛星の楕円軌道 $\mathrm{K}_2$ の周期 $T_2$
同じ中心天体(地球)のまわりを回る人工衛星について、ケプラーの第3法則「周期の2乗は半長軸の3乗に比例する($\dfrac{T^2}{a^3} = \text{一定}$)」が成り立ちます。
円軌道 $\mathrm{K}_1$(半径 $r$、周期 $T_1$)と楕円軌道 $\mathrm{K}_2$(半長軸 $a = \dfrac{R + r}{2}$、周期 $T_2$)を比較すると、
ここに(2)の $\displaystyle T_1 = 2\pi r\sqrt{\frac{r}{GM}} = \frac{2\pi r^{\frac{3}{2}}}{\sqrt{GM}}$ と $\displaystyle a = \frac{R + r}{2}$ を代入します。
半長軸 $a = \dfrac{R+r}{2}$、半短軸 $b = \sqrt{Rr}$ の楕円の面積は $S = \pi ab$ です。
一方、面積速度(単位時間あたりに描く面積)は $\displaystyle \frac{1}{2}rV_{\mathrm{A}}$ なので、周期 $T_2$ は $\displaystyle T_2 = \frac{\pi ab}{\frac{1}{2}rV_{\mathrm{A}}}$ でも求まります。もちろん同じ答えになります!
設問 (6):円軌道 $\mathrm{K}_3$ の速さ $V_{\mathrm{C}}$ と、点Bで加速するのに必要なエネルギー
(1)の半径 $r$ を半径 $R$ に置き換えるだけです。円運動の運動方程式 $\displaystyle m\frac{V_{\mathrm{C}}^2}{R} = G\frac{Mm}{R^2}$ より、
点Bという同じ位置で瞬時に速さを $V_{\mathrm{B}}$ から $V_{\mathrm{C}}$ に変化させるので、万有引力による位置エネルギー $\displaystyle \left(-G\frac{Mm}{R}\right)$ は変化しません。
したがって、必要なエネルギー $\Delta E$ は点Bにおける運動エネルギーの増加量に等しくなります。
ここに $\displaystyle V_{\mathrm{C}}^2 = \frac{GM}{R}$ と、設問(3)で求めた $\displaystyle V_{\mathrm{B}}^2 = \frac{2GMr}{R(R + r)}$ を代入して通分します。
大問1は結果の対称性が美しいので、必ず次元(単位)チェックと極限チェックをしよう!
もし $R = r$ (楕円ではなくずっと半径 $r$ の円軌道)だったらどうなるか?
・(3)の $V_{\mathrm{A}}, V_{\mathrm{B}}$ に $R=r$ を代入すると $\displaystyle \sqrt{\frac{2GMr}{r(2r)}} = \sqrt{\frac{GM}{r}} = V_0$ となり一致!
・(4)の半短軸 $\sqrt{Rr}$ に $R=r$ を代入すると $r$ となり一致!
・(5)の周期 $T_2$ に $R=r$ を代入すると $T_1$ と一致!
・(6)の必要なエネルギー $\Delta E$ に $R=r$ を代入すると分子が $R-r=0$ となり $\Delta E = 0$ で一致!
試験本番でもこの10秒の検算をするだけで、計算ミスを100%防ぐことができます。
球形容器内の気体分子運動論
大問2は「立方体容器」ではなく「半径 $r$ の球形容器」での気体分子運動論です!
実は立方体よりも球形容器の方が計算がずっと簡単なんです。なぜなら、1回の衝突で与える力積 $2mv\cos\theta$ と、次の衝突までの飛行距離 $2r\cos\theta$ の両方に $\cos\theta$ が現れ、単位時間あたりの力積を計算するときに$\cos\theta$ が気持ちよく約分されて消えるからです!したがって、立方体のときのように $x, y, z$ 方向の3分の1($\overline{v_x^2} = \frac{1}{3}\overline{v^2}$)を使う必要すらなく、そのまま全分子の平均二乗速度 $\overline{v^2}$ に直結します。この快感を味わいながら一気に完答しましょう!(目標解答時間:12分)
【問題 2】
半径 $r$ の球形容器に、質量 $m$ の単原子分子の理想気体が $n\text{ mol}$ 入っている。分子はさまざまな速さと方向をもって互いに衝突することなく容器中を動き回り、容器の壁と完全弾性衝突を繰り返している。図は、容器内の点Aにある1個の分子が速さ $v$、入射角 $\theta$ で壁上の点Bに衝突する様子を示している。点Oは容器の中心を示す。以下の問いに答えなさい。なお、気体の絶対温度を $T$、アボガドロ数を $N_{\mathrm{A}}$、気体定数を $R$ とする。また重力の影響は無視できるものとする。
【図解】球形容器の壁面(点B)における完全弾性衝突と二等辺三角形 $\triangle\mathrm{OBC}$
設問 (1):1回の衝突で壁に与える力積
点Bにおける壁の法線方向(半径OBの方向、すなわち外向きを上向きとする)を正にとります。
分子は壁と完全弾性衝突をするので、壁に平行な速度成分 $v\sin\theta$ は変化せず、壁に垂直な速度成分 $v\cos\theta$ のみが向きを逆にして跳ね返ります。
・衝突前の壁に垂直な速度成分:$+v\cos\theta$(外向き)
・衝突後の壁に垂直な速度成分:$-v\cos\theta$(中心向き)
分子が壁から受ける力積 $I_{\text{分子}}$ は、「衝突後の運動量 $-$ 衝突前の運動量」より、
作用・反作用の法則より、分子が壁に与える力積の大きさ $I_1$ はこれと同じ大きさ(外向き)になります。
設問 (2):次に壁に衝突するまでに進む距離
上の図解のように、点Bで反射した分子が次に球面の壁に衝突する点をCとします。
$\mathrm{OB} = \mathrm{OC} = r$(球の半径)なので、$\triangle\mathrm{OBC}$ は二等辺三角形です。
円の中心Oから弦BCに垂線OMを下ろすと、点Mは弦BCの中点となり、直角三角形 $\triangle\mathrm{OBM}$ において $\angle\mathrm{OBM} = \theta$ ですから、
したがって、点Bから点Cまでの距離 $\mathrm{BC} = 2\mathrm{BM}$ は、
設問 (3):分子全体が時間 $t$ の間に壁に与える力積
速さ $v$ の分子は、時間 $t$ の間に距離 $vt$ だけ進みます。
(2)より、1回の衝突から次の衝突までに進む距離は常に $2r\cos\theta$ で一定なので、時間 $t$ の間に壁と衝突する回数 $k$ は、
(1)より1回の衝突で与える力積は $2mv\cos\theta$ なので、時間 $t$ の間にこの1個の分子が壁に与える力積 $i$ は、「1回あたりの力積 $\times$ 衝突回数 $k$」より、
★注目! ここで分子・分母の $2\cos\theta$ がきれいに約分されて消え、入射角 $\theta$ によらない式 $\displaystyle \frac{mv^2 t}{r}$ になりました!
STEP 3:容器内の全分子($N = nN_{\mathrm{A}}$ 個)について合計する
容器内には $n\text{ mol}$ の気体が入っているので、分子の総数 $N$ はアボガドロ数 $N_{\mathrm{A}}$ を用いて $N = nN_{\mathrm{A}}$ 個です。
全分子が時間 $t$ の間に壁に与える力積の総和 $I_{\text{全}}$ は、$v^2$ を平均値 $\overline{v^2}$ に置き換えて $N$ 倍すればよいので、
設問 (4):気体の圧力 $P$
壁が全分子から時間 $t$ の間に受ける力積が $I_{\text{全}} = Ft$ であることから、壁全体が受ける平均の力の大きさ $F$ は、
圧力 $P$ は単位面積あたりに働く力です。半径 $r$ の球形容器の表面積(内壁の全面積)は $S = 4\pi r^2$ ですから、
設問 (5):気体分子1個の運動エネルギーの平均値
半径 $r$ の球形容器の体積は $\displaystyle V = \frac{4}{3}\pi r^3$ (すなわち $4\pi r^3 = 3V$)です。
これを(4)で求めた圧力の式に代入すると、おなじみの関係式が現れます。
理想気体の状態方程式 $PV = nRT$ を代入すると、
求めたい「気体分子1個の運動エネルギーの平均値」は $\displaystyle \frac{1}{2}m\overline{v^2}$ なので、両辺を2で割って、
球の公式「身の上に心配ある参上(体積 $V = \frac{4}{3}\pi r^3$)」と「心配ある事情(表面積 $S = 4\pi r^2$)」は確実に使い分けられましたか?
(4)で「圧力=力÷面積」を計算するときにうっかり体積 $\frac{4}{3}\pi r^3$ で割ってしまうケアレスミスが毎年散見されます。結果の式 $\displaystyle P = \frac{n N_{\mathrm{A}} m \overline{v^2}}{3V}$ に $\displaystyle V = \frac{4}{3}\pi r^3$ を代入すれば分母の $3$ が約分されて $4\pi r^3$ になる!と逆算チェックすれば絶対に間違えません。
くさび形空気層による光の干渉とガラス板の平行移動
大問3は「くさび形空気層」の干渉問題です。(1)〜(6)は超基本なので絶対に落とせません!
受験生が悩む最大のポイントは後半の(7)と(8)! 下のガラス板Bを水平に保ったまま鉛直下方に $\Delta y$ だけ下げたとき、干渉縞がどう動くかという問題です。
「同じ次数 $m$ の明線は、空気層の厚さ $d$ が同じ場所に居続ける」という本質さえ掴めば、(7)も(8)も驚くほどスッキリ解けますよ!(目標解答時間:15分)
【問題 3】
図1のように、2枚の平板ガラスA、Bを合わせて置き、その一端に薄いアルミ箔をはさむ。ガラス板Bの面に真上から垂直に単色光を当てて真上から観察すると、等間隔の平行な縞模様が見えた。2枚のガラスが接する位置からアルミ箔までの長さを $L$、アルミ箔の厚さを $D$ とする。このとき以下の問いに答えなさい。ただし、空気の屈折率は $1.0$ としてよい。必要なら $0$ と正の整数を表す $m$ を用いなさい。
【図1】くさび形空気層と点Q(自由端)・点P(固定端)での反射
【図2】設問(7)・(8) ガラスBを鉛直下方に $\Delta y$ 下げたときの明線の移動
設問 (1):Pで反射された光とQで反射された光の経路の差
くさび形の頂点Oから水平方向に $x$ だけ離れたガラスBの上面の位置Pと、その真上のガラスAの下面の位置Qを考える。このときPで反射された光とQで反射された光の経路の差を求めなさい。
頂点Oから水平距離 $L$ の位置で空気層の厚さ(アルミ箔の厚さ)が $D$ です。
よって、頂点Oから水平距離 $x$ の位置における空気層の厚さ $\mathrm{PQ} = d$ は、直角三角形の相似比 $x : L = d : D$ より、
ガラスBの上面Pで反射する光は、ガラスAの下面Qで反射する光に比べて、空気層(厚さ $d$)を往復する分だけ多く進みます。したがって経路の差は $2d$ です。
設問 (2):Pの位置に明線ができるための条件式
・点Qでの反射(ガラスA $\rightarrow$ 空気):屈折率の大きい媒質(ガラス)から小さい媒質(空気、屈折率 $1.0$)へ向かう境界での反射なので、位相は変化しません(自由端反射相当)。
・点Pでの反射(空気 $\rightarrow$ ガラスB):屈折率の小さい媒質(空気)から大きい媒質(ガラス)へ向かう境界での反射なので、位相が $\pi$(半波長 $\frac{\lambda}{2}$ 分)ずれます(固定端反射相当)。
片方の反射でのみ位相が $\pi$ ずれるため、2つの反射光が強め合って明線となる条件は、経路差 $\dfrac{2Dx}{L}$ が半波長の奇数倍になるときです。$0$ と正の整数 $m$($m = 0, 1, 2, \cdots$)を用いて、
設問 (3):隣り合う明線と明線の間隔
(2)の式より、$m$ 番目の明線の位置 $x_m$ は、
よって、隣り合う明線($m$ 番目と $m+1$ 番目)の間隔 $\Delta x = x_{m+1} - x_m$ は、
設問 (4):青色の単色光に比べて、赤色の単色光を用いたときの明線間隔の変化
可視光線では、青色光(約 $450\text{ nm}$)よりも赤色光(約 $650\text{ nm}$〜$700\text{ nm}$)の方が波長 $\lambda$ が長い(大きい)です。
(3)より明線の間隔 $\Delta x = \dfrac{L\lambda}{2D}$ は波長 $\lambda$ に比例するため、赤色光を用いると明線の間隔は大きく(広く)なります。これを60字以内で簡潔にまとめます。
設問 (5):アルミ箔の厚さ $D$ の数値計算
与えられた数値を $\text{m}$ に直します。
・波長:$\lambda = 660\text{ nm} = 660 \times 10^{-9}\text{ m} = 6.6 \times 10^{-7}\text{ m}$
・明線間隔:$\Delta x = 1.0\text{ mm} = 1.0 \times 10^{-3}\text{ m}$
・長さ:$L = 10\text{ cm} = 0.10\text{ m} = 1.0 \times 10^{-1}\text{ m}$
(3)の式 $\Delta x = \dfrac{L\lambda}{2D}$ を $D$ について解いて代入します。
設問 (6):くさび形の空間に液体を入れたときの屈折率
このとき、同じ波長の単色光を用いると、明線の間隔が $0.67\text{ mm}$ であった。この液体の屈折率を求めなさい。
くさび形の空間を屈折率 $n$ の液体で満たすと、液体中での光の波長は $\lambda' = \dfrac{\lambda}{n}$ に短くなります(または光学的距離=光路差が $n$ 倍の $\dfrac{2nDx}{L}$ になります)。
したがって、液体を入れたときの明線間隔 $\Delta x'$ は、空気のときの明線間隔 $\Delta x = 1.0\text{ mm}$ の $\dfrac{1}{n}$ 倍になります。
$\Delta x = 1.0\text{ mm}$、$\Delta x' = 0.67\text{ mm}$ を代入します。
設問 (7):ガラスBを鉛直下方に下げたときの干渉縞の間隔の変化
ガラスBの下降とともに、干渉縞の間隔は、変化するかあるいは変化しないかを答えなさい。変化すると答えた場合、しだいに大きくなるか、しだいに小さくなるかを答えなさい。
ガラスBを水平に保ったまま鉛直下方に距離 $\Delta y$ だけ下げると、どの水平位置 $x$ においても空気層の厚さが一様に $\Delta y$ だけ増加します。
つまり、位置 $x$ における新しい空気層の厚さ $d'(x)$ は、
となります。このとき、$m$ 番目の明線の位置 $x_m'$ が満たす条件式 $2d'(x_m') = \left(m + \dfrac{1}{2}\right)\lambda$ は、
くさびの傾き $\dfrac{D}{L}$ が変わらないため、隣り合う明線の間隔をとると定数項 $-\dfrac{L}{D}\Delta y$ は引き算で消え、間隔は $\dfrac{L\lambda}{2D}$ のままで変化しません。
設問 (8):ガラスBの鉛直移動距離 $\Delta y$ と明線の水平移動距離 $\Delta x$ の関係
動かす前に位置P(水平座標 $x$)にあったある次数 $m$ の明線は、空気層の厚さが $d = \dfrac{Dx}{L}$ となる場所で強め合っていました。
ガラスBを鉛直下方に $\Delta y$ だけ下げた後、この同じ次数 $m$ の明線が水平方向に距離 $\Delta x$ だけ移動した位置(座標 $x - \Delta x$)に来たということは、移動後の位置でも空気層の厚さが元の厚さ $d$ と等しくなっているはずです。
(7)で求めた $x_m'$ の式からも分かるように、元の位置 $x_m$ と移動後の位置 $x_m'$ の差(移動距離 $\Delta x = |x_m' - x_m|$)は、
(図2の幾何学的関係からも、ガラスAの傾き $\tan\theta = \dfrac{D}{L} = \dfrac{\Delta y}{\Delta x}$ が直ちに成り立ちます!)
これを $\Delta y$ について解けば完了です。
設問(8)の $\Delta y = \dfrac{D\Delta x}{L}$ は、実は「くさび形空気層がなぜ微小な変位を拡大して測定できるのか」という干渉計の原理そのものを表しています。
例えば設問(5)の数値($D = 3.3\times 10^{-5}\text{ m}, L = 0.10\text{ m}$)のとき、$\dfrac{D}{L} = 3.3\times 10^{-4}$ ですから、ガラスBをたった $\Delta y = 0.33\text{ }\mu\text{m}$ 下げただけで、明線は横に $\Delta x = 1.0\text{ mm}$(約3000倍!)も動くのです。物理的な意味が分かると問題文の意図が手に取るように分かりますね!
結晶格子による電子線の散乱・干渉(ブラッグ反射とド・ブロイ波長)
最後の大問4は、電子線のド・ブロイ波長(物質波)と結晶のブラッグ反射の融合問題です!
最大の罠は最後の設問(4)! 「角度 $\theta = 50^\circ$ で入射させ、そのあと $\theta$ を増加させた。最初に強い反射が起こる角度 $\theta_1$ の $\sin\theta_1$ を求めよ」という問題で、うっかり $n=1$ を代入してしまった受験生が続出しました!
$\theta = 50^\circ$ の時点で $\sin 50^\circ = 0.766$ ですから、それより大きい $\sin\theta_1 > 0.766$ を満たす最小の整数 $n$ がいくつになるかを調べる必要があります。有効数字3桁の計算も丁寧に案内しますね!(目標解答時間:15分)
【問題 4】
電子線を結晶に当てると、電子線は規則正しく並んだ原子の配列面(格子面)で散乱し、干渉して特定の方向に強く反射することがある。このとき、入射した電子線は、各格子面上に並んだ原子によって鏡面のように反射すると考えられる。図のように、電子線をある原子からなる結晶の格子面に対して角度 $\theta$ で入射させた。このとき以下の問いに答えなさい。ただし格子面間隔を $d$ とする。電子の質量 $m = 9.11 \times 10^{-31}\text{ kg}$、電気素量 $e = 1.60 \times 10^{-19}\text{ C}$、プランク定数 $h = 6.63 \times 10^{-34}\text{ J}\cdot\text{s}$ とする。
【図解】隣り合う格子面(間隔 $d$)での反射と経路差 $2d\sin\theta$
設問 (1):隣り合う2つの格子面で反射された電子線が作る経路の差
上の図解のように、上の格子面の反射点Aから、下の格子面で反射する電子線の入射経路・反射経路に下ろした垂線の足をそれぞれ $\mathrm{H}, \mathrm{H'}$ とします。
$\mathrm{AB} = d$ であり、格子面と入射電子線のなす角が $\theta$ なので、$\angle\mathrm{BAH} = \angle\mathrm{BAH'} = \theta$ です。
直角三角形 $\triangle\mathrm{ABH}$ と $\triangle\mathrm{ABH'}$ において、
したがって、隣り合う格子面で反射された電子線の経路の差 $\mathrm{HB} + \mathrm{BH'}$ は、
設問 (2):反射電子線が互いに強め合う条件(ブラッグの条件)
各格子面での反射はすべて同じ条件で起こるため、反射による位相のずれはすべて同じです。
したがって、隣り合う格子面からの反射電子線が互いに強め合う条件(ブラッグの反射条件)は、(1)の経路差 $2d\sin\theta$ が波長 $\lambda$ の自然数 $n$ 倍になるときです。
設問 (3):電圧 $V = 11.4 \times 10^2\text{ V}$ で加速した電子の速さと波長
静止していた電子(質量 $m = 9.11 \times 10^{-31}\text{ kg}$、電荷の大きさ $e = 1.60 \times 10^{-19}\text{ C}$)を加速電圧 $V = 11.4 \times 10^2\text{ V}$ で加速したとき、静電気力がした仕事 $eV$ がすべて電子の運動エネルギー $\dfrac{1}{2}mv^2$ になります。
ここに与えられた数値を代入して計算します。
ここで、$9.11 \times 4 = 36.44$ ですから、$\dfrac{36.48}{9.11} = 4.0043\cdots$ となり、その平方根は $\sqrt{4.0043\cdots} = 2.001\cdots$ です!
有効数字3桁に丸めると、非常にきれいな値になります。
プランク定数 $h = 6.63 \times 10^{-34}\text{ J}\cdot\text{s}$ と、上で求めた $v = 2.001 \times 10^7\text{ m/s}$ をド・ブロイ波長の式 $\lambda = \dfrac{h}{mv}$ に代入します。
設問 (4):$\theta = 50^\circ$ から角度を増加させたとき、最初に強い反射が起こる $\sin\theta_1$
最初に強い反射が起こる角度を $\theta_1$ としたとき、$\sin\theta_1$ を求めなさい。
(2)のブラッグの条件 $2d\sin\theta = n\lambda$ より、強い反射が起こる角度 $\theta$ は次の式を満たします。
ここで、$\lambda = 3.637 \times 10^{-11}\text{ m}$(丸める前の値)および $d = 1.80 \times 10^{-10}\text{ m}$ を用いて、基本単位量 $\dfrac{\lambda}{2d}$ を計算します。
(※丸めた後の $\lambda = 3.64 \times 10^{-11}\text{ m}$ を使っても $\dfrac{3.64}{36.0} = 0.1011\cdots$ となります)
STEP 2:$\theta = 50^\circ$($\sin 50^\circ = 0.766$)から $\theta$ を増加させたときの最小の整数 $n$ を探す
$\theta$ を $50^\circ$ から $90^\circ$ に向かって増加させると、$\sin\theta$ は $\sin 50^\circ = 0.766$ から増加していきます。
したがって、$\theta$ を増加させて最初に強い反射が起こる角度 $\theta_1$ とは、
を満たす最小の自然数 $n$ に対応する角度です!順番に $n$ を当てはめて確認すると、
- $n = 7$ のとき:$\sin\theta = 7 \times 0.10103 = 0.707 < 0.766$ ($50^\circ$ より手前なので通過済み)
- $n = 8$ のとき:$\sin\theta_1 = 8 \times 0.10103 = 0.8082\cdots \fallingdotseq 0.808 \sim 0.809 > 0.766$ (これが最初!)
- $n = 9$ のとき:$\sin\theta = 9 \times 0.10103 = 0.909 > 0.766$ (2番目)
(3)で求めた $\lambda = 3.64 \times 10^{-11}\text{ m}$ を代入して $n = 8$ のときの $\sin\theta_1$ を計算すると、
(※丸める前の $\lambda = 3.637 \times 10^{-11}\text{ m}$ を用いて計算した場合は $\dfrac{8 \times 3.637 \times 10^{-11}}{3.60 \times 10^{-10}} = 0.8082\cdots \fallingdotseq 0.808$ となります。入試の採点基準上、$0.808$ と $0.809$ のいずれも正解として許容されます。)
🎯 2022年度 昭和大学医学部 物理 攻略のポイント
本年度のセットは、全分野から基礎〜標準レベルの典型問題がバランスよく出題されています。ただし、大問4(3)(4)の数値計算や、各問題における文字指定・単位変換など、「正確な計算力と条件の読み取り」が合否を分ける構成でした。特にブラッグ反射における「$\theta = 50^\circ$ から増加させて最初」という条件読み取りは差がつきやすいポイントです。日頃から途中式を丁寧に書き、有効数字の扱い(丸める前後の値の利用など)も含めて素早く処理する訓練を積んでおきましょう。
過去問演習で時間を溶かしていませんか?
合格の鍵は「全科目の時間配分(バランス調整)」にあります。
私立医学部の入試は、1科目だけできても受かりません。「計算に時間をかけすぎて他科目が崩れる」「推薦対策と一般入試の両立で手が止まっている」——そんな悩みを、TMPS医学館のニックニ(新国)先生と一緒に50分で整理しませんか?
【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(昭和医科大学(昭和大学) 2022年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。